日時:2010年2月27日
場所:放送大学本部
主催:放送大学ICT活用・遠隔教育センター
講演者:青山学院大学 社会情報学部 宮治裕先生
この講演は放送大学セミナー「キャンパスを変えるケータイ」の事例の一つとして発表されたものです。すでにマスコミ等で報道されているのでご存じの方も多いかと思いますが、青山学院大学社会情報学部では全学生にiPhoneを持たせ学士課程教育に活用しています。
「青山学院大学とソフトバンク、社会情報学部にiPhoneを導入(ケータイWatch)」
残念なことに、一部の報道で位置情報システムを利用した出欠管理の機能ばかりが取り上げられ、学生を監視するためにiPhoneを導入したのではないかという誤解を生んでしまったそうです。今回の講演では、iPhone導入の真の狙いと現状での活用方法等を詳しくご説明いただきました。
ケータイはインターフェース、搭載機能、通信コストなどがキャリアや機種によってまちまちなため、大学生の教育サービスに活用しようとすると、必要最低限の機能を用いたシンプルなケータイサイトや情報配信ツールとしてしか用いることができませんでした。しかし「全員iPhone」となると話は違ってきます。エンドユーザが同じ環境であることほどサービス提供側にとって安心なことはありません。しかもiPhoneの豊富なアプリや革新的なインターフェースデザインを利用することで、相当面白そうなサービスが提供可能となりそうです。
◆青山学院大学社会情報学部とは
今回、iPhoneを全学導入した青山学院大学社会情報学部は、2008年に開設したばかりの新しい学部です。この学部では「文系と理系を双方に精通した総合力」の育成を目指しているそうです。実際に入学してくる学生は、高校まで文系が7割、理系は約3割とのことです。学年の定員は200名、就学するキャンパスは4年間相模原キャンパスとなります。卒業後の進路イメージとしては、
・数理、情報に強い金融アナリスト
・組織に明るい情報スペシャリスト
など、文理両刀遣いの総合力を活かしたビジネスパーソンを描いているよう
です。
詳細につきましては、下記のWebサイトを参照願います。
青山学院大学 社会情報学部
◆iPhone導入のねらい
さて、前置きが長くなりましたが本題です。今回iPhone全学導入の狙いは
1)先進的なICT・ネットビジネス手法の体感的理解
2)情報感度を向上
3)モバイル・ネット社会におけるライフスタイルやコミュニティの在り方を調査提案する場としての3つに集約されるそうです。
まず「先進的なICT・ネットビジネス手法の体感的理解」とは、iPhoneのデバイスとユーザーインターフェースの魅力を学生に体感・利用した上で、世界的にiPhoneが普及したのはなぜか(日本のケータイのガラパゴス的な状況と比)、あるいはiTune storeやAppストアがビジネスとして成立するのはなぜか等を考察してもらいたかったからだそうです。確かに、あの革新的なユーザビリティや、使う楽しさは説明だけでは分かりませんよね。
次の「情報感度を向上」とは、情報収集ツールとしてのiPhoneを学生時代に使いこなして欲しいという願いがあるそうです。e-mail、RSS Reader, Twitter等様々なツールをiPhoneという環境で使いこなす経験を学生時代に積むことで、4年後社会に出た時、その活用がビジネスシーンで当たり前になっていてもついて行けるからです。
最後の「モバイルネット社会のあり方を調査提案する場として」とは、学部全体がiPhoneを持つことによって出現した約千名のモバイルネットコミュニティを、実践的な教育・研究の場にすることで、来るべき社会に向けて新たな提案を創造していくことを意味しています。
こうしたねらいを実現するため、ソフトバンクからの教育上の支援や、ユビキタス社会に向けての共同研究の実施等の内容を盛り込んだ協定が、青山学院大学とソフトバンクの間で締結されたそうです。
◆iPhone配布の実際
