エスカレーター改「チンケ」

エスカレーター改「チンケ」


　「おい、
　手に持ってるの返しな！」
　「イヤだー！
　かあちゃんにあげーるんだー」
　やっぱり、こいつら母子だ！
　「てっめえ！」
　「こんなもんはねえ？」
　クソババア、
　細かくちぎりまくってる．．．
　「クソババア！
　あんた、何やってんの！」
　「営業妨害してる、
　あんたにだけは言われたくないわねえ」
　「もういいから！
　おい、そこの大きなガキ、
　カネ返しな！」
　「はーい」
　「君、
　借用書は跡形もなくなったら、
　もう返す必要はないの？
　だから、
　あたしに１２００円払って、
　仲良く帰りましょう！」
　また誤解されるだろうって！
　「にいちゃーん、
　一緒に帰ろうよ！」
　アホガキ！　親子でグルか！
　「てっめえら！
　
　やっぱり３人共グルだな！」
　俺はグルじゃない！
　誤解されただろ！
　「あんた、その言葉やめなって」
　「あたしが許せないんだよ！
　こんなチンケなじいちゃんを騙して、
　大金巻き上げるなんてね！」
　チンケに大金？
　「あんた、チンケって？　俺か？　
　それに大金って、
　俺にはってことか？」
　「あーら、つい．．．
　本音が．．．
　あー、ごめん」
　本音はないだろ！
　おっさん、いじけちゃったぞ。
　「あーあー、
　ジイちゃんはいいけど、
　いくら見た目がそうだからって、
　チンケはねえ？
　大金はねえ。
　この人でなし！」
　クソババア、追い打ちかけるなよ。
　それに人でなしは自分だろ！
　「何！
　あんたに言われたくないねえ」
　「もういい！
　みんなうせろ！
　カネもいい！
　頼むからうせてくれ．．．
　どうせ、
　俺はチンケな、
　凄く貧乏なじじいだよ」
　あーあー、
　本当にいじけちゃった。