(p161より引用)“たいまつは自分で持て”と私はしばしばいってきました。これは、人から教わったり、本で読んだ知識ではなく、自分の味わった苦しみから生まれた実感なのです。どんなに苦しくても、たいまつは自分の手で持って進まなければいけない。これが私の根本の思想であり、また、ホンダのモットーともなりました。
自分たちの力を信じて自責をもって事業に取り組むという強い信念です。この藤沢氏の信念は、技術を信じ人まねを許さない本田氏の信念と完全にシンクロしているのです。
どんな場合でもこの信念を貫き通した藤沢氏の経営者としての決意のほどは、以下のような言葉にも表れています。
(p112より引用) 私は仕事を片づけるとき、後でそれがガンにならないよう、多少手荒なことがあっても、将来のことを第一にいつも考えていました。この年もそうです。企業には良いことも悪いこともあるのだから、禍を転じて福とする、その橋を見つけ出すことが経営者の仕事なのだと思っています。
(p151より引用) 私の経営信条は、すべてシンプルにするということです。シンプルにすれば、経営者も忙しくしないですむ。そのためには、とにかく一度決めたら、それを貫くことです。状況が変わっても、一筋の太い道を迷わずに進むことです。
経営に終わりはない (文春文庫) | |
藤沢 武夫 | |
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