Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.454:ひさびさにLearner Centricな人体実験(読み書きワークショップ参加記)

2012年05月21日 | Learner Centricな人体実験
以前、本メルマガでもお伝えしましたとおり、この4月から大学教員の傍ら、
放送大学の大学生になりました。放送大学にはいわゆる「通信」の授業と、
「面接授業」と言われる教室形式の集中授業があります。今週末の土日は、
この面接授業に初めて参加して参りましたので、その模様についてお伝えい
たします。

コガが今回履修した「面接授業」は「読み書きワークショップ」という科目
です。この科目のシラバスによると「『このクラスの狙いは、「新書を読ん
で、コメントし、短い書評を書いてみる』ことです。そのために、受講者は、
受講前にすでに読んでいて、気に入っている新書1冊と、これから読みたい
新書1冊をクラスに持参する必要があります。その2冊を学習材料として、
「読むこと」について考え、書評を「書く」練習をしましょう」とあります。
実は後学期にコガが担当している初年次のゼミクラスでも昨年から「新書を
読む」というワークを導入しているので、授業改善に役立つネタが探せそう
なので参加してみました。

授業は土日の2日間、朝10時から夕方17時過ぎまで、連続4コマを2日間実施
するというかなりハードなスケジュールでした。教員としてこんな科目を担
当したら死んでしまうかもと思いましたが、学生として体験すると何とも楽
しい2日間でした。

<担当教員>
本科目を担当されているのは、横浜国立大学の門倉正美先生です。コガは当
然初対面だったのですが、お話してみると共通の知人もいて、世の中狭いな
あと思った次第です。先生は普段は横国大で留学生の日本語教育等を担当さ
れているそうです。

<参加者>
参加者は全部で20人、男女比はちょうど半々といったところです。参加者の
年齢は平均すると40歳代ぐらい。下は20代前半から上は70代のおばあちゃん
までとバラエティに富む構成でした。これだけでも普段私が見ている大学の
教室風景とは異なるのですが、最も違いを感じたのは、学生の授業に対する
熱心さでした。
OECD各国での25歳以上の大学入学者の割合は平均すると22%です。それに対
して日本は1.7%しかいません。この比率がせめて10%ぐらいまでなれば、ま
じめな「大人」の大学生に影響されて、若い大学生ももっとまじめに勉強す
るようになるのではと思わせるぐらい、皆さん熱心に授業に取り組んでいま
した。

<コガが準備した新書>
新書選びは色々と悩んだのですが、気に入っている新書として、豊田義博の
『就活エリートの迷走』(ちくま新書、2010)を、これから読みたい新書は、
黒川伊保子の『怪獣の名はなぜガギグゲゴがなのか』(新潮社、2004)を選
びました。当初『就活エリートの迷走』をこれから読みたい本として考えて
いたのですが、つい授業の前に全部読んでしまい、「気に入っている本」に
急遽変更しました。後者の『怪獣の名は?』は、図書館でなんとなく本を選
んでいる際、偶然目に留まった本です。

<1日目の内容>
授業の最初の自己紹介で、氏名と住んでいると所に加え、「あなたにとって
本とは○○である」の○○を答えよという課題が与えられました。参加者か
らは、

・一番便利な情報源
・たまねぎ(目が痛くなる)
・催眠導入剤
・人生の教科書
・小島を囲む海
・心の食べ物
・違う時間、違う人とのつながるもの

等面白い回答が続出しました。ちなみに私の答えは「本とは裏庭である」で
す。読書の密やかな愉しみを表現してみました。なかなかおしゃれでしょ?
これ以外にもこの日は様々なワークを実施し、普段何気なく行っている「読
む」という行為を再認識しました。

この日の一番のポイントは「精読」でない読み方の修得です。学校教育で行
っている読みは、しっかりと読む「精読」中心ですが、日常生活においては、
自分の知りたいことだけをさっと読み取る「焦点読み(Scanning)」や、書
いてあることの要点をすくい取る「要点読み(Skimming)」の方が使う機会
が多いのです。

これらの読み方を練習し、最後の4時限目に「今日初めて読む本の内容を図
解し、90秒で他者に紹介する」というワークを実施しました。本を読み、他
者への紹介内容を考えるのに与えられた時間はたったの60分です。本当にで
きるのかなあと思ったのですが、先生に教えていただいた「点検読書」の手
法を活用すると、200ページぐらいの新書であれば、60分で要点読みと、発
表原稿と図解の作成を完了することができました。

ちなみに点検読書の方法は、アドラー・ドーレン『本を読む本』(講談社学
術文庫)に掲載されていますのでそちらを参照願います。

<2日目の内容>
二日目は「書く」ということをテーマにワークショップが進められました。
アメリカでは「書く」をテーマとしたワークショップが数多く開催されてお
り、そこで教えられている「書く」秘訣の第一歩は「書く敷居を下げる」こ
とだそうです。一例として、ナタリー・ゴールドバーグの「魂の文章術」か
ら、書くきっかけをつかむ方法を教えていただきました。これさえあれば、
メルマガでネタが尽きた時も大丈夫かもしれません。

次に行ったのは、新聞の書評を評価するというワークです。先週の日曜日に
各新聞で掲載されていた5つの書評をコピーした紙を配布し、「どの書評が
一番よかったか」を各自が発表するというものです。一番良いと回答した書
評が各自バラバラだったのが印象的でした。

