Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol161:人材投資促進税制のミニ知識3 質問集

2005年09月15日 | 人材投資促進税制
本メルマガのバックナンバーのBlogサイトでは、どういう検索キーワードでこの
Blogを訪れた人が多いかをランキング表示してくれます。その中で常に上位にある
のが「人材投資促進税制」というキーワードです。この税制は施行初年度というこ
とで情報が少なく、具体的にどうすればよいか、皆さん悩んでサイトを色々と検索
しているのだなあと感じた次第です。

経済産業省のサイトも新しいパンフレットやQ&A集を掲示しておりますが、やや隔靴
掻痒(かくかそうよう)といった感じです。
http://www.meti.go.jp/policy/jinzai_seisaku/jinzaitoushi_zeisei.htm

そこで、今回は、皆さんからセミナー等でお寄せいただいた具体的な質問について
いくつかご紹介し、実務面での対応を考えていきたいと思います。

12月決算の会社はどうするの?
Q:本制度の適用はH17.4とありますが、当社の決算は12月です。申請はどのように
なるのか教えてください?

A:その場合、H17年度は対象にならず、H18~20年の3年間が対象となります。この
法制自体がH17~19の3年間に限った政策ですが、どの企業も平等に3年間の対象期
間が与えられるという訳です。

自己啓発と必須受講の取扱い
Q:前年までは、従業員の任意で自己啓発通信教育(修了時に援助金を会社が支払
う)を紹介していたのですが、今年からは、会社の必須で特定のコースを受講させ
ることにしました。この場合、比較教育訓練費の額の計算に自己啓発通信教育の援
助金の費用を入れなくてもよいのでしょうか?

A:昨年まで実施してきたものは、会社の業務命令による受講でないので、本制度で
の教育訓練費には該当しません。よって比較教育訓練費の額の計算に入れる必要は
ありません。しかし本年実施する必須で特定のコースを受講させるのは、業務命令
による受講なので教育訓練費として認められます。

事業本部単位での申請
Q:当社では、人事教育部・営業教育部・技術教育部の三部門が別々の予算で独立し
て教育訓練を実施しています。それぞれ管理の方法も異なりますし、正直、部門間
のコミュニケーションもあまり良くないので、できれば部門単位で申請したいので
すが、可能ですか?

A:残念ですが不可能です。法人税の申告ですので、会社として一本にまとめて申請
するというのが原則です。部門間の交流をはかり、互いがどういう研修活動をして
いるかを把握するいい機会にもなりますので、面倒かもしれませんが、がんばって
みてください。

宿泊費や食費込みの外部セミナー
Q:細目が記載されていない、宿泊費や食費込みの外部セミナーの受講料の申請はど
うすればいいの?

A:細目が記入されていなければ、申請の対象となります。ただ税務署によって異な
る見解を示す可能性も否めません。

e-learningカンファレンスやe-learningWorldの参加費
Q:e-learningカンファレンスなどを教育目的で参加した場合の参加費は対象となり
ますか?

A:対象になります。カンファレンスだけでなく、e-learningWorld等の展示会も本
制度の目的である要素(教育訓練、業務命令等)が文書で示せれば対象となりま
す。

協会の会員費
Q:主催するセミナーが1割引となるため、Jという協会の会員となっているます
が、この会員費は教育訓練費として認められるでしょうか?

A:協会の活動が教育以外にもあるのであれば、純粋な意味で教育訓練費用とはいえ
ないため不可です。

技術指導のための定年延長
Q:ものづくりの技術を伝承するため、定年退職者を雇用延長して、若手の指導を専
門にやらせていますが、この者の給与は教育訓練費として認められないでしょう
か?

A:雇用契約になると不可です。雇用契約でなく技術指導員として現場指導を行うこ
とで指導契約とすれば可となります。

派遣店員への教育
Q:私は百貨店の教育担当なのですが、当社では納入メーカーからの派遣社員に対し
て、販売力向上のための研修を行っています。これは対象になりますか?

A:残念ですが、使用人でないので対象になりません。

申告フォーマット
Q:確定申告の際に定まった書式等はありますか?

