Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

Vol.442:教育の質保証~ISO29990~の概要と課題

2012年02月13日 | 評価
今から10年以上昔、eラーニングがブームになる以前に、コガがまず疑問に
思ったのは、「従来型の企業内教育(集合研修や通信教育)と比較し
てeラーニングの教育効果はどうなのだろうか?」という事でした。しかし
当時はまだ「従来型の企業内教育(集合研修や通信教育)」においてすら評
価や質保証という事があまり取り上げられていない時代でした。

しかし、その後、あらゆる教育分野において、評価や質保証という概念が浸
透してきました。今回ご紹介するISO29990とは、2010年にISOが発行した
「学習サービスマネジメント」のための質保証の規格で、昨年あたりから国
内でもこの規格の認定を受ける教育関連事業者がちらほら出現しています。
認定を受けた組織で、現在コガが把握しているのは、

学習塾
・栄光
・伸栄学習会
資格取得
・ヒューマンアカデミー
・ニチイ学館
・TAC
企業内教育
・NECラーニング
・東芝OA・コンサルタント
・日立インフォメーションアカデミー
語学教育
・アルティアセントラル
の9組織です。

今回はこのISO29990の概要についてまとめ、その課題について考えてみたい
と思います。

なお執筆にあたり、
『ISO29990の基本と仕組みがよーくわかる本』
(打川和男 秀和システム2011)

JAMOTE(人材育成と教育サービス協議会)Webサイト
http://www.jamote.jp/

『ISO取得のための審査登録機関の選び方』
(株式会社トーマツ環境品質研究所 中経出版 2002)

を参考にさせていただきました。この場をお借りして御礼申しあげます。

ISO29990の概要

その1「非公式教育」
ISO29990の正式名称は「非公式教育・訓練における学習サービス-サービス
事業者向け基本的要求事項(Learning services for non-formal education
and training - Basic requirements for service providers)」です。こ
こで「非公式教育」という耳に慣れない言葉がでてきます。これは逆の「公
式教育」を考えると分かりやすいと思います。公式教育はformal education、
つまり小学校から大学に至る「学校教育」と呼ばれる教育を指します。一方
の非公式教育とは、そうした学校教育以外の教育サービスを指し、このISO2
9990では下記のような教育機関を対象としています。

・学習塾
・英語教室等のいわゆる語学教室
・民間職業訓練機関
・資格取得を目的とする民間教育事業者
・企業内研修を請け負う事業者
・生涯学習を支援する各種講座・教室

その2「規格の内容」
大雑把に言うと上記のような教育サービス機関において、学習サービス事業
のマネジメントサイクルをきちんと回せているかどうかを確認する規格です。
具体的には「学習サービスマネジメントシステム(Learning Service
Management System略してLSMS)」というモデルに基づき、Plan(記録、文書
の管理や人的資源の管理等)、Do(学習サービを実施する際の要求事項)、
Check(内部監査のしくみ等)、Action(予防処置、是正処置)がきちんと
実施できているかをチェックします。

その3 「教育サービス事業者ならではの特徴」
ISOの規格には工業製品等の「物の規格」とISO9001や14001など組織のマネ
ジメントに関する規格があります。ISO29990は後者に属するため、文書や記
録の管理、コミュニケーション管理といった経営システムへの要求事項は他
のマネジメントに関する規格と似ています。しかし、教育サービス事業者な
らではの特徴もあります。それは「人的資源の管理」と、PDCAサイクルのD
=学習サービスを実施する際に関する要求事項です。

前者については、学習サービスの特徴として、講師や教員にサービスの品質
が依存しやすいというを鑑み、教員を含む従業員の「力量」の管理に重点が
置かれています。ここで言う力量とは

「監視可能または測定可能な、あるいは監視可能かつ測定可能な(学習サー
ビスに関する)知識、理解、スキルまたは態度。これは所与の業務環境にお
いて、及び専門的能力開発または自己啓発において、あるいは専門的能力開
発及び自己啓発の場において、使用され、修得される」