そして午後からは最後のワークです。自分がすでに読んでいて、気に入って
いる新書について書評を書き、それを全員で読みあうというものです。ちな
みに最後にどの書評が一番良かったかを全員の投票で決めます。普段メルマ
ガで書評を書き続けてきたコガとしては負ける訳にはいきません。ひさしぶ
りに気合いを入れて文章を書いたのは言うまでもありません。

その甲斐あってか、最後の書評人気投票で、僅差ながら一位を取ることがで
きました。そして先生から優勝商品として新書をいただいたのでした。

ちなみにこの書評は、後日本メルマガの書評で使う予定ですのでしばしお待
ちのほど。

<感想>
本来教える立場にいる人間が、こんなところで勉強している場合ではないの
ですが、あらためて「読む」「書く」という極めて基本的なスキルを、再認
識することができました。そして来週からの授業にも十分活用できそうなお
土産をたくさん頂戴しましたし、後学期の初年次ゼミも今から楽しみになっ
てきました。

また、今回受講生の立場としてワークショップに参加し、ワークショップを
成功させる教員の資質として、取り扱うテーマに対する専門性や教員自身の
教養の広さ・深さが極めて重要であることを痛感しました。コガの場合、専
門分野の知識や教養があまりにも浅いので、今までワークショップの運営ス
キルに頼って乗り切ってきました。しかし、それには限界があります。、学
生のワークにも深みを与えるためには、教員自身のテーマに関する深い知識
が不可欠なのです。今回ご担当いただいた門倉先生は、博覧強記と申しまし
ょうか、読み書きの知識に加え、書籍や一般教養に関する深く広い知識をお
持ちだったので、とても豊かな学習空間となりました。

最後に門倉先生から、「書くとは人生を二度生きることである」というナタ
リー・ゴールドバーグの言葉を教えていただきました。出来事の振り返りが、
人生を豊かにするという考え方です。このメルマガもそんな矜持を胸に今後
も継続していきたいと思った次第です。
 <文責 コガ>

vol.306:教員をやりながら学生になる二重生活

2009年06月07日 | Learner Centricな人体実験
昨年教員になった時から続けていることがあります。
それは「学生でありつづける」ことです。筆者は40歳半ばから大学教員になったため他の教員に比べてアカデミックなスキルも業績も全然足りていません。どうしたら良いだろうか?と考え、毎期大学の授業を聴講生として受講することにしました。

最近、東大の中原先生が「外側に向けられたメッセージ」というBlogの中で

あなたは、大人に学べという
あなたは、大人に成長せよという
あなたは、大人に変容せよという
あなたは、大人に対話せよ、という

で、そういう「あなた」はどうなのだ?

あなた自身は、学んでいるのか?
あなた自身は、成長しようとしているのか?
あなた自身は、変わろうとしているのか?
そして、あなたは対話の中にいるのか?

という言葉を記しています。
(nakahara-Lab.net 「外側に向けられたメッセージ」090526


筆者も100%同意です。教員である自分が学ぶ姿勢や成長する意欲をみせない限り学生は勉強しないと考えています。考えてみると社会人教育部門で部下を管理していた時も、上司が学ぶ姿勢を見せない限り部下は成長しないと考え勉強し続けていました。仕事が変わっても同じ事やっているのだなあと思った次第です。

ということで2008年の前期は放送大学の「大学と社会」という授業を科目履修生で受講し、後期は桜美林大学のオープンカレッジで寺サキ先生と潮木先生が担当された「大学とは何か」という授業を受講、そして今期は桜美林大学大学院 大学アドミニストレーション研究科の「参加型FD・SD論」(高橋真義先生担当)に聴講生として潜り込んでいます。

初体験の真義ゼミ
さて、今週号は現在聴講生として参加している「参加型FD・SD論」についてご紹介したいと思います。担当の高橋真義先生(通称シンギ先生)のBlogによると、

従来のFD・SD論とは違ったアプローチを今年もいたします。大学の教育・研究・社会貢献のいろいろなカタチ、FDとSDの連携と融合したカタ
チをプロデュース出来る新しい「人財」をつくるためにいろいろな試みにチ
ャレンジいたします。いよいよ大学も、未曾有の経済危機の荒波をまともに受けることになります。学生・教員・職員が「協創人」になること、すなわち持てるパワーを最大限に活かして、一人ひとりがバラバラではなく、それぞれが成すべきことに忠実であること、「大学学生教員職員三輪車論」をカタチにすべき時がやって来ました。ゼミ生には、「一日先生カリキュラム」によって教員体感を個性的にプロデュースしていただきます。半年間のゼミを通して、研究対象としてのFD・SD論ではなく、実戦論として私たちは何をなすべきかを発見し、それを新しいカタチとして創り上げていくことの意味が見えてくるものと確信いたします。

と書かれています。実際に参加してみると、この文章で語りつくされていな
い魅力に溢れた授業となっていました。その魅力を4点に絞ってお伝えします。

魅力1:ダイバーシティな参加メンバー
最大の魅力は、色々な人がこの授業に参加していることです。正規の大学アド研究科の大学院生(すべて大学職員)だけでなく、既に真義ゼミを修了した大学職員、そしてなぜか真義先生が学部で教えている1年生までもが参加しています。さらにはゲストとして会社の経営者や高等教育関連の新聞記者もたまに参加します。私も元大学職員の大学教員というかなり変わったキャリアの持ち主ですが、これだけバラエティに富んだメンバーが集まっているので違和感なく参加できています。ちなみに参加者は毎回約10~15人前後です。

