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Real-Time Management (「企業価値の源泉」より)

2005-06-26 23:33:04 | 本と雑誌
(p132より引用)顧客保持の戦いはイベント駆動型のものであり、迅速で的確な反応が要求される。・・・たとえば、ワイヤレス電話の解約。もしそのワイヤレス電話会社が顧客の意思を変えたいならば、24時間以内にコンタクトをとらなければならない。・・・感化される可能性のある顧客全ての内四分の三が、解約をした後の最初の24時間以内に感化を受けるのである。48時間後以降は、コンタクトしてもほとんど意味がない。・・・多くの企業が好むもう一つの顧客保持のアプローチは、よりきっちりと顧客を企業に縛り付けるために計画されたロイヤルティ・プログラム、もしくは特典プログラムと言われるものである。


 CRM(Customer Relationship Management)の中でのcustomer retention施策についてです。

 前者は、「刺激・反応(stimulation→reaction)型」、後者は、「計画・実行(plan→action)型」です。

 計画・実行型は、従来から結構慣れ親しんだ行動様式で、「PDCA」とか「PDS」といったマネジメント手法としても身近なものです。

 他方、「刺激→反応」というとあまり良いイメージはありませんでした。ある外部からの刺激を受けると何も考えずに短絡的に軽率な行動を起こしてしまう、これではダメ・・・という論調です。
 ただ、アクションまでの間に時間的な余裕がある場合ならともかく、今日のように、何か起こったとき即座の対応がないと後手を踏んで致命的になる場合や、じっくりと計画を立てても環境の変化が速くかつ大きすぎて(計画自体が)すぐに陳腐化してしまうような場合は、「刺激に対して『的確に』反応すること」が重要になります。

 Real-time Managementを目指すかどうかは、この「刺激・反応(stimulation→reaction)型」の行動様式をどれだけ重視するかによるのです。

 引用の最初の例では「刺激」は「解約情報」です。この刺激を受けて電話会社は「反応」し、顧客に対して24時間以内に「コンタクト」するという図式です。

 この例では「解約情報(=刺激)を受けてから24時間以内」という即時性がポイントになります。スタートは「刺激の感知」です。「刺激=解約情報」は、明確にお客様から企業に対して意思表示(解約の申し出)があるわけですから、それをリアルタイムに感知するのは簡単だと思うかもしれません。が、現実はそうでもないのです。
 受付システムの処理がバッチ型になっていると折角の情報がシステム内で一晩寝ることになるかもしれません。また、解約情報が代理店でも受け付けられるのあれば、代理店からの連絡手段がリアルタイム型でないと(電話会社としては)即座には感知できません。

 このようにReal-time Managementを本気で志向するのであれば、関係プロセス全ての見直しとそれを前提に具現化されたリアルタイム志向のIT(Information Technology)基盤整備が必要不可欠になります。
(Real-time Managementを志向したIT基盤の実例としては、NTT DoCoMoのDREAMS(DoCoMo REAl-time Management System)が挙げられます)

 最後に1点、注意ですが、今まで「刺激・反応(stimulation→reaction)型」と「計画・実行(plan→action)型」を対立概念のように書いてきましたが、必ずしもそうではありません。刺激・反応型は、計画・実行型を極めて短いサイクルで回しているという側面もあるのです。
 これもReal-time Management を志向したIT基盤の具体的な実現機能のひとつです。すなわち、関連プロセスをシステム的に密結合にし、その中の情報の流れを高速化させるのです。

企業価値の源泉―グローバル企業に学ぶ競争優位の情報戦略
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