私は新しい本を読むとき、しばしば「まえがき」と「あとがき」から読むことがあります。
いままで読んだ本のうちで、この本ほど「まえがき」と「あとがき」そのものが印象深かったものはありません。
「まえがき」に相当するものは、作家の五木寛之氏が短文を寄せています。
著者の藤沢武夫氏の人柄を紹介しているのですが、そのほんの短い文章から、藤沢氏を心から深く敬愛している様が伝わってきます。
「あとがき」は藤沢氏本人の筆によるものですが、なるほど五木氏の紹介そのもの、自伝的な本のあとがきとは思えない清々しい語り口です。気負ったところなどまるでなく、ただただ在りのままの気持ちが実直な文章で綴られています。
さて、本編ですが、すべてがホンダをいう会社を舞台にした藤沢氏の実経験の話です。他の人の話や本で同じようなことが話されていても、その重みには格段の差があります。語り口は無骨であっさりとしていても裏打ちされた事実の厚みが違います。
(p117より引用) ものごとは、みんなが知恵を出しあうことによって、どんどんいいものになってゆくことが多いんです。
みんなの知恵を結集することの大事さは一流の経営者はみな言います。
先に紹介した元GEのジャック・ウェルチ氏もこう記しています。
(わが経営p285より引用) ワークアウトは、・・・全員が参加し、全員のアイデアが重視され、リーダーが人を管理するのではなく導く文化になっていた。リーダーはコーチ役に徹する-説教するのではない。それがよい結果に結びつく。
経営に終わりはない (文春文庫) | |
藤沢 武夫 | |
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