魅力2:毎回の宿題で実力UP
毎回2つの宿題が課されます。一つは新聞記事の切り抜きです。直接大学に関する記事ではなく、周辺の記事を取りあげ、記事の抜粋と大局観のある自分流のコメントを、毎回A4・1ページにまとめます。全く関係のない所から大学経営やFDの話題に持ってくる強引さと視点の鋭さが試されます。毎週続けてることで文書力と社会を見る目が養われます。もうひとつの宿題は毎回異なるテーマの宿題です。真義先生曰く「今まで一度も同じテーマの宿題を出したことがない」とのことです。例えば今週の宿題は・・・・

大学のミッションである教育・研究・社会貢献について、自校(出身大学、
関係大学など)の「弱み」の克服を図ります。
【ステップ1】
それぞれのミッションごとの自校の「弱み」を3点程度考えてください。
【ステップ2】
3×3点の中から「弱み」を1点に絞り、学生教職員が一体になって「弱
み」を克服するための学内向けのアクションプランを考え、それをあなた流
のヒネリを加えてスローガンにしてください。
【ステップ3】
あなたのペーパーについて関係者からコメントを貰ってください。
【ステップ4】
前処理・1~3のステップであなたの気づきをまとめてください。

といった具合です。出された宿題は、その週の宿題採点者および真義先生が毎回順位付けをします。筆者はいつもギリギリのタイミングでやっつけ仕事で宿題を作成しているためか、恥ずかしながら最下位近辺が多いのです。しかし、前回はちょっと時間をかけて頑張ったお陰もあり、上位に食い込むことができました。

この課題のミソは【ステップ3】の「あなたのペーパーについて関係者からコメントを貰ってください。」という所です。実際にやってみると実に参考になることを認識しました。さらに言えば自分に役立つだけでなく、自分のいる職場のメンバーに対して学びの風土を少しずつ浸透させる効果もありそうです。実は最初は恥ずかしくてステップ2までしかやらなかったのですが、ステップ3をやるとやらないでは全く学習の濃さが違うのです。自分の周囲に一度宿題をみてもらってから提出するというのは中々面白い試みなので、今度自分の担当する授業でも試してみようかな?

魅力3:一日先生カリキュラム

本科目最大の魅力は、履修者全員が1度は実施する「一日先生カリキュラム」です。本科目のシラバスによると、「職員が教員体感をすることによって、FD・SDの課題を発見し、大学の資産であり資源である学生と教員を活かすための新たな視座から大学の組織力アップのための実践的なカタチを探る」というのがその目的です。

先日は海外留学の担当をしている職員の方が1日先生を実施したのですが、非常によく構成された授業で感動しました。

筆者の大学では職員の潜在的な教育力を生かしきれていないなあと実感したので、早速先日自分が担当している1年生のゼミで図書館の職員の方にデータベースの検索方法等についての授業をご担当していただきました。喜んで引き受けていただきまして、まだまだ身近に実現できることが沢山あるぞと思った次第です。

魅力4:カレーとビール
授業は毎週木曜日の7限目(午後8時~9時30分)です。その後はなぜかインドカレー屋さんで、ナンとカレーとビールで飲み会となります。最近参加者が少なくなってきたのは、「もうカレーは飽きたよ~」という履修者声ではないかと思うのですが、まだまだカレーナイトは続くのでした。

いかがでしたでしょうか?なおこの授業は見学参加を歓迎しておりますので、ご希望の方は真義先生(shingi[アットマーク]obirin.ac.jp)まで直接メールでお問い合わせ願います。「古賀のメルマガを読んで興味を持った」と書いていただければ話しは早いかと思います。

Blog村の人気投票というのにエントリーしてみました。瞬間風速でもよいので、この記事で紹介した高橋真義先生のShingBlogを逆転してビックリさせようと企んでおります。
よろしかったら投票お願いしますm(__)m
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vol.266:ハリーポッターのような学位授与式

2008年03月21日 | Learner Centricな人体実験
以前のメルマガでご紹介しましたが、筆者は2007年の前期に桜美林大学院を修了することができました。
http://blog.goo.ne.jp/sanno_el/e/04c6ce3ab4236c2e34eda17617cccd2f

昨年9月にこぢんまりとした「修了を祝う会」が開催され、筆者はそちらに参加したのですが、後期の修了者が出席し大々的に行われる3月の学位授与式(卒業式)にも参加も許されていたため、先日参加してきました。

今の時期は卒業式帰りの袴姿の大学生によく出会いますが、まさか自分が40歳過ぎてから学生として卒業式に参加するとは考えてもいませんでした。しかも今回はアカデミックドレス、つまり四角い形で角に房がついている帽子と黒いガウンを着用しての卒業式でした(写真参照)。
あの座布団を頭に乗せたような帽子は「モルタルボード」と言うそうで、タッセルと呼ばれる房が垂れ下がっています。卒業式の最初はタッセルを右側に垂らし、式が終わるとそれを左側に切り替える、いや逆だったかな?
オックスフォード大学発祥とよばれるアカデミックドレスですが、東京大学・名古屋大学・大阪大学・東京工業大学などでも導入されつつあるそうです。当初の印象は、ハリーポッターのコスプレみたいでちょっと恥ずかしかったのですが、着用してみると学位授与式の重みが増すような気がしました。