と定義されています。力量の元の英語はコンピテンシーです。日本において
コンピテンシーという言葉は、かなり多義的に用いられているので、あえて
カタカナのコンピテンシーでなく「力量」という言葉に翻訳したものと思わ
れます。また、学習サービス事業者のための主要な力量の例が、「講師」
「教育設計者」及び「ビジネスマネージャ」の3つの分類で紹介されていま
す。「教育設計者」でなく「インストラクショナル・デザイナー」という用
語を使えば、熊本方面から歓声が上がりそうというのは、軽い業界ネタです。

しかし熊本の皆さんがより欣喜雀躍するのはこの点でなく、後者のLSMSの実
施=DO段階で規定されている5つの要求事項と思われます。

3.1学習ニーズの特定
3.2学習サービスの設計
3.3学習サービスの提供
3.4学習サービスの実施状況の監視
3.5学習サービス事業者による評価

どこかで見たような・・・と思えたら貴方は立派なIDerです。そうIDの代表
的なモデルであるADDIEモデルにそっくりなのです。残念なことに開発工程
(Development)が抜けていますが、後はほぼADDIEモデルで説明できます。

これらより教育サービス事業者ならではの特徴とは「従業員の力量(コンピ
テンシー)のマネジメント(特にIDerと講師)」と「ID的なプロセスモデル
への準拠」の2つとコガは解釈しましたが、皆さんどう思われますか?

まとめと課題
教育は目に見えないサービスを提供するので、購入(受講)する事前にその
中身が分かりにくいという特徴を持っています。そうした教育サービス事業
の欠点を少しでも改善するのが、このISO29990規格の目的です。

では、このISO29990の認定を取得するにはどうすればよいのか?
ISO29990で検索すれば、様々な審査機関がヒットします。日本でこの規格の
検討の中心的役割を担ったJAMOTEを筆頭に、BSI、ZOOOM、ビューロベリタス、
SGS等ぞくぞくヒットします、さて一体どの審査機関に相談すればいいの
か?実はその点こそが、ISO29990の最大の課題ではないかとコガは考えてお
ります。

認証取得に至るプロセスで、いかに自社のマネジメントシステムを見直し、
改善できるかが最も重要な点です。そうでないと「審査のためだけの無駄な
記録作り」に終始し、結局経営的には何も改善されなかったということにな
りかねません。

そうならないためには、よい審査員、よい審査機関を選択する必要があるの
ですが、それがよく分からないのです。ISO9000シリーズや14000シリーズの
場合、審査機関を審査する団体(JAB(日本適合性認定協会)、UKAS(The
United Kingdom Accreditation Service )等があります。ISO29990にはそ
うした団体があるのかどうかすらコガには分かりません。

ある方に聴いたのですが、基本的にはISOは中立を保つため規格以外に関心
を向けていないため、規格が公開されたら誰もがその規格を使って認証審査
の商売ができるというスキームなのだそうです。なので、たとえ教育ビジネ
スについての門外漢であっても、ISOの認証プロセスとISO29990の要件定義
さえ知っていれば、審査団体をやれてしまうというのが現状のようです。

今回ISO29990の中身を色々と勉強し、「教育事業者の審査ツールとして非常
によくできている」という印象を受けました。今後この規格の普及に向けて、
せめて認証団体の一覧や、そのサービスの質が明確になるような仕組み作り
が必要であると痛感しました。(文責 コガ)

vol.280:人を評価する考え方が変わってきた?

2008年12月04日 | 評価
筆者は「てんや」という天丼屋チェーンが大好きです。ドーデモ良いことですが、最近「天丼500円+お好みで茄子のせ60円+タレ多め」が究極のてんやオーダーであることを発見しました。そんなてんやのカウンターには「私、てんやの社長です(社長のペーパーラジオ)」というコラムが置いてあり、これがなかなか面白いのです。先日のNo13は店員さんに頼んで貰ってきてしまったほどです。しかし後で検索したら、てんやのWebサイトにバックナンバーが掲載されていました。

「てんや倶楽部 社長のペーパーラジオ」
コラムサイトへ
今回ご紹介するコラムは第13回です、既に掲載されている中では「第4回あなたの街のてんやです(2008.7.10)」がオススメです。ホメる事と動機付けに関したコラムで、そのまま稲垣 &波多野 の『人はいかに学ぶか』に事例として出てきそうな内容です。

