Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.475:オルタード・カーボン

2013年03月25日 | eラーニングに関係ないかもしれない1冊
オルタード・カーボン
リチャード・モーガン
アスペクト


入院中コガがやっていた事は、仕事が1/3、静養が1/3、そして残りの
1/3で今まで積んでおいた本を読んだり、タブレットPCでゲームをやって
いました。コガが入院していた病院はベッドでの通話もOKというぐらい携帯
の使用にかなり寛容だったので、「t.free(テザーフリー)」というソフト
を用いてテザリングし、パソコンでお仕事をしておりました。ちょうど2013
年の教材の改定が佳境を迎えている時期だったので、クラウドに保存した教
材を病院のベッドにて作業を行っていました。クラウドやモバイルテクノロ
ジーの進展によって、入院中でもかなりの業務ができるようになったのだな
あと思った次第です。

しかしベッドの上でPCの画面をずっとにらめっこするのは限界があります。
ということで、本の厚さから購読を躊躇していた購入済みの本を読破するこ
とにしました。まずは読みかけだったレイモンド・チャンドラーの『ロン
グ・グッドバイ』(解説込579ページ)を片付けました。そして、2冊目に選
んだのが今回ご紹介する『オルタード・カーボン』です。こちらは上下巻合
わせて、757ページという大作です。

この作品、ジャンルはサイバーパンクなSFなのですが、ストーリーは完全に
探偵もの、しかも入院時最初に読んだチャンドラーの世界によく似たテイス
トのハードボイルド小説なのです。以下は出版社のサイトにあった本書の紹
介文です。

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二十七世紀。死はもはや永遠ではない。デジタル化された人間の心は小さな
メモリーに記録され、頭部のつけねに埋め込まれている。肉体が衰え死を迎
えるとメモリーが残る。それを維持し外側の肉体を買う金がある人間は永遠
の生命を得る。犯罪者は精神のみを収容庫に拘禁され、財力がなければ肉体
は売られる─。元エンヴォイ・コ-ズ(特命外交部隊)隊員タケシ・コヴァ
ッチは百七十年の保管刑半ばに釈放され、見知らぬ男の体にダウンロードさ
れた。大富豪ローレンス・バンクロフトの自殺の真相を究明すれば、謝礼と
新しい肉体が手に入り恩赦を受けられるという。タケシは六週間の期限つき
で調査することになった。
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本のプロローグ部分、開始4ページで主人公のコヴァッチは殺害されます。
普通の小説だったら、続く第一章で時間をプレイバックし、その殺害がある
までの出来事を小説にするのですが、この本は違います。肉体の死と心の死
が分離しているため、肉体が死んでも新しい肉体(本書では”スリーブ”と
呼ばれている)に心の情報をインストールしてあげれば、「中の人」は生き
続けることができます。だから主人公のコヴァッチも「心」を元警官のマッ
チョなスリーブにインストールされ、シャバに復活するところから第一章が
始まります。

この本の面白いところは、人のアイデンティティというのは、「心」つまり
「中の人」だけで独立したものなのか、それともスリーブが変わることによ
って、変化するものなのかという点を常に読者に考えさせるところにありま
す。主人公のコヴァッチが最初に入ったスリーブの元の住人(?)がヘビー
スモーカーであったため、禁煙者だったコヴァッチが無性にタバコが吸いた
くなってしまうという設定もあったりします。その後コヴァッチは4回ぐら
いスリーブを変更することになります。ある時は「女性」のスリーブに転送
させられたり、あるいは同時に2つのスリーブにインストールされたりとい
ったシーンもでてきます。

昨年この小説の映画化権を「シャッター アイランド」等のプロデューサー
のブラッドリー・J・フィッシャーが獲得したそうですが、複数人で一役を
演じるということが映画で表現できるのかか、とても楽しみです。

さてこの本を読んだ後に、たまたまカフカの『変身』を読みました。『変
身』でも主人公のグレゴールが、心はそのままに肉体だけが甲虫になってし
まいます。家族の対応は徐々に変化し、また甲虫の中にインストール?され
ているグレゴールの「心」も次第に変化してしまいます。体は心に影響を及
ぼし、全く独立したものとして存在しないのだろうと思った次第です。

今回『変身』を、AmazonのKindle whitepaperという電子ブックで読みまし
た。このハードは安い割には使い勝手もよく、目にも優しいので大変気に入
っています。考えてみると本も「心(文章そのもの)」と「体(紙だったり、
電子ブックだったり)」の2つから構成されています。コガとしては、『変
身』を紙で読む感覚で読了したのですが、もしかしたら「電子ブック」であ
ることが読書に対して何らかの影響を与えていたのかもしれません。強引な
こじつけになりますが、eラーニングも然りです。紙という媒体が電子になっ
た時、そこには作者やユーザーが気づかないうちに、大きな変化が生じてい
るのかも知れません。<文責:コガ>

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2 コメント

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はじめまして、初コメントです! (めぐみ)
2013-03-30 23:55:41
はじめまして!めぐみっていいます、他人のブログにいきなりコメントするの始めてで緊張していまっす|* ̄∇ ̄|ニヤッ。ちょくちょく見にきてるのでまたコメントしにきますね(*・・*)ポッ
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めぐみです! (めぐみ)
2013-04-07 14:03:15
このあいだコメントしためぐみです!覚えてますか?覚えていてくれた嬉しいですw(・-・*)ヌフフ♪せっかくなのでメールできませんか?私ブログとかやってないのでお話がしたいです、アドは nekomegumi77あっとyahoo.co.jpです、待ってますね!(。-_-。)ポッ

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