これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

気弱なカラス

2011年08月07日 19時54分13秒 | エッセイ
 その日は、燃えるゴミの収集日だった。緑のネットの下には、たくさんのビニール袋が山積みにされ、回収を待っている。そこへ、1羽のカラスが舞い降りて、ウロウロと歩き回りながら、ゴミを狙い始めた。
 だが、なかなか、袋に近寄らない。どうしたのかと、不思議に思ったときだった。
「シャーッ!」
 鋭い声が聞こえてきた。なんと、性格の悪そうな猫が、ゴミ袋の間に座り込み、カラスを威嚇している。コイツがいるから、カラスはモタモタしていたのだ。
 猫対カラスの対決は、どちらに分があるのだろうか。
 全身から戦意をみなぎらせた猫は、憎たらしい顔をしており、かなり凶暴そうだ。カラスは、あえて猫を見ないようにして、ピョンピョンと跳ねるようにアスファルトを移動している。意識はゴミに集中しているくせに、無関心を装っているところが面白い。まるで、大声で管を巻く、たちの悪い酔っ払いから目をそらす人間のようだ。「邪魔だな」「あっちに行ってくれないかな」と思っているに違いない。
 そんな弱気な態度では、猫には勝てないだろう。勝負を見届けるまでもなく、私はその場を通り過ぎた。

 そして、昨日、近所の神社にお参りした。
 朝から気温が高かったが、境内には緑が多く、比較的涼しい。手水場までは、木のトンネルができていて、ほとんど日がささない。
 石畳のない地面の上に、大きな鳥が2羽、涼みに来ている。だが、鳩にしてはやけに大きい。近くまで行くと、茶色に緑の混じった羽が見えた。

 鴨!?

 アヒルのような平べったい口といい、長くてクネクネした首といい、鴨に間違いない。落ち葉の上を、水かきのついた足で歩き回り、「グエグエ」「グエグエ」と賑やかに会話している。
 私はキツネにつままれた気分だった。800メートル先には川があり、鴨も住んでいるけれど、こんなところまで飛んでくるのだろうか?
 思わず足を止め、2羽を眺めた。人馴れしているのか、鴨たちは警戒もせずに、幅広のくちばしで木の実をつまんでいる。「バリバリバリ」と威勢のいい音がした。すっかり常連の顔をして、かなり態度がでかい。
 私は首をかしげながら、本殿に向かった。何だかよくわからないが、ここも鴨のテリトリーらしい。結構飛べるのだな、と感心したときだ。目の端に、1羽のカラスが映った。
 ヤツは、遠巻きに鴨を見ては、キョロキョロ、そわそわと落ち着かない様子である。「何だよアイツら、こんなところまで来て」「今度こそ、ひとこと言ってやろうかな。でも、あっちは2羽だし」といった迷いが感じられる。

 もしや、あのときの弱気なカラスなのでは……。

 カラスはたくさんいるし、まったく見分けがつかない。
 だが、あの気弱さ、おとなしさは珍しいのではないか。
 今度見かけたら、加勢してやろうかな。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (8)
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