いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。
私たちの年代の中には、「山川世界史」というと高校時代を思い出して、ピッとビットが立つ人が一定数いるだろうと思います。私もそのうちの一人です。
以前、似たようなコンセプトの本で「もういちど読む山川日本史」は読んだことがあります。本書は「世界史」。まずは「アジア編」から早速読んでみました。
個々の史実の説明については置いておくとして、「歴史の捉え方」の面で参考になったところをひとつ書き留めておきます。
東洋史学者内藤湖南が唱えた「唐宋変革説」について概説したコラムの一節。
(p137より引用) 内藤の唐宋変革説は、ヨーロッパの歴史発展をモデルとして、それとの比較で中国をどのように位置づけるかという視点からの議論であり、そこには、世界の諸地域は同じような発展過程をたどるもの、という暗黙の前提があるといえるでしょう。歴史には一定の定まった方向性があるというこのような考え方に関しては、現代の歴史学ではむしろ懐疑的な意見が強くみられます。
あと、エピソードとして私の興味を惹いたものも紹介しておきましょう。
中国「明」の建国者朱元璋にまつわる説明です。
(p162より引用) 貧農から身を起こした朱元璋の統治は、富豪や汚職官吏に対する厳しい態度を特徴としていました。 長江デルタの富豪層を貧困地帯に移住させて開墾事業に従事させたり、大地主の土地を没収したり、汚職官吏を極刑に処する、といった政策がそのよい例です。
低い身分からの権力を得た場合、その権力をもって自らも“特別の人物”として独裁者的振る舞いをするケースが多い中で、この朱元璋の政治姿勢は結構珍しいと思いませんか?
さて、本書を読み通しての感想です。
やはり “山川の世界史” ですね。古代から現代までの「時間軸」を基本にして、「地域別」に、「政治・経済・文化」といったジャンルごとに人名・地名・エピソード名などを並べていくという“形式”は不変です。
とかく“無味乾燥”と揶揄され、私も同様の印象を持ちますが、とはいえ、こういった構成の書籍の存在も意味がある場面はあると思います。
本書のような“ベタっと”歴史の構成要素のパーツを並べたものを眺めながら、興味を惹いた血肉の通った人々の営みの跡を辿る書物を探し出したり、気になる史実の位置づけをあれこれ考えたりするのでしょう。