Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.341:Twitterと教育

2009年12月10日 | 技術動向
◆過去10年間のインターネットの10大事件にTwitter絡みが2つ
「ネットのアカデミー賞」と呼ばれるWebby Awardsの主催団体IADAS(International Academy of Digital Arts and Sciences)が過去10年間のインターネットの10大事件を発表しました。
http://www.webbyawards.com/press/topwebmomentsdecade.php
以下がその結果の和訳です。

・クラシファイド広告サイトのCraigslistがサンフランシスコ以外の地域に拡大(2000年)
・Googleが検索連動広告アドワーズを立ち上げ(2000年)
・オンライン百科事典Wikipediaが誕生(2001年)
・ファイル交換サービスのNapsterが閉鎖(2001年)
・Googleが株式市場に上場(2004年)
・オンライン動画革命(YouTube等)(2006年)
・Facebookが学生以外のユーザーにも門戸を開く。Twitterがサービス開始(2006年)
・iPhoneがデビュー(2007年)
・ネットが選挙に活用された米大統領選(2008年)
・Twitterが大きな役割を果たしたイランでの選挙に対する抗議活動(2009年)

意外だったのがTwitter関連で2つの事件が入っていることです。筆者も今年になってTwitterが身近な存在になってきたのを感じているのですが、過去10年の十大ニュースに入るほどとは思っていませんでした。
教育のバックチャネルにTwittwerを利用
このTwitter、最近教育やセミナーへのバックチャネルとしての活用が徐々に進みつつあるようです。バックチャネルとは、セミナーや講演会、授業などでのネットを介した裏の会話のことです。
(FNP Blog 2009-10-6『Twitterの社会的役割はバックチャネルなのか?』より

筆者はまだTwitterどころか授業中のおしゃべりを止めることで精一杯ですが、他の大学では下記のような事件まで勃発するほど活用が進んでいるようです。

Twitterで学生に宣戦布告
「東京工芸大学で講師・飯田和敏先生がブチギレしてボイコット『このクラスではもう授業出来ない』と『Twitter』で生徒に宣戦布告」(ライブドアニュース2009年11月14日より)

ニュースによると飯田氏は知る人ぞ知る天才ゲームデザイナー。その飯田氏が授業を担当しているとはなんとも羨ましい大学ですが、どうも学生の受講態度に我慢できなくなり、Twitter上で下記のような宣言をしたのです。
「眠いのは生理だ。ある程度は仕方がないと容認してきた。ただ昨日の件があり僕はもう厚木(東京工芸大学)には行くことが出来なくなった。意欲がある学生には申し訳ないが僕にも生理がある。僕はもう挫けた。どうするべきか自分で考え行動してくれ。それを最後の課題とする」
さらに
「学校には授業を無期限で中止する旨を伝えた。当然単位も出せない。次は君たちのターンだ。なんとかしてみろ。ゲームだと思ってやってごらん」
と宣戦布告したのです。
https://twitter.com/iidakazutoshi

Twitterの長所・短所
私は一連の事件の情報をあまり把握していないので、飯田氏の行動自体へのコメントはできません。しかし、この事件を通じて飯田氏が今回の戦線布告のためでなく以前から授業の中でTwitterを使いこなしていることを知りました。#kin234というハッシュタグを用いて、授業に関連するつぶやきをまとめていたのです。ちなみにハッシュタグとはTwitter内でのコメントのグルーピング機能のようなものです。使い方は下記のWebサイトを参照願います。
NWLab.com『[ #Twitter ] ハッシュタグ(#タグ)の使い方について』09/5/19

この#234というハッシュタグを辿っていくと、本事件に対する学生のつぶやきと行動をおぼろげながら知ることができます。例えば一部の学生が、教務部に行って授業復活に向けての交渉等をしているようです。
https://twitter.com/#search?q=%23kin234
(筆者注:多くのつぶやきがあったのですが、11/28に確認したところ、以前のつぶやきが表示できなくなっていました。代わりに学生側で中心となって授業復活に奮闘していたと思われるNozakuni君のつぶやきの軌跡を参照願います。https://twitter.com/nozakuni

その一方で、Twitterの情報発信は「即時性」「同時性」を大事にしているので、後になってどこに誰のつぶやきがあるのか?つぶやきの繋がりがはどうなっている等が分かりづらく、リアルタイムでTwitterをチェックしていないと事の真相がよくわからない面があります。さらに、授業中に居眠りをしているような学生が飯田氏の渾身の爆弾発言をTwitter上でフォローしているとは思えず、怒りを伝えたい学生に飯田氏の言いたい事が伝わっていない気がします。

事態は好転しているようです
ちなみに最近の飯田氏の下記のつぶやきには
「授業間メモ:学びの機会は一度しかない。大学の外は野蛮だ。そこに自分の居場所を作って行く為に、いまを大事にしてほしい。学んで欲しい。僕のやり方が乱暴だったから、とんだ騒ぎになってしまった。ごめん。すぐには難しいかもしれないけど、みんなにまた会いたいと思ってる。」

と書いてあり、どうも話はいい方向に向かっているようです。

筆者の場合、フロントチャネル(教室内でのリアルなコミュニケーション)だけでも精一杯になっているので、バックチャネルにTwitterを活用することなんて到底できそうもありませんが、もしかしたらバックチャネルがあることで、リアルな場のコミュニケーションがより活性化することもあるのでは、と淡い期待を寄せております。

vol.296:音声を活用したツール、Webサイト、エンターテインメント

2009年03月30日 | 技術動向
最近気になっている製品・サービスに共通する要素をふと考えてみたら「音声」でした。マルチメディアの世界になってからというもの「音」は単独で提供されるより、絵や動画、あるいは文字と一緒に提示されることが多くなってしまいました。しかし「音」だけの世界というのも色々な可能性を秘めていると思いますし、何よりも音単独の方が取り扱いが簡単です。前置きはさておき、3つの気になった「音」活用ツール、Webサイト、エンターテインメントについてご紹介します。

おはなししきし
3月は別れの季節。一緒にいた職場の仲間との別れの日の必需品といえば、花束と寄せ書き用の色紙ですが、最近ちょっと変わった色紙が発売されました。商品名は「おはなししきし」。名前の通り、この色紙にはメッセージを録音することができます。下記のWebサイトは製造メーカーであるトッパン・フォームズさんのプレスリリースです。
https://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10107862/200903181
69109.pdf


色紙以外にも伝言ボードや、しゃべレター紙レコなど色々と発売されているようです。
http://www.daikatsuji.co.jp/archives/attention/post000136.php

少々値段は高いのですが、しゃべレター紙レコは研修ツールで活用できそうです。例えば、耳でひそひそやっていた伝言ゲームを、このしゃべレターを媒介に実施してみるなどはどうでしょうか?あるいは、20秒という録音時間の短さを逆手にとって、20秒スピーチとか、20秒宣伝文を考える等の仕掛けも面白いかもしれません。

こえ部
こちらは、テキストの投稿でなく「肉声」を投稿することで成立しているコミュニティサイトです。
http://koebu.com/
まあちょっと、アニメヲタっぽい雰囲気もありますが、発想はかなり斬新で
す。運営会社は「面白法人kayac」と言います。この会社を調べてみると
「こえ部」だけでなくかなり面白いサイトを一杯立ち上げていました。
例えば、
「nioibu におい部」においフェチに捧げるコミュニティ
http://www.nioibu.com/
「Art Meter」
http://www.art-meter.com/
1平方センチメートル5円からの絵画の測り売りサイトなどなど。
最も気になったのが、この会社の「作る人を増やす」という経営理念です。詳細は下記サイトをご覧下さい。
http://www.kayac.com/vision
サイコロの出目で給与を決める「サイコロ給」や、トレーディングカード風の名刺など、とにかく変わった会社です。今週はこの会社のWebサイトを延々と閲覧してしまったために、メルマガを書く手が止まってしまい。またメルマガ月曜日配信になってしまいました(>_<)。

カラオケアフレコ
最後の「音」系はカラオケアフレコです。

有名なアニメの1シーンに自分で台詞をかぶせ、それを再生して楽しむとう新しい遊びです。遊べるアニメ作品とこの機械が設置されている店舗がまだ少ないのが難点ですが、流行の予感がします。今後はアニメだけでなく、有名なテレビドラマの1シーン等も登場しするのでしょうか。

最近発売されたiPod Shuffleも音声で曲名とアーティストを教えてくれたりするようですし、今年は「音声」が一つキーワードになりそうかなと筆者は予想しております。


朗読中心のeラーニングなんてのもそろそろ登場してもいいんじゃないかな?