さて、私が貰った13号には何が書いてあるかというと「人事考課」についてのてんや社長の考え方が載っています。しかもそのタイトルが「絶対評価の嘘」とかなりラディカル。

絶対評価全盛で、どちらかと言うと相対評価は悪者扱いされている昨今、「3000人の人事考課・賞与効果を年3回続けてきた経験」をベースにてんや社長は
「公平な絶対配分はむしろ相対評価の方が実現できる」
としています。その主張の根拠については、上記Webサイトに近々UPされると思いますのでそちらをご覧ください。あるいはてんやにお昼ご飯を食べに行って下さい。もちろんオーダーは「天丼500円+お好みで茄子のせ60円+タレ多め」ですよ。

人事考課のイロハとして「絶対評価=○」を信じてきた私にとって、かなり新鮮な内容でした。とはいうものの、大学に異動になってから学生の成績評価で相対評価的な考えを取り入れているため、てんやの社長の主張に同意する部分が多々ありました。

『内田樹の研究室』~人を見る目~
さて、時を同じくして、もう一つ評価に関して興味深いBlogを発見しました。
内田先生のBlogへ

こちらは全文読むことができるのでぜひご一読下さい。
内田先生は、
「最近、客観的根拠といった誰にでもわかるもの、皆が見えるものを基準にして、すべての価値を考量する傾向が強くなった。でも未来を切り開くためには、誰でもできる過去の業績を評価するのでなく、ある人が「これからするかもしれない仕事」を予測する力=人を見る目が大事」

としています。だからといってそれはそれは全くの山勘ではありません。

「私たちは根拠にもとづいて「推理」しているのである。しかるに、この推理の根拠は数値的にはお示しすることができない。推理の根拠が存在しないからではない。推理の根拠が限られた時間内に列挙するには「あまりに多すぎる」からである。」
とおっしゃっています。

大学の認証評価しかり、ティーチング・ポートフォリオしかり、何かと「客観的事実=エビデンスに基づく評価」という考え方に感化されていた筆者にとっては大変刺激的なブログでした。かつて私の尊敬する心理学者であるH氏が「コンピテンシーでは未来を評価できない」といった趣旨の事を話していたことをふと思い出しました。

これら2つのコラムから
「評価の原則やマニュアルに流されるな。目の前にいる被評価者をしっかり見
つめて、でどう評価するのが一番良いのかを自分の目とアタマで考えろ」
というメッセージを筆者は感じました。
皆さんは「相対評価」と「人を見る目」どうお感じになりましたか?

vol276:認証評価の現段階

2008年11月03日 | 評価
先日発行の「IDE現代の高等教育」というちょっとマニアックな高等教育研究の雑誌で「認証評価の現段階」というテーマの特集を行っていました。第三者評価機関による大学の評価を義務づけた認証評価制度が発足したのは2004年、今年で5年目となります。
教育提供者を評価するという新たな試みは果たしてうまくいっているのか?実際に評価を受けた大学、そして評価を実施した評価機関、双方の立場の人が制度導入5年目の今を語る大変興味深い特集号となっています。

【IDE現代の高等教育】は下記のサイトより購入可能
http://ide-web.net/publication/index.html

なお、大学の認証評価制度についてお知りになりたい方は、下記大学評価情報ポータルのページを参照願います。
http://portal.niad.ac.jp/library/1179798_1415.html

認証評価を受けた側の意見
評価された側のレポートは一橋大学、信州大学など全部で7つありました。どれも大学としての意見でなく「実際に認証評価を受けた組織にいた一人としての個人的な意見」という断り書きのもと執筆されています。認証評価制度そのものの意義に疑問を唱えるレポートはありませんでしたが、制度の改善を求めるものから淡々と制度実施時の事実を述べるものまでその内容はバラエティに富んでおりました。

認証評価制度に対する肯定的な意見としては
・自分達の活動を自ら振り返り、改善策を検討するきっかけとなった
・学部を横断した一体感を醸成できた
・第三者的な観点から自大学の教育研究組織体制を確認できた
・自分達では気がつかなかった大学の長所を認識することができた
等が挙げられています。

