これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

AかBか

2008年08月05日 21時53分14秒 | エッセイ

 血液型の本がまたブームになっているようだ。
 大学1年のときも、血液型に凝っている男子がいた。
「笹木さんはO型だろ? 思ったことをズバスバ言うから間違いないよ」
 たしかに私はO型だが、そんなことを指摘されたのは初めてだった。
「血液型は占いじゃなくて統計学なんだ。面白いから、この本読んでみなよ」
 彼が差し出したのは、『血液型判断』という題名の本だった。中を開けてみると、なるほど、なかなか興味深い内容が書いてある。
『O型は竹を割ったような性格で、単刀直入な話し方をし、白黒はっきりつけたがる』
 ふ~む、まさにその通り。私の性質をよく表している。
 A型は『常識的』、B型は『個性的』、AB型は『自分を見せない』などと書いてあった。血液型に対応した知り合いの顔が次々と浮かんできて、「当たっている!」とクスクス一人笑いが止まらなかった。
「あの本、ホントに面白いね~。もうちょっと貸してくれる?」
 翌日、彼に会ったので、率直な感想を伝えた。
「だろ~? ゆっくり読んでいいよ!」
 彼は得意そうに答え、私を試すような表情で続けた。
「ところで、僕は何型だと思う?」
 私は彼のことをよく知らなかった。基礎的なデータが圧倒的に不足しているから、答えようがない。
「僕は、独創的なB型なんだ」
 私の周りにB型人間はいなかった。両親ともにO型だから、家族も全員O型だし、友達もO型が多いのだ。
「O型とB型って相性がいいんだよ。僕とつき合ってみない?」
 変わったアプローチの仕方である。ヘンなヤツだと思ったが、特に断る理由も見当たらなかったのでOKした。
 しかし、例の本によると、O型とB型の相性は彼の言い分と違っていた。
『O型はB型のおもりをする』
 おもり? どういうことだろう。
 最初は謎だったが、彼とつき合っていくうちに、その意味がわかりすぎるくらい理解できるようになった。
 なにしろ、B型の彼は自分のことしか考えない。喫茶店に入れば自分だけさっさと注文してしまうし、待ち合わせすればいつも遅れてくる。許容範囲であれば『マイペース』ですまされるけれども、1時間待たされたときにはさすがに堪忍袋の緒が切れた。
 結局、私がいつも我慢するんじゃない!!
 ようやく彼が登場したとき、私は持てる限りの汚い言葉で彼を罵った。これに懲りて、次からは多少の気配りがあるのではと期待したが、それほど落ちこまなかったようで、また大幅な遅刻を繰り返す。私はすっかり呆れてしまった。
 相性がいいと思うのはB型だけ?
 友人からはラブラブだと思われていたようだが、実はケンカばかりしていた。卒業を機にお別れしたのも当然の成り行きだろう。
 今の夫に好意を持ったのは、元彼と正反対のA型だったからかもしれない。
 車に乗るときには助手席のドアを開けてくれるし、常にレディファーストの気配りをしてくれる。待ち合わせには絶対遅れない上、デートコースは前もって考えてある。まさに至れり尽くせりの待遇である。
『A型はO型のおもりをする』
 たしか、元彼が貸してくれた本には、こんな一文も載っていたはずだ。
 何かと夫に世話を焼いてもらうと、この上なく心地よい。あの本は正しかったと確信した。
 しかし、A型の几帳面さに段々ついていけなくなってきた。時間厳守という面が最初は新鮮に映ったが、30分も前に到着されるとうっとうしい。きれい好きなのはよいが、1日3回シャンプーするのは行き過ぎだろう……。細かいことをあれこれ指摘されると、いつしかムカムカするようになった。
 反動だろうか。私は以前よりも大雑把な性格に変わったような気がする。
 それにともなって、血液型を間違えられることも増えてきた。
「笹木さんはB型でしょう!」
 自信たっぷりに言われると、かなりのショックを受ける。元彼の気質は、知らない間に私の中にも種を蒔いていたようだ。非常識なところはイヤだったけれども、実のところ、自由奔放なところは羨ましくもあった。
 A型の夫とO型の妻という組み合わせは、一番離婚率が低いそうだが、B型ナイズされた妻にも当てはまるのだろうか。



お気に召したら、クリックしてくださいませ♪

コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする