OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

僕の昭和歌謡曲史 (泉 麻人)

2010-08-28 18:35:15 | 本と雑誌

Misora_hibari  著者の泉麻人氏は、1956年生まれ、私より3歳年上になりますが、ほぼ同世代。本書に取り上げられている楽曲や歌手のかなりのところは私の記憶にもあります。

 小学生のころは「ロッテ歌のアルバム」が流行歌の入り口でしたし、当時のアイドルの登竜門だったスカウト番組「スター誕生!」も結構見ていました。中学生のころは、「平凡」「明星」の付録の歌本が放課後のバイブルでした。グループサウンズからフォーク、ニューミュージック・・・。初めて買ったレコード(LP版)は吉田拓郎でしたね。フォークといえば「拓郎・陽水・かぐや姫」の世代ですから。その後、高校時代になると、いきなりキャンディーズに傾倒し、1978年4月4日の後楽園球場での解散コンサートでは一塁側スタンドから紙テープを投げていました。

 と、こういった時代を共有した方であれば、本書を書くにあたっての泉氏の選曲やその曲の背景・思い出話等々には、少なからず共感されるのではないでしょうか。「三丁目の夕日」に代表される「昭和懐古ブーム」にシンクロする世代にはぴったりでしょう。

 
(p313より引用) ルビーの指環/寺尾聰 ♪「指輪」ではなく「指環」と書く。・・・この曲が実感としての「流行歌」の最後-という感じがする。

 
 もちろん、中には、泉氏ならではの「さすがに、ここまでは知らないだろう」といったマニアチックな歌手や曲も登場します。(ただ、それらのかなりの部分も、うっすらと思い出すことができます・・・)たとえば、

 
(p248より引用) まちぶせ/三木聖子 ♪夕暮れの街角のぞいた喫茶店~大ヒットした石川ひとみヴァージョンよりも、オリジナルのこちらの方が思い入れは強い。・・・

 
 さて、本書、「昭和歌謡年鑑」といった体裁ですが、実体的には、「昭和の歌謡曲」をモチーフにした泉麻人氏の「私小説」ならぬ「私エッセイ」という趣きの内容です。

 誰しも「流行歌」にまつわる思い出話のひとつやふたつはあるでしょう。
 私の場合も昔を思い出しつつ列挙してみると、こんな曲が並びます。

 レット・イット・ビー(ビートルズ) ・冬の散歩道(サイモン&ガーファンクル) ・ジョリーン(オリビア・ニュートン・ジョン) ・モジリアニの少女(あべ静江) ・愛の光(アリス) ・恋の風車(チェリッシュ) ・哀愁のシンフォニー(キャンディーズ) ・ダンデライオン(松任谷由実) ・赤いスイートピー(松田聖子) ・いとしのエリー(サザンオールスターズ)・・・。

 ただ、ここではそれぞれのエピソードは書かないでおきましょう。
 
 

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1998年~1999年 (戦略論 1994-1999(ハーバード・ビジネス・レビュー))

2010-08-26 21:47:06 | 本と雑誌

 「ハーバード・ビジネス・レビュー」からの「戦略」に関する論文のピックアップ。後半、1998年~1999年のものから、私の興味を惹いたくだりを覚えとして書き記しておきます。

 まずは第7章、M.グールド氏らの1998年の論文「シナジー幻想の罠」。この論文は、シナジー追求の流れに対して一歩立ち止まってみる冷静な視点を提起しています。

 
(p287より引用) 我々は「シナジーに懐疑的すぎる」と非難されることもある。・・・そのとおりだ。我々は、経営者が介入する場合、もっと慎重に機会を選択すべきだと考えている。あまりに多くの経営者が簡単にシナジーを実現できると考え、コラボレーションや共同作業を何の疑いもなく理想的な状態だと思い込んでいるからだ。

 
 そして、経営者がこのような考え方に陥る原因として、著者たちは以下のようなバイアスの存在を挙げています。

 
(p262より引用) 経営陣はシナジーの実現こそみずからの責務だと信じているため、四つの偏見に陥りやすい。第一は「シナジー・バイアス」でシナジーの効果を過大評価し、それにかかるコストを過小評価する傾向である。第二は「ペアレンティング・バイアス」で、自分が事業ユニットを協力するようおだてたり、反対にせっついたりしてやらないと、シナジーを実現できないという思い込みである。これに付随してもう一つ現れるのが第三の「スキル・バイアス」で、シナジーの実現に必要なノウハウはすべて社内調達できるという思い込みである。最後は「楽観バイアス」で、シナジーのもたらす潜在利益にばかり目がいき、機会コストなどのマイナス面を看過する傾向である。