ではまた来週。

vol220:モバイルラーニング用オープンソースLMS

2007年04月05日 | 技術動向
モバイル環境での学習や教育支援が話題になる中、「そろそろケータイでの
ドリル演習や受講後アンケートの回収ぐらいは試してみたい。」と思ってら
っしゃる大学や企業の関係者の方が増えているのではないかと思います。

そのような方に朗報です。携帯eラーニングシステムのオープンソフトがリ
リースされました。開発者は、元金沢学院大学教授、現在、ユビキタス教育
研究開発室の樋川和伸先生です。

携帯教授 for Windows 1.0β
このソフトウェアは、樋川先生が金沢学院大学在職中に開発し、運用実践を
してきたもので、今回、全国の大学・短大の組織あるいは個人の教員がカス
タマイズして利用できるよう、オープンソフトとして公開するものです。

樋川先生は「できるだけ多くの方に使っていただき、どなたかが、より良い
システムを再開発していただきたい」とオープンソフト化の趣旨をお話にな
られています。下記にシステムの概要とダウンロードURLを記載しましたの
で、ぜひ、試行していただきご評価いただけると幸いです。

ソフト名称:「携帯教授 for Windows」
(注)LINUX,UNIX版も開発・運用経験済みですが、マニュアルが未作成です
ので5月に公開予定です)

概要
本システムは、携帯電話やノートPCを用いて集合教育の教室やいつでもど
こでも学習できるユビキタス学習環境で、教員と学生間の密度の高い授業コ
ミュニケーションや課外コミュニケーションを実現できる授業支援総合管理
システムです。
大学の授業改革・改善のための一つのツールとして、また、携帯電話を教
育・学習端末機として有効に活用していくために多くの大学・短大で活用し
ていただければ幸いです。

8つの基本機能
本システムの基本機能を下記の8つとなります。

(1)科目履修管理機能
履修者のメールアドレスの登録と属性登録)
(2)出欠席管理機能
単純キーワード方式、多重時間差キーワード入力方式による出欠把握
(3)クイズ・アンケート項目作成支援機能
( Yes/No問題、多肢選択式、記述式、混合形式
(4)教員から学生への質問
クイズ、アンケート形式の発問、回答収集、集計
(5)学生から教員への質問
質疑応答掲示板での質疑応答
(6)教材の登録と配信
携帯端末でのHTML文書、PDF文書、WORD文書、画像教材の閲覧
(7)学生への連絡処理機能
休講連絡、出席・課題提出状況、成績情報、一般授業連絡
(8)授業運用支援機能
教員用授業運営資料、成績管理資料の作成など

ダウンロードURL
下記の「ユビキタス教育研究開発室」ホームページより
ダウンロードできます。
http://ubiquitous-learning.jp/labo/

vol193:『質問する力』大前研一(文春文庫、2005年)

2006年08月24日 | 技術動向
質問する力

文藝春秋

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大前研一(文春文庫、2005年)

もうお忘れかもしれませんが、少し前に「質問力」ブームがありました。正確に
は2003年にその手の本が多く出版され、ちょうど昨年あたりが文庫化の年だった
ようです。そしてさらに一年ほど経ち、いよいよそれらが古本屋さんに出回るこ
ととなり、私のような典型的フォロワーの手にも収まることになりました。

質問力に関して興味はあったものの、読むのがやや恐ろしいという側面もありま
した。なぜならば、それは私には、認めたくは無いのですが、おそらくは、質問
する力が著しく欠けている! からであります。

偉い人、そうでない人にかかわらず、何かを説明されると、「なるほどそうか」
と、とりあえず思ってしまいます。なかなか、「それはおかしいんじゃないか?
 なぜならばAはBだがBはCではない、したがってA=Cではないではない
か」などとはならないのであります。ロジカルシンカーではなく極めて情緒的に
流される和風人間なのであります。

本書を読んで、それがいかに危険で損をしていることかかがわかりました。また、
トレーニング次第で質問の力を養成することも可能だと知りました。遅まきなが
ら自分の頭でじっくり考える練習をやっていかねばなるまい、と反省しました。

