Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

003代ゼミの事業縮小と2人の男、高宮行男 John Sperling

2014年08月31日 | 教育関連マーケティング情報


今月の23日、大手予備校「代々木ゼミナール」が、全国の20拠点を閉鎖し、本部など7拠点に集約することが明らかになりました。代ゼミ事業縮小の理由については様々なメディアで述べられているのでここでは多くは触れませんが、それらの記事をまとめると、

1)少子化への対応の遅れ
2)推薦入試、AO入試等で一般入試を受験する学生が減少したことへの対応の遅れ
3)現役志向が強くなったことへの対応の遅れ
4)中堅私立文系学生から難関校を目指す学生へのターゲットチェンジの失敗
5)大教室一斉授業から少人数クラスへの転換の遅れ
6)買収したSAPIXとの事業融合の失敗

等になります。

1)~3)に関しては外部環境の変化(SWOT分析でいうところのT=Thread=脅威)で、それに対する対策の不備を指摘しているのが4)~6)となります。

外部環境の変化によって、予備校生の数は本当に少なくなっています。Blog記事「予備校生の減少」(データえっせい2014/08/31確認)によると、75~85年のピーク時に20万人以上いた予備校生は、現在2万人強しかいないそうです。潜在市場が1/10に減少しては、いくら対策を打っても焼け石に水です。こうなるまでの手の打ち方や経営体制には様々な異論はあるものの、今回の撤退戦略は妥当な選択肢と言えます。

一方、今回の撤退については、かなり前から練られていたのではないかと様々なところで言われています。私自身20年以上前にある人から「代ゼミが、地方の中核都市の駅近くの一等地に大きい校舎を建てているのは、将来子供の数が減って事業を撤退する時、売却しやすいように考えているのだ」という話を聴いたことがあります。

このことについては下記のWebサイトを参照願います。

【驚愕】代ゼミの恐るべき先見性。予備校から不動産会社に華麗な転身か。既に実績多数

このサイトのまとめに
「こうした事実を見ると、『代ゼミ』経営者は遅くとも30年以上前から、少子化により予備校業態がいずれ苦しくなることを予見して、そのうえで校舎の土地取得や建設を行っていたことになる。そして今、そのアクセルを踏んでいるわけで、ある意味予定通りの華麗な転身プランを実行しているに過ぎないのかもしれない。」
とありました。

コガは「まだ第二次ベビーブームの子供達すら18歳に達していなかった30年前にこうした事を考えていた経営者は一体どんな人だったのだろう?」と思い、代々木ゼミナールの創業者である高宮行男氏を調べてみることにしました。

しかし高宮氏について書かれた書籍はほとんど見つかりません。唯一発見したのは文芸春秋の記事をまとめた『あぶく銭師たちよ!」(佐野眞一 ちくま文庫 1999)という文庫本だけです。この本は、ルポライターの佐野氏が「強烈なカリスマ性や驚くべき錬金術によってバブルを極めた6人の男女」を追うというノンフィクションです。細木数子、鹿内父子等と並んで高宮氏が登場します。ちなみに著者の佐野氏は、2年前に週刊朝日で大阪市長の橋下氏の過去を暴き問題になった人です。

さて本書の内容に戻りましょう。昭和62年(1987)を皮切りにする7年間を予備校業界ではG7(ゴールデンセブン)と呼んでいたそうです。この期間は第二次ベビーブーム世代が大学に入学するため、予備校業界にとってまたとない稼ぎ時でした。この稼ぎ時に最大限の学生を集客するため、代ゼミは徹底した全国展開を開始します。地元の予備校の進出反対の声をものともせず、駅前の一等地を破格の値段で買い上げ、巨大な校舎を次々と建てていくのです。

さて、この高宮氏の経営手法を読んだ時、コガはJohn Sperlingという人物を思い出しました。Sperlingは、全米最大の営利大学University of Phoenixの創設者です。彼も旧来の大学の猛反対に遭いながら、着々と大学のブランチオフィスを全米に展開していきます。働く成人をターゲットとし、そのニーズを的確に捉えた戦略を打つことで、University of Phoenixは急成長を遂げます。一時期は200のキャンパスで授業を実施し、60万人近くが学ぶ大学に成長しました。

しかし、成長は長く続きません。米国での長引くリセッション等の影響を受け、入学者は2011年以降急落します。いまでは往時の半分以下の学生数となり、2013年には113のキャンパスを閉鎖します。このあたりの急なキャンパス閉鎖も代々木ゼミナールに似ています。

そんなUniversity of Phoenix を長年引っ張ってきたJohn Sperling氏ですが、実は今年の8月22日にお亡くなりになっていました。
John Sperling, University of Phoenix Founder, Dies at 93(Bloomberg News Aug 25, 2014)

Sperling氏が逝去した翌日に代々木ゼミナールの事業縮小のニュースが世を賑わせたのも、なにか奇妙な一致を感じさせます。

「学校というのは、地味に着々と経営していくもの」という既成概念に真っ向から挑戦し、成長し、そして縮小していった高宮とSperling。
彼らの教育ビジネスに対する姿勢は異端であったのでしょうか?
それとも早すぎる天才だったのでしょうか?

参考文献
『あぶく銭師たちよ!」(佐野眞一 ちくま文庫 1999)

Vol206:『Rebel with a cause』John Sperling

【追伸】
どうでもいい些細なことですが、写真の代々木ゼミナール横浜校は、毎年コガの勤務校の一般入試会場としてお借りしていました。来年からどうするのかなあ?



vol.444:2012年1~2月度 ニュースのキーワード

2012年03月01日 | 教育関連マーケティング情報
昨年まで「日経MJ教育マーケティング情報」というタイトルのコーナーでお
送りして参りましたが、今年から「ニュースのキーワード」とタイトルを変
え、内容も多少変更してお送りします。このコーナーではその月の新聞から
気になったキーワード3~4選び、それを皆さんと一緒に考えていきます。
キーワードの範囲も教育関連だけでなく、インターネット、就活、大学問題
などなど幅広く取り扱っていく予定ですのでよろしくお願いいたします。

さて、今回取り上げるのは「圏」「C世代」「縁故採用」の3つのキーワー
ドです。

■「圏」という新しいつながり
「圏の市場、年間4兆円」日経MJ 2012/1/25 2面

「圏」というのは、博報堂生活総合研究所の調査から見えてきた人々の新し
いつながりのかたちのことです。同研究所では、世の中の集まりやつながり
を、「テーマがある-メリットがある」という縦軸と、「クローズドである
-オープンである」という横軸で分類し、

テーマ+クローズド=コミュニティ
テーマ+オープン=圏
メリット+オープン=ネットワーク
メリット+クローズド=縁(地縁・血縁)

と分けて「圏」のポジションを明確にしています。

現在日本で「圏」を持つ人は2人に1人、一人平均で2.6個の圏を持っている
そうです。そして「圏」1つに対し、月平均で3,212円を消費しており、こ
こから市場の規模を計算すると4兆円を越えるということです。この圏を中
心にビジネスチャンスを捉えていったらどうだろうかというのが記事の主張
でした。

考えてみるとコガもいくつか「圏」らしき集まりに関わっています。まず
「FMICSあざみ野」という毎月開催される大学教職員が集まる勉強会があり
ます(http://goo.gl/17zcV)。経費は勉強会の会場代と飲み代合わせてち
ょうど3,000円なのでほぼ全国平均と一緒ですね。他には大学の近くの畑を
大山の旅館組合の方々と耕し、野菜を作るという活動も行ったり、スポーツ
クラブで一緒に水泳のレッスンを学ぶ「圏」があるので、ちょうど3つの
「圏」を持っていました。平均的な日本人ですね~。

「圏」をビジネスチャンスとして捉える場合、欠かせないのは「学び」の要
素ではないかとコガは考えます。勉強会やスポーツクラブは言うまでもあり
ませんが、畑作業も、専門家のアドバイスさえあれば、大豆が全滅すること
も、収穫前のトウモロコシを全部猿に食われることもなかったと思います。

これを社会人向けの教育サービスという視点から考えると、従来のB2Bの法
人マーケットとB2Cの個人市場マーケットの中間に「圏」を対象としたB2K
マーケットなるものが出現するかも知れませんね。

■ジェネレーションC(C世代とは)
「C世代が開く市場」日経MJ 2012/1/30 7面

今までアメリカの世代論は、

X世代(1960年から1974年までに生まれた世代)
Y世代(1975年から1989年までに生まれた世代)
ミレニアム世代(1980年代から1990年代に生まれた世代)
Z世代(1990年代から2000年代終盤に生まれた世代)

などの用語がありました。これらは主に出生時期で世代区分を行っているの
ですが、出生時期以外の要素で世代を括ろうとしているのがこのC世代の特
徴です。一般に"C"はコミュニティーや、クリエイティブの頭文字と考えら
れています。上記記事では、テーマ性を持ったシェアハウスが「クリエイテ
ィブな活動のためのコミュニティー」としてC世代の若者に人気となってい
るケースを紹介しています。
しかし、人によって、コンピューター、コネクト、チェンジ、コンテンツ、
コミュニケーション、コラボレーション、コントリビュート、カジュアルな
ど、Cで始まる様々な単語から頭文字を持ってきているそうで、ここまで読
むと一体C世代とは何が共通するのかよく分からなくなってきますね。

C世代的でないものの例としては、ITバブルでガンガン稼いだベンチャー企
業のCEOの行動を挙げています。C世代であれば、個人の金儲けやステイタス
の向上でなく「社会づくり」とか非営利な価値を目指すのだそうです。

確かに日本でも震災後、特に価値観が変化してきたように感じます。社会貢
献やボランティアがより日常的になったり、人々が富の追求やモノを所有す
ることに対してあまり執着しなくなってきたように思われます。人の志向が
そのように変わってきたのだから、会社の目指す方向も真の意味で利潤追求
とは別の方向性に変わっていくのではないかと期待しています。数ヶ月前に
『スペンド・シフト』(ジョン・ガーズマ著、プレジデント社)という本を
読んだのですが、全米中で急速な勢いで増大するC世代的な企業についてレ
ポートされていました。C世代に興味を持ったらオススメの本ですよ。

■縁故採用の是非
「岩波『縁故採用』に波紋」読売新聞2012/02/14 夕刊 13面

最後は、日経MJでなく読売新聞の記事からピックアップしました。岩波書
店が2013年の新卒採用にあたり「著者か社員の紹介があること」を条件にあ
げたことが波紋を呼んでいます。

「応募にこのような制限を求めるのは時代に逆行する行為だ」といった趣旨
の批判コメントや「1~2名しか採用しないのに1000~2000人も応募がくる
のであれば、そのような制限も仕方ないのでは」と言う肯定意見、あるいは
「表向きには一切コネ入社なしと言いながら、そうでないマスコミ等の企業
が多いので、このように正直に表明してくれた方が就活生にとっては嬉し
い」など巷の意見も様々です。

加熱する報道に対し、岩波書店は自社のWebサイト「謹告」の欄で下記のよ
うな見解を示しています。


>>>>>>>>>>小社の「定期採用」報道について──2012年2月6日>>>>>>>>>>

小社の2013年度定期採用をめぐって、新聞、テレビ、ネット上でさまざまな
報道・論評がなされています。しかし、それらのなかには、不正確な、ある
いは誤解を招く報道・論評も見受けられますので、この問題についての小社
の見解を以下に表明いたします。

小社は、いわゆる「縁故採用・コネ採用」は行っておりません。「著者の紹
介、社員の紹介」という条件は、あくまで応募の際の条件であり、採用の判
断基準ではありません。ご応募いただいたあと、厳正な筆記試験、面接試験
を行っております。

この応募条件は、採用予定人数が極めて少ないため、応募者数との大きな隔
たりを少しでも少なくするためのものです。
小社に入社を希望なさる方は、岩波書店著者にご相談いただくか、お知り合
いの岩波書店の社員に直接ご連絡をください。いずれの方法もとれない場合
は、小社総務部の採用担当者に電話でご相談ください。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

コガも今回の岩波の選考方法はたとえ縁故だとしても、採用方法として「あ
り」だと考えています。自力でこの程度の「縁故」を作れないようでは、と
ても出版の編集者としてはやっていけないと考えるからです。そしてもし私
が採用担当者であれば、既に「紹介者」を持っている就活生よりも、この機
会に努力して紹介してくれる人を探してきた学生を優先して選ぶと思います。

しかし、それ以前にこの出版不況の中、なぜ1~2名しか採用しない岩波書店
に、2,000人もの学生が集まるのでしょうか?コガにはそのことの方が不思
議に思えます。などと言いつつ、岩波新書の『就職とは何か─“まともな働
き方”の条件』(森岡 孝二【著】2011)という本を電子書籍で購入してし
まいました。ジャカルタ旅行の折、iPhoneで読んでみたいと思います。
(文責 コガ)

vol.436:2011年度 日経MJ 教育マーケティング情報【今年の総集編】

2011年12月28日 | 教育関連マーケティング情報
今回は年末なので、2011年に印象に残った記事を5つセレクトし、今年の教
育業界の動向を振り返ってみたいと思います。



■朝市場、目覚めた──朝活族に情報発信力、「お知恵拝借」企業も期待。
■2011/01/17, 日経MJ), 1ページ

【記事の概要】
朝活族を対象としたセミナーの紹介記事です。記事では東京・丸の内の市民
講座「丸の内朝大学」の温泉トラベルプランナー講座が紹介されていました。
朝大学に通う人のプロファイルは
 30代前半の未婚女性
 大手企業勤務か専門性の高い職業に就き
 年収600万~800万円
 環境意識が高い
 周囲の情報を使いこなす能力が高い
とのことです。
こうした朝大学には企業も関心を持っており、視察に訪れていた大手食品
メーカー担当者は、「30代前半の参加者は向学心が高く、コミュニティーの
中で情報を発信・提案する人たち。この層と連携して顧客開拓のアイデアを
練り上げたい」とコメントしていたそうです。

【本記事の持つ意味を深読み~企業内教育から企業外教育へ~】
この記事では「朝」という時間の活用について特集しておりましたが、朝だ
けでなく、夜の時間でも「企業外で学ぶ」人が増えたのが今年の傾向ではな
いかと考えております。
従来の「企業内教育」では、企業が社外セミナーを紹介したり、参加費を支
援しておりましたが、これからのスタイルは、ビジネスパーソン自らが参加
する学習会を探し、自腹で参加する「企業外教育」方式に変化しそうです。
長岡先生風に言うと「学びのサードプレイス」。来年以降もますます定着し
ていくでしょう。


■きちりHCM部竹内陵氏─学生アルバイトの就活支援
■2011/04/06, 日経MJ(流通新聞), 3ページ

【記事の概要】
和風ダイニングのきちりは3月から、学生アルバイトの就職活動の支援を始
めました。外食産業では慢性的なアルバイト不足に悩んでおり、時給アップ
以外のアルバイトの応募動機向上を考えた結果、開始したそうです。関西と
首都圏の店舗で営業時間前に始めた就職支援講座には毎回20人程度の学生
アルバイトが参加しているそうです。学生アルバイトからの反響は大きく、
今後は通年で講座を開催していく予定とのことです。
また今後は外食業界以外の就職支援を充実させるため、取引先企業を対象に
したアルバイトのインターンシップや合同会社説明会の準備も進めるとのこ
とです。

【本記事の持つ意味を深読み~教室内教育から学校外教育へ~】
朝活の記事はビジネスパーソンでしたが、学生の学びの場も教室以外に拡大
しつつあるようです。この記事以外にも、学生寮を運営する共立メンテナン
スが「学生寮」の中で就職セミナーや模擬面接、英会話教室を開催したり
(2011年12月14日7ページ)、マクドナルドでもきちりと同様にアルバイト
の就活支援をしたり(「マクドナルド、人材育成、世界目線で──豪モデル
に従業員定着策」2011年9月2日 15ページ)といった動きがあります。現時
点では就活支援という限られたテーマですが、今後「社会人基礎力」全般に
わたる学びが教室外で展開されていくかもしれません。それらが大学内の教
育とうまく連携していくと大学教育は今よりもっと面白くなりそうですね。

■学研HDと市進HDが提携、教材の共同開発も。
■2011/05/13, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

■教育関連企業、異業種と連携、授業でiPad活用──栄光、ベネッセ。
■2011/05/16, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

【記事の概要】
似た内容の記事のため、まとめてご報告します。
前者の記事では、学研と市進が授業の手法を相互に提供するほか、幼児~小
学校低学年を対象とした英語教育コンテンツなど教材の共同開発も目指すと
いった提携の内容が掲載されていました。
後者の記事では、栄光がリンクアンドモチベーションと高校生向けの新型塾
「モチベーションアカデミア(http://www.m-academia.co.jp/)」を開校す
る件と、ベネッセコーポレーションとソフトバンクグループによる東北被災
地の小・中学校向けの電子教育事業開始の件が掲載されていました。

【本記事の持つ意味を深読み~教育事業者間の提携が進む~】
少子化の影響等により、小中等教育の学習塾マーケットでは合従連衡の動き
が激しくなっており、毎月のように同業種間の提携の記事が掲載されました。
こうした提携の動きは社会人教育の分野でも進んでおり、「ベルリッツ、能
率協会と提携、ビジネス英語講座開発」(2011年6月8日 9ページ)という記
事もありました。
同じマーケットの教育事業者が提携したり、初中等教育の事業者と社会人教
育の事業者が提携したり、教室とeラーニングという異なるメディアの教育
事業者が協力したり、提携・連携のタイプは様々です。人口が減少する中、
業界内での合従連衡や統合は今後ますます進んでいくことと思われます。そ
してその波は近い将来大学にも押し寄せてくると思われます。

■パルコ、テナントに「接客大会」─売り場「チーム力」重視
■2011/08/31 日経MJ 6ページ

【記事の概要】
パルコでは自社ファッションビルに入居するテナントを対象に、接客の技
術・スキルを競う「接客大会」を始めました。その特徴は「チーム力」を
テーマにしている点です。一般的な「接客大会」では、各テナントが選抜し
た販売員による個人戦が多いのに対し、パルコはテナント単位のチーム戦で
す。さらに、勝ち進むごとにメンバーを入れ替えるとボーナス点を加算する
独特のシステムを採用することで、チーム力を重視しています。「売り場で
一人だけが輝くのではなく、全員が技術・スキルを高めて売り場全体を輝か
せる」のがその理由です。
ちなみに優秀賞はJR渋谷駅の広告看板で自社ブランドを大々的に宣伝でき
る権利と大盤振る舞い。また接客大会の後は「テナントごとのまとまりが出
て雰囲気が一段と良くなった」とのことです。

【本記事の持つ意味を深読み~コンテスト型人材育成施策~】
接客大会はルミネの「ルミネスト」が嚆矢となりますが、コンテストでの好
成績を目指し、人材育成と職場風土の活性化を図るのはなかなか良いアイデ
アですね。接客コンテストだけでなく営業スキル大会を営業所対抗で実施す
るなど様々な応用が考えられそうです。今まで「研修の企画・実施」が人材
育成部門の中心的な仕事でしたが、こうしたコンテストの企画のように「社
員が自ら学ぶ」きっかけを作ることに部門の役割を広げていく必要があるの
ではないかと感じた次第です。

■国会図書館が電子本を貸す日──有料でデータ開放
■2011/07/08, 日経MJ(流通新聞), 1ページ,

■育て電子書籍、民間団結、「長尾構想」に先手
■2011/07/25, 日経MJ(流通新聞), 1ページ,


【概要】
まず7月8日の記事から。1994年に『電子図書館』という本の中で現在の電子
書籍の世界を予言し、そして現在国会図書館(NDL)館長になった長尾氏
が、NDLの蔵書を電子書籍にし、それを電子書籍流通のプラットフォーム
にしてはどうかという「長尾構想」をぶち上げました。当然ではありますが、
出版業界各社からは、貸し出しの場合の利用料金が低すぎるなどと、反発が
広がっていきました。それらの反論に対し長尾氏は

・電子書籍の流通プラットフォームを一元化すれば利用者の利便性は向上
・米グーグルは出版社に対し有償で実施予定だが、NDLは無償で実施
・さらにNDLは電子化や保存のコストも負担する

等のメリットを語っています。貸し出しの方法としては、「同時期に1人に
だけ無料で貸す」のと「同時に何人かに有料で貸す」という2つの方法を検
討しているそうです。

こうした『長尾構想』に触発される形で、民間企業の動きがここに来て活性
化しています。それらについて書かれたのが7月25日の記事です。
まず「VHS対ベータ」の頃からの宿敵であったソニーとパナソニックが電
子書籍で提携を開始しました。さらにそこに楽天や紀伊国屋書店までもが協
力し、電子書籍を売る仕組み作りを行っています。

前述のNDLの動向だけでなく、AmazonやGoogleといった外資企業に市場を席
巻されてしまう恐れもあるわけで、急ピッチで提携協力の方向が進んでいる
ようです。その象徴が、電子書籍の規格の統一に向けた動きです。こちらも
長年のライバル、大日本印刷(DNP)と凸版印刷が中心となって発足した
「電子出版制作・流通協議会」が「電子書籍交換フォーマット」設定し、現
在複数の規格が存在する日本語コンテンツのフォーマットの変換を容易に行
えるよう仕組みを整備しつつあります。

【本記事の持つ意味を深読み~電子書籍を活用した学び~】
数十年後、2011年は大震災の年と同時に「電子書籍元年」として語られてい
るかもしれません。そう考えてもおかしくないぐらい今年は電子書籍に関す
る業界の動向が賑やかでした。引き金になったのは、スマートフォンの爆発
的な普及です。コガも最近ついにiPhone4Sを購入し、無料で購読できる産経
新聞を毎日読んでいます。自由自在に文字の大きさを変化させたり、読む場
所を指でサッと動かしたり、スマートフォンで文字を読むことに新鮮な驚き
と便利さを感じています。

この電子書籍の動きですが、今後5年間で最も成長すると考えられているコ
ンテンツジャンルが「医療・学問・語学・資格・就職・参考書・辞典」とい
った教育の分野なのです。特に通信教育の近辺で電子書籍を活用しようとす
る動きが活性化しそうな気配です。

しかし、電子化の反動でしょうか?「高級ノート、人生の宝箱──長く使っ
て、大切に残す」(2011年11月16日 20ページ)という記事によると、「モ
レスキン」など高級ノートや手帳を愛用する人も増えているそうです。
かく言うコガも、現在はiPhoneのスケジュール帳を使いこなすことができず、
高級ではありませんが紙の手帳を使っている有様です。いずれにせよデジタ
ル・アナログ双方のイイトコドリをし、個人学習のメディアとして電子書籍
が普通に活用される日も近いかもしれません。

以上5つの記事からあえて共通点を抽出するとしたら「境界の喪失」という
ことではないかと考えます。

企業の内と外
教室の内と外
教育とイベント
異なる事業者
デジタルとアナログ

これらの間にあった境界が曖昧になって混ざり合い、何か新しい世界が生ま
れつつある年、それが2011年だったのではないかと考えます。

来年はどんな一年になるのでしょうか?

vol.432:2011年11月 日経MJ 教育マーケティング情報

2011年12月05日 | 教育関連マーケティング情報
あっという間に11月も最終週なんですね。そこで月末恒例の「日経MJ 教育
マーケティング情報」をお送りいたします。

■少子化への処方箋はどの業界も一緒?
べネッセ、新興国を強化、17年3月期、海外比率25%に。
2011/11/02 日経MJ(流通新聞) 11ページ

【概要】
ベネッセホールディングス(HD)は2013年3月期から5カ年の中期経営計画
を発表しました。教育事業の海外展開の加速と介護事業の拡大により17年3
月期に売上高6000億円を目指すそうです。

海外事業については、現在中国と韓国と台湾で子供向け通信教育を実施して
いるそうですが、今後はインドなどの新興国市場に進出し、海外売上高比率
25%(現在11.7%)を目指すそうです。また介護事業では介護施設を年間25
~30カ所開設していく方針で、進出地域の拡大や低価格帯への参入などによ
り、入居者数の増加を目指すとのことです。

【コメント】
日本の教育ビジネスは、「日本語」という言葉の障壁もあってか、今まであ
まり海外進出に積極的ではありませんでした。しかし少子化で市場が縮小す
る中、幼児~初等教育ではここ数年、アジアを中心とした海外進出が盛んに
なっており、この傾向は今後も続くことが予想されます。とはいうものの、
海外進出はコストもかかるし、一筋縄ではいかない分野であることは確かで
す。他の教育事業者が尻込みする中、ベネッセの"しまじろう君"は孤軍奮闘
して海外への活路を見いだそうとしているようです。

■クラウドシステムを活用した360度人事評価
部下からも人事評価、ジェイアイエヌが新制度、給与とは連動せず。
2011/11/07 日経MJ(流通新聞) 6ページ

【概要】
眼鏡専門店「JINS」を運営するジェイアイエヌは、上司だけでなく部下
や同僚からも働きぶりの評価を受ける新たな社内人事制度「360度フィー
ドバック制度」を開始しました。評価はスマートフォンやタブレットPCを利
用して入力するそうです。人事コンサルティング会社のセレブレインの協力
を得て評価の仕組みを作り、シルクロードテクノロジーの提供するクラウド
システムを利用するとのことです。

【コメント】
早速シルクロードテクノロジー社のWebサイトを覗いてみると、ジェイアイ
エヌさんの導入事例紹介セミナーが開催されるではありませんか。

「3Dフィードバック人事マネジメントの導入効果体感セミナー」
http://www.silkroad.co.jp/jp/events/taiken3d.html

多面評価制度自体はかなり昔から存在しますが、運用の複雑さや、被評価者
をあまりよく知らない評価者が評価するケースがよくある等の理由から、こ
れまであまり普及してきませんでした。しかし、ITを活用したシステムを導
入することで、運用面の改善については期待できそうです。またスマート
フォンやタブレットPCからも入力できる点は、パソコンの台数が少ない店舗
にとって朗報かも知れません。

■おもちゃというには少々高価格ですが、、、
タカラトミー、英単語つくる電子パズル投入。
2011/11/09 日経MJ(流通新聞) 11ページ

【概要】

タカラトミーは、米ハスブロ社が昨年発売した電子パズルゲーム「ボグルフ
ラッシュ」を日本で発売します。これは液晶画面に映ったアルファベットを
組み合わせて英単語をつくるゲームで、本年度から英語が必修科目となった
小学校高学年を主なメインターゲットとしているそうです。希望小売価格は
4,515円。ゲームの概要については下記サイトをご覧下さい。
http://www.takaratomy.co.jp/products/boggleflash/

【コメント】
値段がちょっと高いなあとは思いますが、かなり物欲を刺激する知的トーイ
です。この商品が成功すれば、四字熟語の漢字バージョンを開発したり、
数字と加減乗除記号の算数バージョンを開発したりと、バリエーションが膨
らみそうです。

それにある意味eラーニング的とも言えなくもないですね。

■電子化の反動がこんなところに!
高級ノート、人生の宝箱──長く使って、大切に残す(ヒットの裏側)
2011/11/16 日経MJ(流通新聞) 20ページ

【概要】
1冊1000円以上もする高級ノートが密かなブームとなっています。
人気の秘密は、

・高いノートだともったいないから継続する
・気持ち良くペンが走る(紙質が良い)
・自分で買うなら拘りたい
・金額以上にぜいたくした気分になれる(ブランド品を所持する気分)

などだそうです。ノートの使い道はダイエットの記録や自分の日常を書き綴
ったりと様々ということです。

【コメント】
実はコガも以前に、東急ハンズに陳列してあったモレスキンという高級メモ
帳に心惹かれたことがあったのですが、購入までは踏み切れませんでした。
日頃新聞のスクラップブックに1冊100円のノートを使っているので、「うー
ん世界が違うなあ」とふと我に帰ってしまったためです。しかし、世の中は
スマートフォンやPCタブレットが爆発的に普及しつつあるというのに、今に
なってノートに人気が集まるのは、少し不思議な気もしますね。

■タニタの食堂が丸の内のど真ん中にやってくる!
ビジネスマン需要に的、東京・丸の内に、きちり、タニタと店舗。
2011/11/23 日経MJ(流通新聞) 15ページ

【概要】
続編とあわせて累計420万部という驚異的なベストセラーになったレシピ本
『体脂肪計タニタの社員食堂』のリアルな食堂が丸の内にオープンします。
洋風居酒屋を運営する「きちり」と健康機器メーカーのタニタが業務提携し、
「丸の内タニタ食堂」を来年1月に開業することになったのです。営業時間
は午前11時から午後3時までとお昼限定です。最大のポイントは1食あた
り500キロカロリー前後に抑え、塩分も少なめにした食事。日替わり(800
円)と週替わり(900円)の定食2種類を提供し、食事以外にも無料の健康
相談コーナーも設けるそうです。

【コメント】
先日聞いた話ですが、ある大学で、何が学生の成績に影響を与えるのか様々
な要因との関係を調べたところ、最も相関関係が高かったのが「朝食を食べ
ているかどうか」だったそうです。そんなことから最近「食」が学業や仕事
に与える影響は、予想以上に大きいのではないかと考えています。

なので、低カロリーで栄養のバランスが取れたお昼ご飯が日替わりで提供さ
れる本食堂は、社食のない丸の内リーマン諸氏にとって大変魅力的な筈です。
メニューを2品に絞り込んだり、社員食堂風にセルフサービスにすることで
効率化を図っているようですが、果たして昼間だけの営業で経営が成り立つ
のかどうかやや気になるところです。夜は「居酒屋」でなく、そのスペース
を活用し、健康や食事に関するアフターファイブスクールを実施したら企業
イメージもUPしてよろしいのではないかと個人的には思った次第です。


■若手の活用と採用
若手の発想でプラン企画、リーガロイヤル、登用を積極化
2011/11/23 日経MJ(流通新聞) 9ページ

【概要】
ロイヤルホテルが旗艦施設のリーガロイヤルホテル(大阪市)で若手社員の
登用を積極化しています。宿泊プランの企画や新レストラン開業などを20~
30代中心のチームに任せ、若い発想で新規顧客の開拓を狙っています。

また、今春の人事異動では、50代後半が中心だった部長級ポストに40歳代~
50代前半の人材を登用。さらに新卒採用も来春は30人超と今年入社の2倍に
増やす計画だそうです。これは「中途採用ばかりでは社内が活性化しない」
と川崎亨社長が決断したとのことです。

【コメント】
若手社員を企画開発に登用することで、斬新なアイデアを創造し、それをヒ
ットに繋げるのが狙いの一つかと思いますが、それ以上に「若手社員のモチ
ベーション向上」や「新卒採用時の会社のアピール」にも効果がありそうで
す。若手社員の離職率を軽減したり、優秀な新入社員を獲得できる可能性の
向上が期待できるからです。いずれにせよ「中途採用ばかりでは社内が活性
化しない」というリーガロイヤルホテル社長の言葉は、ここ10年近く新卒が
入職していない本学にとっては耳の痛いメッセージです。

■杜の都でMBA
来春、仙台に経営大学院、グロービス、東北初MBA課程も。
2011/11/25 日経MJ(流通新聞) 9ページ

【概要】
グロービス経営大学院は来年4月、東京、大阪、名古屋に続き、仙台市内に
仙台校を設立し、東北では初めて経営学修士(MBA)の取得課程を持つビ
ジネススクールとします。東北6県の在住者は入学金や授業料を減免するな
ど震災復興支援の側面もあります。そして早期に開講するため、授業には仙
台駅前の貸会議室を利用するそうです。

【コメント】
米国では株式会社立大学を中心に、複数の都市に校舎を設置する「ブランチ
キャンパス」方式が採用されています。通えるキャンパスが複数あることで、
社会人学生が職場の近くで夜間に学べるというメリットが提供できるからで
す。