 
 冷静に試算した際のメリットが小さいのであれば、シナジー追求には慎重になるべきだというアドバイスです。この指摘は私自身にも大きな反省を促すものですね。

 さて、最終の第8章は、D.サル教授の 1999年の論文「なぜ成功企業ほど低迷していくのか」。「成功体験の陥穽」をテーマにした論文です。

 
(p303より引用) リーディング・カンパニーにその成功の秘訣を尋ねると、口を揃えて、「他社と違う斬新な手法、たとえば戦略フレームワークや事業プロセス、リレーションシップ、価値観などを独自に組み合わせた結果だ」と主張している。・・・
 そのうち、この成功システムは硬直化し始める。・・・そして、ひとたび市場環境が変わると、ほかならぬ「成功のセオリー」が、皮肉なことに、その企業の首を絞めることになる。

 
 経営判断の拠り所だった「戦略フレームワーク」は「判断を曇らせる色眼鏡」に、効率化された「業務プロセス」は「マンネリズム」に、従業員・顧客・サプライヤとの良好な「リレーションシップ」は「しがらみ」に、事業ベクトルを合わせるための「価値観」は「教条主義」に一転してしまうのです。

 こういった成功体験の問題点の指摘も簡明で分りやすいのですが、その陥穽に陥らないようにする対策も現実的で、むしろそちらの方が新たな気づきになりました。

 
(p316より引用) もっとも、その愚かさから目が覚めても、早計に行動を起こしてはいけない。・・・何もかもいっきに変えてしまうと、かえって弊害が大きいと言うのだ。・・・ショック療法は、一歩誤れば致命的な副作用を生みかねない。

 
(p319より引用) それよりも、伝統と資産を大切にするほうが賢明である。改革の処方箋として、旧来の戦略のフレームワークや業務プロセス、リレーションシップ、価値観などを問い直すような号令をかけつつも、過去の素晴らしい遺産はそのまま活用すべきなのだ。

 
 サル教授は、「最大の敵は無為無策」という先入観は捨て去るべきだと説いています。

 
(p315より引用) やみくもに行動を起こしても、問題を解決できるわけではない。むしろ、むやみに動くと、かえって泥沼にはまることが多い。「どうしたものか」と浮き足立つのではなく、「何が問題だろうか」と冷静に分析することが大切だ。そうすれば、判断を狂わせている根源が見えてくる。

 
 まさに基本的動作です。
 
 

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1995年~1996年 (戦略論 1994-1999(ハーバード・ビジネス・レビュー))

2010-08-24 22:50:12 | 本と雑誌

 「ハーバード・ビジネス・レビュー」からの「戦略」に関する論文のピックアップ。そのうちの中期、1995年~1996年のものから、私の興味を惹いたくだりを覚えとして書き記しておきます。

 まずは、第5章、ブランデンバーガー教授らの1995年の論文「コーペティション戦略」。この論文では、Coopetition(協調しながら競争する)という興味深いコンセプトが提示されていました。勝つか負けるかだけでなく、双方が勝つ状況を模索する考え方です。

 
(p152より引用) 双方が勝つ戦略を探すことには、いくつかの利点が存在する。第一に、この戦略はそれほど探求されてきていないので、新しい種類の戦略を見つけることのできる可能性が大きいということである。第二に、この戦略は他者をその領域から排除しようとするものではないので、他者の抵抗が少なく、用いやすいということである。第三に、双方が勝つための行動は相手の復讐を招くものではないので、新しいゲームはより持続可能であるということである。最後に、「双方が勝つための行動」の模倣は害となるのではなく、利益になるということである。

 
 ちょっと前からの言い方では「Win-Win」の関係を築くアプローチですが、これをゲーム理論をベースに、より意図的な戦略レベルで提言したものといえます。

 次にご紹介するのは、第6章、M.ポーター教授による1996年の論文「戦略の本質」です。ポーター教授は、この論文で、日本が得意とする「オペレーションのカイゼン」は戦略にあらずと断じています。

 
(p208より引用) オペレーションの効力がこの10年ほどで飛躍的に向上したのち、多くの企業は収益逓減に直面している。継続的改善は、企業の経営陣の頭に刻み付けられた。一方でそのためのツールが、気づかぬうちに、企業を物真似と均質性の世界に引きずり込んだ。経営陣たちは少しずつ、オペレーション効率を戦略の代替としていった。その結果起こったことは、ゼロ・サム競争、価格の停滞や値下がり、コストへの圧力だった。コストに圧力がかかったことで、企業は長期を見据えた投資もできなくなっていった。

 
 戦略は「独自の活動」であって、他と差別化できるオリジナリティが必要だとの考えです。
 しかしながら「オペレーションの効率化」は不要と論じているのではありません。

 
(p247より引用) 経営者はオペレーション効率と戦略を、はっきり区別しなければならない。両者はともに不可欠だが、なすべきことは異なる。
 オペレーションについて実施すべきなのは、トレードオフが存在しないところではどこでも、継続的改善を進めることだ。これを実施しなければ、たとえよい戦略を持つ企業であっても脆弱さが生じる。・・・対照的に戦略では、独自のポジションを定義し、トレードオフから選択し、フィットを強めるのが正しい。

 
 ポーター教授は、「戦略の敵は、気を他にそらすことと妥協である」と主張しています。まさに「選択と集中」です。さらに言えば、ポーター教授がいう「選択」は「トレードオフの関係」からの選択を指しています。

