テレビ東京の番組「ガイアの夜明け」で放映された東日本大震災関係を中心とする16の話を採録したものです。
テーマは、タイトルどおり「復興」。未曾有の大震災の悲劇から力を振り絞って立ち上がろうとしている人々の不屈の姿勢が心に迫ります。
本書で紹介された数多くの貴重なエピソードの中からいくつか書き留めておきます。
震災直後、ライフラインは壊滅的で、被災された方々は被害の少なかった地方に身寄りをたずねて脱出しようとしました。しかしながら、その足もありません。
(p15より引用) 山交バス運行責任者の結城さんは、地震発生直後からほとんど不眠不休で、日本海側に出る臨時便の手配に奔走していた。・・・震災から二週間で、延べ四万人もの貴重な足となった。
結城さんは「採算は割れている。帰りはすべて空席だから」と言う。山交バスは、被災した人たちを安心できる所に届けるために、採算度外視で各方面への臨時バスを増発したのだ。
遠方へ逃れることができない被災者のみなさんは仮設住宅が頼りです。
その準備の迅速性に関しては、中央省庁と地元地方自治体との間で大きな差がありました。岩手県住田町では、地震発生わずか3日後には建設をスタートさせていました。
(p40より引用) 一日でも早く被災者を受け入れようと、多田町長は議会の決議を待たず、独断で着工に踏み切り、五月末までに九三戸を建設する計画を打ち出した。・・・しかも、建設費用の三億円は町の負担とした。補助金を当てにして国や県の指示を待っていては遅いと判断したのだ。
この町長のリーダーシップに町の企業も応えた。地元建設会社の千田明雄社長は、「せっかく行政が頑張っているんだから業界の我々も頑張らなくては」と自ら現場監督に名乗り出た。
宮城県名取市でオイル専門リサイクル業を営む武田洋一さん。
自社の廃油処理工場は津波で大きな被害を受けましたが、県外の仲間の協力によりいち早く再稼動させました。最初の仕事は打ち揚げられた漁船の廃油処理です。そこで分離された「油水」は、岩手県一関にある三菱マテリアルの工場でセメントに生まれ変わります。副工場長の小松さんの話です。
(p212より引用) 「震災でできた不用物を使って、できるだけ復興の材料を作る。それで復興支援ができれば一番いい。・・・」
震災の傷跡を消しながら復興の足がかりをつくっていくリサイクルの営み。被災地の人々が、自ら置かれた苛酷な環境の中で、未来の再生に向けた取り組みを始めています。
(p213より引用) 「私たちの仕事って、こういう災害の後、必ず必要になってくるものだと思う。亡くなった人はいっぱいいらっしゃるけど、残った私たちで、前よりもいい町にしたい。頑張りますよ」
武田社長の力強い思いのこもった言葉です。
さて、本書を読んで、最も感じたのはすべてのエピソードに通底する「気概」でした。
被災者の方々の頑張りやそれを支援しようと立ち上がった人々、そこには理屈や建前ではない「自分がやらなくては」という強い「意志」がまずあるということです。目先の損得など度外視した行動は、そういった気概から生起されたものです。
とはいえ、そういった気概だけで現実社会の中で動き続けることができるかといえば、それはものすごく大変なことでしょう。気概が現実に押しつぶされる前に、気概を支える現実を何とかして一刻も早く作り上げなくてはなりません。
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