日本でこのブランチキャンパス形式で大学院を運営している大学は、まだ多
くありません。また貸会議室を教室として活用するというアイデアも、かつ
ての日本の大学設置基準では認可の下りない方法ではないかと思います。
「震災復興」と「規制緩和」いう時流にうまく乗り、新たな事業展開を続け
ている点が素晴らしいですよね。

vol.428:2011年10月 日経MJ 教育マーケティング情報

2011年11月20日 | 教育関連マーケティング情報
**本記事は2011年10月2日に配信したメールマガジンのバックナンバーです**

月末恒例の「日経MJ 教育マーケティング情報」のコーナーです。今回は、
「eラーニング復活か?」「英語教育eラーニング」「アミューズメント施設
と学習」の3つの括りでお届けいたします。

■■eラーニング復活か?■■

■企業向けeラーニング、タブレット対応広がる
■2011/10/07 日経MJ 7ページ


【概要】
eラーニングを使った人材育成支援各社が、提供コンテンツをタブレットや
スマートフォンに対応させる動きが広がっています。ライトワークス社では、
店員向けのコンプライアンスや接客マナーの基本、店長向けの労務管理など
小売業チェーン向けの人材育成プログラム16コースを、今月からスマホとタ
ブレットに対応します。「パソコンを置く余裕がない小型店舗でも、スマホ
からeラーニングを利用できるので利便性が高まった」と評価され、既に
ローソンなどが利用を開始しているととのことです。
また、eラーニング運営のシュビキも「iPad(アイパッド)」などに電
子教材や企業マニュアルなどを提供する新サービス「モバイルビスキュー」
を開始。こちらは「派遣や営業など社員の外出が多い企業でも簡単に使える
ようにして利用を促したい」としているそうです。

【コメント】
スマホやタブレットPCが普及してきたことにより、eラーニングのマーケッ
トが再度活性化してきたように思われます。「eラーニングは『いつでもど
こでも』って言うけれど、パソコンがない場所ではできないからどこでもで
はないよね」とよく言われてきましたが、携帯デバイスの普及はこうしたデ
メリットを解消するのに大いに役立ちそうです。
産能大でも7~8年前に携帯電話を利用したeラーニング(モバイルラーニン
グ)を試験的に始めたことがあったのですが、うまく事業として立ち上がり
ませんでした。原因は携帯用アプリとの価格差と画面の小ささだったと記憶
しております。スマホ+タブレットPCではぜひブレイクスルーして欲しいで
す。

■ホテルオークラ、従業員教育、ネット講座拡充、3倍の100科目に。
■2011/10/10 日経MJ 9ページ


【概要】
ホテルオークラはインターネットを使った従業員教育を強化します。現在は、
本社に籍を置く課長職以上の管理職に30科目のネット講座を提供しています
が、今期中に100科目をそろえ、本社の一般社員にも導入を始めそうです。
その背景には海外事業の強化という重点課題があります。そのために空いた
時間に自由に受講できるネット講座の導入し、グループ全体のグローバル人
材育成強化を図るそうです。

【コメント】
100科目のうちどれだけが自社開発なのかどうか分かりませんが、経営の重
点課題とリンクしたeラーニングの展開という枠組が素晴らしいですね。
eラーニングという手段ありきでなく、「目的」を明確にした上でeラーニン
グを導入することが基本中の基本です。2000年代にeラーニングが普及しな
かったことの最大の要因は、その基本ができていなかったためとコガは考え
ております。

■■英語教育eラーニング■■

■栄光HD、英語教育、Z会と連携、eラーニングでも。
■2011/10/14 日経MJ 9ページ


【概要】
栄光ホールディングス(HD)の子会社で教材開発のエデュケーショナルネ
ットワークとZ会が新会社ファカルタスを設立。大学生向けにネットで学べ
るeラーニングシステムを開発します。2社の中高生向け教材を活用し、大
学側の要望に応じて学生向けカリキュラムを作成します。英語や数学など高
校までの学習内容を復習できる教材を用意するほか、就職活動の準備にも対
応するとのことです。

【コメント】
最近「リメディアル教育」といって、基礎学力の劣る大学生に対し、高校ま
でに修得すべき基礎学力の補習を大学で行うケースが増えています。数学・
英語等の段階的・積み重ね教育の場合、学習者個々人によってつまづいた箇
所が異なるため、eラーニングによる個別学習方式が効果が高いとされてい
ます。本記事のようなサービスは、そうしたニーズに合致しているものと思
われます。しかし、大学生向きeラーニング=リメディアル教育と決めつける
のは早計です。例えば大学の語学教育は1~2年次に履修配当されていること
が多いため、高学年次に継続して学ぶ語学科目が充実していない大学が少なく
ありません。なので、特に語学教育の場合、やる気のある3~4年生の継続学
習の手段として、eラーニングの教材が開発されればなあと思ったりしています。

■ロゼッタストーン販売先倍増、1,000法人に、オンライン語学教材投入。
■2011/10/21 日経MJ 9ページ


【概要】
語学教材のロゼッタストーン・ジャパンは、オンライン上で英語などを学べ
る新製品を発売しました。パソコンだけでなく「iPad」等のタブレット
PCでも学習できるのが特徴です。CD-ROM版のセット価格は5万9800円でしたが、
オンライン版では、利用期間3ヵ月で19,800円という価格モデルに変更しま
した。またオンライン版は、法人市場をターゲットとしており、今後導入企
業が社員の学習の進ちょく状況を管理できるシステムも導入するとのことです。

【コメント】
10年以上も前になりますが、eラーニングの価格モデルを調査したことがあ
りました。CD-ROM等のパッケージメディアとeラーニングの最大の違いは、
「サービス期間」を区切る点にあると当時も考えられていました。しかしこ
の場合、本やCD-ROMなど「形」あるものが学習後手元に残らず、復習ができ
ないため、学習者の満足度が得られない傾向があるというのが10年前の状況
でした。当時とはネットの利用環境が変わった今日、果たしてロゼッタストー
ンのオンライン版はどのぐらい受け入れられるのか?気になるところです。


■■アミューズメント施設と学習■■

■「キッザニア東京」有料会員5,000人突破、リピート率向上に効果
■2011/10/24 日経MJ 11ページ


【概要】
子供向け就労体験施設「キッザニア東京」は有料会員制度「キッザニアクラ
ブ東京」を軸に安定した客足を確保しているそうです。2009年から始まった
この制度は3~15歳の子供を対象とし、入会金が5,000円、年会費が5,000円
となっています。ちなみに現在の会員数は5,500人です。

会員になると、特定の日に入場料が割引となる等のメリットがありますが、
それ以上に魅力的なのは、特別な体験内容が用意されている点です。例えば、
同じプログラムを3回以上経た子供は会員限定のプログラムに参加できます。
そして各パビリオンで子供たちを指導するスタッフの手伝いや、チームの
リーダーも任されるそうです。
会員となった子供のリピート率は通常の利用者に比べて高く、年平均5~6
回にも達し、付き添いの保護者も合わせれば、「年間入場者数の5%程度を
占める」とのことです。

【コメント】
この記事を読んでいて、以前本メルマガの書評で紹介した『モチベーション
3.0(http://goo.gl/46v0y)』の中に出てくる「ソーヤ効果」というのを思
い出しました。トムソーヤの冒険の中でペンキ塗りの仕事を面白い遊びに変
えて、友達にやらせてしまうという逸話がでてきますが、ソーヤー効果とは
そのように「やらなくてはいけない仕事」を「やりたい遊び」に変えてしま
う技のことを指します。
キッザニアの有料会員になると参加できる「特別プログラム」とは、単純に
言うと「キッザニアのスタッフ」仕事です。しかしそれは「嫌々やる仕事」
ではありあません。憧れのお兄さんお姉さんのようになって、他の子供達を
喜ばせることができる「楽しい体験」なのです。その思いが「キッザニアク
ラブ東京」の集客に結びついているのではないかと推察します。

■カップヌードルミュージアム(横浜市)──創造力注いで、得意満メン。
■2011/10/10 日経MJ 5ページ


【概要】
日清食品ホールディングスが9月、横浜市に開設した「カップヌードルミ
ュージアム」が話題を呼んでいます。総合プロデュースを手掛けたのはアー
トディレクターの佐藤可士和氏です。館内には10カ所のコーナーが展開さ
れ、内容は大きく展示コーナーとサービスコーナーに分かれているそうです。

2階の展示コーナーではインスタントラーメンの生みの親である安藤百福氏
の生涯を紹介する「安藤百福ヒストリー」や、発明に必要な「創造的思考」
をアートで表現した「クリエイティブシンキング ボックス」などがありま
す。3、4階はサービスコーナーとなっており、自分だけのカップヌードル
が作れる「マイカップヌードルファクトリー」やチキンラーメンを手作りで
きる「チキンラーメンファクトリー」(予約制)があるそうです。

【コメント】
「カップヌードルミュージアム」を知るには、おそらく下記のWebサイトを
見るのが一番だと思います。

カップヌードルミュージアムのWebサイト

いかにも佐藤可士和チックなサイトです。このミュージアムの基本コンセプ
トは「創造的思考」。「子供たちひとりひとりの中にある創造力や探求心の
芽を吹かせ、豊に育てるための体験型ミュージアム」と上記Webサイトには
あります。実は最近「将来食品の商品企画がやりたい」という大学生が非常
に多いのですが、そういう学生さんにとっては必見のミュージアムかも知れ
ませんね。

vol.424:2011年9月 日経MJ 教育マーケティング情報

2011年10月02日 | 教育関連マーケティング情報
月末恒例の「日経MJ 教育マーケティング情報」のコーナーです。今回は、
「教育産業 の新潮流」「社員以外の教育」「初中等教育業界の最新動向」
の3つの括りでお届けいたします。

■■1)教育産業の新潮流■■

■一人275万円の研修
経営者育成JTBがプログラム、野村総研・一橋大と開発、企業向けに研修
2011/08/29 日経MJ 15ページ

【記事の概要】
JTBでは野村総合研究所、一橋大学イノベーション研究センターと組み、
国際化時代に対応できる次世代経営者の育成プログラムを開発しました。
ターゲット顧客は、グローバル化を検討している地方企業や、経営者の交代
を控えている中小のオーナー企業。参加費は1人275万円で、募集定員は2
0人。研修プログラムは国内8日間、インド5日間、中国3日間の計3部構
成とのことです。

【コメント】
旅行代理店が教育マーケットに参入してきたという点と、参加費1人275万円
という高額な受講料設定がこの記事のポイントかと思います。今までも旅行
代理店では、海外のカンファレンスや見本市を絡めた企業向けの視察旅行等
を企画しておりましたが、今回はあくまでも研修として企画しています。あ
えて都心の大企業でなく地方企業や中小のオーナー企業をターゲットとして
いる点は頷けるのですが、それらのターゲットに対してどう販売促進をして
いくのか、直販なのか代理店販売なのか、代理店だとすると旅行代理店が販
売するのか、それとも教育会社が代理販売するのか等、が気になるところで
す。