 
(p246より引用) 戦略は「何をすべきか」とともに、同じくらい重要な「何をすべきでないか」を示す。実際、制限を設けるこはリーダーの役割の一つだ。・・・したがって戦略には、規律とコミュニケーションが求められる。戦略を明確にし、よく伝えることが重要だ。

 
 この指摘は普遍的に正しいものですね。どんな戦略をとるとしても、その実行の要諦です。
 
 

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1994年~1995年 (戦略論 1994-1999(ハーバード・ビジネス・レビュー))

2010-08-22 12:56:01 | 本と雑誌

 「ハーバード・ビジネス・レビュー」は、ハーバード・ビジネススクールの機関誌で、数多くの著名な論文を掲載してきました。本書は、それらの中から「戦略」に関する論文をピックアップして採録したものです。

 ここでは、それらの論文の前半、1994年~1995年のものから、私の興味を惹いたくだりを覚えとして書き記しておきます。

 まずは、第1章、H.ミンツバーグ教授の1994年の論文「戦略プランニングと戦略思考は異なる」より。

 
(p14より引用) 日常に存在する微細な事柄に無関心であってはならないのだ。そのようなことにみずから触れながら、そのなかから戦略的なメッセージを抽出できる人こそ戦略家たりえる。大きな絵も精緻な筆使いで描かれているものだ。

 
 「真実は細部に宿る」、と同時に「ビッグピクチャ」を描くこととのバランスの重要性も指摘しています。

 第2章、J.バウアー教授・C.クリステンセン教授らによる1995年の論文は、ベストセラー「イノベーションのジレンマ」に先立ち主要な論点を開陳しています。
 本論文がショッキングであった点は、従来当然のこととして優良企業が重視していた教義の、それに内在している陥穽を明らかにしたことです。それは、「顧客の声に耳を傾けることの限界」の指摘でした。

 
(p31より引用) 顧客の声に耳を傾け、彼らが要求する性能を備えた製品を提供したが、これら顧客が無視した技術によって、手痛いダメージを被ることになった。

 
 ここでのポイントは「顧客の声」の意味するところです。ここにいう「顧客」は「既存顧客」であり、そのニーズは「現在の延長線上のもの」だということです。そこから導き出されるひとつの教訓を、著者たちはこう記しています。

 
(p40より引用) 既存顧客のニーズには合致しない破壊的技術の将来性に注意することで、次の波に乗ることができるというものだ。

 
 この指摘は、ドラッカーが、「ノンカスタマー(非顧客=現在顧客でない顧客)」に目を向けよと説いている点と同根のものです。

 第4章、D.コリス教授・C.モンゴメリー教授らによる1995年の論文「リソース・ベースト・ビューの競争戦略」は、従来のポーター教授の競争優位の論に代表される「外部環境」重視の考え方と、プラハラッド教授らによるコア・コンピタンス論等の「企業内部」に競争優位を求める考え方とを結びつけるものだと説明されています。
 その際の留意点として1点、テイクノートです。

 
(p122より引用) 自社の重要資源を評価するに当たっては、外部の客観データに基づいて判断するよう、肝に銘じなければならない。しかし、コア・コンピタンスは直感的に判断されやすく、正しい答えに到達するうえで欠かせない綿密な調査や詳細な分析を怠る傾向が見られる。

 
 内部的視点のみで採用される安易な「コア・コンピタンス」論に対する重要な警鐘です。
 
 

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ダダ漏れ民主主義 メディア強者になる! (日垣 隆)

2010-08-20 22:20:43 | 本と雑誌

 日垣隆氏の本は、いままでも「知的ストレッチ入門」「個人的な愛国心」「秘密とウソと報道」「情報の「目利き」になる!」等、何冊か読んでいます。
 本書は、「週刊現代」の連載「なんだなんだこの空気は-メディア考現学」をもとにまとめられたものとのことです。

 既刊の著作でも開陳されている「日垣流」の考え方や行動スタイルが随所に顔を出します。
 たとえば、「新旧メディアの共存としての、大読書会」の章では。

 
(p149より引用) 私の持論の一つに、「極端さこそノウハウの母」という確信がある。極端なことをやりきることによって、多くの人が普遍的に摂取しうるノウハウやアイデアが浮き彫りになる。

 
 こういう方法は、私はまだとったことはありませんが、言わんとすることは分かるような気がします。極端に振ったときに突起のように引っかかってくる事柄が新たな気づきになり、そこにブレイクスルーするためのヒントが埋蔵されているという感じでしょうか。

 さて、本書、タイトルに「ダダ漏れ」とあるように、ごく最近のネット事情についても日垣氏の実体験を交えて語られています。
 最近はTwitterにも登場している日垣氏ですが、新し物系の情報端末やネットワークサービスには結構関心があって、いち早く触り使っているようです。

 情報発信がマスメディアに独占されていた時代は終わりを迎え、誰でも「0次情報」を発信できる環境があっという間に現出しました。もちろん、その幾多の情報の中には「歪んだ1次情報」も混じっています。が、それらをすべて排除することはできません。そういう類の情報も混じっているという事実を意識して付き合っていけばいいのです。

