「お母さん、ちょっと聞いてもらいたい話があるんだけど……」
先日、中一の娘ミキが、お風呂上がりに神妙な顔で話しかけてきた。
私はパソコンのキーボードから手を放し、「いいよ」と答えた。
だが、ろくでもない話だった。
「昔、タナカさんていう人がいて、戦争で殺されちゃったんだって」
延々とタナカさんの怪談が続く。詳細は割愛するが、吹奏楽部の先輩から聞いたという胸の悪くなる話である。ようやく終わったと思ったら、実はここからが本題だった。
「それでね、タナカさんは、この話を聞いた人のところに、血まみれの姿で来るんだよ。朝の4時44分に電話がかかってくるから、それを取らないとダメなの」
「ああ、よくあるパターンだね。でも結局、何もなかったりするんだよ」
しかし、ミキは真剣な表情で反論してくる。
「違うよ! ユキ先輩もカヨ先輩も、かかってきたって言ったもん!! 家族は死んだように眠って起きないし、受話器を取るまで鳴り続けるから、根負けするんだって」
ちなみに、わが家の着信メロディは「森のくまさん」である。幽霊からの電話とは、とても結びつかない。
さらにミキは続ける。
「それで、タナカさんの言う通りにしないと、帰ってくれないんだよ。先輩たちは、熱湯に指を入れたり、包丁を首に当てろとか言われたらしいよ」
「うわ、嘘くさーい」
「本当だよ! 先輩はやったんだから。ミキは昨日聞いたから、電話がかかってくると思ったんだけど、来なかった。でも、3時40分になぜか目が覚めたんだよ」
「4時44分じゃないじゃん」
「だけど、そのあと1時間眠れなかったから怖かった……」
まったく、筋の通らない話である。
「でね、今日はお母さんが話を聞いちゃったから、タナカさんから電話がかかってくるよ」
「……」
「他の人に話せば、タナカさんは来なくなるから、ミキはもう大丈夫」
スッキリした顔で「おやすみ」と挨拶し、ミキは寝室に消えた。一人取り残された私は、「そんなの嘘だ」と思いつつ、部屋の明かりが消せなかった。
幽霊の話は嫌いではないが、私は怖がりである。
昨年、昔の同僚が亡くなったとき、通夜の様子を友人にメールしようとした。時間は午前1時になる頃だったろうか。かすかにエアコンの回転音が聞こえる部屋で、いきなり「ピシッ」という、小さく甲高い音がした。
ドキッとしたが、そのままキーボードを叩き続けていると、「ミシッ」「ギシッ」「パシッ」と連続で雑音が響いてくる。
ラップ音!?
その瞬間、背筋がヒヤリとして、腕にも足にも鳥肌が立った。私は急いでパソコンを閉じ、ドキドキしながら夫と娘のいる寝室に逃げ込んだのだった。
そんなことを思い出したら、急に弱気になり、「今日は早く寝よう」と決心する。
たとえ、ほら話であっても、血まみれのタナカさんを想像するだけで気味が悪い。
日々睡眠不足のためか、私は大変寝付きがよい。枕に頭を載せたところまでは覚えているが、どんどん意識が遠のいていく。またたく間に、深い眠りに落ちた。
しかし、夜中に物音がして、いきなり目が覚めた。
「ついに来たか!!」と布団の中で身構えた。が、よく見ると時計は12時47分を指している。電話の音はせず、夫がトイレに起きただけとわかった。
再び深く眠ったあとは、目覚ましの音で朝を迎えた。時刻は5時10分、タナカさんは来なかったらしい。
「ああよかった」と安心したのが悪かったのだろう。不覚にも、私は二度寝をしてしまったらしい。目が覚めたときは、5時30分を回っていた。
キャー、寝坊した~!!
ダッシュで支度をし、どうにか勤務時間に間に合わせた。まったく、怖い話は聞くものではない……。
「昨日、タナカさんは来なかったよ」
私は恨めしい声で、ミキに報告した。ミキはすまして答えた。
「あ、そういえば、冬は来ないんだって先輩が言ってた」
幽霊って、寒がりなのかな?