■ICTを活用した教育コンシェルジュの可能性
学研ホールディングス社長宮原博昭さん、
教育コンシェルジュを目指す(トップの戦略)
2011/08/29 日経MJ 3ページ
【記事の概要】
学研の宮原社長へのインタビュー記事です。インタビューでは高齢者マーケ
ットへの取組、小学校での新指導要綱導入、教育のデジタル化、国際化等へ
の学研での対応について回答しています。中でもデジタル化への対応につい
ては、今後発行する新刊書をすべて電子化する方針や、電子黒板やタブレッ
ト型端末を使った授業の実証実験についての取組を述べられています。そし
て、デジタル化で最終的に目指すのは「教育コンシェルジュ」とのこと。宮
原社長は教育コンシェルジュの必要性について、
「今、保護者の方も子どもをどのような大人になってほしいのか、どのよう
に教育していけばいいのかといった意識が若干、希薄化しているように思い
ます。教育ICTは子どもたちにとって先々の道筋が示すような役割にも適
しています」
と説明しています。

【コメント】
「教育コンシェルジュ」という言葉がとても新鮮でした。コガ自身、娘の将
来の道筋を示す事ができずにいるので、それらを手伝っていただけるのであ
れば大変心強いというのがホンネです。しかし、そうした支援こそ対面のコ
ミュニケーションで行うべきではないかと考えます。それを実現するため、
まず学研が親をICTで支援し、次に親が子供に対面で指導していくのがべ
ターな方法ではないかと思った次第です。

■■2)社員以外の教育■■

■「接客大会」は団体戦
パルコ、テナントに「接客大会」─売り場「チーム力」重視
2011/08/31 日経MJ 6ページ
【記事の概要】
パルコでは自社ファッションビルに入居するテナントを対象に、接客の技
術・スキルを競う「接客大会」を始めました。その特徴は「チーム力」を
テーマにしている点です。一般的な「接客大会」では、各テナントが選抜し
た販売員による個人戦が多いのに対し、パルコはテナント単位のチーム戦で
す。さらに、勝ち進むごとにメンバーを入れ替えるとボーナス点を加算する
独特のシステムを採用することで、チーム力を重視しています。「売り場で
一人だけが輝くのではなく、全員が技術・スキルを高めて売り場全体を輝か
せる」のがその理由です。
ちなみに優秀賞はJR渋谷駅の広告看板で自社ブランドを大々的に宣伝でき
る権利と大盤振る舞い。また接客大会の後は「テナントごとのまとまりが出
て雰囲気が一段と良くなった」とのことです。

【コメント】
以前本メルマガで紹介した「ルミネスト」のパルコ版といったところでしょ
うか。ルミネストにつきましては「vol.379:2010年9月の日経MJの教育業界
関連マーケティング情報(http://goo.gl/RRi5W)を参照願います。ただし
パルコでは「団体競技」という点で特色を出しています。一人のスーパー販
売員を作るより店全体の接客能力UPをすることと、接客大会に至るプロセス
を通じて職場の風土を変革している点で、このチーム戦は大変有効な仕組み
と考えます。同様の人材育成手法は、営業スキル大会を営業所対抗で実施す
るなど様々な応用が考えられそうですね。

■就活支援で学生アルバイト定着へ
マクドナルド、人材育成、世界目線で──豪モデルに従業員定着策
2011/09/02 日経MJ 15ページ
【記事の概要】
日本のマクドナルドの10年12月期の売上高営業利益率は8.7%、5期前と比
較して7.7ポイント増加しています。またモスフードサービスの同5.1%や日
本ケンタッキー・フライド・チキンの3.9%も上回っています。しかし海外
のマクドナルドに目を転じると売上高営業利益率が15~20%の国も多いそう
です。その差の大きな要因は人件費であり、従業員1人当たりの生産性の向
上がカギとなっています。しかし、約15万人いる同社のアルバイト従業員は
1年間で半分が変わってしまうため、業務を熟知した従業員のつなぎ留めが
生産性向上のために大きな課題となっています。
そこで、同社では大学生のアルバイトの長期雇用促進のため、就職支援のプ
ログラムなどの提供を検討しているそうです。また、正社員の意識を改革す
るために、新卒採用をインターンシップに一本化したり、20代後半から30代
の若手社員を中心に、海外のマクドナルドへ出向させる方針を打ち出してい
ます。

【コメント】
アルバイト対象とした就活支援講座の実施については「きちり」という会社
で実施していることを以前お伝えしました(vol.404:2011年3月~4月の日経
MJ教育業界関連マーケティング情報(http://goo.gl/27kno)参照のこと)。

単なる時給UPだけでなく、就職支援を始めとした様々なプログラムを用意す
ることで、アルバイトの長期雇用を狙っているようです。ゆくゆくは就職支
援だけでなく、大学の授業の補習をやったり、宿題の手伝いをしたり、彼氏
(彼女)の出会いを演出したり、等のつなぎ止め策が出現するかも?
妄想はさておき、そうした施策の中から、3年で3割の新入社員が辞めてしま
うという一般企業の状況を改善するのに多少役立つ事例がでてくるかもしれ
ませんね。

■■3)初中等教育業界の最新動向■■

■入学前教育のアウトソーシング
ベネッセ、大学入学前の復習教材、推薦合格の高校生向け。
2011/09/11 日経MJ 9ページ
【記事の概要】
ベネッセグループの進研アドでは、推薦などで入学が決まった高校生への復
習用や、大学の授業の補助教材として、高校レベルの学習に対応した教材を
大学側に提供するサービスを開始しました。

面接などで選ぶAO(アドミッション・オフィス)入試や推薦で大学に合格
した高校生向けに、大学側が入学前の復習用教材として合格者に配る需要を
想定し、「社会科学系」など学部系統ごとに5種類の教材を開発しました。
生徒はテキストで自宅学習してから課題を提出し、ベネッセが添削するそう
です。

それ以外にも大学向け教材の開発に着手しており、論理的な文章の書き方や
データの分析法など、レポート作成に必要な知識を学べる教材を販売し、大
学授業の補助教材としての導入を狙っているそうです。

【コメント】
最近大学のリメディアル教育(=大学生としての学習について行けるよう、
高校までの学習内容が疎かになってしまっている学生を対象に、基礎的な知
識補修を行うこと)に、初中等の教育を実施している教育団体が参入してく
るケースが増えているように思えます。本記事のベネッセさん以外でも、公
文さんなどもリメディアル教育のサービスを提供しています。しかし今回の
ベネッセさんの最大の特徴は、「教材提供」に留まらず、学習課題の添削ま
でベネッセが請け負う点です。多忙な大学教員としてはとても嬉しいサービ
スなのですが、果たしてそこまで外部に委託していいのかどうか?悩めると
ころです。

■不親切のすすめ
ネット世代は不親切で育む──日能研、○×つけない答案
2011/09/14 日経MJ 1ページ
【記事の概要】
本記事では、進学塾の日能研、SAPIX、ベネッセの3社で行っている不親切
な学習デザインについて特集しています。日能研では答案の返却方法を工夫
することで、テスト後の学びの活性化を目指しています。SAPIXでは、予習
せずに授業に出席させることで、どんな問題が出るかわからなくても対応す
る姿勢を身につけさせるため、小分けにした教科書を作成、授業の度に配布
しています。ベネッセでは、中学生向けネット講座「EVERES(エベレ
ス)」において、テキストとネットでのライブ授業のどちらか片方だけでは
学習が完結しない学習システムを提供することで、学習習慣の確立を目指し
ています。

【コメント】
3つの中では日能研の方法が一番印象に残りました。日能研ではテスト終了
後、採点のため即座に答案用紙をスキャンします。そして原本の答案用紙を
そのまま生徒に返却し、解答集をもとに自己採点させています。また、返却
直後は自然と生徒同士で答案を見せ合うので、そこから授業後の生徒同士の
相互学習が始まるそうです。

テストの結果の振り返りは一番大事なのですが、大抵の場合「点数」だけ見
て終わってしまいます。その点を解消するための工夫としてはとても素晴ら
しい実践だと思います。

個人的な話で恐縮ですが、以前娘が中学受験のため日能研に通っておりまし
た。その時閲覧したMY NICHINOKEN という学習管理サイト(つまりLMS)は、
素晴らしいシステムだなあと感心した記憶があります。ICTをいかに教室の
授業や自宅での学習に連携させていくか?そして親を子供の学習支援に巻き
込んでいくか?を徹底的に考えつくしたシステムとなっていました。

探してみたらデモサイトがありましたので、ぜひご覧になってみてください。
http://mynichinoken.jp/demo/mynichinoken2011/

採点しない答案用紙を返却した翌週に、このサイトを介して日能研で採点し
た答案用紙が生徒に返却されます。そして「正誤一覧」というページで、全
体の正答率が高いのに自分が間違えてしまった問題が強調して表示される仕
組みになっています。対面で不親切な分、ICTを活用することで、後日不親
切をちゃんと補っているところに日能研の凄さがあるのです。

今月はこのへんで、次回の「日経MJ教育マーケティング情報」は10月30日を
予定しております。

vol.416:2011年7月の日経MJ教育マーケティング情報

2011年08月15日 | 教育関連マーケティング情報
■アフター4は自分磨き
資格教室やヨガスタジオ、「夏季限定」相次ぐ、アフター4の需要見込む。
2011/06/29, 日経MJ(流通新聞), 19ページ

【概要】
「サマータイム」を導入する企業が増えるなか、アフター4の習い事需要を
獲得する商戦が活発化しているそうです。例えばヨガスタジオ「スタジオ・
ヨギー」を展開するロハスインターナショナルは7月1日~9月30日、平
日午後5時に始まる「サマータイムクラス」を新設、また資格講座を運営す
るヒューマンアカデミーも同期間の入学者に対し、受講料を10%割り引く
サービスを開始したそうです。変わったところでは、料理教室のABCクッ
キングスタジオは7~8月に平日午後4~6時に始まる授業に参加した生徒
に、缶酎ハイ1本を無料提供するサービスを開始したそうです。

【コメント】
この記事はアフター4に能力開発をという内容ですが、その逆で最近は朝の
勉強会等も都心では活発に開催されるようになっているそうです。コガも年
を取ったせいか、最近起床時間が徐々に早くなっており、早めに出勤したり、
朝食前に家で仕事をする機会が多くなってきています。しかし朝早くから仕
事しても、結局仕事が終わる時間は大して変わっていません。だらだらしな
いで集中して仕事をしなければと思う今日この頃です。
社会人の自己啓発に関するアンケートで、自己啓発をできない理由として常
に上位にあるのが「時間がない」です。でも早朝セミナーやアフター4の活
用が増えると、その言い訳も使えなくなりそうですね。