A:特にありません。適用年度の教育訓練費の額と比較教育訓練費の額(前2事業
年度の教育訓練費の額)に関して、次の事項を記載した書類であれば書式は問われ
ていません。
・該当費用に係る教育訓練等を行った年月日
・教育訓練等の内容
・教育訓練等に参加した使用人の氏名
・該当費用の支出年月日
・支出した内容及び金額
・相手先の名称及び主たる事務所の所在地等
・その他参考となるべき事項

vol156:人材投資促進税制のミニ知識2

2005年08月04日 | 人材投資促進税制
話題の人材投資促進税制について、ミニ知識をお知らせするコーナーの
第二回目です。今回は「人材投資促進税制のeラーニングへの適用について」です。

人材投資促進税制について
http://www.meti.go.jp/policy/jinzai_seisaku/jinzaitoushi_zeisei.htm

キャリア形成促進助成金制度について
http://www.ehdo.go.jp/gyomu/f-3.html#f-3-3

ASP型eラーニングは○、イントラネット型eラーニングは△

人材投資促進税制のポイントの一つに「外部委託」があります。ASP型のeラーニ
ングは外部委託そのものなので、これは制度の対象となります。
一方、イントラネット型eラーニングは制度の対象となる部分とならない部分があり
ます。
対象とならないのはシステム部分、いわゆるLMSと呼ばれるようなeラーニングの
サーバソフトやそれを動かすアプリケーションやハードウェアの購入費などは、人材
投資促進税制の対象になりません。(ただしこれらのソフトウェアは、IT投資促進
税制の対象にはなっています。)
一方、コンテンツの購入費用は対象となります。例として妥当でないかもしれま
せんが、自宅でコーヒーを飲むためにフィリップスのコーヒーメーカー(これがシ
ステム部分)を購入した場合この費用は対象になりませんが、スターバックスで
豆(こちらがコンテンツ部分)を購入してきた場合費用は対象となる。そんな感じ
です。ただしコンテンツであっても、無形固定資産にしてしまうと対象外となりま
すので注意が必要です。

自社eラーニングコンテンツの開発費用は△
自社eラーニングコンテンツを開発する際、外部業者のコンテンツの開発を委託
する場合は、その委託費用が対象となります。しかし、社内でコンテンツを内製化
する場合の、コンテンツ作成者の人件費等は対象となりません。ただし、外部業者
にコンテンツの開発を委託する場合でも、これを無形固定資産にしてしまうと上記
同様対象外となりますので注意が必要です。

賢い活用方法
既に自社でLMS等を購入し、社内ネットワークにeラーニングの環境のある企業の
場合、eラーニングのコンテンツ購入は、本制度の賢い活用方法の一つとなるはず
です。本制度は「教育訓練費用の増額」部分が対象となるため、原則として今まで
より教育の機会を増やすか、高価な教育を実施する必要があります。
しかし、eラーニングコンテンツ購入の場合は「必ずしも今期中にそのコンテン
ツを用いた研修をする必要がない」ところがポイントとなります。
例えば、本年度の教育訓練費で80万円のコンテンツを購入し、800人の社員教
育に使う場合、今年度100人、来年度700人に実施という活用方法が認められていま
す。

ちょっと宣伝になりますが、産業能率大学ではSCORM1.2対応のeラーニングコンテ
ンツ提供を昨年より開始しております。本学のダウンロードコーナー(下記URL)
に「貴社LMSでも学習できる! ~SCORM対応SKFコンテンツのご紹介~」という詳細
を説明したPDFファイルがありますので、ご一読いただければ幸いです。
http://www.hj.sanno.ac.jp/ltec/down/shiryo.htm

Vol155:人材投資促進税制のミニ知識1

2005年07月21日 | 人材投資促進税制
 今回より話題の人材投資促進税について、ミニ知識をお知らせするコーナーを開始します。
第一回目は「人材投資促進税とキャリア形成促進助成金の違い」についてです。