でも、うらを返せば私のような人間は、本来的に人を信じる素直な良き隣人とも
言えるのでは? と誰にともなく質問してしまったりもするのでした。(まさ)

vol185:ジャガリコでなくジャプリコ

2006年05月04日 | 技術動向
突然ですが、私はカルビーのジャガリコというポテトチップが大好きです。開
発担当者の友人の名前がリカコさんと言い、そこからジャガリコという商品名
がついたそうですが、詳細はジャガリコホームページに譲ります。
http://www.calbee.co.jp/jagarico/product/index.php

で、ジャガリコでなくジャプリコとは一体なにかというと、早稲田大学OSS研
究所と,同大学の子会社の早稲田大学ラーニングスクエアが共同開発したe
ラーニング管理システムでして、これを5月10日からオープンソースとして公
開するということです。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060413/235249/

そういえば青学のeラーニングプロジェクトはエルプコでしたね。
エルプコ
ジャプリコ
ジャガリコ
どれがどれだか、分らなくなってきたでしょ?
なにはともあれ、ここ数年eラーニングのプラットフォームのオープンソース
による公開が増えています。主なものだけでも

国産(大学系)
exCampus(東京大学+NIME)
http://excampus.nime.ac.jp/
C-Five(東京大学)
http://cfive.itc.u-tokyo.ac.jp/
CEAS(関西大学)
http://ceascom.iecs.kansai-u.ac.jp/

国産(企業系)
OpenSourceLMS
http://osl.xcalat.com/
Attain2
http://satt.jp/products/attain2.htm

海外
Moodle
http://moodle.org/course/view.php?id=14
Sakai 2.0.0
http://www.sakaiproject.org/
Claroline
http://www.claroline.net/
Segue
http://sourceforge.net/projects/segue/
Site@school
http://siteatschool.sourceforge.net/
ATutor
http://www.atutor.ca/

などなど一杯あります。

>LMS(CMS)選びにエデュツール
「うちの大学(企業)にはどのLMSがマッチするの?」と迷ってしまったとき
はWCETのedutoolを使いましょう。
http://www.edutools.info/index.jsp?pj=1
このサイトは超スグレモノでして、各LMSやCMSの比較がお手軽にできます(全
編英語ですが)。私の大学院の同級生が、現在翻訳および日本版edutoolの開
発を画策しております。本人の了解が得られれば、今後このメルマガで詳細を
解説していこうと思います。

ということで早稲田のジャガリコ、、、
じゃなかったジャプリコの話題でした。

vol179:モバイルラーニング新世代

2006年02月09日 | 技術動向
カンブリア・ビッグバン
いきなりですが生命の歴史のお話です。現在生きている生物のほとんどのスタイル
が出現したのは、今から5億数千億年前のカンブリア紀だそうです。しかも約1千万
年という46億年の地球時間から見ると極めて短時間の間にどーっと出現したた
め、この出来事のことを「カンブリア・ビッグバン」と呼んでいるそうです。詳細
については、スティーヴン・ジェイ グールド著『ワンダフル・ライフ―バージェス
頁岩と生物進化の物語(ハヤカワ文庫NF)』をお読みください。「へんないきも
の」の百倍面白い本です。

さてさて、これがなぜeラーニングに関係するかというと、現在のモバイルラーニン
グの状況がまさにカンブリア・ビックバン的だからです。PSP、ニンテンドーDSと
いったポータブルゲームマシン、当然ながらケータイ、電子辞書、そして今回取上
げるメモリボやi-Pod。まさにデバイス百花繚乱状態なのです。

数年前にeラーニングがWBTと呼ばれていた時代を思い起こすと、各社がリリースし
てきたシステムは細かい違いはあるものの、むしろ同質性の高い製品群であったと
認識しています。そのコアにはAICCやSCORMという「標準化」というコンセプトがあ
りました。しかし現在モバイルラーニングで起こっていることは逆で、皆が思い思
いのモバイルラーニングをやっているなあというのが私の印象です。どちらが良い
悪いの問題ではないのですが、同じeを活用した学習システムで始まり方が全く異な
るものだと思った次第です。

