Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

008 G型L型大学論

2014年11月08日 | ニュースのキーワード



GとL
野球好きなら、ジャイアンツ対ライオンズの日本シリーズを想像しますか。
韓国通ならLG(ラッキーゴールドスター)グループを思い出すかも。
外車ファンなら写真のメルセデスベンツGLクラスかも知れませんね。

しかし、今回のGとLはGlobalとLocalです。
最近ネットで話題となった冨山和彦氏のグローバル型大学とローカル型大学
の議論について、ひさびさ登場のナカダくんが鋭くツッコミます。

>>>>>>>>>>>ここからナカダくんの記事>>>>>>>>>>>
皆さんご無沙汰しております。ナカダでございます。SANNO Learning Magazine
が休刊となって以来、約8ヶ月ぶりの投稿となります。実は、かれこれ1ヶ月前に
コガ編集長から当コーナーへの執筆を依頼され、「喜んで書かせていただきます」
と即答していたのですが、「とはいえネタがない」「週末にイベントが続いた」
といったよんどころのない事情で延び延びとなっておりました。誠に申し訳あり
ません。今回は書評ではなく、先月からネット論壇を中心に話題となっている
「G型大学・L型大学」論について、少しばかり私見を述べさせていただきたい
と思います。

さて、今回のテーマは「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度
化に関する有識者会議(第1回)」で配布された「我が国の産業構造と労働
市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」(冨山和彦
委員提出)という資料の提言内容についてです。
(何と長い会議名と資料タイトルなんでしょう。)

この資料は文科省のサイト上で公開されております。(下記をクリック)
我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性


G型L型といっても新しいガンダムの話ではなくて、Gはグローバル経済圏、
Lはローカル経済圏を意味する記号です。「グローバル経済圏で活躍する人材
を養成するのはごくごく一握りの大学(G型大学)に留め、その他はローカル
経済圏の生産性向上のために徹底した職業訓練を施す教育機関(L型大学)
にせよ」というのが上記の提言の骨子になります。この提言については
ネット論壇を中心にすでに議論百出しており、「G型 L型」でググってみれ
ば、2時間は余裕で潰せるはずです。
したがって、今さらこの提言の賛否を論じたところで、Googleの検索結果が
1件増えるだけですので、少し視座を変えてみたいと思います。

まず、現行の学校教育法では「大学」の目的は次のように定められています。

第八十三条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く
専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを
目的とする。
2 大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社
会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

この条文が大学の現状から乖離していることはすぐに分かります。そもそも
日本にある781校(2014年5月時点)の大学全てを、70文字足らずで一括りに
定義すること自体ムリなのかもしれません。冨山委員は「新たな高等教育機
関であるL大学」の役割を、「生産性向上に資するスキル保持者の輩出(職
業訓練)」と述べていますので、L型大学を設置するには、現行法を改正し、
L型大学の目的を定義し、その目的に適合した新しい大学のカテゴリーを設
置する必要があるものと思われます。
(G型大学は現行法のままでも設置可能でしょう。)

しかし、大学の目的を細分化し、目的ごとに大学を種別化しようという試み
は今に始まったことではありません。政府で公に議論されるようになってか
らでも、少なくとも40年は経っています。1971年(昭和46年)の「四六答
申」では「高等教育の多様化」を掲げ、かなり具体的で踏み込んだ提言をし
ています。特に「第3章 高等教育の改革に関する基本構想」は、今読み返
しても全く古びていません。G型L型大学論に興味を持たれた方は、まずはこ
の四六答申からご一読いただきたいと思います。

今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について(答申) (第22回答申(昭和46年6月11日))

しかし「古びていない」というのは四六答申の先見性が優れているからだけ
ではありません。むしろ40年前に提起された問題が今に至るまで解決されて
いない点を(特に高等教育を生業としている者は)重視するべきでしょう。
つまり私はG型L型大学の是非を考える前に、大学の種別化が必要だと提唱さ
れながらなぜ今に至るまで種別化されていないかのか?を改めて問い直した
いと考えています。日本の大学を巡る問題がこれ以上先送りできないのであ
ればなおのこと、過去の議論と政策の帰結をきちんと検証してから議論に着
手していただきたいものです。

最後に一つ。大学の目的は、上記のとおり学校教育基本法第八十三条で定め
られています。大学の目的を再定義するにせよ、あるいは大学の種別化を実
現するにせよ、学校教育法の改正案を国会でしっかり審議していただきたい
と思います。まさか法改正ではなく、法解釈の変更で大学の再定義(種別
化)を成し遂げるという裏技を企てたりはしていないでしょうね? 実はワ
タシはそれが一番心配なのです、はい。
<文責 ナカダ>

>>>>>>>>>>>ここまでナカダくんの記事>>>>>>>>>>>
さて、ローカルな大学の現場を7年経験しているコガとしては、冨山氏の
「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の
今後の方向性」の内容は、嬉しい反面、どうもおもしろくない部分もありま
す。

嬉しいのは、最近猫も杓子も「グローバル人材育成」ばかりを叫んでいる中
で、ローカルなマーケットの人材育成に光を当ててくれたという点です。一
方で、おもしろくない点は議論を分かりやすくするためか、Lの人材育成を
極端に表層的な知識・スキルに偏ったものとして説明してしまっているとこ
ろです。

本来、グローバルだろうが、ローカルだろうが、結局根っこのところで必要
となるコンピテンシーは似たようなものではないかとコガは考えているので、
ローカルな世界を小手先だけの免許取得や会計ソフトの使い方に振るのはち
と行き過ぎではないかと考えております。
さらに話をややこしくしているのは、今年度より専門学校に「職業実践専門
課程」というのが始まっておりまして、冨山氏の主張する職業訓練を中心と
する大学との区分けがとても難しい、というよりほぼ一緒のコンセプトなの
です。

さてさて、この議論どのような着地点を見出すことができるのでしょうか?

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