金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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安倍、テロ対策法の背水の陣どうなる?

2007年09月10日 | 国際・政治

安倍首相は「テロ対策特別措置法が可決されず、日本がインド洋で給油活動を続けられなくなった場合は辞任する」と宣言した。より正確にいうと「給油活動に限った新法をいざという場合、衆議院の決議だけででも成立させる」ということだろう。いわば背水の陣を敷いたということだ。私の意見は「テロ対策特別措置法を可決して国際的なコミットメントを持続するべし」というものだが、本来アフガニスタン支援に限定されるべき、給油活動がイラク支援にも使われているのではないか?という懸念もある。安倍内閣が国民の支持を取り付ける説明ができるかどうか難しいところだ。

ところで今日は背水の陣について考えてみよう。背水の陣の話は今から2200年程前の中国の楚漢戦争の中に出てくる。韓の名将韓信は川を背にして陣を構え「兵法を知らない奴だ」と侮って攻めてきた趙軍を必死になって迎え撃ち大勝利を得た。戦いの後勝利の原因を聞かれた韓信は「兵は死地において生きる」という原則を活かしたのみだと答えた。

兵法は川を背にして戦うことを忌む。たとえば尉繚子という兵法書は「背水の陣を絶地となす」という。一方「兵は死地において生きる」という言葉は孫子の中に「死地は戦う」という言葉で出てくる。絶体絶命の場合は死に物狂いで戦うのみである。攻撃側から見るとこのような敵を力攻めしてはいけない。窮鼠猫を噛むからである。

では「背水の陣」はいつでも成功するのだろうか?私は成功する確率は低いと考える。戦いとは勝てる状況を作り勝ち易きに勝つものだろう。

歴史上背水の陣を取った軍が大敗を喫した例がある。それは上杉謙信と柴田勝家が衝突した手取川の戦いである。手取川を越えて布陣した柴田軍を見た謙信は少数の騎馬隊で急襲し、川を渡って陣を引こうとした柴田軍に壊滅的打撃を与えたのである。

以上のことを考えると次のようなことが言えるだろう。

  • 「背水の陣」作戦は勝率の高い作戦ではない。原則は流れを背にするような死地は避けるべきである。
  • 戦いの帰趨を決めるのは陣形のみではなく、司令官の人心掌握度合い、兵の勇敢さや鍛錬の度合い、攻撃のスピード等の複数の要素である。

私は安倍内閣にとってテロ対策特別措置法は、「手取川の戦い」になりそうに見えるがどうだろうか?

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