家電の寿命は10年なんていうけれど、アタシは笹木という家で、25年もご飯を炊き続けているのさ。
この家族は炊き立てが好きでね、朝の分を2合、夜の分を2合という具合に、一日2回も働かされるもんだから、内釜がほら、こんなボロボロにハゲちまったよ。
アタシは8合炊きなのにさ。
もっと大家族の家に買ってもらえばよかったよ。
さすがに、最近じゃ外ブタまで歪んできてね、右からも左からも蒸気が漏れるようになったもんだから、人間たちも焦ったみたいだよ。
急いでカタログを見て、新しいのを探してた。
ん?
アンタ、見たことない顔だね。
そうか、アンタがアタシの代わりに働いてくれる炊飯器?
―ええ、そうです。
何合炊きなんだい?
―5.5合です。
やけに半端だね。
―最近は、これが普通ですよ。
そうかい。時代は変わったね。頭が黒くて、イカしてるよ。
―恐れ入ります。
でも、容量が小さい割に、体の大きさはアタシと大して変わらないじゃないか。
―お恥ずかしいんですが……。私はおねえさんより重たいと思います。
えっ、そうなのかい?
―おねえさんの内釜は何グラムあります?
えーと、たしか360gだったよ。
―私の内釜は、986gもあるんです。
へえっ、そんなに重いなんて思わなかったよ。見かけによらないね。
こんなに厚手でガッシリした釜なら、美味しいご飯が炊けるだろうよ。
―ご飯には自信があります。それと、しゃもじにも。
しゃもじ?
―私のしゃもじは、自立するんです。
へええ、こりゃ大したもんだ!
―よく思いついたと感心しますよ。コロンブスの卵ですね。
あれ? ピッピッピッって音がするよ。
―今、炊き上がりました。ふっくらとして弾力性のある仕上がりなんです。ご覧になる?
見せとくれ。
ああ、いい匂い!
―これからは、私が炊飯しますから、おねえさんは休んでくださいね。
じゃあ、そうさせてもらおうか。
―長いこと、お疲れ様でした。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
この家族は炊き立てが好きでね、朝の分を2合、夜の分を2合という具合に、一日2回も働かされるもんだから、内釜がほら、こんなボロボロにハゲちまったよ。
アタシは8合炊きなのにさ。
もっと大家族の家に買ってもらえばよかったよ。
さすがに、最近じゃ外ブタまで歪んできてね、右からも左からも蒸気が漏れるようになったもんだから、人間たちも焦ったみたいだよ。
急いでカタログを見て、新しいのを探してた。
ん?
アンタ、見たことない顔だね。
そうか、アンタがアタシの代わりに働いてくれる炊飯器?
―ええ、そうです。
何合炊きなんだい?
―5.5合です。
やけに半端だね。
―最近は、これが普通ですよ。
そうかい。時代は変わったね。頭が黒くて、イカしてるよ。
―恐れ入ります。
でも、容量が小さい割に、体の大きさはアタシと大して変わらないじゃないか。
―お恥ずかしいんですが……。私はおねえさんより重たいと思います。
えっ、そうなのかい?
―おねえさんの内釜は何グラムあります?
えーと、たしか360gだったよ。
―私の内釜は、986gもあるんです。
へえっ、そんなに重いなんて思わなかったよ。見かけによらないね。
こんなに厚手でガッシリした釜なら、美味しいご飯が炊けるだろうよ。
―ご飯には自信があります。それと、しゃもじにも。
しゃもじ?
―私のしゃもじは、自立するんです。
へええ、こりゃ大したもんだ!
―よく思いついたと感心しますよ。コロンブスの卵ですね。
あれ? ピッピッピッって音がするよ。
―今、炊き上がりました。ふっくらとして弾力性のある仕上がりなんです。ご覧になる?
見せとくれ。
ああ、いい匂い!
―これからは、私が炊飯しますから、おねえさんは休んでくださいね。
じゃあ、そうさせてもらおうか。
―長いこと、お疲れ様でした。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)