Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

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001:反転授業は札幌で

2014年08月12日 | セミナー学会研究会見聞録


久々の原稿ということで緊張しております。
Learning Tomatoとしての第一号は、話題のMOOCについての受講体験記となります。

■素直になれるコンテンツ
長年教育研修の仕事に携わってきた影響で、コガはあらゆる教育を素直に受講する事ができない体になってしまいました。純粋な受講者として履修しようと思っても、つい「あっこの教え方自分の授業にも使えそう」とか、「自分だったらこういう風にコンテンツ作るのだけどなあ」等等、つい提供者目線で教育コンテンツを観察してしまうのです。

しかし、今回履修したMOOCプロバイダgacco(http://gacco.org/)の提供する『オープンエデュケーションと未来の学び』はとても素直な気持ちで履修することができました。年を取りコチコチに乾燥した私の心の中に素直な気持ちが芽生えてきとは到底思えないので、今回履修したコンテンツの作りが非常によくできていたためと考えるのが妥当そうです。

■教材の内容と構成
さて、この講座、単にMOOCとは何かを学習するのでなく、オープンエデュケーションという概念の中でMOOCを位置づけ、その現状と未来について体系的に学習できる内容となっています。全体は以下の4週に分かれています。

Week1 オープンエデュケーションとは何か
Week2 MOOCとは
Week3 オープンエデュケーションが進む背景と課題
Week4 オープンエデュケーションが変える学びと社会

各週に10~15分の講師映像+PowerPoint+ナレーション(テキスト表示)教材が5~6用意されており、それぞれに2問の理解度クイズが出題されます。また2週目と4週目には記述式レポートがあります。理解度クイズ(配点60点)とレポート(配点40点)の得点合計が57点以上となると本科目合格となります。

正直申しますと、理解度クイズの難易度はあまり高くありませんでした。国語的なセンスがあれば、内容が分からなくとも正答が分かる問題も多かったので、授業動画を全く閲覧しなくても、もしかしたら合格できたかも知れません。私が放送大学の科目履修でよく使う作戦です。

しかし、今回はすべての講義コンテンツを閲覧した上でクイズにチャレンジしました。手を抜かずに学習したくなる教材の品質が確保されていたからです。

■学習方法の特徴
履修者の理解度に合わせ、複数の学習方法が選択できることも今回のコンテンツの魅力向上に貢献していました。各週のコンテンツは
(1)重田先生の音声+動画の映像
(2)説明スライド(パワーポイント)
(3)上記パワーポイントスライドをダウンロードできるPDFファイル
(4)重田先生の音声の字幕

から構成されています(下記画像参照)。



じっくり学びたい人は、(1) (2)を中心に通常のeラーニング学習スタイルで学びます。ある程度前提知識があり、テキパキと学修したい場合は、(4)を読み、分かり辛いところだけ(1) (2)に戻るといった方法で学習することも可能です。さらに後で復習したい場合は(3)を活用する、といった具合に様々な学習スタイルでの学びを可能にしています。コガはテキパキ学習スタイルをとっていたのですが、字幕の読んでいるところをクリックすると、その字幕部分の(1)重田先生の音声+動画の映像にジャンプしてくれる機能があり、これがとっても便利で、学習のストレスを軽減してくれました。

また各週のコンテンツ以外に学習者のディスカッションボードが設定されています。コンテンツの中で、このディスカッションボードの活用を促したり、学習プロセスの中で活用を義務付けたりしていないのですが、かなり多くの発言とディスカッションが進行していました。

一般にeラーニングでのディスカッションボードは学習者間の相互作用や協調学習の観点、教える側と学ぶ側の距離を縮めることを意図して設置されます。しかし提供側の思いとは裏腹に、学習者が自発的な意思に基づきディスカッションボードを活用するケースは極めて稀です。なので、このコースでのディスカッションボードの活用頻度は、従来のeラーニングではちょっとありえない現象だったのです。その理由は一体なんだったのでしょう?

つい語りたくなるようなコンテンツだったからなのか?
元々学習している人の問題意識が高かったからなのか?
MOOCの世界は従来のeラーニングとは異なる学び手の意識が萌芽しているからなのか?
とても興味深い点です。

■北海道での公開講座
最後に8月8日に札幌学院大学で開催されたでの公開講座の概要をお伝えします。この公開講座はMOOCでの学習の「補習講座」という位置づけで開講されました。従いまして前半は、MOOCでのコンテンツを履修しての質疑応答、ディスカッションがあり、後半は最終レポートをグループで検討するという内容となっていました。

ちなみに最終レポートの内容は

オープンエデュケーションが広まる世界に生きるある架空の人物のストーリーを想像し、その人生にオープンエデュケーションがどのように関わっていくかを書いて頂きます。自分とは異なる主人公を設定し、その主人公が何らかのオープンエデュケーションのサービスを使い、そこで得た学びが主人公の人生を良くするストーリーを書いて下さい。

というものでした。最終レポートにはどういった観点で採点するかという基準(いわゆるルーブリック)も示されており、さらに、そのルーブリックを用いて他の学習者のレポートを評価するというアクティビティが、科目修了のための要素となっていました。オンライン学習では他の学習者の存在が希薄になってしまいがちです。そうした欠点を補い、学びを社会構成主義的なものに高めていく上で有効なアクティビティと言えます。

さて公開講座の報告に戻りましょう。
この検討グループのメンバーを決める際に使ったアイスブレイクが秀逸だったので紹介します。まず受講者全員に弁当の醤油入れのようなボトルを渡します(写真参照)。このボトルの中には匂いを発する飲食物が入っています。匂いにはカルピス、香辛料、ハーブ等いくつかの種類があります。同じ匂いのボトルを持っている人同士がグループワークのメンバーです。自分のグループのメンバーを探すため、全員で匂いを嗅ぎ合います。私は4人のメンバー中、1人だけ探し当てることができました。探し当てられなくても、最後にボトルに貼ってあるナンバーを、とある方法で計算すると自分のグループがわかる仕組みになっています。



そんな我々「カルピスフレーバー」チームが考えた最終レポートのストーリーは、千葉の勝浦に住む元サーファーのママが、子育てひと段落した後に、MOOCで環境問題の学習をしたことをきっかけに、海岸の美化清掃を行う活動を開始し、それが全国的な活動に広がっていくというものでした。他チームのユニークでかつありそうなストーリーを作りMOOCの活用を考え・発表していました。

■まとめ
公開講座については、意識の高い参加者が多かったので「補習」という位置づけより「発展学習」の場として位置づけた方が、満足度が高かったかなあと感じました。ただ参加者の雰囲気は、集まってみないと分からないので企画する側としては大変かもしれません。MOOCでの学習の途中で、「このコースに関連して、あなただったらどんな公開授業を受けてみたいか」といった内容のレポートを書かせてもよいかなと思った次第です。

いずれにせよ北海道まで行く価値のある公開講座でした。
ちなみにこの『オープンエデュケーションと未来の学び』の履修者数は7200名
平均年齢45.9歳。8割以上が短大卒以上の学歴だったようです。
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