 
(p243より引用) 物欲から、ライブへ。
 憧れから、体験と、参加へ。
 この動きは、もう止まらない。

 広告費が抜いた抜かれた、という問題より、参加と、「新しい視聴の仕方」に注目するほうが、肝心なことだと私は確信している。

 
 私もTwitterに登録して半年以上になります。未だにTwitterの素晴らしさ?を腹の底から納得しているわけではありません。ただ、私も結構ミーハーなので、伊藤洋一さん・内田和成さん・三谷宏治さんらからRT(リツィート)されるとちょっと嬉しくなりますね。

 もちろん、日垣氏も(Twitterで)フォローしています。そこでの「つぶやき(発言)」ややりとりを眺めていると、Twitterは日垣氏にはピッタリのメディアツールであるように思いますね。短文で断言する歯切れのよさとか短時間でのコメントの応酬とか・・・。
 
 

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日本人へ リーダー篇 (塩野 七生)

2010-08-18 22:42:06 | 本と雑誌

Caesar  塩野七生さんの著作は、代表作の「ローマ人の物語」をはじめエッセイもいくつか読んでいます。
 本書は、「文藝春秋」巻頭随筆を採録して新書化したものとのことです。イタリア(ローマ)からの視点で、現代の日本の世情や各国の話題をとりあげた40章。塩野さん流の小気味よいコメントが満載です。

 たとえば、そのひとつ、「戦争の大儀について」と題する章での「日本の国際舞台での振る舞い」を語ったくだりです。

 
(p65より引用) 大儀などはないのだ。といって、新秩序をつくる力はもっていない。この現実を見極めれば、やれることは限られてくる。他の国が大儀と言おうが日本だけは心中でせせら笑い、それでいながら冷徹に国益を考え、その線で行動することだけである

 
 このあたりは、いかにも塩野さんらしい合理的・功利的でドライな考え方ですね。

 また、こんなアドバイスも。「事象との対面の仕方」についてです。

 
(p73より引用) 重要問題には、それ一事のみを考えているうちにかえって問題の核心から離れてしまうという性質もある。伸縮自在な距離を保つということは、手段の目的化という、専門家を自称する人々の犯しがちな誤りから、自由でいられるやり方の一つではなかろうか。

 
 こちらは、普遍的に首肯できる考え方だと思います。

 そのほか、「はた迷惑な大国の狭間で」とのタイトルの章では、例の「ローマ人の物語」において塩野さんが繰り返し指摘しているところが語られています。

 
(p164より引用) なぜローマ人だけが、あれほどの大を成すことができたのか。・・・それをひとことで言えば、「もてる能力の徹底した活用」である。言い換えれば、一つ一つの能力では同時代の他の民族に比べれば劣っていても、すべてを総合し駆使していく力では断じて優れていたのだった。・・・
 ローマ人が、持てる能力の徹底した活用とは、自分たちの力のみでなく、ライヴァルたちのもつ能力さえも活用しないかぎりは現実化できない、という一事を頭に置きつづけ、しかも実行しつづけたからであった。

 
 周辺諸国との数々の戦いの末に歴史に残る大帝国を築き上げたローマ人。彼等が採った賢策が「敗者同化政策」でした。これが、ローマ帝国主導の世界秩序たる「パクス・ロマーナ」を現出させた要諦です。

 さて、最後にご紹介するのは「問題の単純化という才能」という章での塩野さんの指摘です。

 
(p186より引用) 興隆・安定期と衰退期を分けるのは大同小異という人間の健全な智恵を、取りもどせるか取りもどせないかにかかっているのではないかと思っている。つまり、問題の本質は何か、に関心をもどすことなのだ。言い換えれば、問題の単純化である。

 
 一見本質を鋭く突いたようなコメントです。「問題の本質は何か、に関心をもどす」というところまではその通りでしょう。しかし、それはイコール「問題の単純化」ではないと思います。
 塩野さんは「重要な問題ほど、単純化して、有権者一人一人が常識に基づいて判断を下す必要がある。」と書かれています。もちろん、本質的な争点の明確化は重要ですし、正しい判断を下すサポートとしては非常に効果的です。
 とは言いながら、「問題の単純化」は、時として、本質を隠した形で白黒を迫る場合もあります。「変革か現状維持か」、こう問われると多くの人は「変革」を選ぶでしょう。しかしながら、その変革が正しいものかどうかは内容次第でしょう。当然のことです。
 内容を示さない安易な「単純化」は、ポピュリズムを利用した罠にもなりうると思うのです。
 
 

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ひとり旅 (吉村 昭)

2010-08-15 10:26:59 | 本と雑誌

 吉村昭氏の著作は、小説・エッセイ等取り混ぜて結構読んでいます。
 誠に淋しいことに吉村氏は2006年7月にお亡くなりになりましたが、本書は、氏の未発表の遺稿をまとめたエッセイ集です。

