この種の多くの本で共通して説かれていて、やはり本書でも指摘されている点をいくつかご紹介します。
まずは、「失敗」について。
本書では、「敗者はそれを失敗だと言い、勝者はそれを学習だと言う」という項で、何人かのインタビューをもとに「失敗の効用」に触れています。
たとえば、グラミー賞受賞者クインシー・ジョーンズ氏の台詞です。
(p209より引用) 「困ったもんだ。もちろん、いまさらという話だ。自分のおかしたどんな失敗からでも何かを学びとれるはずだ。でも、君が最後に、その忠告を実際の行動に移したのはいつのことだ」
この言葉は、「失敗が学習であること」を当然の前提として、実際それを「実行」したかを鋭く突いたものです。
もうひとり、アメリカ・インターネット界のオピニオンリーダー、エスター・ダイソン女史の言葉です。
(p211より引用) 「取り込む価値のあることならどんなことでも、それによって人は試行錯誤の連鎖の中に巻き込まれてしまうものだ。だからもがきながらさまざまなことを学ぼう。ミスをおかすときは、経験したことのないミスをすることを心がけようではないか」
本書で紹介されている人々は、失敗したときの再起動にも前向きの姿勢を示します。
その際にもやはり大切なのは「意義」を意識することです。
(p200より引用) ビジョナリーな人が凡人と違うのは、後ろ向きの感情から建設的な行動へとすばやく方向を変える思考スタイルを確立しているからだ。つまり、自分の再起をどのように考えるかではなく、最終的に何をすべきかを決断しようとする、そんな思考スタイルのことだ。
「失敗の意義」に加えて、最近の本でよく登場するのが、「セレンディピティ(思いがけない幸運)」という言葉です。
ちなみに、この単語は、1754年、「セレンディップ(Serendip)の三人の王子」という物語に出てくる逸話をもとにイギリスの作家ウォルポール(イギリス首相R.ウォルポールの息子)が作り出した「造語」だそうです。
「セレンディピティ」については、このBlogでも芳沢光雄氏の「数学的思考法」や池谷裕二氏の「進化しすぎた脳」で紹介しました。
本書でも、やはり同じような趣旨のフレーズがありました。
(p282より引用) 思いがけない幸運というものは、次のような人のところにやってくる。つまり、自分に与えられた課題に打ち込みながら、同時に、自分の目標にとって本当に大切なことを達成する針路を維持しているかどうかを判断するための、現実的な検証に踏み出す勇気がある、そんな人だ。・・・
自分の価値観に生き、神経を鋭敏にすることによって、彼らは、日常の生活、仕事の場面で経験する、避けられない、予見できない、しかも困難な出来事の絶え間なく続く流れを、幸運のほうへと転換できるのだ。
偶然は必然だということです。
今やるべきことに一生懸命に取り組むこと。やはり、それが成功への「王道」のようです。
(p188より引用) ある仕事をこなす優秀な存在になれば、幸運の扉は目の前で開いてくれる。人はあなたと一緒に働きたいと思う。だから彼らがあなたのためにチャンスを用意してくれる。あなたのほうから彼らを探す必要はない。というのも、たいていは彼らのほうからあなたを見つけにやってくるから
ゴードン&ベティ・ムーア財団のエド・ペンフォートの言です。
ビジョナリー・ピープル 価格:¥ 1,995(税込) 発売日:2007-04-07 |