桜美林大学はミッション系なので学位授与式のプログラムに、賛美歌斉唱、クワイヤーによる合唱、オーケストラ演奏などが盛り込まれており荘厳な雰囲気でした。中でもチャプレンが読んだ聖書の一節が心に残りました。

「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」
(マタイによる福音書 第7章12節)

大学院生活2年間の中で「人にしてもらって嬉しかったこと」や「してもらえなくて残念だったこと」を明確にし、今度は自分が提供する教育に生かす番なのだと改めて感じた次第です。ということでLearner Centricな人体実験シリーズはとりあえず落着したのでした。いや始まりか・・・

vol246:「Learner Centricな人体実験」番外編~給付金の申請~

2007年10月18日 | Learner Centricな人体実験
無事に大学院を修了しLearner Centricな人体実験は一応完了しました。そして最後に番外編としてご褒美が残されていました。それは「教育訓練給付制度」の申請で給付金20万円をいただくことです。

実は、教育事業に携わる身でありながら、自分でこの制度を使うのは初めてだったので、申請手続には色々戸惑ってしまいました。しかし、女房に内緒で20万円のへそくりができるのは小躍りしたくなるような小市民的な幸せでもあり、この10月から制度か改定され、支給の上限が10万円に減額してしまったことを考えると、ラッキー感も倍増しました。ということで今回のメルマガは、教育訓練給付制度の歴史と申請のポイントについてお伝えします。

教育訓練給付制度の歴史
申請の実際に入る前に、この制度の概要と歴史について皆さんにお伝えしたいと思います。

この制度は、1989年に「高年労働者等受講奨励金制度」として開始されました。当初の制度は50歳以上の雇用保険に加入している在職社員に対し、教育訓練に費やしたお金を修了時に半額(上限10万円)支援してあげようというものでした。50歳以上という年齢制限からも分かるように、この制度は元々高齢者の再就職を支援するための能力開発支援という位置づけで発足しました。

その後1990年に中高年労働者受講奨励金制度と名前が変わり、45歳以上の中年にも愛の手が差し伸べられるようになりました。しかし45~49歳は受講料の1/4しか補助はでませんでした。

1993年になると、中高年齢労働者等受講奨励金制度と、ビミョーに制度の名称が変更され、40歳以上であれば年齢に関係なく5割の補助(上限10万円)が支給されるようになりました。

制度が劇的に変わったのは1998年です。今までの高年とか中高年という前置きがなくなり、教育訓練給付金制度(2001年より教育訓練給付制度)となりました。年齢の定めがなくなり、雇用保険の被保険者であった期間が通算5年以上であれば、在職社員だけでなく、失業1年以内の人も制度の対象となりました。

さらに驚くべきことに支給率が受講料の8割(上限20万円、2001年からは30万円)と大幅アップしました。しかし、その太っ腹ぶりが仇となり、各地で不正受給する教育業者が出たり、おそらく雇用保険の財源自体が逼迫してきたり等の理由からか?制度自体の縮小がはじまりました。

2003年より、雇用保険の被保険者期間が3~5年の人は2割(上限10万円)、5年以上の人は4割(上限20万円)と支給率が半減しました。さらに、指定コース受講料の最低額の設定、教育事業者毎の指定講座数の制限の設定等が行なわれました。

さらに2007年10月より、雇用保険の被保険者期間による支給率の差はなくなり一律教育訓練経費の2割(上限10万円)となってしまいました。

以上がこの制度の18年間の歴史です。マイナーな制度なので、制度の歴史をまとめた資料がほとんどなく、本学の通信研修ガイドの過去18年間のバックナンバーをひっくり返してまとめてみました。内容に不備等ございましたらご指摘お待ちしております。ちなみにeラーニングの講座に関しては、現在48講座が本制度の対象講座となっております。
【中央職業能力開発協会の検索サイト】
http://www.kyufu.javada.or.jp/kensaku/T_K_kouza

申請手続きのポイント
続きまして手続き上のポイントについてお伝えいたします。

1)手続きは1ヶ月以内
修了後、手続きを1ヶ月以内に終わらせないと一銭ももらえません。以後に説明するような段取りがあるので、なるべく早めに手続きに向けて動く必要があります。これが申請で最も重要なポイントです。

2)最寄のハローワークで平日に申請する
手続きはお住まいの所轄のハローワークで行います。最近は土曜日も営業しているハローワークが普通のようですが、土曜日は職業相談のみで、教育訓練給付制度の申請はやっていない可能性が大なので確認してみてください。平日でも午前中は混んでいるので夕方に出頭するのがよいと思います。私は5時ごろ行ったらガラガラでした。

なおオンライン申請はおろか、郵送での申請も、海外出張とか病気等の理由がない限り認められていません。出頭が原則のようです。

東日本のハローワーク一覧
http://saturdayhw.fc2web.com/east/index.html西日本のハローワーク一覧
http://saturdayhw.fc2web.com/west/index.html