メモリボ
そのようなビックバンの中で、今ちょっと気になっているのが先月コクヨさんがリ
リースしたメモリボという製品です。
http://www.kokuyo.co.jp/stationery/e-bungu/memoribo/index.html
簡単に言ってしまうと、学生時代に使っていた単語カードの電子版です。入力は専
用ソフトを用いてPCで行い、メモリボをUSBに差し込んで転送するという仕組みのよ
うです。定価7,140円ですが、今だとアマゾンで5,980円で入手できます。

問題は自分で作成する以外にも、上記Webサイトから漢字や世界史のコンテンツが無
料でダウンロードできるようです。(但しメモリボを持っていないとダウンロード
しても使えないみたいです)

この製品のいいところは、余計なことを考えず、無骨なまでに単語カードの電子化
をやってしまったことにあると言えそうです。ついつい多機能にしたがるのが人間
の性ですが、メモリボには「機能の寸止め」の潔さを感じます。

今後、ユーザ同士で単語カードコンテンツの交換なんていうのが始まったら、教育
コンテンツの流通という意味で面白い世界がはじまりそうですね。

欲をいうと
1)問題文48文字以内という制約をもう少し多くしてほしい
2)電池でなく、USBバスパワーでの充電方式にしてほしい
3)もうちょっと小さくならないか
あたりかなあ。まあヒットすれば二匹目の泥鰌を狙って他社から競合製品がでてく
ると思うので、それも期待しましょう。その前に携帯電話の新機能としてでてくる
かもしれませんね。

i-Pod
村上春樹の短編小説に「TVピープル」というのがありますが、i-Podを街中で聞いて
いる人を「Podピープル」と言うそうです。街中にPodピープルが溢れ始めるのに呼
応して、i-Podを活用した学習サービス(Pod-ラーニング、略して「Pラーニング」
と勝手に命名しておこう)がどんどん出始めています。

軽いものでは、音声だけを用いたPodキャスティングによる学習があります。下記は
フィラデルフィアにあるDrexel Universityがリリースした“Drexel e-Learning
Minute”というポッドキャスティングでe-Learningを学ぶe-Learningです?
http://www.drexel.com/podcast/

日本でも、先日からネットラーニングさんが英会話の学習コンテンツをPodキャス
ティングで配信を始め、話題となっています。
http://www.netlearning.co.jp/ayapod/index.html

また、昨年i-Podで動画が見れるようになったことを契機に一気にその活用の幅が広
がっています。下記はヒューマンアカデミーさんが開講している色彩検定のコース
です。講師の授業をあらかじめi-Podにインストールしてi-Pod付きの通信教育コー
スとして販売しています。(値段はちと高いです)
http://haa.athuman.com/topics/051219_01/

また、海外ではABCニュースが、ニュースの無料動画Podキャスティングを行ってい
るのが有名です。このニュースをi-Podにダウンロードして見れば時事英語が強くな
るかも。
http://abcnews.go.com/Technology/Podcasting/

LTI NewslineのKaliym Islam氏は「Pod People」というコラムで、i-Podによる学習
が組織の業績向上にいかに貢献するかを力説しています。
http://www.ltimagazine.com/ltimagazine/article/articleDetail.jsp?id=301031

このコラムで私が面白いと思ったのは、社長の講話や新商品の説明をPodキャスティ
ングで社員に発信するというアイデアです。例えばデスクに座っている時間の少な
い外勤の営業社員はそもそもコンピューターにアクセスして情報を入手する時間も
あまりないし、ましてやe-Learningに付き合っている時間もないのが普通です。Pod
キャスティングを利用すれば、営業は外勤する前に自分のi-Podに必要な音声ファ
イルをダウンロード、あとは訪問先間の移動時間にそうした情報をi-Podで聞くと
いう使い方です。

営業車での移動であれば、FMトランスミッターを用意して車のFMラジオから聞くと
いう使い方もアリかもしれません。

元営業マンの筆者としては「移動時間ぐらいは楽にしてあげましょうよ」と言いた
いところですが、その代わりに60Gのi-Podを貸与してくれるなら許してしまうかも
しれないなあ。

研修のコストの中で一番大きいのは、研修時間分の機会コスト損失です。研修時間
に受講者が働いていたら創出したであろう付加価値の損失をいかに削減するかが、
実のところ最も重要な研修コスト削減なのです。そういった意味ではi-Podを用い
て空き時間に学習するスタイルは理にかなっていると思いますが、皆さんはどうお
感じになるでしょうか?