一方、認証評価制度に対する課題に関する意見としては、下記のような意見があがっていました。それらを便宜上下記のように、
A)実施体制に関する意見
B)実施プロセスに関する意見
C)評価基準とその解釈に関する意見
の3つに分類してみるました。

A)評価実施体制
・評価をうけるためのエネルギーやコストが膨大
・評価機関と大学の協働のありかたが対立的
・訪問調査日程が短い

B)評価実施プロセス
・本調査の前の予備調査が機能していなかった
・訪問調査時の面談が不活性に終わった
・マスコミを通じて公表された「不適合評価」の公表のあり方
・客観的な事実を価値判断する際のメソッドの未熟さ

C)評価基準および解釈
・基準の解釈指針のブレ
・表面上見える指標でのみの評価
・選択的評価事項についての評価機関のスタンスの変化

個人的にはA)の「評価をうけるためのエネルギーやコストが膨大」という意見が沢山書かれているかと思っていたのですが、その事を指摘する大学は比較的少なかったようです。逆に多かったのは評価基準やその解釈に関する意見です。厳格な基準を作りすぎると、各大学の独自性を損なう評価基準になってしまう可能性がありますし、逆に緩くしすぎると解釈にブレが生じ易くなるという難しい側面をもった問題だなぁと感じました。
こうした評価にまつわる問題は、企業の人事考課制度の問題とよく似ています。個人的には、A)にあがっている「評価機関と大学の協働のありかた」が最も重要と考えます。「チェックする側VSされる側」という対立の構図になってしまうと「評価のための評価」に陥る危険性が高いからです。認証評価を通じて大学の改革改善につながる動きを生み出すためには、両者の建設的なコラボレーションが必要といえます。

認証評価を実施した評価機関の意見
一方の認証評価団体側の意見はどうなっているのでしょうか?2008年10月現在、大学認証評価を実施する団体としては以下の8団体があります。

(独)大学評価・学位授与機構 http://www.niad.ac.jp/
(財)大学基準協会 http://www.juaa.or.jp/
(財)日本高等教育評価機構 http://www.jihee.or.jp/
(財)短期大学基準協会 http://www.jaca.or.jp/
(財)日弁連法務研究財団 http://www.jlf.or.jp/index.php
特定非営利活動法人ABEST21 http://www.abest21.org/jpn/
特定非営利活動法人国際会計教育協会 http://www.jiiae.org/
特定非営利活動法人日本助産評価機構 http://www.josan-hyoka.org/

今回のIDEでは上記の内、日本助産評価機構を除く全ての評価機関の方からの論文が掲載されています。

評価された側のレポートでは、比較的「本音」が垣間見られたのですが、評価する側はややおとなしめのレポートが多いようです。各機関とも各評価機関の実施している評価方法の概要と、これまでの実績や課題について比較的淡々とまとめています。

自己点検・評価プロセスの改善を求める声
評価機関の評価の事前に各大学では「自己点検・評価」を実施し、その結果を「自己評価書」等にまとめて報告します。評価機関側からはその「自己点検・評価」をもっと改善して欲しいという意見が寄せられていまた。
(独)大学評価・学位授与機構の実施アンケート調査の結果によると、73%の大学大学が「分かりやすい自己評価書ができた」と回答しているのに対し、評価者機関側の「自己評価書は理解しやすかった」という回答は49%に留まっていました。また、(財)大学基準協会のレポートでは、「自己点検・評価の基礎となる目標設定が必ずしも十分でない」「法的義務を果たすことばかりに奔走しその行為が形化・形骸化する」といった厳しい指摘も提示しています。

評価料 How much?
さて、この評価制度一体いくらぐらいの費用がかかるのでしょうか?
(財)日本高等教育評価機構のレポートの中に評価料についての説明がありました。基本費用200万円で、1学部あたり50万円、1研究科あたり25万円が追加になるということです一見高そうに思えますが、実施内容の工数を考えると納得のできる金額かもしれません。多くの評価機関が、評価にかかる作業量とその人材確保についての課題を提示しているとこ
ろをみると、それでも割が合わないのかもしれません。