 吉村氏の歴史記録小説とでもいうべき数々の著作は、可能な限り現地・現物に当たる、関係者の生の声を聞くという徹底した取材活動が生み出したものです。収録されているエッセイの中に、こんなくだりがあります。

 
(p159より引用) 最初は歴史小説を書くのに専門家は怖かったですね、そういう人たちは何でも知っていると思って。ところが有難いことにその方たちは歩かない、私は歩く。ですから新しいものが摑めるのです。

 
 こういった現場取材の過程では、従前定説とされていたことや公文書にて正当化されていたことが、ものの見事に覆される場面も数多くありました。
 真に起こった事実に対し心底敬意を払い、その事実に徹底的に肉薄しようとする真摯で一徹な吉村氏の姿勢には凄まじいものがあります。常に前進する行動力には圧倒されますし、その気概の強さには鬼神の宿りすら感じます。

 このエッセイ集には、氏の追究が明らかにした具体的なシーンや、その活動のなかで直面した強烈なエピソードがいくつも紹介されています。
 たとえば、「撃沈 雪の海漂う兵たち」の中のくだりです。

 
(p24より引用) 漁師は、私に険しい眼をむけると、
「その話なら、しない。憲兵に口どめされているから・・・」
と、言った。
 終戦後すでに25年もたっているのに、漁師は依然として戦時に身を置いている。

 
 ここで漁師から明かされる事実は、戦争の暗部、すなわち起こった事実そのもののみならず、それを隠蔽しようとする邪心をもった権力の理不尽さをも指弾したもので、特に私の印象に残りました。

 さて、本書に収録されているエッセイは重厚・軽妙様々でどの作品も興味深いものですが、その最後の章は、「荒野を吹きすさぶ風の音」というタイトルで、城山三郎氏との交流を綴った内容でした。両氏は、ともに昭和二年生まれとのこと。まさに同時代を生きた者どおし、心の通い合ったお付き合いがあったようです。まさに志を同じくするものだったのでしょう。

 また、巻末には、「なつかしの名人上手たち」とのタイトルで、小沢昭一氏との対談が載せられています。対話の名手である小沢氏が相手ということもあり、吉村氏の飾らない人柄を垣間見ることができる面白い趣向です。ちょっと前に、小沢氏のエッセイ「道楽三昧」を読んだところだったので、こちらも楽しませていただきました。
 
 

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実践するドラッカー【行動編】 (佐藤 等)

2010-08-13 22:08:47 | 本と雑誌

 「思考編」に続いて読んでみました。
 こちらは「成果をあげるための具体的な方法」について記されています。

 もちろんドラッカーが語る示唆に富むアドバイスが列挙されているのですが、「行動」に焦点を当てている分、「思考編」に比べて解説が若干表層的なような印象を持ちました。
 とはいえ、引用されているドラッカー自身の言葉は、それぞれ、読者に対して改めて考え直すことを求めるものでした。
 その中からひとつ、「意思決定」について語ったくだりです。

 
(p54より引用) 意思決定についての文献のほとんどが、まず事実を探せという。だが、成果をあげる者は事実からスタートできないことを知っている。誰もが自分の意見からスタートする。しかし、意見は未検証の仮説にすぎず、したがって現実に検証されなければならない。『経営者の条件』

 
 これは、私としてもまだまだ習慣化されていない考え方です。やはり、何か「判断」や「決定」をしようとするときには、まずは「事実」を押さえてからというやり方に固執してしまいます。
 ドラッカーは、「事実」だと思われるものの多くは「仮説」であると指摘しています。すなわち、「意思決定」は、結局のところ、正しい問いをスタートにした「仮説→検証」プロセスによるのだというのです。このあたり、なかなか身につかないですね。

 さて、本書も、「思考編」と同様に、実際にドラッカーの思想を行動に移すための整理ツールを用意しています。15の「実践シート」です。それらを覚えに書き留めておきます。
 

  • (p41より引用) 実践シート① あなたにとって、緊急ではないが重要な活動や行動は何ですか。この1週間、そのためにどれだけ時間を確保しましたか(確保した時間が十分でなかった場合は、その理由も書いてください)。
  • (p43より引用) 実践シート② あなたがやめること、もしくは人に任せることが望ましいと思う活動や行動を挙げてください。
  • (p81より引用) 実践シート③ あなたがいま、解決したい問題や課題を挙げてください。
  • (p83より引用) 実践シート④ 仕事を通じて叶えたい目標や夢を挙げてください。
  • (p113より引用) 実践シート⑤ 自分の強みや得意分野を軸とした、5年後の理想の姿を書いてください。
  • (p115より引用) 実践シート⑥ 組織の成果とあなた自身の貢献を確認し、5年後の理想とする貢献の範囲やレベルを具体的に書いてください。
  • (p117より引用) 実践シート⑦ 実践シート⑤⑥の回答を前提に、今年・今月・今週、集中して取り組む目標を一つ挙げてください。
  • (p137より引用) 実践シート⑧ いま解決したい問題や課題について、どうすれば解決できるか、具体的な行動を挙げてください。
  • (p139より引用) 実践シート⑨ どのようにすれば夢や目標が叶えられますか。具体的な行動を挙げてください。
  • (p141より引用) 実践シート⑩ 計画を定期的に振り返り、成果に近づくための工夫を挙げてください。
  • (p171より引用) 実践シート⑪ 師と仰ぐ人、影響を受けた人は誰ですか。それらの人から学んだことは、いまの仕事にどのように生きていますか。
  • (p173より引用) 実践シート⑫ あなたが教えることのできる知識や技能、経験は何ですか。どのようにすれば、教える機会をつくることができますか。
  • (p175より引用) 実践シート⑬ 継続して学習していること、今後も学習する必要があることを具体的に書いてください。
  • (p177より引用) 実践シート⑭ 仕事以外でどのような目標をもっていますか。具体的に行っていることがあれば、それを挙げてください。
  • (p179より引用) 実践シート⑮ あなたは何によって憶えられたいですか。過去はどうでしたか。いま、これからはどうですか。

