サブプライム・ショックから欧米の金融機関の間で資金の目詰まりが起きた時私はこのブログで「邦銀に大儲けのチャンスが来た」と書いた。邦銀の中で目敏く動いてるところがあるかどうかは知らないが、海外の投資家の中にはこのクレジット・クランチを絶好のビジネス・チャンスと捉えている連中がいる。
90年代の初めに米国の商業不動産市場がクラッシュして、資金の出し手がいなくなった時があった。その時登場したのが「墓場のダンサー」と言われたサミュエル・ゼル氏だった~仄聞するところでは彼は昨年保有する米国リートの大半を売却したとのことだが~。彼は当初無人の荒野を行くがごとく、底値で不動産を買いまくり大きな富をなした。大きく崩れた相場は数多くの不幸な投資家と数でははるかに少ないが巨万の富を築く投資家を生む。今回のクレジット・クランチもドラマを生むかもしれない。チャンスを求めてクレジットの森に入る連中を「クレジット・クランチの狩人」と呼んでみた。
ファイナンシャル・タイムズ(FT)によるとヘッジファンド、プライベート・エクイティ、投資銀行達が「商業銀行が2500億ドルのローン資産を売却するだろう」と考えて資金調達を行っている。ゴールドマン・ザックス、リーマン・ブラザース、アポロ、ブラックストーン等は投資家に「リカバリーファンド」という期間1年から2年のファンドへの出資を募っている。
FTによると大企業向けの質の高いシニア・ローンが額面の95%位の価格で取引されている。もちろん企業買収向けのブリッジ・ローンははるかに低い価格で取引されている。
95%で購入したローンが数年後に100で償還されると儲けは保有期間の利回りプラス5%のキャピタルゲインになる。ローンの残存期間にもよるが、Libor+3%以上の利回りになる可能性が高い。これは平常時であると「ジャンクボンド」の利回りだが、クレジット・クランチを逆手に取ると投資適格銘柄に高い利回りで投資することができる訳だ。
FTはある投資マネージャーは多くのローンは倒産企業並のリターンで取引されていると言っている。
私は日本の銀行やファンドにとっても、これは10年か15年に一度位のビック・チャンスだと思っているのだがどうあろうか?
それとも欧米の森に落ちた美味しい獲物を狩るのは、欧米の狩人だけだろうか?