■教室つき研修
GABA、企業内に英会話教室つきの講師派遣サービス開始。
2011/07/06, 日経MJ(流通新聞), 9ページ,

【概要】
英会話学校のGABAは、企業内に教室を設け講師を派遣するサービス「企
業内ラーニングスタジオ」を始めました。社員研修を長期受託した企業のオ
フィスにGABAの負担で個室などを整えて通いやすくすそうです。平均的
なモデルで10ブース程度の個室を備え、外観や内装は既存の教室と同じデ
ザインとするとのこと。研修を一定期間続けてもらうことを条件に設備投資
費用はGABAが負担するそうです。

【コメント】
これは中々太っ腹な企画です。どのぐらいの規模と期間で研修を継続すると
教室を作ってくれるのか不明ですが、教育ソフトにハードのオマケがついて
くるというのは中々珍しいビジネスモデルですね。そう言えば、バブルが崩
壊した頃、製造業の一部でボーナスの代わりに現物支給というのが話題にな
りましたが、その際、我々教育業界の場合「現物」は何になるのかと同僚と
話したことがありました。ボーナスの代わりに研修インストラクターが家に
派遣されてきたら嫌だよねなどと、その時は冗談を言い合ってましたが・・
あまり関係なかったですね。ハイ

■国会図書館VS民間企業、電子書籍夏の陣

国会図書館が電子本を貸す日──有料でデータ開放
2011/07/08, 日経MJ(流通新聞), 1ページ,

育て電子書籍、民間団結、「長尾構想」に先手
2011/07/25, 日経MJ(流通新聞), 1ページ,

【概要】
まず7月8日の記事から。1994年に『電子図書館』という本の中で現在の電子
書籍の世界を予言し、そして現在国会図書館(NDL)館長になった長尾氏
が、NDLの蔵書を電子書籍にし、それを電子書籍流通のプラットフォーム
にしてはどうかという「長尾構想」をぶち上げました。当然ではありますが、
出版業界各社からは、貸し出しの場合の利用料金が低すぎるなどと、反発が
広がっていきました。それらの反論に対し長尾氏は
・電子書籍の流通プラットフォームを一元化すれば利用者の利便性は向上
・米グーグルは出版社に対し有償で実施予定だが、NDLは無償で実施
・さらにNDLは電子化や保存のコストも負担する
等のメリットを語っています。貸し出しの方法としては、「同時期に1人に
だけ無料で貸す」のと「同時に何人かに有料で貸す」という2つ方法を検討
しているそうです。

こうした『長尾構想』に触発される形で、民間企業の動きがここに来て活性
化しています。それらについて書かれたのが7月25日の記事です。まず「V
HS対ベータ」の頃からの宿敵であったソニーとパナソニックが電子書籍で
提携を開始しました。さらにそこに楽天や紀伊国屋書店までもが協力し、電
子書籍を売る仕組み作りを行っています。
前述のNDLの動向だけでなく、AmazonやGoogleといった外資企業に市場を席
巻されてしまう恐れもあるわけで、急ピッチで提携協力の方向が進んでいる
ようです。その象徴が、電子書籍の規格の統一に向けた動きです。こちらも
長年のライバル、大日本印刷(DNP)と凸版印刷が中心となって発足した
「電子出版制作・流通協議会」が「電子書籍交換フォーマット」設定し、現
在複数の規格が存在する日本語コンテンツのフォーマットの変換を容易に行
えるよう仕組みを整備しつつあります。

【コメント】
最近読んだ中では衝撃的だった記事の一つです。もし長尾構想が進むと、電
子書籍で遅れをとっている我が国も一気に普及が進みそうですね。最近は米
国のAmazonが大学生向けに書籍を格安でレンタルするといったニュースもあ
り、どうも今回は電子書籍が一過性のブームに終わらず本格普及しそうな気
配がしてきました。コガもそろそろ携帯をスマホに変えようかなと真剣に考
えてしまう一方で、やっぱり本はいつまでも紙で読みたいなあと心が揺れる
のでした。

■「暗闇研修」でチーム力をアップ
資生堂竹中美和さん──「美」の先端担う人材育成(達人競争力を創る)
2011/07/08, 日経MJ(流通新聞), 6ページ

【概要】
東京・銀座7丁目にある資生堂の総合美容施設「ザ・ギンザ」は同社の商品
を一堂に集めただけでなく、メーク技術や肌診断など最先端の「美」のコン
テンツを紹介する流行発信拠点となっています。そこに集まるスタッフは、
百貨店担当のすご腕美容部員、コレクション(発表会)で世界を飛び回る
メークアーティスト、広告宣伝で定評のある写真家など腕に自信のあるプロ
ばかりです。その「精鋭部隊」60名をチームとして機能するようまとめてい
るのがコンシェルジュの竹中美和さん(37)です。

竹中さんが昨秋から力を入れて取り組んでいるのがスタッフ研修です。その
なかで劇的な効果があったのが「暗闇研修」と呼ばれる研修だそうです。真
っ暗闇の大きな会場内で、橋を渡ったり、ブロックの形だけを頼りに7色の
虹を作ったり様々な課題をこなしていく研修を開催しました。自ら声をかけ
て動き出さないと誰がどこにいるか分からない、周りにいる仲間の言葉を頼
りに自分の道を探し出す、相手が分かりやすいように情報を整理して手渡す。
五感以外の感性も刺激されたメンバーの間に「チームワークが芽生えてき
た」そうです。

【コメント】
その分野で一番のスペシャリストばかりを集めたチームのマネジメント、確
かに聞いただけでも大変そうです。コガが担当しているゼミでも、あまり特
徴がなくて地味そうな学生が、実はゼミ全体のムードを支える上で重要な役
割を担っていたりすることをよく目にします。そうした脇役がいないチーム
のマネジメントは確かに大変そうです。サッカーでいうとFCバルセロナの監
督みたいな感じなのかなあ?
ちなみに、資生堂さんの取組は「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」さんとい
う教育会社が企画している研修のようです。
「ビジネスワークショップ事例」株式会社資生堂様
http://goo.gl/zg3Yu
私はこうした研修の形態について知らなかったのですが、確かに視覚を失っ
た状況でのコミュニケーション研修というのは興味深いものがありますね。
大学教育でも取り入れてみたいです。

ちなみに昔観たビョーグ主演の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」という映画
は面白かったなあ。

■紙つきeラーニングでなく、eつき紙教材
ネット講座「生中継」で攻勢、ベネッセ、双方向でやり取り
2011/07/22, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

【概要】
進研ゼミのベネッセが、中学生を対象としたネット講座「EVERES(エ
ベレス)」で順調に会員数を伸ばしています。その学習ステップは下記のよ
うになっています。

・まず基本は紙テキストで学習
・次にネットで確認テストを受験
・テストの結果によりクラスを編成
・クラスごとのレベルに合わせた40分の生中継講座を受講
・受講中は講師の質問に対してチャットで回答

といった具合になっています。
レベルは公立トップ校の志望者が対象とやや高いものの、受講者は1年で4倍
に増えたそうです。家庭にいながら双方向の授業を体験できるところが支持
されているそうです。現在は中学生向けの通信講座にネット教材を追加でき
るという「オプション」モデルでの設定だそうですが、来年度からは紙とネ
ットを当初から組み合わせ標準プランとして導入する計画だそうです。なお、
「入試を紙で解く形式が変わらないかぎり、紙の教材を使った学習は必要」
という考えから、ベネッセとしては、ネット学習はあくまでも紙の教材を補
うものとして現状は位置づけているそうです。

【コメント】
「通信教育」をビジネスの中核として営む会社がeラーニングを考えると、
このような魅力的な教育形態になるのですね。基本的な知識付与を紙テキス
トによる非同期の学習で実施し、そこで不確かな部分を能力別編成の同期型
eラーニングクラスで補習するという仕組みは、学習効果が期待できそうで
す。小中学校の学習だけでなく、資格取得など社会人の教育にも応用できる
のではないかと思った次第です。お金と時間があったら、こういったシステ
ムで企業内教育の仕組みを作ってみたかったです。

今月の日経MJ教育マーケティング情報はいかがでしたか?
次回は8月28日号で特集する予定です。

vol.412:2011年6月の日経MJ教育マーケティング情報

2011年07月04日 | 教育関連マーケティング情報
今週は月末ですので日経MJの教育業界マーケティング情報をお送りします。
最近のこの分野の記事の傾向として、ベルリッツさんとベネッセさんの記事
が多いのに気がつきました。概算ですが3割近くがこの2社の記事かも知れ
ません。ベルリッツもベネッセグループの企業なので、日本の教育ビジネス
市場におけるベネッセのプレゼンスというのは、相当凄いなあと改めて実感
しております。

■終身雇用への回帰
新社会人、民間調査、「定年まで勤務」4割。
2011/06/06, 日経MJ(流通新聞), 7ページ

「終身雇用希望」74%。
2011/06/24, 日経MJ(流通新聞), 4ページ

【記事の概要】
6/6の記事は、マクロミル社が4月から働き始めた全国の新社会人を対象に
実施した意識調査の結果(N=500人)です。それによると、約8割が現在の
勤務先に満足しており、現在の勤務先に定年まで働くと回答した新社会人は、
男性で52%、女性は27%に達したそうです。

6/24の記事は、本学で実施した同様の調査の結果です。2011年の3月末から4
月上旬に開催された本学の新入社員公開セミナー参加者415人へのアンケー
ト結果となっています。詳細については下記のサイトに報告書がありますの
でご参照願います。
「2011年度新入社員の会社生活調査」
この調査によると、終身雇用を望む割合はこの10年間、ほぼ上昇する推移を
辿り、今年の新入社員は過去最高の74.5%に達しているという結果が出てい
ます。

【コメント】
「就職難の中、やっと入社できた会社だから長く勤めようという」こともあ
るのかもしれません。しかし、本学の過去の調査によると、2000年前後の前
回の就職氷河期では終身雇用を望む割合が5割強に留まっており、どうも就
職難だけが原因ではなさそうです。

さらに将来の進路として“管理職志向”or“専門職志向”を尋ねたところ、
“管理職志向”が48.1%と、半数近くの新入社員が管理職を望んでいるので
す。2000年代前半は管理職志向が20~25%ぐらいであったことを考えると驚
きの変化です。「終身雇用」や「出世」という昭和の頃のやや古い就業感が
復活しつつある背景にはどんな理由があるのでしょうか?