人材投資促進税制について
http://www.meti.go.jp/policy/jinzai_seisaku/jinzaitoushi_zeisei.htm

キャリア形成促進助成金制度について
http://www.ehdo.go.jp/gyomu/f-3.html#f-3-3


 厚生労働省が実施するキャリア形成促進助成金制度は、今まで数多くの企業で
活用されています。最近このキャリア形成助成金制度と人材投資促進税制の違い
についてよく質問されます。違いは沢山あるのですが、大きく異なる点は次の
4点です。

A)事前届出の有無
キャリア形成促進助成金制度では、計画届が必要ですが、人材投資促進税制ではそ
れが必要ありません。前者では「計画」と「申請」で2回ペーパワークが必要で、
その手続きの煩雑さから使うことをためらう企業も多かったため、人材投資促進税
制での手続きの簡便さはありがたいですね。

B)適用範囲の拡大
キャリア形成促進助成金制度では、対象となるのが正規の従業員(雇用保険の被保
険者)に限られていましたが、、人材投資促進税制ではそれに加え、パート、アル
バイトや契約社員までが適用範囲となっています。非正規社員の戦力化が叫ばれる
中、この範囲の拡大は嬉しいですね。但し、人材投資促進税制であっても内定者等
の入社予定者は対象とならないので注意が必要です。

C)適用研修の拡大
キャリア形成促進助成金制度では、集合研修しか対象とならなかったのですが、人
材投資促進税制では、通信教育やeラーニングの受講料も適用範囲となっているとこ
ろが本メルマガ的には一番嬉しい点です。ただし、eラーニングの場合、LMS等のソ
フトウェアの購入費用は対象となりませんので注意が必要です。

D)従業員の賃金補助
ここまで書くと、人材投資促進税制のイイトコばかりが目立っていますが、そうで
もありません。キャリア形成促進助成金制度では、訓練期間中の従業員の賃金部分
の援助がありますが、人材投資促進税制では対象となりません。

この他にも色々と違いがありますが、詳細は次回以降お伝えします。

人材投資促進税制説明会in名古屋
さて、この人材投資促進税制についての無料説明会を、8月3日(水曜日)の午後
2時より、愛・地球博で盛り上がる名古屋で実施します。

◆会 場:安保(あぼう)ホール/JR名古屋駅より徒歩5分。
      名古屋市中村区名駅3 丁目15-9
◆参加費:無料
◆定 員:50名 定員になり次第、締め切らせていただきます。
◆お申込お問い合わせ:(学)産業能率大学 総合研究所 中部事業部 普及事業1課
◆電話:(052)561-4550  担当:長瀬・栃尾

また、北海道でも9月に実施する予定がございますので、正式に決まりましたらお
知らせいたします。

vol149:人材投資促進税説明会開催される

2005年04月28日 | 人材投資促進税制
4月15日、機械振興会館にて、日本イーラーニングコンソーシアム主催の「人材投資促進税制」の説明会が開催されました。当日は、経済産業省の方が詳細なパワポの資料に基づき説明されていました。実はその時の資料をUPしているWebサイトをたまたま見つけましたのでご紹介します。(中小企業基盤整備機構)

なんか、間違えてサーバにアップしたものの、そのままになっているとしか思えないようなページですので、いつなくなってもおかしくありませんから、ダウンロードはお早めに。
http://www.smrj.go.jp/dbps_data/_material_/chushou/c_jinzai/pdf/jinzaitoshi2.pdf

Vol140:人材投資促進税制とeラーニング

2004年12月23日 | 人材投資促進税制
次のネタは国からのクリスマスプレゼントです。

新聞の一面で大々的に取り上げられていたので、皆さんご存知かとおもいますが、
12月15日に発表された、自民党の「平成17年度税制改正大綱」の中で、「6
人材投資(教育訓練)促進税制の創設」が盛込まれています。詳細は自由民主党
ホームページ「政策」(下記URL)→「政策トピック」にPDFがあります。
http://www.jimin.jp/jimin/main/seisaku.html

制度の趣旨
わが国の産業競争力の基盤である産業人材を育成・強化する観点から、人材投資の
減少傾向を拡大に転じさせるとともに、企業における戦略的な人材育成への取組を
協力に後押しするため、人材育成に積極的に取り組む企業について、教育訓練費の
一定割合を法人税額から控除する制度を創設するものです。

