ループ「椅子クソ兄弟の父オマルの謎」後編
*下品要注意!食事中厳禁!
「ああ、うまかったなあ。
やっぱり、
チャーハンは母ちゃんのが一番だなあ」
「この子ったら、
父ちゃんに似て口がうまいんだから」
「あのさ、
父ちゃんと母ちゃんって小学校の同級生だったんだろう」
「そうだけど、それが」
「どうしようかなあ」
「何よ?」
「訊いていいのか、悪いのか?
それともこのまま変な噂
を放置しておいた方がいいのか」
「何だよ。
気持ち悪い。
言っちゃいなよ」
「怒らない?」
「何かあたしの悪口かい」
「かもしれないなあ」
「何だよ。
それなら、尚更だよ。
話しなよ」
「あのさ、父ちゃん。
子供の頃オマル
ってあだ名だったんだって」
「あははは。
ダメだよ、その話しは。
父ちゃんにあたしがしゃべったって言ったら、
ぶっ殺されるから」
「やっぱり、そうだったんだ」
「で、実のところ本当なのかい」
かおむは、
あたかも、
オマル
というあだ名がついた理由についての噂話
を知ってるかのような訊き方をした。
「父ちゃんには口が裂けても
本当だとは言っちゃいけないよ」
「何だ、あの噂本当だったんだ」
「やっぱり、血は争えないねえ」
「ああ?」
かおむは椅子クソ伝説を思い出した。
「でも、俺たちの方がマシだよな」
と、
わざとまた知ってるフリをした。
「そりゃ、
あんたらは一度だけだからねえ」
「そうだよな。
でも、あのときはオヤジに怒られたよなあ。
自分の方がひどいクセにさ」
かおむは話しの流れから推測して、
そういう言い方をした。
「あの人の性格だから、
自分のことは棚にあげて人のことだけ攻めるんだよ。
それもわたしが別れた理由の一つだからね」
「噂だと10回くらいやらかした
ってことになってるけど」
かおむは
母親の様子から適当な回数を言った。
「うーん、回数はわかんないね。
何せ、
何度怒られてもすぐもらすから、
最後はオマルに座って
授業うけてたくらいだからね。
あたしもクラスは違ったけど、
あの格好は滑稽だったから
よく覗きにいったわよ。
今じゃ考えられない話しだわね」
かおむは、
ようやくやっと真相が理解できた。
ただ、
どうして母親があの父親と結婚したのか
を知りたかったが、
今日のところは訊くことをやめることにした。
「そうそう、そうだ。
あんたたちの方はどうなのさ。
前回の同窓会では、
おもちゃのせいにして、
うまくみんなを騙したみたいじゃない」
「あっ、もうこんな時間だ。
母ちゃんごちそうさま!
チャーハン最高だったよ!
また、
遊びに来るからさ」
「そういうところも父ちゃんに似てるね。
都合が悪くなると逃げるんだから」
と、
かおむたちの母親が言ったときには、
かおむはもうどこかに消えていた。
(終)