専門職大学院系の評価団体
専門職大学院系の評価団体の中では、(財)日弁連法務研究財団のレポートは興味深い内容ですた。この団体は法曹の実務家(裁判官、弁護士、検察官)と研究者によって構成される団体が評価している点で、大学基準協会等「大学人」同士の同僚による評価(ピア・レビュー)とは異なるからです。また弁護士の方がお書きになっているため、論旨が明確でズバッと問題点を指摘しています。例えば評価の客観性・公平性という点については、大学評価・学位授与機構は数値等を用い評価基準の客観化を重視しているが、日弁連では、時代によって法曹養成の方法は変化するので、数値でなく大学院の挙げる理念との整合性で評価している等々です。

残る国際会計教育協会とABEST21に共通している特徴は、グローバルスタンダードの視点です。国際会計教育協会では国際会計士連盟の教育委員会が公表している「職業会計人のための国際教育基準」を参考にしています。さらに中国や韓国に呼びかけアジアの中での会計教育の水準の向上や質保証の枠組みを検討中とのことです。

一方のABEST21では、20名の評価委員会の委員長に外国ビジネススクールのディーン(教務担当副学長)を招聘する等で国際的な視点を入れています。さらにABEST21では、認証評価委員会自体を東芝やソニー、日産といった日本を代表するグローバル企業の会議室で開催し、企業経営の声を評価に取り入れると同時にビジネススクールの関心度向上に貢献しているそうです。

まとめ
先週、(財)日弁連法務研究財団が平成20年上期の認証評価結果を公表しました(下記URL参照)。
http://www.jlf.or.jp/work/ninshohyoka_2008-2latter.shtml

今回、山梨学院大学法科大学院、京都産業大学法科大学院、東海大学法科大学院の3法科大学院に対して不適合の評価結果を公表しています。

平成19年度に大学評価・学位授与機構が行った法科大学院の認証評価においても、9法科大学院の内4法科大学院が適合していないとする評価結果を出しています。不適合になったからといって、直ちに営業停止になるとか補助金が削減されるといったようなことはないのですが、学生募集に対する影響が懸念されます。

一般の大学やその他の専門職大学院に比べて、法科大学院の評価だけは、かなりシビアな世界になっているようですが、この背景には、今年に入ってからの法科大学院の統廃合の議論や、弁護士会が中心となって法曹人口増加反対する議論が活発化していることと関係あるのでしょうか?

いずれにせよ、各大学の改善とアカウンタビリティの確保を目指し、日本の高等教育機関によいカタチで認証評価制度が定着してもらいたいと願います。

vol.257:自社版Webテスト

2008年01月16日 | 評価
年末から年始にかけて、自社版Webテストの開発・運用の話を立て続けにいただいております。年度末までに、社内マニュアル(情報セキュリティや文書管理、労務管理等)に関連した内容の知識確認テストを実施しなくては・・・というケースがほとんどです。お話を聞くと、マニュアルを配布して社員へ○○の徹底を図ったものの、「配布したマニュアルをきちんと読んで理解しているかをを確認していない」という理由から監査でNGとなり、その問題解決のためにWebでの修了テストの活用を考えたという企業が多いようです。

修了テストに求められる用件
まず、多くの企業でASPでの運用を求められます。時間も予算もないので社内にLMSをあらたに導入し、コンテンツも作成することは現実的に難しいということです。

次にランダマイズの機能を求められます。これも単純に100問のうちから10問出題したいというものでなく、出題範囲のムラをなくすため、10~20の出題領域を設定、その各々の領域内でランダムに出題するというニーズが多いようです。

三番目はシンプルな操作性です。短期間で実施するため、見てすぐ分かるシンプルな操作性が求められます。最後に問題パターンのフォーマットです。どんな問題でも作れますよ。というものより、いくつかの出題形式や記入要領が定められていたほうが、内製する際に都合がよいとのことです。

