レイジーなガキ

小説、コミカルミステリー?下品なので要注意。カミサン伝説研究中。真面目に読んでも考えてもまして怒ってはいけません。

4月1日企画、カミサン伝説「山手線編」椅子クソ兄作

2009-03-30 15:12:29 | 小説
4月1日企画、カミサン伝説「山手線編」椅子クソ兄作

 山手線と書いて「やまのてせん」と読む。
東京23区内に住む人間なら知らない人間は誰もいない。
 環状になっていて
仮に寝過ごしても約1時間眠っていれば、
目的の駅に着いてしまうといわれるように
時間を潰すにはもってこいの路線でもある。
 実は、ある男。
リストラされたが妻にも子にも言えず、
金もたいしてないので毎朝家を出て
山手線に乗り込んではそのまま乗り続け
路線をぐるぐる回って、
乗った電車が車庫に入りそうになったり、
退屈すると次の電車に乗り換えたり
、反対周りの電車に乗り換えたりして時間を潰していた。
 そうして、
10日程すると
自分と同じようなスーツ姿の男数人が
それぞれ別に同じようなことをやっていることに気づいた。
 もちろん、彼らも気づいているだろうが、あえて挨拶はしない。
 最初は車掌に見つかってつかまるのではないかと心配したり、
ものすごく退屈だったりしたが、
最近は電車に乗っている人物を観察したり、
会話を盗み聴きする余裕も出てきて、
こういう生活に楽しみを感じるようになっていた。
 そして、乗り込んでいる高校生が
よくしているある話しに興味を持った。
 いかにも嘘くさい話しだが、
高校生は真面目に話しをしている。
 この山手線にはカミサンという天使だか
悪魔だかわからない不思議な生き物?が潜んでいるというのだ。
そして、時に人間の姿をして現れて何かをするらしい。
天使か悪魔かわからないというのはいいこともするし、
悪さもするということだ。
山手線と言っても何十台もあるのだから、
巡り会うのはそれは大変なことだろうが、
失業保険と貯金を使い果たすまでには
是非巡り会いたいとその男は思っていた。

 ある日、それらしい女が隣に座った。
 何故、それらしいかと言うと、
半周してもその女は居眠りもしていないのに、
電車を降りないで隣に座って周りをきょろきょろするでもなく、
まるで声をかけて欲しいかのように
黙って座っていたからである。
高校生の話ではカミサンに会ったら、
とにかく無視することが必要だと言う。
特によいことを望むなら、それは必須だという。
そして、カミサンから声をかけられて、
上手く対応すれば良いことが起きるらしい。
逆に、自分から心の中だけでもカミサンに願い事をしたり、
邪心をいだいたりしてはいけないという。
最悪なのは話しかけて
あなたはカミサンですかと訊くことだという。
これらの場合、最悪死ぬこともあるという。
そういうことだから、男はずっと無心で座っていた。
すると、その女が座ってから1周近くなる頃に、
女は男に
「ここから大阪駅に行くのはどうしたら良いですか」と
通常ありえない質問をしてきた。
男は正確に答えるべきか否か考えた。
 しかし、邪心はいけないと高校生が言っていたので、
男は
 「次の次の次が東京駅です。
そこで新幹線に乗り換えて新大阪まで行って、
そこでまた在来線に乗り換えて、
大阪まで行ってください」と簡潔に答えた。
 しかし、その女は
  「ここから大阪駅に着くまで
どのくらい時間かかります」と訊いてきた。
そこで、男は
  「乗る新幹線の種類にもよりますが、
3時間半以上はかかるでしょう」とまた正直に答えた。
 すると
  「お金はどのくらいかかります」とまた訊いてきた。
さすがに、料金まではよくわからないので、
  「うーん、そこまではよくわかりませんが、
最低1万円以上はかかるでしょう」とまた答えた。
  女がその後、考え込んでいるうちに、
東京駅が近づいてきた。
  男は「次は東京駅ですよ」と教えるべきか否か迷った。
男はとにかく駅に着くまで我慢しようと思って黙っていたら、
  女は
 「あっ、東京駅。ありがとうございました」と
頭をぺこりと下げると、山手線を降りてしまった。
  男は女がどこへ行くのかを目で追おうとしたが、
乗客がたくさん乗り込んできたので
その女を見失ってしまった。
 男は今日隣に座った女はカミサンかもしれないと思い、
帰りに宝くじを1枚だけ買った。
 そうしたら、特別賞の1万円が当たった。
男は女に金額を訊かれたときに、
1000万円はかからないでしょうと
答えれば良かったと後悔した。
(終)



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