
嬉(うれ)しさは 同じこと言う ばあちゃんに やさしく諭す 声を聞くとき
「よう見えとりますか?、暗いことないですか~え」、
『ばあちゃん、良~く見えとりますよ』、
「よう見えとりますか?、暗いことないですか~え」、
『ハイハイ、良~く見えてます大丈夫。ばあちゃん良く見えてますよ」、
「よう見えとりますか?、暗いことないですか~え」、
『良く見えてますよ。大丈夫大丈夫、大丈夫ですよ見えてますよ、大丈夫』と、私も先ほどから何遍も何遍もオウム返しに返事です。
初めてのご依頼の客さまのお家で、流し元灯の取り付け工事をいたします。
「今、大阪から里の実家に向かってる者です。
午後3時くらいに、流し元灯の取り付けを頼めないでしょうか」、
「初めてのお願いで、今日って急に頼んで申し訳ありませんがお願いできますか?」と、
朝に電話の依頼です。
ご依頼先の里の実家って、
日高町内でもずっと遠くの山の中、回りを山に囲まれた谷沿いの集落なのです。
じいちゃんばあちゃん二人暮らしのお家です。
じいちゃんは「わしゃあ88だ、眼も片方ほとんど見えんし」、
ばあちゃんは「80越しました。眼も耳も頭も悪いですや~な」と、典型的な田舎暮らしの老人二人の世帯です。
この集落は20戸くらいでしょうか、若い者はほとんど都会に出てしまい、
子供の数ったら、近所のHさんちに高校に通う男の子が村の中で一人っきり、もうほとんど高齢者家族ばっかりの集落なのです。
ご依頼の奥さんは、このお家の都会に出ているご長男さんのお嫁さん、
今日は、じいちゃんばあちゃんちへ、電気屋さんに電話しながら帰って来られたという事ですね。
「ネットでアトムさんを探して頼みました」、
『当店はネットでたくさんご依頼ありますよ。なんでも直ぐに診に来ますからどうぞどうぞ』と返事です。
先日帰った時に、ホームセンターで買った流し元灯がどうしても点かないと云われます。
電気がどうしても来ていないとおっしゃいますね。
そんな訳で、電気配線も頼むと当店に電話したと説明でした。
蒸し暑い、山の中なのに今日はムチャクチャ暑いよ蒸し暑い、
汗だらだらの中で、せっせと配線取付作業をいたします。
ずっと見ているばあちゃんは、
「よう見えとりますか?、暗いことないですか~え」が10回くらい、
次は、
「電気屋さんはどこから来ましたかえ~」が10回くらい、
それが終わると長男のお嫁さんに、
「この人知っとんなるんか~」を10回くらい、同じことを何度も何度も聞くのです。
まあ、ちょっとご老人の酷い癖ですな、
少しですが、同じことを何度もおっしゃるボケですね。
こちらも、
『ばあちゃん、良~く見えとりますよ』、『ハイばあちゃん、国府から来ましたよ、国府の池上ですよ』、
お嫁さんは、
「主人が調べて頼んだんよ。親切な地元の電気屋さんよ。知らなかったけど知っとるのよ」と、10回も20回も優しく優しく諭します。
汗がぶうぶう出る中で、じいちゃんばあちゃん二人暮らしの生活を、
都会から見に来るお嫁さんに、『大変ですね~、奥さんはお生まれ都会ですか?。正直言ってここはとっても山家で凄いところですね』と話します。
「いえ、私のお父さんの実家は鳥取県のもっと田舎、山家はよ~く慣れてます」と、ばあちゃんに諭す感じで優しいですね。