Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.444:2012年1~2月度 ニュースのキーワード

2012年03月01日 | 教育関連マーケティング情報
昨年まで「日経MJ教育マーケティング情報」というタイトルのコーナーでお
送りして参りましたが、今年から「ニュースのキーワード」とタイトルを変
え、内容も多少変更してお送りします。このコーナーではその月の新聞から
気になったキーワード3~4選び、それを皆さんと一緒に考えていきます。
キーワードの範囲も教育関連だけでなく、インターネット、就活、大学問題
などなど幅広く取り扱っていく予定ですのでよろしくお願いいたします。

さて、今回取り上げるのは「圏」「C世代」「縁故採用」の3つのキーワー
ドです。

■「圏」という新しいつながり
「圏の市場、年間4兆円」日経MJ 2012/1/25 2面

「圏」というのは、博報堂生活総合研究所の調査から見えてきた人々の新し
いつながりのかたちのことです。同研究所では、世の中の集まりやつながり
を、「テーマがある-メリットがある」という縦軸と、「クローズドである
-オープンである」という横軸で分類し、

テーマ+クローズド=コミュニティ
テーマ+オープン=圏
メリット+オープン=ネットワーク
メリット+クローズド=縁(地縁・血縁)

と分けて「圏」のポジションを明確にしています。

現在日本で「圏」を持つ人は2人に1人、一人平均で2.6個の圏を持っている
そうです。そして「圏」1つに対し、月平均で3,212円を消費しており、こ
こから市場の規模を計算すると4兆円を越えるということです。この圏を中
心にビジネスチャンスを捉えていったらどうだろうかというのが記事の主張
でした。

考えてみるとコガもいくつか「圏」らしき集まりに関わっています。まず
「FMICSあざみ野」という毎月開催される大学教職員が集まる勉強会があり
ます(http://goo.gl/17zcV)。経費は勉強会の会場代と飲み代合わせてち
ょうど3,000円なのでほぼ全国平均と一緒ですね。他には大学の近くの畑を
大山の旅館組合の方々と耕し、野菜を作るという活動も行ったり、スポーツ
クラブで一緒に水泳のレッスンを学ぶ「圏」があるので、ちょうど3つの
「圏」を持っていました。平均的な日本人ですね~。

「圏」をビジネスチャンスとして捉える場合、欠かせないのは「学び」の要
素ではないかとコガは考えます。勉強会やスポーツクラブは言うまでもあり
ませんが、畑作業も、専門家のアドバイスさえあれば、大豆が全滅すること
も、収穫前のトウモロコシを全部猿に食われることもなかったと思います。

これを社会人向けの教育サービスという視点から考えると、従来のB2Bの法
人マーケットとB2Cの個人市場マーケットの中間に「圏」を対象としたB2K
マーケットなるものが出現するかも知れませんね。

■ジェネレーションC(C世代とは)
「C世代が開く市場」日経MJ 2012/1/30 7面

今までアメリカの世代論は、

X世代(1960年から1974年までに生まれた世代)
Y世代(1975年から1989年までに生まれた世代)
ミレニアム世代(1980年代から1990年代に生まれた世代)
Z世代(1990年代から2000年代終盤に生まれた世代)

などの用語がありました。これらは主に出生時期で世代区分を行っているの
ですが、出生時期以外の要素で世代を括ろうとしているのがこのC世代の特
徴です。一般に"C"はコミュニティーや、クリエイティブの頭文字と考えら
れています。上記記事では、テーマ性を持ったシェアハウスが「クリエイテ
ィブな活動のためのコミュニティー」としてC世代の若者に人気となってい
るケースを紹介しています。
しかし、人によって、コンピューター、コネクト、チェンジ、コンテンツ、
コミュニケーション、コラボレーション、コントリビュート、カジュアルな
ど、Cで始まる様々な単語から頭文字を持ってきているそうで、ここまで読
むと一体C世代とは何が共通するのかよく分からなくなってきますね。

C世代的でないものの例としては、ITバブルでガンガン稼いだベンチャー企
業のCEOの行動を挙げています。C世代であれば、個人の金儲けやステイタス
の向上でなく「社会づくり」とか非営利な価値を目指すのだそうです。

確かに日本でも震災後、特に価値観が変化してきたように感じます。社会貢
献やボランティアがより日常的になったり、人々が富の追求やモノを所有す
ることに対してあまり執着しなくなってきたように思われます。人の志向が
そのように変わってきたのだから、会社の目指す方向も真の意味で利潤追求
とは別の方向性に変わっていくのではないかと期待しています。数ヶ月前に
『スペンド・シフト』(ジョン・ガーズマ著、プレジデント社)という本を
読んだのですが、全米中で急速な勢いで増大するC世代的な企業についてレ
ポートされていました。C世代に興味を持ったらオススメの本ですよ。

■縁故採用の是非
「岩波『縁故採用』に波紋」読売新聞2012/02/14 夕刊 13面

最後は、日経MJでなく読売新聞の記事からピックアップしました。岩波書
店が2013年の新卒採用にあたり「著者か社員の紹介があること」を条件にあ
げたことが波紋を呼んでいます。

「応募にこのような制限を求めるのは時代に逆行する行為だ」といった趣旨
の批判コメントや「1~2名しか採用しないのに1000~2000人も応募がくる
のであれば、そのような制限も仕方ないのでは」と言う肯定意見、あるいは
「表向きには一切コネ入社なしと言いながら、そうでないマスコミ等の企業
が多いので、このように正直に表明してくれた方が就活生にとっては嬉し
い」など巷の意見も様々です。

加熱する報道に対し、岩波書店は自社のWebサイト「謹告」の欄で下記のよ
うな見解を示しています。


>>>>>>>>>>小社の「定期採用」報道について──2012年2月6日>>>>>>>>>>

小社の2013年度定期採用をめぐって、新聞、テレビ、ネット上でさまざまな
報道・論評がなされています。しかし、それらのなかには、不正確な、ある
いは誤解を招く報道・論評も見受けられますので、この問題についての小社
の見解を以下に表明いたします。

小社は、いわゆる「縁故採用・コネ採用」は行っておりません。「著者の紹
介、社員の紹介」という条件は、あくまで応募の際の条件であり、採用の判
断基準ではありません。ご応募いただいたあと、厳正な筆記試験、面接試験
を行っております。

この応募条件は、採用予定人数が極めて少ないため、応募者数との大きな隔
たりを少しでも少なくするためのものです。
小社に入社を希望なさる方は、岩波書店著者にご相談いただくか、お知り合
いの岩波書店の社員に直接ご連絡をください。いずれの方法もとれない場合
は、小社総務部の採用担当者に電話でご相談ください。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

コガも今回の岩波の選考方法はたとえ縁故だとしても、採用方法として「あ
り」だと考えています。自力でこの程度の「縁故」を作れないようでは、と
ても出版の編集者としてはやっていけないと考えるからです。そしてもし私
が採用担当者であれば、既に「紹介者」を持っている就活生よりも、この機
会に努力して紹介してくれる人を探してきた学生を優先して選ぶと思います。

しかし、それ以前にこの出版不況の中、なぜ1~2名しか採用しない岩波書店
に、2,000人もの学生が集まるのでしょうか?コガにはそのことの方が不思
議に思えます。などと言いつつ、岩波新書の『就職とは何か─“まともな働
き方”の条件』(森岡 孝二【著】2011)という本を電子書籍で購入してし
まいました。ジャカルタ旅行の折、iPhoneで読んでみたいと思います。
(文責 コガ)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