ダイヤモンド社の2020年お薦め書籍で紹介されていたので手に取ってみました。
内容は、東京大学教養課程での「現代経済理論」の講義録がベースになっているとのことです。
読んでみると、期待していたとおり(今さらながらですが)数多くの興味深い気づきがありました。
まずは、最初「01 経済学がおもしろい」の章から、“経済学特有の考え方の共通点”について。
松井教授によると、それは“「それぞれの駒がそれ自身の行動原理に従う」という見方”だと言います。
(p3より引用) よく、 経済学は「合理的な人間を扱う学問だ」などと表現されることがあるが、スミスはそうした合理性はとくには求めていない。ポイントは、個々のプレイヤーが個々の行動原理に従い、それは為政者の意図とは必ずしも同じではないという点である。
この指摘は私にとっては(恥ずかしながら)新鮮でした。
続いて、「02 市場の力、政府の役割」の章から、“最適状態に導く市場”についての小川教授の解説です。
(p27より引用) 私たちはなんとなく、個人が好き勝手に行動すると社会全体が変な方向に行ってしまうと考えがちだが、経済学の教えは違う。すべての個人が自分の利益を追求して行動すると、結果的に社会全体が望ましい状態に落ち着くというのである。このことを、 経済学者は厳密な数学を用いて「厚生経済学の基本定理」という形で証明した。
とはいえ、“市場の失敗”についても自らの研究分野の紹介と併せてこう紹介しています。
(p29より引用) 市場だけでは解決できない問題が存在するとき、政府が市場に介入し、より望ましい社会への舵取りをする必要性が生じる。公共経済学とは、市場における自由な取引を行う経済社会を前提にしつつ、そのもとで発生する市場の失敗と不平等にかかわる問題に対して、政府、自治体、公企業といった公共部門がどのような役割を果たせるのかを研究課題とする分野である。
さらにもうひとつ、「08 理論と現実に根ざした応用ミクロ分析」の章から、“産業組織論の適用条件”についての大橋教授の見解です。
(p161より引用) ある政策に関して有意義な議論をするためには、(1)制度理解、(2)理論に対する理解、(3)実証分析に基づく定量的な知見3つのすべてが必要となる。
特に、3番目の「定量化」は議論に決着をつける重要な要素となります。
「開発経済学」等経済学の多くの分野においても当てはまることですが、“政策の適否”を判断するための「定量化(見える化)」は不可欠です。“RTC革命”という言葉があるそうですが、RTC(ランダム化比較試験:Randomized Controlled Trial)に代表されるフィールド実験手法が取り入れられた結果、経済学は、その政策提言の信頼性を増すことができたようです。
さて、本書を読み通してですが、「05 実証分析を支える理論」の章には久しぶりに参りましたね。
量経済学入門として簡単?な確率論や統計学の説明があったのですが、その数式が全く理解できませんでした。あとと「12 デリバティブ価格の計算」の章も同様です。
もちろん、私の知力が圧倒的に足りなかったのが要因なので情けない限りではありますが、ここまで???だと・・・、ダメですね、本に失礼です。
なかなか面白いプロットで、映画らしい映画ですね。
主役の夫婦の老年期との若い頃のキャラクタ(俳優)のギャップが少々気になりましたが、老妻役のグレン・クローズは主人公の複雑な心情をとてもうまく演じていたと思います。
ストーリーとしては、ラストが “尻切れトンボ” のようで今ひとつでしたが、そこに至るまでの流れは適度なサスペンス感もあり、よくできていました。
こういったテイストの作品は私の好みです。
SNSで紹介されていて興味を持ちました。
はるか昔の高校時代は“文系の数学好き”だったので、この手の「専門書ではない数学本」にはつい手が出てしまいます。
ですが、実際の内容は全く予想していたものとは違っていました。ある種のロジカル・シンキングの入門書ですね。
著者は「数学的思考」を「数学をするときに頭の中でする行為」と定義しています。著者が挙げる数学的思考の要素は5つ。「定義」「分解」「比較」「構造化」「モデル化」です。
そうやって著者が伝えたいことを分解してしまうと、個々のロジカル・シンキングの要素という点では、特に“目新しい”気づきはありませんでした。
ただ、それらを「数学的思考」というコンセプトでまとめ上げた着想には“オリジナリティ”が感じられます。なかなか面白いチャレンジですね。
あと、本書を読み通しての感想ですが、本書で著者から投げかけられる「演習問題」や「自習問題」、これには(いい意味で)少々参りました。
何に参ったかというと「私の頭のかたさ」です。
