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リーダーシップの哲学―12人の経営者に学ぶリーダーの育ち方 (一條 和生)

2020-07-11 21:33:55 | 本と雑誌

 著者の 一條和生教授は一橋大学の野中郁次郎教授が主宰する社会人向け経営者育成プログラムである「ナレッジ・フォーラム」での経験に触発されて本書の執筆を決心したそうです。 
 私も、まさにその「ナレッジ・フォーラム」の一期生なのですが、事情があってほとんど参加できませんでした。ただ、フォーラムのアフタケアは素晴らしく、そういった私にもいまだに関係書籍が出版されると送ってくださいます。
 本書もそういった経緯で手にしたものです。

 12人の経営者の方の貴重な「経験の共有」。やはり、一流の経営者の方々の体験談を伺うとワクワクしますし、その方々の言葉には体験に裏打ちされた説得力があふれています。 

 たとえば、LIXILグループCEO(当時)藤森義明さんのGE時代の話。 

(p9より引用) ウェルチは当時、「バウンダリーレス」という概念をよく口にしていました。これは、垣根(バウンダリー)を作ってはいけないということです。垣根を作ると、そこで情報が遮断され、チームワークが失われます。日本では手にした情報の優劣で競争したりしますが、GE内では情報を公開し、同じ情報をベースにどういう行動をするかで競って、その人の価値が決まるのです。 

 改めて、わが身の甘さを思い知らされます。 

 次は、花王の代表取締役社長(当時)澤田道隆さん。研究部門の出身の澤田さんが体験した「バックグラウンドの違う人材を活かす」というお話です。  

(p28より引用) 欧米企業では事業撤退をすると、人員を解雇します。 しかし、日本ではそのようなケースはまれです。わが社の情報事業撤退においても、関連研究所のほとんどの人が残り、基礎研究や家庭品の研究に移りました。その結果、ヒット商品がいくつも生まれたのです。・・・ こうした事例は、花王グループの研究部門のリーダーたちが、情報関連事業のメンバーのポテンシャルを活かそうとしたからこそ実現したのです。バックグラウンドの異なる人をうまく組織化すればすごい力になることは、当時はもちろんのこと、今なお実感しています。 

 ダイバーシティの重要性は普通に語られるようになりましたが、それを真に活かすには「リーダーの意思」が不可欠だとの実例ですね。 

 そして、良品計画元会長松井忠三さん。西友時代に幹部向け研修を企画したときの経験です。 

(p197より引用) こうしてさまざまな研修を実施しましたが、結局のところ、幹部の意識は変わりませんでした。変革では、意識改革は先に来ない。仕組みを変えた後でようやく意識も変わっていくのだとつくづく感じました。 

 この本音の指摘はなかなか聞くことはできません。 

 さて、本書で紹介されたリーダーの方々は、今も更に留まることなく様々な立場や行動にチャレンジし続けていらっしゃいます。 
 翻って私はといえば、反省しきりですね。改めて、大いに刺激を受けました。もう今の立場になってしまうと自分自身が実践するチャンスは極めて少ないと覚悟するところもありますが、それでも何とかこのインプットを活かせる手立てを見つけたいものです。 

 

 

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1 コメント

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マルテンサイト千年 (グローバルサムライ)
2024-07-22 17:29:50
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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