 
 本書の最後の項は、ドラッカーの究極の問い「自分は何によって憶えられたいか」の答えについて記されています。

 
(p166より引用) 一つは、人は、何によって人に知られたいかを自問しなければならないということである。二つめは、その問いに対する答えは、歳をとるにつれて変わっていかなければならないということである。・・・三つめは、本当に知られるに価することは、人を素晴らしい人に変えることであるということである。「プロフェッショナルの条件」

 
 ドラッカーの組織論おける重要なコンセプトは「貢献」です。人は何に対して貢献するのか。それは「組織」に対してであり、「社会」に対してであり、より根本的には「人」に対してなのだと思います。ドラッカーにおける「顧客」は「人」であり、ドラッカーの「人に対する貢献」が「その人を変える」ということだったのでしょう。
 「人を変える」のは無理ですが、せめて「人が変わる手助け」ぐらいはできるようになりたいと思います。
 
 

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チェーン・スモーキング (沢木 耕太郎)

2010-08-11 22:47:14 | 本と雑誌

 沢木耕太郎氏のエッセイ集です。多彩な切り口の「今」を舞台にした15編の作品が収録されています。

 今といっても、本書が書かれたのは20年ほど前ですから、描かれている世情も「現在」とはかなり異なります。私と沢木氏も一回りの年齢差(私の方が年下)がありますから、完全に同時代を共有していたというわけではありません。とはいえ、描かれている風景や空気、その当時の感性等については、ごく自然に共感できるところがありました。

 その中から、1・2、印象に残ったフレーズをご紹介します。

 一つ目は、「タクシー・ドライバー 東京篇」とのタイトルのエッセイから。

 
(p76より引用) 何かが起きそうで起こらない。やはりそれが都会である証拠なのかもしれない。都会を走るタクシーでの出来事である証拠なのかもしれない。

 
 私も以前は仕事の関係で遅くに帰宅することがかなりあって、そのときには深夜タクシーを利用していました。都心環状線にあふれるタクシーの連なりや、都心から郊外へ向かうタクシーの流れを見ていると、沢木氏の感覚が分かるような気がします。

 それからもうひとつは「都会の公衆電話」をテーマにしたもの。「赤や緑や青や黄や」というタイトルがついたエッセイです。

 
(p172より引用) 都市の公衆電話には都会人の人生の断片が詰まっている。赤や緑や青や黄の公衆電話の前に立ち、コインも入れず、カードも差し込まないまま受話器に耳を当てると、そこにぎっしり詰まった人生の断片が逆流してきそうな気がする。俺が、私が、と声を上げながら・・・。

 
 今から2~30年前は、携帯電話がこれほど普及していませんでしたから、下宿生や独身者のコミュニケーションツールとして「公衆電話」は欠くことのできないものでした。テレホンカードもないころは、買い物のおつりの10円玉をためていましたね。その10円玉を握り締めて、下宿のそば川越街道脇の公衆電話に何度も通った記憶が甦ります。

 沢木氏の著作としては、以前「深夜特急」を読んだことがあります。日本からアジア経由でヨーロッパに向かう沢木氏の一人旅の経験を綴った「深夜特急」も印象に残った作品ですが、この「チェーン・スモーキング」もなかなかいいです。エッセイにありがちな作者の「ひとり語り」にとどまったものではなく、読者を意識したエンターテイメントとして仕上げようという沢木氏の気配りが感じられます。
 
 

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実践シート (実践するドラッカー【思考編】(佐藤等))

2010-08-08 14:01:21 | 本と雑誌

 監修者上田惇生氏によると、本書は、ドラッカー氏の著作のエッセンスをまとめた「プロフェッショナルの条件」を主たる底本としているとのこと。ドラッカー氏の思考のさわりに触れるための超シンプルなガイドブックといえます。