3)申請時に必要なもの
申請時に必要なものは以下の6点になります。

(1)教育訓練給付金支給申請書
修了式後に教育機関からもらえます。
必要事項を記入して持参しましょう。

(2)教育訓練修了証明書
これも教育機関からもらえます。

(3)領収書
私の場合は修了式後に大学の事務局からいただきましたが、教育機関によっては、学費を振込む際の領収書等を保管しておく必要があるかもしれませんので確認しておきましょう。

(4)本人・住所確認書類
官公署が発行する証明書です。具体的には、
・運転免許証
・国民健康保険被保険者証
・雇用保険受給資格者証
・住民票の写し
・印鑑証明書のいずれかです(コピー不可)

なお、同じ保険証でも、国民健康保険被保険者証以外は国が発行したものでないので不可となります。またパスポートは住所がないからNG。まあ運転免許証が無難なところですね。

(5)雇用保険被保険者証のコピー
これが一番悩みました。お恥ずかしい話、最初は一体なんだか分からず、私学共済の保険証を持っていけばOKかと思っいてほどの愚か者です。色々と調べてみたら現物はこんなものという事が分かりました。
(下記URL参照)
http://hihokensyahyou.livedoor.biz/

うう、一度も見たことがない。
もしかしたら入職時に貰って紛失してしまったのかもしれない。
再発行に時間がかかったらどうしよう・・・と悩んでいたら
「会社によっては人事が保管している場合もあります」
ととあるBlogに書いてありました。さっそく問い合わせてみたら人事部で保管しており、すぐコピーをもらうことができました。なお雇用保険被保険者証に記載されている雇用保険被保険者番号が、(1)の書類を記入する際に必要となります。

(6)振込先銀行の通帳
実はここが一番苦労したところです。私が女房から独立して持っている金融口座(つまり隠し口座)は郵便局と新生銀行のオンラインバンクの2つでした。しかし2007年9月の段階ではなぜか郵便局の口座は教育訓練給付金の振込先として利用できませんでした(もう民営化されたから使えるようになったのかなあ?)。また申請時に通帳を見せる必要があるため、通帳の存在しないオンラインバンクでは色々と面倒な事が起きそうな予感。かといって給料の振込先口座を利用したら20万円が女房に剥奪されてしまうので、それだけは避けたい。

ということで、郵送の申込みで口座開設ができるスルガ銀行で新たに口座を作った後に申請に行きました。なぜ郵便局が不可なのか、新生銀行のようなオンライン銀行の場合はどうするのか?等疑問に思われた方は、ぜひご自身で確認してみてください。

(7)印鑑
念のため持っていったら必要となりました。窓口で「教育訓練経費確認書」という書類を書くことになり、そこに捺印する必要があったためです。ちなみに「教育訓練経費確認書」は、「会社から自己啓発援助とかいって、学費の一部の補助をうけてないだろうねえ?」等の質問に対して回答する書類です。

家族対策
家族には在学中色々と苦労をかけたので、給付金の中からプレゼントを買ってあげました。しかし給付金支給額がばれてしまうと「20万円も貰ったのにこんな安いプレゼントでごまかすつもり」とののしられ、逆効果になりかねないので工夫が必要です。筆者の場合、新制度になって減額され支給金額が10万円だったということにし、その中から女房にはネックレスを、娘にはスチールベッドを買ってあげることで後の追及を逃れました。本メルマガの読者で私の女房を知っている人は絶対にばらさないように。

今後の教育訓練給付制度
アメリカではペル奨学金をはじめとした、給付型の奨学金制度が充実しています。しかし多くの人が利用できる給付型の奨学金制度は、日本では教育訓練給付制度ぐらいしか存在しません。しかも年々支給額は減少の一途を辿るばかり。高齢化社会を迎え、生涯学習の必要性が叫ばれる中、個人の学習に対する国の補助を真剣に考えて欲しい訳で、個人的には、再生会議で話題になる「教育バウチャー制度」というのを、ぜひ大人向けに導入して欲しいと願っているのでした。

vol228:大学院最終コーナーを回りました

2007年06月07日 | Learner Centricな人体実験
2年前に開始したLearner Centricな人体実験、つまり私の大学院生活ですが、
いよいよ最終コーナーを回って最後の直線に入りました。7月14日が修士論文
の提出締め切りでして、現在原稿を推敲する日々を送っております。通信制の
大学院なのですが、論文の指導だけは、ゼミの先生に時間をとっていただき、
対面での指導をお願いしています。指導の1週間前までに草稿をメールで送り、
先生がチェックした内容を元に2時間ぐらい個別指導を受けるというプロセス
を繰り返しています。

入学時の研究計画は、大学eラーニングだったのですが、途中で日本の株式会
社立大学設立までの経緯の研究に変わり、最終的にはアメリカの営利大学が研
究テーマとなっています。
今回論文を執筆するにあたり、Amazonでの外国文献の購入、各種学術レポート
の収集等でインターネットのありがたさをヒシヒシと感じています。もし足を
使って収集していたら、働きながら執筆することはできなかったと思います。
中でも関心したのがWebCasperというNSF(National Science Foundation=全
米科学財団)が運営するWebCASPERというシステムです。
http://webcaspar.nsf.gov/