さて、iPhone配布にあたって一番気になるのが「お金」の話です。すでに携帯を保有している大学生にiPhoneを買わせるのは非現実的ということで、今回iPhoneは法人契約とし、ハード購入および月々の基本料等は学部側で負担することにしたそうです。もちろん学生が個人的に使う部分の利用料については学生負担ということです。もっとも授業ではWi-Fi環境を用いるので接続料金はなし、また日中の学生同士の通話やメール(SMS)はそもそも無料だそうです。ちなみにiPhoneを紛失した学生は半額だけ弁償になるそうです。
◆iPhone活用の実際
導入から1年以上経た現在、青山学院大学社会情報学部では下記にあげるような活用を実践しているそうです。
◆授業資料の配付・閲覧◆
現在、HandBook(インフォテリア)、C-Learning(ネットマン)、Discover(フリー)といった3つの環境を用いながら検証しているそうです。PCとは異なり、iPhoneで受信すればどこでも資料が閲覧できる点が最大の特徴です。そこで講演者の宮治先生は、「学校に来る途中の電車内で、前回資料をiPhoneで復習しながら登校しなさい」と指導し、すき間時間を活用した学習を促進しているとのことです。また教室での資料の配付の手間やコスト削減等が実現できているとのことです。
◆収録授業の配信◆
NECのi-collabo.LMSを活用し、収録した授業をPodCastで動画配信しているそうです。現在配信している科目は基礎数学等の3つ。基礎数学など基礎的な科目は授業配信に向いているそうですが、最新のトピックを扱ったり、場いることが重要な授業は向いていないそうです。
この取り組みにより、数学が苦手な学生が繰り返し講義を視聴して理解できるようになったり、欠席学生へのフォローに役立っているとのことです。また、資料の配信同様、電車内等のすき間時間を学習に充てることが可能になりました。
◆eラーニングでの活用◆
ITパスポート試験の試験勉強を支援するパソコン版のeラーニング(アイコム社)をiPhoneでも学習可能としました。その結果、コンピュータ教室以外の場所での学習が広まり、気軽に学生同士で点数を競いながら学習しているそうです。またiPhoneにすることにより、布団に入ってから寝るまでの間にeラーニングを学ぶ学生が増えたということです。布団内eラーニングとは新たな展開ですね!
◆英語接続教育での利用◆
学部で開発した英単語の入学前教育をiPhoneでも学習できるようにしたそうです。そのiPhone用のプログラムも学生が開発したというのですから驚きです。
◆出席採取アプリ◆
一部で誤解を生んでしまった出席採取アプリですが、このアプリの大きな狙いは、様々な授業で欠席してしまう学生を早期に発見し、引きこもりになるのを未然に防ごうというものだそうです。
◆アンケート・クリッカーとしての活用◆
授業中学生に挙手を求めると、嫌がったり恥ずかしがったりするためかあまり手を挙げません。そこでiPhoneをクリッカー端末代わりに活用することで問題を解決しています。アンケート結果をその場で授業の課題に関連づけて活用できるなど教員としては羨ましい環境です。
その他iTunesストアにある既存の教育アプリや学習コンテンツを用いて学習したり、TWITTER SNS BLOG等をiPhone上で活用し、学生間のコミュニケーションの活性化が進んでいるとのことです。
◆コガのコメント
これらの取り組みはまだ始まったばかりです。しかし「すきま時間を活用した学習スタイル」の確立、「教室授業の運営支援」等にかなりの成果を出しているようです。こうした成果の背景には、導入の狙いを明確にした点が大きな役割を果たしていると考えられます。
ちょっと面白そうだからでは長続きしません。きちんと「何のために」を考えた上での導入は、iPhoneだけでなく、他のデジタルデバイスの導入にも参考になりそうですね。コガはまだiPhone持っていないので偉そうなことは言えないのですが、今回の発表を聴きますます欲しくなりました。
みなさんだったらiPhoneならではの特徴をどう教育に活用しますか?
