これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

最後のメダカ

2011年08月11日 20時38分36秒 | エッセイ
 昨年3月に、メダカを17匹買ってきた。オレンジ色のヒメダカに加えて、シロメダカ、アオメダカを取り混ぜ、水槽の中が賑やかだった。
 しかし、今ではアオメダカ1匹しか残っていない。皆、死んでしまったのだ。
 昨夏には産卵し、稚魚も孵ったというのに、記録的な猛暑で水温が上がり、気がついたら全滅していた。あの稚魚が成魚になっていたらと思うと、残念でならない。
 広い水槽にただ一匹、気ままに泳ぐアオメダカは、心なしか淋しそうだ。

 仕事の帰りに、突如、「メダカを買って帰ろう」と思い立つ。
 私は明日から一週間ほど夏休みなので、今日は仕事着を持ち帰ってきた。ハードカバーの本も入っているから、荷物が重い。しかし、休みの日に、わざわざ池袋まで出るのは面倒だ。「メダカくらい、どうってことないさ」とデパートに立ち寄った。
 今日は、ヒメダカ10匹を買った。特に根拠はないが、生命力や繁殖力が強いような気がしたからだ。
「お待たせいたしました」
 たっぷり、水の入った袋を見て、私は「やられた!」と思った。メダカだけなら軽いが、水とセットになることをすっかり忘れていた。



 ズッシリとしたお買い物袋を腕にかけると、取っ手がメリメリと食い込む感じがする。
「うーむ、重い……」
 しかし、これから、明日のパンも買わねばならない。一瞬、「やめようかな」と怠け心が胸をよぎったが、結局は食い意地が勝った。もし、食料でなかったら、怠け心が勝利を収めていたに違いない。

「ほーら、新しい家族ですよ~」
 水槽に、買ったばかりのメダカを移す。アオメダカの半分ほどの大きさしかない、チビっ子ヒメダカ軍団が、ドボドボとタイブしていく。狭いビニール袋から解放され、快適だったのだろう。ヒメダカたちは、てんで勝手に泳ぎ始めた。
 袋の始末をして、もう一度水槽に戻ると、アオメダカが見当たらない。目をこらすと、ヒメダカたちに取り囲まれて、見えないだけだった。大きなものに惹かれる習性があるのか、単に珍しいだけなのか、落ち着きを取り戻したヒメダカは、アオメダカのそばに集まっていく。
 今まで、気楽なひとり暮らしをしていたアオメダカは、少々居心地が悪いようだ。集団を振り切っては、単独になり、また追いつかれては囲まれる。一気に、10匹の子どもができたようなものかもしれない。
 いや、もう寿命は過ぎているから、アオメダカにとっては孫だろうか。
 おじいちゃんか、おばあちゃんかわからないが、ヒメダカから元気をもらって、長生きしてほしい。




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コメント (14)
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