日本でも学校基本調査のデータ等を文部科学省のWebサイトでダウンロードで
きますが(http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/index01.htm)、
WebCasperでは、自分の研究に用いたい変数を適宜選択することで、自分の欲
しい表を作成し、エクセル等の任意のフォーマットでダウンロードすることが
可能なのです。
学習者の立場として、eを学習(研究?)に用いることは、10年前であれば現
地に行かなければ入手できなかったようなデータを簡単に入手できるようにな
った点が一番大きいと感じた次第です。その代わり、より深いデータへの考察
が必要になってきたことは言うまでもありませんが・・・

なにはさておき、ゴールまで落馬しないようにがんばらねば

vol223:大学院生3年目

2007年04月30日 | Learner Centricな人体実験
40代のオジサンが、自ら実験台となって遠隔教育で修士号取得を目指す自作
自演ドキュメント「Learner Centricな人体実験」ついに3年目に突入して
しまいました。賢明な読者諸氏は、前の投稿記事にあった

「早稲田大学eスクールの卒業率の話は、2年経っても卒業できなかった自分
を正当化するためだったのか」

と推察されたかもしれません。ところが、私は入学時から「長期履修制度」
の活用を宣言しておりまして、2年半で修了する計画だったのです。だから、
まだ卒業していないのは予定通りのことですのでご理解のほどを・・・。

長期履修制度とは
これは社会人大学院生にとって、非常にありがたい制度です。博士前期課程
の履修期間は通常2年ですが、私の通う桜美林大学大学院では、これを最大4
年まで延長することができるのです。しかも延長料金はたったの3万円。通
常の半期の授業料が60万円であることを考慮するとこれは破格のお値段です。
この長期履修制度は入学時の7月ぐらいまでに申請する必要がありますが、
途中1回だけ履修期間の変更が認められます。実は昨年に2年半から3年に変
更するかどうか迷ったのですが、結局初志貫徹で2年半のまま頑張っており
ます。

科目の履修
実は卒業に必要な単位は既に第三セメスターまでに取得しているため、今期
科目を履修する必要はないのですが、ついつい面白そうなので履修登録して
しまいました。今期は桜美林大学院の顔でもある舘昭先生の「高等教育シス
テム論」を通学課程で履修し、その他通信課程で3科目を履修しています。
通信の科目に関しては、一定の単位数を超える場合、資料代として1万円徴
収されます。でも送付されてくる書籍の値段をみたら、1冊7千円なんてい
う本もあり、既にもとは取ったのだった(^.^)。あとはGWに勉強するのみな
のですが、どうもエンジンがかからない。

修士論文
科目の学習にエンジンがかからない最大の要因が「修士論文」の執筆です。
7月の論文提出まであと2ヶ月少々となってしまい、これから佳境に突入す
るからです。実は今週のメルマガが遅れたのも、この修士論文の執筆に手間
取っていたためでして、お蔭様でなんとかGW前に第一稿が完成しました。こ
れから指導教官のアドバイスを仰ぎ完成度を高めていくところです。

あらためて大学院生活を振り返る
最近、中原先生のBlogで「社会人の大学・大学院進学に関する調査(マクロ
ミル社)」知りました。
http://www.macromill.com/client/r_data/20070419college/index.html

インターネット調査会社のマクロミルが実施した調査結果によると、大学・
大学院に進学したい理由の一位は、「現在の仕事に関して、より専門知識を
身につけるため」が51%とありました。面白かったのは二位で「仕事に関係
なく、興味・関心のある分野の勉強がしたくなったから」が49%と、逆の回
答だった点です。

実は私自身、大学eラーニングについてより深く学ぶという一位の理由で入
学したものの、「どうせ自腹で学習するのだから、普段の仕事のためじゃな
く、自分の興味本位で学ぼう」とすぐにアタマの中が二位の動機に切り替わ
ったのを覚えています。だから逆に見える一位と二位の回答も、大学院に通
学していると、非常に納得感のあるものに思いました。

いずれにせよ、修士論文はあと2ヶ月。論文と履修科目のレポート提出が終
わったらTwenty fourを24時間ぶっ通しで見てみたいと思います。

vol210:Learner Centricな人体実験(第4セメスター終了)

2007年01月26日 | Learner Centricな人体実験
40過ぎのおじさんが社会人向け通信制大学院で学ぶ手記「Learner Centricな
人体実験」久しぶりの今回は第4セメスターで履修した授業とスクーリングの模
様をお伝えします。

長期履修制度で残り半年
さて、普通大学院というと2年間で卒業するものです。しかし私の在学する桜美
林大学大学院では「長期履修制度」という社会人に優しい制度があり、事前の申
請によって、最長4年まで履修機関を延長することができます。しかも延長料金
は1セメスターあたり3万円という格安料金。私はこの制度を活用し、2年半つま
り2007年の春学期に修了する予定となっています。

とはいうものの、既に第3セメスターまでに卒業に必要な単位は修得しているの
で、後は修士論文だけという状態になっております。しかし、折角入学したのだ
から興味のある科目は一応総ナメしたいというのが社会人学生の人情。学費の
「元を取る」ため第4セメスターも3科目履修しました。履修した科目は、大学財
政論、継続教育論、大学評価国際比較研究の3つ。今回のメルマガでは、これら
3科目の概要とスクーリングについてお伝えします。