 とはいえ、本書を読んで改めて気づかされた点もありました。それらを2・3、記しておきます。

 まずは、組織における「コミュニケーション」について。

 
(p132より引用) 「組織、および上司である私は、あなたに対しどのような貢献の責任を期待すべきか」「あなたに期待すべきことは何か」「あなたの知識や能力を最もよく活用できる道は何か」を聞く。・・・」『経営者の条件』

 
 コミュニケーションの基本は「聞くこと」だという点は、多くの先人の指摘するところです。しかし、ドラッカー氏の「聞く対象・内容」はユニークです。

 
(p133より引用) 上司は部下に対し、つい、貢献すべきことを語ってしまいがちですが、それは間違いです。貢献とは、自らがもっている知識や能力、強みを使って行うものだからです。

 
 部下に対して「どんな貢献ができるのか」を聞くというのです。貢献するための行為は、外から捉えられるものではなく、部下自身の中にある、したがって、それを「問う」ことにより明らかにし、成果に結び付ける具体的行動に導いていくのだとの考え方です。

 二つ目は、成果をあげるための「資源の有効活用」の要諦について。

 
(p222より引用) 限りある資源を有効に使うポイントは、二つです。
 第一に、捨てること。有限な資源を注ぎ込める一点を探し、他を切り捨てる。集中とは、多くの可能性を捨てることでもあり、あえて他を選ばないという勇気が必要とされます。
 第二に、任せること。人に任せることを突き詰めていくと、最後は自分にしかできない仕事が残ります。そこを究めることで、卓越性が生れます。・・・人に任せる仕組みこそ、組織の真の意味だといえます。

 
 「集中とは他の可能性を捨てる勇気だ」との指摘は蓋し箴言ですね。また、「任せることにより自己の卓越性を磨く」との教えも心したいものです。

 そして、三つ目は、「優先順位の原則」

 
(p232より引用) 優先順位の決定には、いくつか重要な原則がある。すべて分析ではなく勇気に関わるものである。第一に、過去ではなく未来を選ぶ。第二に、問題ではなく機会に焦点を合わせる。第三に、横並びではなく独自性をもつ。第四に、無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ。『経営者の条件』

 
 「未来」「機会」「独自性」「変革」。選択すべき行動の基準としては、極めて明確で示唆に富むものです。

 さて、本書は、タイトルに「実践」とあるように、実際にドラッカーの思想を行動に移すための整理ツールを用意しています。20の「実践シート」です。

 最後に、それらを覚えとして書き留めておきます。

  • (p35より引用) 実践シート① 成果をあげるために、あなたが習慣化していることは何ですか。
  • (p37より引用) 実践シート② 仕事をするうえで、あなたが使っている主な知識は何ですか。
  • (p39より引用) 実践シート③ あなたがいまもっている知識を使って、新たに行いたいことは何ですか。
  • (p41より引用) 実践シート④ あなたは何のために働いていますか。
  • (p43より引用) 実践シート⑤ 仕事をするうえで、現在のあなたが「なすべきこと」は何ですか。
  • (p81より引用) 実践シート⑥ あなたの所属する組織のミッションは何ですか。そこであなたがなすべきことは何ですか。
  • (p83より引用) 実践シート⑦ あなたの卓越している点(分野)、あるいは、これから卓越性を追求しようとしている点(分野)挙げてみましょう。
  • (p85より引用) 実践シート⑧ あなたが考える内なる成長、人格や人の器を磨くための方法を挙げてください。
  • (p87より引用) 実践シート⑨ 過去1年を振り返り、「予期せぬ成功」を挙げてください。
  • (p89より引用) 実践シート⑩ いま、あなたは何によって憶えられたいですか。
  • (p145より引用) 実践シート⑪ あなたの組織が求められている、社会的役割は何ですか。
  • (p147より引用) 実践シート⑫ あなたは組織において、どのような貢献を期待されていますか。そのために必要なものは何ですか。
  • (p149より引用) 実践シート⑬ 貢献するために障害となっていることは何ですか。
  • (p207より引用) 実践シート⑭ あなたの得意分野や強みは何ですか。それらは仕事で成果をあげるうえでどのように役立っていますか。
  • (p209より引用) 実践シート⑮ あなたの不得意分野や弱みは何ですか。
  • (p211より引用) 実践シート⑯ あなたの得意な仕事の仕方(ワークスタイル)を挙げてください。
  • (p213より引用) 実践シート⑰ あなたの価値観を挙げてください。それは組織の価値観と合っていますか。
  • (p241より引用) 実践シート⑱ 惰性や付き合いで続けている重要度の低い活動、生産性が低い活動は何ですか。
  • (p243より引用) 実践シート⑲ あなたが廃棄しようと思う活動は何ですか。
  • (p245より引用) 実践シート⑳ 優先順位のリストを作成し、いま、集中すべき分野に丸をつけてください。

 
 こうやってチェックリストとして書き並べてしまうと、ドラッカー氏の思想の重厚さとは異質なものような気もしてきます・・・。
 
 

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成長のために (実践するドラッカー【思考編】(佐藤等))