しかし、私のi-Pod shuffleでは512MBしか入らないから何もできません。
この記事読んだAppleコンピュータ社の方いらっしゃいましたら、
ぜひ1台譲ってください(^_^;)

VOL135:SCORM2004 オープンソースについての質問

2004年10月28日 | 技術動向
>読者からの質問
メルマガVol.133で「SCORM学習エンジンオープンソース公開」(バックナンバーhttp://blog.goo.ne.jp/sanno_el/e/5c1ec2f7c482f0bb883097f4a9ee2a0cを参照)というコラムを書いたところ、e-Learningのシステムを開発していらっしゃる読者の方から、下記ような質問(コメント)をいただきました。

>読者よりの質問(コメント)

ご紹介のサイトを確認しましたが、残念ながらライセンス形態がGPL(注:GPL=オープンソースライセンス形態の一種)と同等のものとなっていて、このソースコードを流用、改造して商用製品に組み込んだ場合、流用、改造部分のソースコードの公開が義務付けられます。

弊社の場合、商用製品のソースコードを、製品に添付して公開するというのは非常に難しいことで、恐らく他のメーカー系のLMSベンダーさんも、このソースを製品で使用する、という判断はしないと思われます。オープン系のベンダーさんだと違ってくると思いますが。。

とはいえ、どのベンダーも、このソースをリファレンス実装として研究すると思いますので、少なからず可搬性の向上に貢献するものだと思います。

>>>以上質問(コメント)終わり>>>>

メールマガジンのコラムを書いた時点では、これで道が開けるぞ!と期待したものの、世の中そんなに甘くなさそうですね。いずれにせよ、この読者の方に下記の返答をしてみました。

> それに対しての筆者よりの回答(一部略)

私自身としてはオープンソースとかパブリックドメインといったことについての専門家ではないため詳しいことはわかりませんが、一筋縄ではいかないのもオープンソースの怖いところだと改めて認識しました。
おそらく、商用製品のソースコードすべてを公開するのでなく、今回公開されたSCORMのAPI等で修正を加えた部分のみの公開でよいのではと思いますが、実際はどうなんでしょうねえ?
また公開の仕方も「製品に添付して公開」までは必要ないのでは(例えば自社Webサイト上で公開しておくとか)と思いますが・・・?。
さらには、標準化されたプログラム自体を修正するという事自体バグ修正以外にありえるのかどうかという素朴な疑問も残ります。

などなど、私にとっても疑問だらけになってきました。

>>>以上回答終わり>>>

そんなやりとりの後、実際に今回のソース公開の中心人物に聞いてみるのが一番!という結論に達し、NTTレゾナントの仲林様に、これらのメールを転送し「一体どうなんでしょうか?」と聞いてみることにしました。
そうしたところ、下記の大変丁寧なご返答をいただきました。また、本メルマガへの掲載をお願いしたところ快諾いただきました。仲林様お忙しい中ありがとうございました。

> NTTレゾナント仲林様よりの回答

まず,今回のオープンソース化の主旨は,SCORM2004規格で規定された機能を実装したモジュールをオープンにし,各社LMSに組み込んでもらうことで,

・規格の普及
・各社開発コストの削減
・相互運用性の問題の予防

を狙いとしています.その際,ソースコードのわからないブラックボックスモジュールでは製品への組み込みに拒絶反応があると思われるのでソースコードも公開し,内部の動作が把握できるようにしています.

いまのところエンジンだけなのですが,サンプルコンテンツ,オーサリングツールなど,順次ダウンロードできるようにします.

今回 LGPL(筆者注:オープンソースの規格の一種、公開したソースを修正した場合は、その修正内容を公開することを義務付けている)に近いライセンスとしたのは,筆者の回答にある,

> さらには、標準化されたプログラム自体を修正するという事自体バグ修正以外
> にありえるのかどうかという素朴な疑問も残ります。

というまさにこの主旨です.

今後生じる可能性のある修正は,

1) バグ修正
2) 規格自体の変更による修正
3) 性能向上

のいずれかと考えています.

1), 2) に関しては,オープンソース化の主旨からして,修正した方には公開して欲しいと考えています.3) は微妙ですが,標準規格の普及という主旨,もともと税金を使った成果物(今回のプログラムはIPA事業がベース)という観点からは,改良したら公開していただければと思います.