場所:放送大学本部
主催:放送大学ICT活用・遠隔教育センター
講演者:青山学院大学 社会情報学部 宮治裕先生
この講演は放送大学セミナー「キャンパスを変えるケータイ」の事例の一つとして発表されたものです。すでにマスコミ等で報道されているのでご存じの方も多いかと思いますが、青山学院大学社会情報学部では全学生にiPhoneを持たせ学士課程教育に活用しています。
「青山学院大学とソフトバンク、社会情報学部にiPhoneを導入(ケータイWatch)」
残念なことに、一部の報道で位置情報システムを利用した出欠管理の機能ばかりが取り上げられ、学生を監視するためにiPhoneを導入したのではないかという誤解を生んでしまったそうです。今回の講演では、iPhone導入の真の狙いと現状での活用方法等を詳しくご説明いただきました。
ケータイはインターフェース、搭載機能、通信コストなどがキャリアや機種によってまちまちなため、大学生の教育サービスに活用しようとすると、必要最低限の機能を用いたシンプルなケータイサイトや情報配信ツールとしてしか用いることができませんでした。しかし「全員iPhone」となると話は違ってきます。エンドユーザが同じ環境であることほどサービス提供側にとって安心なことはありません。しかもiPhoneの豊富なアプリや革新的なインターフェースデザインを利用することで、相当面白そうなサービスが提供可能となりそうです。
◆青山学院大学社会情報学部とは
今回、iPhoneを全学導入した青山学院大学社会情報学部は、2008年に開設したばかりの新しい学部です。この学部では「文系と理系を双方に精通した総合力」の育成を目指しているそうです。実際に入学してくる学生は、高校まで文系が7割、理系は約3割とのことです。学年の定員は200名、就学するキャンパスは4年間相模原キャンパスとなります。卒業後の進路イメージとしては、
・数理、情報に強い金融アナリスト
・組織に明るい情報スペシャリスト
など、文理両刀遣いの総合力を活かしたビジネスパーソンを描いているよう
です。
詳細につきましては、下記のWebサイトを参照願います。
青山学院大学 社会情報学部
◆iPhone導入のねらい
さて、前置きが長くなりましたが本題です。今回iPhone全学導入の狙いは
1)先進的なICT・ネットビジネス手法の体感的理解
2)情報感度を向上
3)モバイル・ネット社会におけるライフスタイルやコミュニティの在り方を調査提案する場としての3つに集約されるそうです。
まず「先進的なICT・ネットビジネス手法の体感的理解」とは、iPhoneのデバイスとユーザーインターフェースの魅力を学生に体感・利用した上で、世界的にiPhoneが普及したのはなぜか(日本のケータイのガラパゴス的な状況と比)、あるいはiTune storeやAppストアがビジネスとして成立するのはなぜか等を考察してもらいたかったからだそうです。確かに、あの革新的なユーザビリティや、使う楽しさは説明だけでは分かりませんよね。
次の「情報感度を向上」とは、情報収集ツールとしてのiPhoneを学生時代に使いこなして欲しいという願いがあるそうです。e-mail、RSS Reader, Twitter等様々なツールをiPhoneという環境で使いこなす経験を学生時代に積むことで、4年後社会に出た時、その活用がビジネスシーンで当たり前になっていてもついて行けるからです。
最後の「モバイルネット社会のあり方を調査提案する場として」とは、学部全体がiPhoneを持つことによって出現した約千名のモバイルネットコミュニティを、実践的な教育・研究の場にすることで、来るべき社会に向けて新たな提案を創造していくことを意味しています。
こうしたねらいを実現するため、ソフトバンクからの教育上の支援や、ユビキタス社会に向けての共同研究の実施等の内容を盛り込んだ協定が、青山学院大学とソフトバンクの間で締結されたそうです。
◆iPhone配布の実際
