カミサン伝説18「幸福の像編」
「さあ、この箱の中の一つだけが本物よ、
どうする、まとめて買う。一つだけ買う。
6個あるから、まとめて買ってくれたら、10万円でいいわ。
でも、一つだけなら、3万円よ」
元教師もとえは
最近は幸福の像とやらを売りつけて
だいぶ羽振りがいいらしい。
「僕はお金がないので、一つだけ買って、
当たることに賭けるだすよ。
本当は一箱の方がお得だすがな」と
もとえの婚約者逆さくらあおむが
いつものようにそう言って、1個の像を買う。
「私は1箱買うわ。で、幸福になれるって、
実際、どうなるの」と
もとえの同級生だったアホ子が訊く。
「あの不細工なサル子が
結婚したのも幸福の像のおかげよ、
嘘だと思うなら電話して訊いてみなさい」
「サル子からはがきが来たから知ってるわよ、
でも、私もう結婚してんのよ」
「じゃあ、旦那に多額の生命保険かけておきなさいよ。
あんた、結婚して失敗したって言ってたじゃない」
「えー、怖。そんなことで幸せになるの」
「例えばよ。じゃあ、こうしましょう。
三ヶ月以内に幸福なことが起きなかったら、
私が箱毎10万円で買い戻すわ。
嘘はダメよ。というより、幸福なことが起きたら、
毎日、その像を磨くのよ」
「でも、六個もあったら
どの像が本物かわからないじゃない」
「全部磨けばいいのよ」
「あーそうか」
「じゃあ、私も」とマヌ子が言うが、
「今日は二箱しか持ってきてないの、残念ね」
「じゃあ、残った、その五個入りのを八万でどう?」
「うーん、そうね。
いいわ。同級生だし」
「やった、何か得した感じ」
こうして、もとえはこの日も
はっきり言って、インチキな像を
二箱18万円で売りさばいた。
「凄いだすなあ。
もとえ先生の同級生は金持ちばかりだすなあ」
「それだけが取り柄の女子校だもの」
「そういうことだすか。
たしかに、もとえ先生以外はみんな不細工だすな」
「次回もよろしくね」
「わかっただす」
「はい、6万円、お礼を含めてあるわ。
それから、その像は返してね」
「もちろんだすよ。
だば、たった、これだけで3万だすか。
僕も教師やめて、像を売るだすかな」
「だめよ。あおむ先生には、
今度、先生の教え子で商売するんだから」
「そうだすな」
二人の悪党は、
残った像を見ながら嬉しそうに笑っていた。
(続く)
「さあ、この箱の中の一つだけが本物よ、
どうする、まとめて買う。一つだけ買う。
6個あるから、まとめて買ってくれたら、10万円でいいわ。
でも、一つだけなら、3万円よ」
元教師もとえは
最近は幸福の像とやらを売りつけて
だいぶ羽振りがいいらしい。
「僕はお金がないので、一つだけ買って、
当たることに賭けるだすよ。
本当は一箱の方がお得だすがな」と
もとえの婚約者逆さくらあおむが
いつものようにそう言って、1個の像を買う。
「私は1箱買うわ。で、幸福になれるって、
実際、どうなるの」と
もとえの同級生だったアホ子が訊く。
「あの不細工なサル子が
結婚したのも幸福の像のおかげよ、
嘘だと思うなら電話して訊いてみなさい」
「サル子からはがきが来たから知ってるわよ、
でも、私もう結婚してんのよ」
「じゃあ、旦那に多額の生命保険かけておきなさいよ。
あんた、結婚して失敗したって言ってたじゃない」
「えー、怖。そんなことで幸せになるの」
「例えばよ。じゃあ、こうしましょう。
三ヶ月以内に幸福なことが起きなかったら、
私が箱毎10万円で買い戻すわ。
嘘はダメよ。というより、幸福なことが起きたら、
毎日、その像を磨くのよ」
「でも、六個もあったら
どの像が本物かわからないじゃない」
「全部磨けばいいのよ」
「あーそうか」
「じゃあ、私も」とマヌ子が言うが、
「今日は二箱しか持ってきてないの、残念ね」
「じゃあ、残った、その五個入りのを八万でどう?」
「うーん、そうね。
いいわ。同級生だし」
「やった、何か得した感じ」
こうして、もとえはこの日も
はっきり言って、インチキな像を
二箱18万円で売りさばいた。
「凄いだすなあ。
もとえ先生の同級生は金持ちばかりだすなあ」
「それだけが取り柄の女子校だもの」
「そういうことだすか。
たしかに、もとえ先生以外はみんな不細工だすな」
「次回もよろしくね」
「わかっただす」
「はい、6万円、お礼を含めてあるわ。
それから、その像は返してね」
「もちろんだすよ。
だば、たった、これだけで3万だすか。
僕も教師やめて、像を売るだすかな」
「だめよ。あおむ先生には、
今度、先生の教え子で商売するんだから」
「そうだすな」
二人の悪党は、
残った像を見ながら嬉しそうに笑っていた。
(続く)