■大学リメディアル教育にeラーニング
大学向けeラーニング、栄光、Z会と組みシステム。
2011/06/08, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

【記事の概要】
学習塾大手の栄光は、「Z会」の増進会出版社と組み、大学向けのeラーニ
ングシステムを開発します。内容は高校までの学習内容を復習できる教材、
いわゆるリメディアル教育です。交流サイト(SNS)を設け、入学予定者
が先輩大学生に質問できるといった機能も計画中だそうです。コンテンツは
両社が保有する中高生向け教材を活用し、大学側の要望に応じてカリキュラ
ムを作成するとのことです。

【コメント】
「大学でそこまでやるの?」あるいは「そもそも、高校までの学習内容を理
解できていない学生を入学させるのがおかしいのでは?」と考える方も多い
かと思います。

仰る通りの面もありますが、大学進学率が5割を超える中、若者の基礎学力
を養成する場はもはや「大学」しかないのでは、とコガは最近考えています。
ある方が、「大学は補習の府となるべきだ」揶揄して語っておりましたが、
現実コガの勤務しているようなレベルの大学では、その性格が年を追うごと
に強まっています。

「そんな事は大学がすべきでない」と言うのは簡単ですが、大学でやらなか
ったら企業がその役割を担うことになります。「いやいや、我が社はそんな
出来の悪い大学生は採用しませんから・・・」とおっしゃっている採用担当
の貴方、我々大学も10年前は「いやいや、我が大学はそんな出来の悪い高校
生には合格出しませんから・・・」と言っていたのです。

日本の少子化は動かしようのない事実です。若年労働力は着実に減少してい
くので、「出来の悪い大学生を採用せざるを得ない」状況が近い将来必ず到
来します。ですから一部(であって欲しいですが)の大学は、基礎学力の劣
る学生を引き受け、卒業までに「社会に出て恥をかかない程度」にその学力
を伸ばしてあげる必要があると考えます。たとえ「補習の府」と言われよう
とも。

そう考えますと、今回のような予備校のコンテンツをeラーニングで学習す
るという仕組みは有効な方策の一つです。若者の学力低下という社会問題に
対応するため、今後も様々な教育事業者が、領域を超えて協力し合う必要が
ありそうです。

■二大教育事業者の提携
ベルリッツ、能率協会と提携、ビジネス英語講座開発。
2011/06/08, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

【記事の概要】
ベルリッツ・ジャパンと日本能率協会が企業向け研修コースの開発で業務提
携しました。両社のノウハウを活用し、ビジネスの現場など実践で使える英
語力が身につく内容を訴え、受注を目指すそうです。第1弾として、中学生
レベルの簡単な単語と文法を使いこなす「集中ビジネス英会話講座」を開講
します。授業には商談や新製品のプレゼンテーションなど実際のビジネスの
場面を想定したロールプレイング形式を採用するそうです。

社団法人日本能率協会のニュースリリース
「日本能率協会とベルリッツ・ジャパンがビジネス英会話講座で提携」

【コメント】
本学ライバルである日本能率協会さんとベルリッツさんの巧みな提携に脱帽
です。提携にはお互いの強みを活かし弱みを補完することが求められますが、
この提携では「コンテンツ」「チャネル」の2つでそれらを実現しています。
コンテンツについては、ベルリッツの英語教育のノウハウと、英語をビジネ
スコミュニケーションの文脈に位置づける能率協会のノウハウが活かされる
はずです。またチャネルについては、個人市場に強いベルリッツと法人研修
市場に強い能率協会の相乗効果が期待できそうです。

昨年11月の教育業界関連マーケティング情報(http://goo.gl/od0MF)でも
お伝えしましたが、ベルリッツさんは最近企業内教育市場に重点を置いた活
動を展開しております。今回の提携を契機に、企業内教育市場の業界地図も
変化が加速しそうな予感です。

■企業による出前授業
科学の魅力、女子学生に、資生堂が出前授業、仙台の高校で。
2011/06/17, 日経MJ(流通新聞), 6ページ

【記事の概要】
資生堂は同社の研究者が女子学生らに科学技術の魅力などを伝える出前授業
を、宮城県仙台二華高校で実施しました。学生の理科離れが進むなか、研究
者が理系の進路を選択した理由を伝えたり、調香師の仕事を模擬体験しても
らったりして、優秀な科学者の育成に貢献するのが目的だそうです。

【コメント】
同記事では、諸外国と比較して日本の女性研究者の少なさも紹介しています。
総務省の調査(10年3月末時点)によると、日本の研究者全体に占める女
性の割合は13.6%で、米国(34%)やイタリア(33%)の半分にも満たない
状況となっています。(参考 http://goo.gl/OrnF6
この傾向、大学の教員も当てはまるのですよね。
『男女共同参画白書 平成22年版』によると、本務教員数に占める女性の割
合は

小学校の教諭=65.3%
中学校の教諭=41.9%
高校の教諭=27.2%
大学・大学院の教授=12.0%(准教授は19.8%)

となっており、学歴が進むと女性教員の比率が下がっています。
本務教員総数に占める女性の割合」より

女性が研究者として働ける環境を社会や企業が整備することが求められるの
は言うまでもありませんが、それ以上に、研究者として仕事をする魅力を伝
えていくのはとても大事な事です。そういった意味で本記事の出前授業は社
会的に意義のある取組であると考えます。

コガもよく高校の出前授業に出かけるのですが、今後は大学の先生が行くの
でなく、実際に働くビジネスパーソンが高校生にその魅力を伝える機会が増
えていけば、キャリア教育の視点でより有効な施策になりそうですね。

■仕事の現場で資格をフル活用
岩田屋三越、その道の「プロ」が接客、顧客にぴったりの商品提案
2011/06/22, 日経MJ(流通新聞), 5ページ

【記事の概要】

福岡市にある岩田屋三越さんでは、資格や免許を保有する社員による接客を
強化しています。現在社内にいる有資格者は270人、取得資格の種類も209種
類を超えているそうです。本記事では日本女子プロゴルフ協会のティーチン
グプロC級の資格を持つ社員のゴルフ売り場での健闘を紹介しています。

同社には難関資格の保持者として
インテリアコーディネーター3人
シューフィッターの高度な資格「バチェラーシューフィッター」1人
ワインアドバイザー1人
がいます。また、取得者が多い資格としては、フィッティングアドバイザー
が71人いるそうです。

今後は利益率が高い自主編集売り場を中心に有資格者を配置し、福岡での百
貨店競争に勝ち抜いていくそうです。

【コメント】
よく学生から「資格を持っていた方が就職に有利ですか?」と質問されます。
そんな時「採用担当者は、資格を持っていること自体はあまり重視しないけ
れど、資格という目標を持って学習した意欲は少し評価してくれるかも」と
アドバイスしています。

しかし、今回の記事を読み、ちょっと考えが変わってきました。岩田屋三越
さんのように、「資格保有者」を積極的に活用した事業戦略を打ち出す会社
が今後増加してくるかも知れないからです。しかし、そうであっても働く個
人からすれば、資格はあくまでも手段です。大事なのは本人がどんな仕事を
したいということです。そしてよりよい仕事を遂行する上でどんな能力が必
要なのかを考えることが、資格に限らず重要なのですね。

さて、来月7月は日曜日が5週あります。三連休の中日である7月17日はメル
マガ休刊とさせていただく予定ですので、次回の日経MJ教育マーケティング
情報は7月31日号でお伝えする予定です。

vol.408:2011年5月の日経MJ教育マーケティング情報

2011年06月16日 | 教育関連マーケティング情報
今週は月末恒例?の日経MJの教育業界マーケティング情報です。震災後、自
粛ムードの影響から、「不要不急」なサービス業はどこも大幅な売り上げダ
ウンに悩んでおります。果たして教育業界も「不要不急」なサービスなので
しょうか?いくつかの記事から考えていきましょう。

■学ぶことで被災者を支援しよう
2011/05/04, 日経MJ(流通新聞),4ページ
【記事の概要】
経営コンサルタント水元均氏らの呼びかけで、大阪、名古屋、福岡、東京の
計4カ所で「東日本大震災 被災者支援 チャリティーセミナー」が開催さ
れることになりました。講演するのは水元氏(全会場)のほか9人。講師は
全員が無報酬で参加するそうです。参加費は一人1万5000円で、会場費など
経費除いた収益の全額を日本赤十字社を通じて被災者に寄付するとのことで
す。詳細は「ひとつになろう日本!商人(あきんど)支援プロジェクト
を参照願います。

【コメント】
震災後の支援のスタンスとして「自分たちが今できる事をやろう」というの
が最も市民権を得ている考え方のようです。さて、そうすると「教育を生業
とする我々は復興にどう貢献することができるのか」というのが次なる悩み
です。「復興の担い手となる若者を育成する」という考え方もできますが、
即効性がないので今ひとつ役立ち感に欠けます。「私は歌います」「私は漫
才やります」と同じように、「私は講義します」という手があったことに今
回の記事を読んで気がつきました。

生徒が塾で勉強した時間に応じてアフリカの貧困村に寄付するという早稲田
塾の“ミレニアム・ゴール・ポイント”や、英単
語クイズに正解した数だけお米を寄付する「freerice.com」等。教育屋がで
きる支援の方法も他にもたくさんありそうです。

■萌える漫画家、絵心いらず──PCソフト「コミPo!」で
2011/05/09, 日経MJ(流通新聞),16ページ
【記事の概要】
「コミPo!」とは、あらかじめ用意された美少女キャラクターを、マウス
を使って動かしながらマンガを描くことができるソフトです。このソフトを
活用してマンガ投稿サイトのコンテストに応募したり、コミPo!を使った
自作マンガを連載する作家も出現しているそうです。さらには、広島県三次
市では街おこしにコミPo!を活用中。同市役所の若手職員が市内19地区の
キャラクター作りに取り組んでいるそうです(http://goo.gl/xdAms)。
なお、コミPo!で制作した作品やキャラクターの著作権は、制作者自身に
帰属するとのことです。コミPo!の価格はダウンロード版が6700円、30日
限定の無料体験版が下記のサイトからダウンロード可能です。
http://www.comipo.com/index.html

【コメント】
コミPo!を一言説明するなら、マンガ版の「初音ミク」といったところで
しょうか。以前本メルマガで「教科書におけるイラストとマンガの利用効果
に関する研究」を取り上げましたが(http://goo.gl/5c6xx)、eラーニング
や紙テキストの教材開発においては、ちょっとしたイラストが欲しくなるこ
とがよくあります。そんな時、このソフトを使ってキャラクターを作画でき
れば、手早くコストもかからず重宝かもしれません。今後「美少女キャラ」
だけでなく、色々な種類のキャラクターが用意されることで、教育コンテン
ツでの利用機会が増えそうです。

■ベルリッツ、オンライン授業に本格参入、専任講師を80人採用。
2011/05/09, 日経MJ(流通新聞), 11ページ
【記事の概要】
ベルリッツコーポレーションが日本で英会話のオンライン授業に本格参入し
ます。欧米に在籍するオンライン専任の講師講師270人に加え、南米で新規
に80人採用し、帰宅が遅いなどの理由で教室に通えない会社員らの受講の機
会を増やすそうです。
オンライン英会話教室「ベルリッツ・バーチャル・クラスルーム(BVC)」
は予約した時間に世界中の専任講師とインターネットでつながり自宅で受講
します。受講料は教室での対面型よりも2割程度安いそうです。

【コメント】
同社は東日本大震災直後に外国人講師が一時帰国し、授業の振り替えに追わ
れたそうです。そんな苦い経験が今回のオンライン授業の拡充を後押しした
のかもしれません。余震や大規模停電など急な休講の際の備えにもオンライ
ン授業は役立ちそうですね。しかし、英会話なのにアルゼンチンとウルグア
イで講師を採用というところが、なんとも社会のグローバル化を感じさせま
す。関係ないけれど時差は大丈夫なのかなあ?