考えようとすると、何とか答えを“絞り出そう”としてしまうんですね。“ぽっとアイデアが浮かぶ” とか “ふわふわと発想が湧き出る” とか・・・、そういった軽快な頭の動かし方が、私には全くできないことに改めて唖然としました。
「自分の頭(思考回路)の劣化」の酷さに気づけたのが、本書を読んだ“最大の成果”です。
強いていえば吉行和子さん、
私は、このシリーズ(といっても2作だけのようですが、)
いかにも “ありがちなタイトル” の本ですね。
「たぶんこんなことが書いてあるんだろうなぁ」と予想しながら手に取ってみた本です。
「はじめに」のパートで、著者は、本書を著すに至った問題意識をこう記しています。
(p4より引用) 多くの定年対策本やセミナーで語られていることは、あまり正しくないことが多いのです。その理由は、実際に「定年」を経験したことのない人や、定年の経験はあってもかなり昔のことだったりする人が語っているからです。
さらに悪いことに、それらの言説は、どちらかと言えば「不安を煽る」タイプのものが多いということです。
ところが私自身の体験から言えば、定年は、迎えるまでは不安は大きいものの、実際に経験してみると、それほど心配する必要はないことがよくわかります。むしろ、そうした不安に煽られて、間違った行動を起こす方がよほど危険なことだと思います。
こう語る著者の自らの経験を踏まえた数々のアドバイスの中から、なるほどと思えるものをいくつか書き留めておきましょう。
まずは、「第3章 夫婦で旅行なんて行かなくてもいい」の章では。
(p115より引用) 大事なことは、自分、あるいは自分たちにとって、何が一番快適なのかを考えることです。「夫婦で共通の趣味を持つ」ということが大事なのではなく、楽しい生活を送ることが目的なのですから、そのためにはどうするのが一番いいかを考えればいいのです。
定年対策本や定年対策セミナーの講師等が言うような、ステレオタイプで表面的なことに惑わされることのないよう、気を付けましょう。
そう、「本質的な目的」の共有は不可欠ですが、そのための「手段」はそれぞれの考えを尊重すべきです。
そして、「趣味がなくても一向に平気!」の章から、定年前後での“真逆の生活パターン”のススメ。
(p184より引用) 定年後は、このように現役時代とは発想や生活スタイルを変え、「時間でお金を買う」(=時間を消費することでお金の無駄な支出を無くす) ことも必要です。そんな気付きを見つけることで、新しい楽しみを得られるのではないかと思います。
お金を出してサービスを買うでのではなく、時間をかけて自分で調べてあれこれ工夫をしてみる、これも楽しみのひとつになるかもしれませんね。
もうひとつ「時間」に関わるアドバイス。
(p200より引用) 私は、定年後に大切なのは「効率」ではなくて「効果」だと思います。効率的でなくても一向にかまわないので、より心の満足を得られる効果を求めていくべきなのです。
仕事ではないのですから、心の楽しみを得るのに“コストパフォーマンス”を追求するのは、いかにも無粋ですね。
さて、本書を読み終えての感想です。
私の今は、まさにこの本の“ど真ん中のターゲット層”になります。その立場で言えば、著者の説くところは、肌感覚として無理なくスッとはいってきましたね。
「・・・ねばならない」という思考のスタートは全否定する、そのかわり「自身の責任でしっかりと自立する」ということ。
ただ、60歳過ぎて、それを改めて自覚し直すというのも、いかにも情けないですね、もちろん、私のことですが・・・。
強いていえば、
このところこういったジャンルの本はあまり読まないのですが、ちょっと前に評判になった小説なので、手に取ってみました。
いまだにかなり人気のある本のようで、図書館で予約してから貸し出しまで約10か月かかりました。
ミステリー小説なので、ストーリーに関してはコメントは控えます。
読み終えた感想ですが、読み始めた当初は、期待していたほど「骨太」という感じではありませんでした。登場人物、特に警察関係のプロットが“ステレオタイプ”にとどまっていて、惹き込まれるようなキャラクタが見当たりません。
特に、物語の前半部では、主人公格の若手刑事とその後輩刑事があまりにも素人過ぎて、事件を追う切迫した緊張感が伝わって来なかったですね。
ただ、最後の最後になると、急転直下、スピーディな描写で正に映画を観ているような臨場感。ページを繰る手も進みました。
帯書きにあるような「犯罪ミステリの最高峰」か、と問われればYesとは言い難いところですが、トータルの出来としては確かにかなりの水準には達していると思います。
北海道(礼文島)が舞台になっているのも、一度訪れたことのある私にとっては大きなプラス要素です。この内容なら、映画化の話があってもおかしくはないですね。