サクラナ外伝フォー「来客」
そして、しばらくすると、
あおむの常連の７、８歳くらいの男の子
とその母親が予約なしに店に入って来て、
「こんにちわ！
ごめんなさい。予約してしなくて。
今大丈夫かしら？
近い時間に予約が入っているなら、
出直してきますけど」
と、
母親が言ったので、
「大丈夫だすよ。
本当は今日は僕は非番だっただすからな。
だすが、
何かあったんだすか？」
と、
あおむがかなり髪が伸びかけている子供を
ちらっと見てから母親の方見ると、
「授業参観、明日なのよ！
この子ったら、いつもより早く帰ってきたと思ったら、
明日授業参観だから午前中だけなんだ
なんて、今日になって言うものだから、
この髪じゃみっともないから、
あおむさんにお願いにきたわけ。
電話をして行くより、直接の方が予約が入っていても
その隙間にでもカットしていただけるかなと思って」
と本音を話し出すと、
「僕もそうだっただすよ。
まだ、小さいからそんなもんだす。
だすが、
おかあさんは今日の明日で出席できるんだすか？」
と、
あおむが訊くと、
「ちょうど空いてる日だったし、
このとおり、先週タマキさんにカットしてもらたばかりだからよかったのよ。
このお店評判いいのに、最近、お休みなこと多いから助かったわ。
今日もタマキさんもサクラナさんもお休み？
もしかして、タマキさんどこかお悪いの」
と、
その母親が辺りを見回しながら心配そうに言ったので、
「そなことないだすよ。
身内が二人、重なって病気になってしまったもんだすから、
いろいろとご迷惑かけて申し訳ないだすな」
「いいのよ。それなら。
先週もいつもより元気なかったんだけど、
昨日、たまたま、タマキさんとすれ違ったんだけど、
あたしのことも気づかないくらい何か考え込んでいるようで、
しかも、今まで見たこともないような暗い表情してたものだから、
彼女、実は体調でも悪いのかなあと思っていたのよ。
あおむさんやサクラナさんも入院してるでしょ。
さっきもお話ししたけど、このお店の前を通るとき休みの日が多いので
心配してたの。
あら、ごめんなさい。
余計な話しをして」
おしゃべりなその母親の話を聞いて、
あおむは余計不安になったが、
ウメナが男の子を椅子に座らせて、カットの準備に既に入っていたので、
その母親がいつそんなタマキを見かけたのか訊くことなく、
「そなことないだすよ。
だば、始めるだすかな」
と、
あおむは作り笑顔でそう言ったのだった。
（続く）