さて、iPhone配布にあたって一番気になるのが「お金」の話です。すでに携帯を保有している大学生にiPhoneを買わせるのは非現実的ということで、今回iPhoneは法人契約とし、ハード購入および月々の基本料等は学部側で負担することにしたそうです。もちろん学生が個人的に使う部分の利用料については学生負担ということです。もっとも授業ではWi-Fi環境を用いるので接続料金はなし、また日中の学生同士の通話やメール(SMS)はそもそも無料だそうです。ちなみにiPhoneを紛失した学生は半額だけ弁償になるそうです。
◆iPhone活用の実際
導入から1年以上経た現在、青山学院大学社会情報学部では下記にあげるような活用を実践しているそうです。
◆授業資料の配付・閲覧◆
現在、HandBook(インフォテリア)、C-Learning(ネットマン)、Discover(フリー)といった3つの環境を用いながら検証しているそうです。PCとは異なり、iPhoneで受信すればどこでも資料が閲覧できる点が最大の特徴です。そこで講演者の宮治先生は、「学校に来る途中の電車内で、前回資料をiPhoneで復習しながら登校しなさい」と指導し、すき間時間を活用した学習を促進しているとのことです。また教室での資料の配付の手間やコスト削減等が実現できているとのことです。
◆収録授業の配信◆
NECのi-collabo.LMSを活用し、収録した授業をPodCastで動画配信しているそうです。現在配信している科目は基礎数学等の3つ。基礎数学など基礎的な科目は授業配信に向いているそうですが、最新のトピックを扱ったり、場いることが重要な授業は向いていないそうです。
この取り組みにより、数学が苦手な学生が繰り返し講義を視聴して理解できるようになったり、欠席学生へのフォローに役立っているとのことです。また、資料の配信同様、電車内等のすき間時間を学習に充てることが可能になりました。
◆eラーニングでの活用◆
ITパスポート試験の試験勉強を支援するパソコン版のeラーニング(アイコム社)をiPhoneでも学習可能としました。その結果、コンピュータ教室以外の場所での学習が広まり、気軽に学生同士で点数を競いながら学習しているそうです。またiPhoneにすることにより、布団に入ってから寝るまでの間にeラーニングを学ぶ学生が増えたということです。布団内eラーニングとは新たな展開ですね!
◆英語接続教育での利用◆
学部で開発した英単語の入学前教育をiPhoneでも学習できるようにしたそうです。そのiPhone用のプログラムも学生が開発したというのですから驚きです。
◆出席採取アプリ◆
一部で誤解を生んでしまった出席採取アプリですが、このアプリの大きな狙いは、様々な授業で欠席してしまう学生を早期に発見し、引きこもりになるのを未然に防ごうというものだそうです。
◆アンケート・クリッカーとしての活用◆
授業中学生に挙手を求めると、嫌がったり恥ずかしがったりするためかあまり手を挙げません。そこでiPhoneをクリッカー端末代わりに活用することで問題を解決しています。アンケート結果をその場で授業の課題に関連づけて活用できるなど教員としては羨ましい環境です。
その他iTunesストアにある既存の教育アプリや学習コンテンツを用いて学習したり、TWITTER SNS BLOG等をiPhone上で活用し、学生間のコミュニケーションの活性化が進んでいるとのことです。
◆コガのコメント
これらの取り組みはまだ始まったばかりです。しかし「すきま時間を活用した学習スタイル」の確立、「教室授業の運営支援」等にかなりの成果を出しているようです。こうした成果の背景には、導入の狙いを明確にした点が大きな役割を果たしていると考えられます。
ちょっと面白そうだからでは長続きしません。きちんと「何のために」を考えた上での導入は、iPhoneだけでなく、他のデジタルデバイスの導入にも参考になりそうですね。コガはまだiPhone持っていないので偉そうなことは言えないのですが、今回の発表を聴きますます欲しくなりました。
みなさんだったらiPhoneならではの特徴をどう教育に活用しますか?