2010-08-06 22:54:07 | 本と雑誌

 本書は、「知識労働者」として成果をあげるための「セルフマネジメント」にフォーカスした「ドラッカーガイドブック」という体裁です。

 第2章では、「成長のため」の具体的な方法をいくつか紹介しています。

 そのひとつが「予期せぬ成功」への着目です。

 
(p68より引用) 自らの成長につながる最も効果的な方法は、自らの予期せぬ成功を見つけ、その予期せぬ成功を追求することである。・・・「非営利組織の経営」(p218)・・・
 「予期せぬ成功」は、機会の存在を明示しています。・・・
 そもそも成果は、機会と強みの両方がそろったときに生まれるものです。「予期せぬ成功」の裏に、自分が気づいていない強みが発揮されていたかどうか、確認してみてください。
 同じことが「予期せぬ失敗」についてもいえます。・・・
 そもそも「予期せぬ失敗」は、自分の強みをベースに成功を当て込んでいたからこそ発生するものです。どこに問題があったのか、徹底して分析しましょう。

 
  「予期せぬ『失敗』」の方は、「失敗」であるだけに通常でもその原因追求はなされるでしょう。ドラッカー氏の慧眼は、『成功』についてもその原因を追求せよと指摘しているところです。それは、潜在化していた「自分の強み」を顕在化させ、さらにそれを強化しようという前進的な姿勢の表れともいえます。

 こういったドラッカー氏の前向きの姿勢は、氏の思想の随所に現れています。
 たとえば、「貢献と自由」について語るくだりです。

 ドラッカー氏は、組織として成果をあげるための基本姿勢として「貢献」を重視します。貢献の形はいろいろ考えられます。まさにどういう形をとろうと「自由」です。ドラッカー氏はこの「自由」に関してこう語っています。

 
(p106より引用) 「自由とは解放ではない。責任である。楽しいどころか一人ひとりの人間にとって重い負担である。それは、自らの行為、および社会の行為について自ら意思決定を行うことである。そしてそれらの意思決定に責任を負うことである」(『産業人の未来』)

 
 自由とは「選択の自由」がある状態だというのです。自らが自らの意思で選択できる、何と前向きの姿勢でしょう。そして、その選択の結果には自らの責任が伴う、何と真摯な姿でしょう。
 私は、ドラッカー氏の卓越性はこの「真摯さ」あると考えています。

 
(p201より引用) ドラッカー教授は、「あなたの本の中で最高のものはどれですか」という質問をよく受けたそうですが、常に「次の作品です」と答えていたそうです。まさに完全を求め、95歳まで書き続けたのです。

 
 自分に厳しく、妥協せず、完全を求め続ける見事な姿勢です。
 
 

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実践 知識労働者 (実践するドラッカー【思考編】(佐藤等))

2010-08-02 22:17:08 | 本と雑誌

 ドラッカー氏のマネジメントの主体は「知識労働者」です。

 このドラッカー氏がいう「知識」とはどういうコンセプトなのか、本書からその点に触れられている箇所を1・2書き出してみます。いずれも氏の著作からの引用部分です。

 
(p4より引用) 知識は、本の中にはない。本の中にあるものは情報である。知識とはそれらの情報を仕事や成果に結びつける能力である。

(p11より引用) 知識とは、個人や組織が何らかの成果をもたらすような行動を可能にし、何かあるいは誰かを変えるものである。

 
 「知識」は「成果」をあげるために必要不可欠なものです。
 ドラッカー氏は「知識」を「成果」に結びつけるための具体的方法も示しています。

 
(p12より引用) ドラッカー教授は、知識を成果に結びつける行動を「成果をあげる能力」と呼び、『経営者の条件』で五つ挙げています。
①時間を管理すること
②貢献に焦点を合わせること
③強みを生かすこと
④重要なことに集中すること
⑤成果をあげる意思決定をすること

 
 知識労働者の行動の質は外からは見えにくいものです。結果で管理すると割り切ってしまえば簡単ですが、やはりプロセス管理の要素も必要でしょう。外に現出しない知識労働者のプロセスを管理しようとすると、知識労働者自身による自己管理/評価の比重が高まってきます。

 ドラッカー氏は、知識労働者のセルフマネジメントは「must-can-will」の関係性をチェックすることによりなされるべきだと考えています。
 まず、「must=なされるべきこと」に取組んでいるか、次に「can=できること」を実行しているか、そして最後が「will=やりたいこと」ができているかという優先順位を確認するのです。
 そして、こうも語ります。

 
(p27より引用) もし、「なされるべきこと」と、「できること」「やりたいこと」がまったく異なるのであれば、とるべき行動はただ一つ、その組織を去ることです。

 
 こういった「must-can-will」関係性に着眼したスキームは、自己責任における「セルフマネジメント」を実施していくうえでの重要なフレームワークであると同時に、「HRM(ヒューマンリソースマネジメント)」の観点からは、組織人の成長を促す方法論の具体的なヒントにもなります。すなわち、mustとcanとwillとを微妙にずらせることにより、当人の新たな能力を開発したり、組織の総合力を高めたりすることができるのです。
 
 

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