SANNO KNOWLEDGE FIELD修了テストモード
本学のeラーニングSANNO KNOWLEDGE FIELDでは、修了テストのみを実施する「修了テストモード」が実装されています。この機能を用いることにより、社内マニュアルの知識確認テストを実施することが可能です。年度末までにやらねばならない知識確認がございましたら、ご相談ください。

vol164:チョコレート工場の秘密と評価の視点

2005年10月07日 | 評価
Amazonのカスタマーレビューでの酷評
先週号で「チャーリーとチョコレート工場」という映画のミニネタを掲載しました
が、性懲りも無く、eラーニングとこじつけた続編第二弾です。
映画の後、ロアルド・ダールさんの原作ももう一度読んでみたいと思い、この本の
Amazonのカスタマーレビューを見てみると、かなり凄い状況になっていたというの
が今回の話の発端です。

実はこの本、田村隆一さんという超有名な詩人&翻訳家の訳が有名でした。しかし
最近、柳瀬尚紀さんという翻訳家の中ではかなりクセのある人の新訳によってシ
リーズ化されました。この柳瀬訳による「チョコレート工場の秘密」への批判が、
上記Amazonのカスタマーレビューにどばーーーーっと溢れているのです。
私自身は、ジョイスの「ユリシーズ」翻訳以来の柳瀬ファンのため、ここまで書く
のは「ひどいよ~」と思うのですが、ここでは翻訳論争の話でなく、eラーニングで
もなにかと議論の的になる「コンテンツの評価」の話をしたいと思います。

評価の3つの視点
何かを評価する場合、大きく3つの視点があると考えています。一つ目は「自己点
検・自己評価」という視点です。コンテンツを開発したり教育を実施する者が、自
らを客観的な評価基準や尺度に従って評価するものです。教育でいうと、最近自己
点検結果をWeb上に公開する大学が増えていますが、これなどは「自己点検」の典型
的な例といえます。グーグル等で「大学自己点検」と入力し検索すると様々な大学
の評価結果を見ることができますので参考にしてみてください。

二つ目は「第三者評価・外部評価」の視点です。大学でも最近外部評価が義務付け
られるようになりましたし、金融機関の格付けから住宅の性能表示まで、様々な分
野で外部評価という仕組が一般化していますね。

そして最後が今回取り上げる「ユーザー評価」です。話が長くなりました
が、Amazonのカスタマーレビューはこのユーザー評価の典型的な例となっていま
す。価格.com(http://www.kakaku.com/)の「くちコミ情報」等もユーザー評価の
典型的な事例だと思います。

ユーザ評価の強み弱み
ユーザー評価の強みは、ユーザーの視点での生の声が確認できるという点にありま
す。メーカーのカタログや雑誌の情報では得られないユーザーの生の情報は、教育
コースの選択や商品購買に最も役立つ情報といえるでしょう。

しかし、弱みもたくさんあります。最大の弱みは、ユーザーですからあくまでも主
観による評価でしかないという点です。たくさんの好意的なコメントが寄せられる
場合もあるし、その逆もある。またそれらが、本当のユーザーによって書かれたも
のなのかどうかは分からず、宣伝によるものだったり、競合による誹謗中傷でない
とは言い切れない側面があります。さらに人気商品にはコメントがつくかもしれま
せんが、めったにユーザーのいないコンテンツはいつまでたっても評価が定まらな
いという事態も発生します。

ユーザー評価コミュニティ=eラーニング?
こうした3つの視点の評価は「どれが一番良いか」という問題でなく、様々な視点
から評価すること自体が大事だと思っています。また妥当な評価尺度や評価基準を
設定するのが難しいことは言うまでもありません。

さらに言えば、こうしたユーザー同士の評価の場やコミュニティー自体が学習の場
とも言えます。私は商品の購入を検討するとき、前述の「価格.com」とよく参照す
るのですが、カタログデータでは得がたい製品の特徴や、価格の相場を学ぶことが
できます。これぞ正にパフォーマンスをサポートするeラーニングなのではと思うの
ですが、皆さんはどう思われますか?

ちなみに、柳瀬訳の「チョコレート工場の秘密」は最高によかったです。普段マン
ガばかり読んでいる娘も夢中になって読んでおりました。