各社製品に組み込む際に,GUI の変更などは外部定義ファイルで行えるようになっていますし,標準規格と直接関係ないインターフェース部分は公開の必要はありません.

この種のプログラムは,日本全体のソフトウェアの開発コストパフォーマンスを考えたら,自社で囲い込むものではないと思いますし,オープンソースという発想自体がそういった経済原理に基づいていると思いますのでぜひご理解・ご協力をいただきたいところです.

なお,eLC (日本イーラーニングコンソーシアム)で ワーキンググループ活動を行う予定ですので,ご興味がある方にはぜひご参加いただきたいと考えています.上記のような修正も,どこかで修正内容を統括しておく必要があり,eLC のワーキンググループでその機能を 果たせればと考えています.

>>>以上仲林様よりの回答終わり>>>

仲林さまには、お礼として1リンギプレゼントいたします。

一般の方には、オープンソースライセンスと言われてもあまり馴染みのない分野かと思います。しかし、昨今、e-Learningの世界においては、今回のようなシステムのオープンソースや、コンテンツのオープンソースなどの話題が続出しております。
「e-Learningってシステムが高いよね、それにコンテンツも高いよね」
と嘆いていた時代は過去のものとなり、数年後には無料で使えるシステムやコンテンツが多く普及するようになるかもしれません。
そんな時に「オープンってどこまで自由に使えるの」といった事に対して正しい知識を持つことが、ユーザーサイドにも求められるようになります。このメルマガをきっかけに、関心をお持ちになった方は、下記のサイトなどで詳しく解説していますので、ぜひ勉強してみてください。

「@IT」ビジネスとオープンソースライセンス

日経ITpro オープンソース

Vol.133 SCORM学習エンジンオープンソース公開

2004年09月15日 | 技術動向
かねてよりウワサされていましたSCORM2004の学習エンジンのオープンソース化および公開が日本イーラーニングコンソーシアムより発表されました。
http://www.elc.or.jp/z20040909_2.htm
実際のダウンロードおよび詳細は下記のWebサイトよりとなります。
http://www.oss.ecl.ntt.co.jp/lms/index-scorm.html
SCORM2004について、概要を知りたい方は本誌バックナンバー119号を参照願います。
http://www.hj.sanno.ac.jp/ltec/vol_1-119.htm

>増えるか?2004対応プラットホーム
現在、日本でSCORM2004対応のWBTシステムというと、COMPAC社(QでなくてCのところがポイント)社のAcademicWare という製品だけだったと思います。
「にわとりが先か卵が先か」の議論と同様、動作するWBTシステムがないのであれば、それに準拠したコンテンツなど作るはずもなく、せっかく制定されたSCORM2004という標準も宙に浮いてしまうわけです。しかし、今回のオープンソース化により、きっと各システムベンダーからこのエンジンを用いたSCORM2004対応のWBTシステムがでてくるものと大いに期待しています。

>1.2コンテンツの相互運用性の向上に期待
また、大きな期待は「SCORM2004」によるシーケシング等の規格範囲の拡大より、コンテンツの相互運用性の向上にあると私は考えています。SCORM1.2では規格の中で「オプション」の項目が多く、それにより相互運用性を損なっているケースが多々見受けられたからです。2004ではそういった曖昧な箇所が少なくなっているため、このエンジンの普及により、コンテンツの相互運用性も高まるものと期待しています。

>システムが中心でなくなる
そして、今回のオープンソース化は、e-Learningビジネスの中心がシステムから移行することを意味しています。もともと標準化というのは、差がなくなることですから、そこに競争上の差異化要因を見出すのは矛盾しています。ましてや、エンジン部分をオープンソースで共有するのですから、システムでなくより、コンテンツや運用に近いところでビジネスの差異化がなされるようになるでしょう。

>具体的な動きは?
とはいうものの、このオープンソースが本格的に活用されはじめるのは、まだ先のことと考えています。他社と差別化できる公算のないまま、このエンジンだけを活用したビジネスはありえないからです。もちろん、前々からオープンソース化を見越してビジネスモデルを検討している企業もあるとは思いますが、、、

いずれにせよ、まだ、卵が世に出ただけです。この卵をどう鶏まで育てるか?SCORMをめぐるチャレンジはやっとStartしたばかりなのかもしれませんね。