制度の概要
青色申告書を提出する法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入され
る教育訓練費の額が、その法人の直前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額
の計算上損金の額に算入された教育訓練費の平均額を超える場合には、3年間の時
限措置として、その超える部分の金額の25%相当額の税額控除を認める。ただし、
当期の法人税額の10%相当額を限度とする。

例えば、2003年の訓練費用が総額800万円、2004年は1200万円、2005年は奮発して
3000万円使ったとすると、03と04の平均額が1000万円ですから、越える部分は2000
万円となり、その25%ということは500万円も控除されるということになります。こ
れはいいかも。。。

さらに中小企業の場合は「増加部分」でなく研修総額×増加率の1/2(上限2
0%)という計算になるので、さらに多くの控除となります。

疑問1-他の助成金制度との重複
この法案、実は今年の夏ごろから、経済省や文科省から提言されていたものです
が、当初から、既存の助成金制度との重複をどうするのかという指摘がなされてき
ました。

職業訓練給付制度については、個人に給付されるものなのでいいのですが、問題は
キャリア形成促進助成金との兼ね合いです。

キャリア形成促進助成金は、生涯能力開発給付金及び認定訓練派遣等給付金が平成
13年度末(平成14年3月末)で廃止となったことから新設された制度ですが、
これは企業の教育訓練に対しての給付ということでは同じです。この申請と、今回
の人材投資促進税制は別々に申請して、税額控除や助成金を貰ってよいのでしょう
か?(キャリア形成促進助成金についてはhttp://www.ehdo.go.jp/gyomu/5-2.html
をご覧下さい)。

現時点の情報では、キャリア形成促進助成金と今回の人材投資促進税制で対象とな
る費用が若干異なるようです。例えば職業訓練期間中のその雇用する労働者の賃金
はキャリア形成促進助成金では対象となるが、人材投資促進税制では対象とならな
いといったものがあります。

そのようなことから考えると、キャリア形成促進助成金で申請しているものとそう
でないものの切り分けての事務手続きはとっても大変なので、結果として、重複申
請での受給が認められるのではないかと推察しています。

疑問2-手続き
企業の教育訓練を担当した経験があり、生涯能力開発給付金やキャリア形成促進助
成金の計画届けや申請をした人ならお分かりと思いますが、これらは「煩雑な書類
申請」があることで有名です。上記の疑問とも関連しますが、今回の人材投資促進
税制はどういう手続きで行うのかが不安です。直前2年の教育訓練費と言われても何
を持って、その金額の妥当性をどうやって証明するのか?申請は税務署でOKなの
か?などです。

現時点での情報によると、手続きは「計画届けはなし、申請のみ」ということのよ
うです。

疑問3-適用範囲にeラーニングが含まれるか
そして、本メルマガ的には最大の関心事項が「eラーニングも含まれますか?」とい
う疑問です。上記のキャリア形成促進助成金ではeラーニングはおろか通信教育も対
象外になっています。私の予想(願望)としてはぜひeラーニングも教育訓練費用に
入るだろう(欲しい)と考えています。

そもそも、この人材投資促進税制という話は、国家の「新産業創造戦略を核とした
産業競争力の強化」という政策の一つとして打ち出されており、同政策の別の施策
として、以前このメルマガで取り上げた「草の根eラーニング」が含まれているから
です。このような状況から考えると「eラーニングを費用控除の対象からはずす」こ
とはアリエナイのです。

ただもう一つ問題になってくるのが「eラーニングのどこまでを教育訓練費用」とし
て認めるのか?ということ。昨今のEPSSなどは、社内の電子業務マニュアルとの境
界がつけにくくなっています。そうした社内コンテンツの開発も教育訓練費に入る
のかどうか?はたまたLMS等の教育訓練を推進するためのシステムの購入はどうなの
か?それが認められるならばLMSを動作するためのサーバもいいのか?などなど微妙
な問題をはらんでいるといえます。

現在、人材投資促進税制については色々と情報を収集中ですので、疑問についての
答えがわかり次第お伝えしていきます。