大学財政論
指導教官は広島大学の羽田先生。非常にフレンドリーで優しい先生でした。先生
は何度か産業能率大学にもインタビューに訪問いただいた事があるそうで、大学
の目標管理制度等の話で盛り上がりました。

この科目では、各国の大学ファンディングシステムの現状を学びました。世界的
に見ると、学生が自ら多くの大学授業料を支払っているのは日本と韓国ぐらいで、
ドイツ等欧州の国々は、大学の授業料は国が負担するのが普通だったそうです。
ついこの間までは・・・

最近どこの国も大学への進学率が増える一方、国家財政が厳しくなってきたので、
学費の個人負担への政策変更を余儀なくされているそうなのです。だから「日本
の国民はよく素直に大学の学費を支払ってくれるね~。どうしたらうまくいくの
かい?」と他の国の高等教育政策を検討する人々から羨ましがられているのだそ
うです。

高い学費を支払っている本人からすると、褒められているのか、馬鹿にされてい
るのか微妙です(ーー;)

継続教育論
山田礼子先生という大変美人な同志社大学の先生が担当されています。以前から
放送大学や著書等で知っていたので、スクーリングを楽しみにしていました。
授業の内容は、「社会人教育」「専門職大学院」「株式会社立大学」といった、
私の研究テーマに近く、非常に参考になりました。

スクーリング中のディスカッションは、今まで履修した科目の中で最も盛り上が
りました。参加者全員社会人大学院生なので、ディスカッションのテーマに乗り
やすいということもあったのですが、受講者が某大手進学塾の社長さん、文部科
学省の高等教育担当の方、某大学で法科大学院の設置申請を体験した人、等と豪
華メンバーだったのが大きかったです。下手なシンポジウムに参加するより充実
感を味わえました。

大学評価国際比較研究
大学評価・学位授与機構の米澤先生がご担当のこの科目、世界の高等教育界の
「評価」システムを知り、それらを比較研究するという内容でした。前述の財政
論とかぶる内容も多く、財政と評価という2つの視点から、各国の高等教育シス
テムの現状を知ることができ、大変参考になりました。結論としては、教育シス
テムの評価は難しく、どこの国も試行錯誤していてるということなのですが、試
行錯誤のありかたが、各国の歴史的・経済的な文脈に左右されていてい非常に興
味深いものがありました。

筆者自身仕事としても数年前からeラーニングの質保証の問題に携わってきたの
で、全体を俯瞰する上で非常にタイムリーな科目でした。

4月に向けて
さて、社会人大学生にとって授業のない2~4月はとても重要です。プロ野球同様、
この時期にどれだけ自主トレできるかが鍵となってきます。特に私の場合、2007
年の春学期に卒業予定なので、4月までに修士論文の研究を一気に進める必要が
あります。大学職員として年度末の忙しい中、放課後(じゃない仕事後)の論文
執筆作業が続く毎日なのでした。

vol195:8月の1/3は生徒でした(後編)

2006年09月21日 | Learner Centricな人体実験
40過ぎのおじさんが社会人向け通信制大学院で学ぶ手記「Learner Centricな
人体実験」。前回に引き続き8月に行われた春季スクーリングの模様について、
お伝えします。後半はスクーリングのメインイベントであった怒涛の3日間集中
講義と研究指導についてです。

高等教育の経済性分析と政策(3日間)
今回私が楽しみにしていた科目の一つです。担当の矢野眞和先生は、以前に本メ
ルマガで紹介した
「大学改革の海図」(玉川大学出版会)
http://blog.goo.ne.jp/sanno_el/e/28f047d0321606f15dacde429723295f
「教育社会の設計」(東京大学出版会)
http://blog.goo.ne.jp/sanno_el/e/2dca80d5adb89d76be7fc18c76d6c3a8
の著者でもあります。

この科目は、本セメスターから初登場の「3日間集中講義方式」で実施されまし
た。「集中講義」とは通信制の大学では一般的に行われている方式で、通常の通
学制の場合に半期90分×15週で構成されている授業を、1日4~5コマ×3日間+
事前レポート提出等で実施するものです。

最初は「3日で単位が取れるなら楽かも」と思ったのですが、結局レポートは事
前に提出しなければならなかったし、3日間朝から晩まで授業を受けるのは正直な
ところ非常に疲れました(先生はもっと疲れたと思いますが)。

しかし、以前より著書を通じて尊敬していた先生だったので、12人の小教室で頻
繁コミュニケーションしながらの授業は、夏休みのほとんどをスクーリングに使
い果たしてしまった事を差し引いても、貴重な経験となりました。

スクーリングの内容は、上記の2冊の著書の解説から最近の先生の研究成果まで
多岐に渡っていましたが、節々に入るエピソードに大変感銘を受けるものが多か
ったので、その中から一つだけご紹介します。

「煙突のあるところ蔵前人あり」
私は授業の事前に「大学アドミニストレーション専攻を履修することによる経済
的な効果」というレポートを提出していました。内容は、現在の桜美林大学大学
院の大学アドを履修することで収入は上がるのかどうかということを分析し、結
論はNOというものでした。そのレポートへのコメントとして先生からいただいた
のが「煙突のあるところ蔵前人あり」という東工大開学当時のエピソードでした。

現在東京の大岡山にある東京工業大学は、かつて東京職工学校と言い、震災前は
蔵前にあったそうです。開学当初の東京職工学校は、徒弟制度を打破し新しい制
度のもとに工業を振興させて行くためのフロントランナーとしての大きな期待が
寄せられました。

