「ストックホルム合意に基づき実態把握を急げ」
救う会全国協議会は、「ブリンケン国務長官への書簡伝達、バイデン政権へ何を求めたのか」と題する3月22日付けの救う会ニュースの中で、「全被害者の即時一括帰国が解決の第一条件」として、日本政府の方針である「1、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず全ての被害者の安全確保と即時帰国」を掲げ、これについては「絶対に一括でなきゃならないと繰り返し申し上げているとおりであります。」と従前よりの主張を繰り返している。
ここで問題となるのは、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず全ての被害者をどう特定するのかという実態把握であろう。この点については、3月23日付けで産経新聞に掲載された篠原常一郎氏の意見広告(写真)にある、「かねてから「話し合い解決」をと言われてきていますが、話し合うにも自国の被害実態が分からないまま、「加害者」である全体主義国家に交渉を持ち掛けても解決につなげることは著しく困難であることは、火を見るよりも明らかではないでしょうか」という見解に賛同したい。
その国内的取組に関する篠原氏のご意見も一案ではあると思うが、日朝間には平成26年の日朝ストックホルム合意が既に存在しており、北朝鮮が再調査して作成しているはずの調査報告書を一日も早く受け取ることも一案である。我が国政府が北朝鮮に対して調査報告書を一日も早く送致するよう強く求めていることは、国会議員の質問主意書に対する政府答弁書で明らかであり、ストックホルム合意に基づき解決を目指すことが現実的で実現性のある方策だと私は考えている。
ところが、救う会全国協議会、特定失踪者問題調査会及びそれらの家族会はストックホルム合意に基づく解決を目指してはおらず、むしろ否定的な立場をこれまでに明らかにしており政府方針とは異なっている。様々な主張があって当然と思うが、自衛隊が北朝鮮に乗り込んで救出するとかいう仮定のプランを幾ら持ち出しても局面は何も動かず、時間だけが経過しているのが拉致問題の現状ではないだろうか。
仮定のプランを持ち出すことなく、今あるストックホルム合意に基づき早急に北朝鮮から調査報告書を受け取り、誰が拉致をされ、誰が死亡して誰が生きているのか、そしてどこで生きていて、誰が帰国したいと望んでいるのかを、我が国は調査して精査すべきである。そのことが、拉致問題に限らず、北朝鮮における日本人に関する全ての問題解決に資する最短にして最良の方策であると私は考える。
令和3年(2021年)3月23日
救う会徳島 代表 陶久敏郎