■学研HDと市進HDが提携、教材の共同開発も。
2011/05/13, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

■教育関連企業、異業種と連携、授業でiPad活用──栄光、ベネッセ。
2011/05/16, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

【記事の概要】
似た内容の記事のため、まとめてご報告します。

前者の記事では、学研と市進が授業の手法を相互に提供するほか、幼児~小
学校低学年を対象とした英語教育コンテンツなど教材の共同開発も目指すと
いった提携の内容が掲載されていました。
後者の記事では、栄光がリンクアンドモチベーションと高校生向けの新型塾
「モチベーションアカデミア(http://www.m-academia.co.jp/)」を開校す
る件と、ベネッセコーポレーションとソフトバンクグループによる東北被災
地の小・中学校向けの電子教育事業開始の件が掲載されていました。

【コメント】
少子化の影響等により、小中等教育の学習塾マーケットでは合従連衡の動き
が激しくなっており、このところ毎月のように同業種間の提携の記事が掲載
されています。さらに、後者の記事のように異業種とのコラボレーションに
より新たな教育マーケットを開拓する動向がでてきております。今回の異業
種連携の2つの事例では、iPadを利用している点が共通しており、eラーニ
ング的には興味深いポイントであります。
相互補完から新マーケットの創造へ、連携の中身も変化しつつあるようです。

■高校生に「マネジメント」、早稲田塾、米ドラッカー研と講座。
2011/05/23, 日経MJ(流通新聞), 11ページ
【記事の概要】
学習塾の「早稲田塾」を運営するサマデイは米クレアモント大学院大学ドラ
ッカー研究所(カリフォルニア州)と組み、高校生を対象に夏休み中にマネ
ジメントを教える短期講座を米国で開催するそうです。参加費は事前講座や
渡航・滞在費用を含めて59万8000円。高校1~3年生で20人程度を募集する予
定だそうです。詳細はhttp://goo.gl/YDXc0をご覧下さい。

【コメント】
いかに「もしドラ」ブームとはいえ、高校生向けのプログラムにするのはも
ったいないと思うのはコガだけでしょうか?しかし、1週間の講座で大学の
半期分より高額な受講料とは恐れ入りました。同様の内容を、企業の選抜教
育のプログラムとして活用するなどターゲットを変えたら売れるかなあ?

いずれよ、「もしドラ」ブームから即新商品を開発しリリースする早稲田塾
さんのフットーワークの軽さには脱帽です。

vol.404:2011年3月~4月の日経MJ教育業界関連マーケティング情報

2011年05月07日 | 教育関連マーケティング情報
先月は震災の影響でお休みしてしまったので、今回は2ヵ月分まとめてお伝
えいたします。とはいうものの、震災以降約1ヵ月、日経MJ誌は8ページとい
う薄い誌面が続き、なおかつ記事の内容も震災関連の情報が多かったため、
2ヵ月まとめてちょうどよい分量でした。

■「進研ゼミ高校講座」スマートフォン活用,ベネッセ,英単語の問題など
2011/03/04, 日経MJ(流通新聞),9ページ

【概要】
ベネッセコーポレーションは、高校生向けの通信教育に従来の紙の教材に加
え、スマートフォン(高機能携帯電話)などを活用し、講座内容を進化させ
るそうです。受講生に英単語の暗記問題集や古語辞典などを盛り込んだソフ
トを配信し、通学時間などに紙の教材で不正解だった問題の復習などができ
るようにするそうです。

【コメント】
あくまでも紙テキストを「主」教材にとし、その学習の補完としてスマート
フォンを活用している点に、同じ通信教育事業者としてとても共感を持ちま
す。システム屋さんの発想だと、なんでもインターネット、なんでもデジタ
ルデバイスを使うことを前提に考えてしまうため、学習者にとって学びやす
い教育システムにならないケースが少なくないのです。

■不動産賃貸コミュエ、就活生に部屋無料提供、首都圏で2日間、地方学生向け。
2011/03/16, 日経MJ(流通新聞), 4ページ

【概要】
不動産賃貸業のコミュエ(東京・豊島区)は地方から首都圏に就職活動に訪
れる大学生のために、宿泊する部屋を2日間無料で提供するキャンペーンを
開始しました。提供する部屋は「東京就活ハウス」という名称で、東京都中
野区にあります。男性は賃貸マンションの一室、女性は同社が所有する一戸
建て住宅で、どちらも1室につき8人まで宿泊可能とのことです。

【コメント】
イメージアップとはいえ、2日間無料のサービスというのは大判振る舞いで
すね。不思議に思い同社のウェブサイトをチェックしてみると、

> 住居の質は落とさないが、極力安くにはこだわりました。
> しかも企業の新卒採用のコンサルティングを行っている専門家から、
> 基本的に無料で、企業分析やES書き方指導も受けられる。
> 内定獲得後も財産になるコミュニティも提供します。
とありました。
就活ハウス(http://tokyo-shukatsu.org/)より

学校でもなく、企業でもない。就活ハウスという「サードプレイス」を通じ
て、学生の成長を応援する姿勢。素晴らしい取組であると思いました。

■きちりHCM部竹内陵氏─学生アルバイトの就活支援(フーズWho)
2011/04/06, 日経MJ(流通新聞), 3ページ

【概要】
和風ダイニングのきちりは3月から、学生アルバイトの就職活動の支援を始
めました。外食産業では慢性的なアルバイト不足に悩んでおり、時給アップ
以外のアルバイトの応募動機向上を考えた結果、開始したそうです。関西と
首都圏の店舗で営業時間前に始めた就職支援講座には毎回20人程度の学生
アルバイトが参加しているそうです。学生アルバイトからの反響は大きく、
今後は通年で講座を開催していく予定とのことです。
また今後は外食業界以外の就職支援を充実させるため、取引先企業を対象に
したアルバイトのインターンシップや合同会社説明会の準備も進めるとのこ
とです。

【コメント】
こちらも、バイト先という「サードプレイス」での学生の育成を支援する動
きです。アルバイトの付加価値向上だけでなく、就職支援講座により接客力
向上も期待できそうです。それらに加え、コガはこの活動がきちりの社員の
方への働きがい向上に貢献しているのではと考えています。震災以降、「仕
事を通じていかに社会に貢献できるか」を皆が真剣に考える世の中に変わり
つつあります。自分達が社会に対して貢献できることを、従来の事業活動の
枠組に囚われることなく考え行動できるのが、これからの企業に求められる
姿勢なのかもしれません。

■三菱鉛筆、恒例「鉛筆けずり入社式」。
2011/04/04, 日経MJ(流通新聞), 7ページ,

【概要】
三菱鉛筆では1日、新入社員の歓迎行事「鉛筆けずり入社式」を開きました。
「鉛筆けずり入社式」は同社の高級鉛筆「uni(ユニ)」が発売50周年
を迎えた2008年から毎年開催しているそうです。創業以来製造を続けて
いる鉛筆に親しんでもらい、企業理念に触れてもらうのが狙いとのことです。
同社の数原徹郎専務は「社会人となった不安や期待、そんな気持ちを込めて
削ってほしい」と新入社員17人に語りかけたそうです。

【コメント】
ナイフで鉛筆を削るのは初めてという新入社員に対し、先輩社員が手ほどき
をしながら実施する「鉛筆けずり入社式」。とても良い取組だと思いました。

昨年コガの授業で、ブレイン・ストーミングの演習として「カッターナイフ
の使いにくい点を挙げよ」という課題を出した際、「カッターなんて使わな
いから分からない」という学生が多く驚いたことがあります。
小中学校等の授業で「危ないからカッターは使わない」という指導要領に変
わったためなのか、あるいは生活が便利になってカッターを使う機会が減っ
たためなのか、原因はよく分かりません。しかし、刃物を使うということは、
石器時代以降、人類にとって最も根源的なスキルの一つの筈です。それらを
使う場、教える場を設けていくのは、我々オトナの義務ではないかと思って
おります。三菱鉛筆さんのような企業が沢山出現して欲しいですね。

■代ゼミ系SAPIX、自宅学習用に動画配信、停電で休講、
>通えない受講生に。2011/03/21, 日経MJ(流通新聞), 3ページ

【概要】
大手予備校「代々木ゼミナール」系の進学塾「SAPIX」や「Y・SAP
IX」では、東日本大震災後に休講した授業を動画で収録し、受講生向けに
インターネットで配信を始めています。なおSAPIXの授業は少人数制が
特徴で、授業中に演習問題を解かせながら進めるため、授業の映像と演習問
題をセットにして配信しているそうです。

【コメント】
アメリカの同時多発テロの後、米国の大手企業では航空機の利用を制限する
動きがあり、その影響から遠隔会議システムが爆発的に普及したという話を
聞いたことがあります。今回の震災の影響から本ケースのようにICTを活
用した学習を進める動きが出始めているようです。

文部科学省からも、今期の大学の授業に関して、
「補講授業やインターネットの活用、課題研究などの大学設置基準第21条等
で設定している学修時間を確保するための方針を講じていることを前提に、
10週から15週の期間を弾力的に取り扱ってよい」
とする留意事項を示しています。でも計画停電が始まると「インターネット
の活用」もできなくなってしまいますしねえ。難しいところです。

■震災被災地の教育支援 栄光、無料教室や進学相談
2011/04/22, 日経MJ(流通新聞), 9ページ

【概要】
学習塾大手の栄光は、社長直轄の専従チーム(10人)を編成し、宮城県を中
心に小学生を対象とした教育支援活動を実施します。避難所や仮設住宅では
帰宅後の勉強場所が確保できないので、栄光が臨時の会場を設け、理科の実
験教室や工作教室を無料で開講するそうです。今後は塾に通えない受験生を
対象にした進学相談なども行っていく予定とのことです。

【コメント】
専従チームは1年程度の長期にわたり活動を続けていく方針とのことです。
栄光では宮城県内に24教室を展開しているそうですが、震災によって授業再
開の目処がたたない教室もあるそうです。そうした教室に勤務していた社員
の方の雇用を確保し、社会に貢献できる働きがいのある仕事を続けてもらう
ためにも、素晴らしい取組だと思いました。