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
先日、中一の娘ミキが、お風呂上がりに神妙な顔で話しかけてきた。
私はパソコンのキーボードから手を放し、「いいよ」と答えた。
だが、ろくでもない話だった。
「昔、タナカさんていう人がいて、戦争で殺されちゃったんだって」
延々とタナカさんの怪談が続く。詳細は割愛するが、吹奏楽部の先輩から聞いたという胸の悪くなる話である。ようやく終わったと思ったら、実はここからが本題だった。
「それでね、タナカさんは、この話を聞いた人のところに、血まみれの姿で来るんだよ。朝の4時44分に電話がかかってくるから、それを取らないとダメなの」
「ああ、よくあるパターンだね。でも結局、何もなかったりするんだよ」
しかし、ミキは真剣な表情で反論してくる。
「違うよ! ユキ先輩もカヨ先輩も、かかってきたって言ったもん!! 家族は死んだように眠って起きないし、受話器を取るまで鳴り続けるから、根負けするんだって」
ちなみに、わが家の着信メロディは「森のくまさん」である。幽霊からの電話とは、とても結びつかない。
さらにミキは続ける。
「それで、タナカさんの言う通りにしないと、帰ってくれないんだよ。先輩たちは、熱湯に指を入れたり、包丁を首に当てろとか言われたらしいよ」
「うわ、嘘くさーい」
「本当だよ! 先輩はやったんだから。ミキは昨日聞いたから、電話がかかってくると思ったんだけど、来なかった。でも、3時40分になぜか目が覚めたんだよ」
「4時44分じゃないじゃん」
「だけど、そのあと1時間眠れなかったから怖かった……」
まったく、筋の通らない話である。
「でね、今日はお母さんが話を聞いちゃったから、タナカさんから電話がかかってくるよ」
「……」
「他の人に話せば、タナカさんは来なくなるから、ミキはもう大丈夫」
スッキリした顔で「おやすみ」と挨拶し、ミキは寝室に消えた。一人取り残された私は、「そんなの嘘だ」と思いつつ、部屋の明かりが消せなかった。
幽霊の話は嫌いではないが、私は怖がりである。
昨年、昔の同僚が亡くなったとき、通夜の様子を友人にメールしようとした。時間は午前1時になる頃だったろうか。かすかにエアコンの回転音が聞こえる部屋で、いきなり「ピシッ」という、小さく甲高い音がした。
ドキッとしたが、そのままキーボードを叩き続けていると、「ミシッ」「ギシッ」「パシッ」と連続で雑音が響いてくる。
ラップ音!?
その瞬間、背筋がヒヤリとして、腕にも足にも鳥肌が立った。私は急いでパソコンを閉じ、ドキドキしながら夫と娘のいる寝室に逃げ込んだのだった。
そんなことを思い出したら、急に弱気になり、「今日は早く寝よう」と決心する。
たとえ、ほら話であっても、血まみれのタナカさんを想像するだけで気味が悪い。
日々睡眠不足のためか、私は大変寝付きがよい。枕に頭を載せたところまでは覚えているが、どんどん意識が遠のいていく。またたく間に、深い眠りに落ちた。
しかし、夜中に物音がして、いきなり目が覚めた。
「ついに来たか!!」と布団の中で身構えた。が、よく見ると時計は12時47分を指している。電話の音はせず、夫がトイレに起きただけとわかった。
再び深く眠ったあとは、目覚ましの音で朝を迎えた。時刻は5時10分、タナカさんは来なかったらしい。
「ああよかった」と安心したのが悪かったのだろう。不覚にも、私は二度寝をしてしまったらしい。目が覚めたときは、5時30分を回っていた。
キャー、寝坊した~!!
ダッシュで支度をし、どうにか勤務時間に間に合わせた。まったく、怖い話は聞くものではない……。
「昨日、タナカさんは来なかったよ」
私は恨めしい声で、ミキに報告した。ミキはすまして答えた。
「あ、そういえば、冬は来ないんだって先輩が言ってた」
幽霊って、寒がりなのかな?
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
でも、実際、得体の知れないものが写真に写りこんでいたり・・・あるんですよ、実際に。。。
うわぁ、プロの写真家が言うと、説得力がありますねぇ~!!
実家の階段で、夜中に何度も足音を聞きました。
でも、ドアを開けてのぞいてみると、何も見えないんですよ。
私にはそっちの才能はないようです。
ついでに、写真の才能もありませんが(笑)
確かに幽霊は薄着ですね(笑)
良いことを聞きました〓
でも…薄着の女性の話しなら聞いてもエエわ(笑)
でも・・・見事なオチににんまりでしたよ~。
も~、ミキちゃん、ナイス!!
まじ笑えるぅ~(←ギャル風に)
すいません
こりゃ、台所でしかできませんね。
いっそのことビール一気飲み強要とかにしてみます?
あっ、中学生の話題でしたね
電話かけてくるのって幽霊じゃなくてそれにハマった学生じゃないんですかね~。
でもときどき何も無いのにミシっとか音がするぼどきどきしちゃいますよね~。
部屋で一人でいるとやはりちょっと怖いもんです。
以前に実際に幽霊を一度だけみてますからそうゆう類いの話は基本てきに信じてしまうんですよ。(病院で祖母が亡くなった瞬間我が家に来た)
でも怖い物見たさってありますからね。
幽霊にとって冬とは衣替えのシーズンなんでしょうか?
9月30日までは出るけれど、10月1日からはお休み??
夏服でも冬服でもいい移行期間はどうするのかな~(笑)
小春日和は臨時出勤なんていうのもありだったりして…。
読んでないのにコメありがと(笑)
私も小心者ですから、怖い話は書けないですよ。
いつも夜しか書く時間ないし。
暗くなってからは恐ろしくて書けない……。
薄着の女性には、もちろんニューハーフも含まれるんでしょうね!?