しかし当時、東京職工学校が産み出す新しい技術者に対する需要は極めて低く、
卒業してもほとんど就職先はなかったそうです。そのような折、開学に深く関か
かわり、後の帝国大学総長となった浜尾新氏は下記のように語ったそうです。

「工場があって、しかして学校を作るのではない。学校を興してしかして工場を
作るのである」

需要に合わせて人材を作るのでなく、供給が新たな需要を創造する。こういう理念を持って
東工大は始まったということです。そうした努力が身を結び、煙突があるところ
(=近代的な工場)には必ず蔵前人(=東京職工学校の卒業生)がいるとまで言
わしめるようになったそうです。

これは、大学アドミニストレーションという専攻も同じで「君たちは供給が需要
を作る壮大な挑戦をやっているのだから、それを市場に認知させるまでがんば
れ」というのが矢野先生からの僕ら学生への熱いエールでした。

すでにブランドとして確立している大学やMBAに入学・卒業して、自分の肩書きに
ハクをつけるより、自分達の努力によって自らの市場価値を高め、結果としてそ
れが卒業した大学のブランド価値を向上させると考えた方が、主体的でまっとう
な考え方だよなあ~と思った次第です。
「大学アドミニストレータあるところに桜美林人あり」
確立したブランドを身につけるのでなく、身につけたモノを自らの能力でブラン
ド化する。そんな事を考えさせられた3日間でした。

研究指導
今年から修士1年生が3人加わり、さらに他のゼミの学生との合同研究指導とな
ったため12人という大所帯での研究指導となりました。

私は、現在研究中の株式会社立大学についての文献(前号の「eラーニングに関係
ないかもしれない1冊」コーナーで取り上げた本)の発表を行いました。本当は
そろそろ修士論文の中間発表的な内容にしなければいけない時期なのですが、3年
間の長期履修のため、インプット中という理由で勘弁してもらいました。

さて、通信制大学院の場合、一番のネックがこの研究指導となります。私のゼミ
では非公式の機会を設けて頻繁に指導をいただいておりますが、対面でディスカ
ッションするのは、公式には夏と冬のスクーリングの2回だけだからです。

そこで、今年からはMoodleというCMSを用いて、e-Learningでも研究指導を実施し
ています。今はまだ情報交換レベルのコミュニケーションしか出来ていませんが、
今後密度の濃い活用方法を考えることで、通信制でも質の高い研究指導が推進で
きるものと期待しています。

まとめ
これで3回目の集中スクーリングとなりましたが、回を重ねるたびに知人の数も
増え、親密度が増していくのを肌で感じています。今回もスクーリング期間中、
2度懇親会を開催し、普段全国にちらばる仲間と親睦を深める事ができたのは最
大の収穫でした。通学に比べて直接会う機会は少ないものの、SNSを用いて、日頃
からバーチャルな交流を深めているので、初対面の人でも気兼ねなくコミュニ
ケーションが取れることを実感しました。入学当初「通信制だから通学に比べて
人的ネットワークが作りにくいのでは」と心配していたのですが、杞憂に過ぎな
かったようです。1月のスクーリングで仲間と再開できることを楽しみに、後期も
通信教育をがんばろうと心に誓うのでした。

Vol194:8月の1/3は生徒でした

2006年09月07日 | Learner Centricな人体実験
40過ぎのおじさんが社会人向け通信制大学院で学ぶ手記「Learner Centricな
人体実験」。ひさびさの今回は8月に行われたスクーリングを中心に次回と2回に
分けて報告します。

8月は9日間生徒していました
今回桜美林大学大学院の夏季スクーリングには合計5日半間参加しました。さらに
職場の管理者研修に3日間、オブザーブのつもりで参加した「ブレンディング体験
コーチング研修」に急遽グループの人数あわせのために半日参加ということで、8
月は合計9日間「生徒」をやっていました。普段の作る側の仕事に携わっている人
間としては、受講する立場に自分を置くと、今まで見過ごしていた様々な事が見
えてきて大変参考になった1ヶ月でした。そして学習する側の辛さも痛感しました。
特にスクーリングでずっと座り続けたため、腰痛再発&3Kg太ってしまいショッ
クでした(ToT)。

長さの異なる4科目
今回、桜美林大学大学院の夏季スクーリングで受講したのは下記の4科目
1)高等教育・大学教育史(1日)
2)日米高等教育比較論(半日)
3)高等教育の経済性分析と政策(3日)
4)研究指導(ゼミ)(1日)

今回は前半2つの科目のスクーリングについて報告いたします。

1)高等教育・大学教育史(1日)
これは大学院の必修科目の一つで、この大学院の看板教授の一人である寺崎昌男
先生がご担当されています。明治期に日本に大学ができてから今までの間の歴史
について学ぶ科目です。必修なので1日間のスクーリング科目でした。

歴史というと、いかにも「勉強」っぽくて役に立ちそうもないなあ~と皆さんお
感じになると思います。実は私も受講前はそういう気持ちでいたのです。しかし
受講してみるとこれが実に面白い!。今まで自明に思っていた事を歴史的な視点
で見ることによって、今の仕事を考える新たな視点を得ることができるからです。

例えば「学部」。皆さんは現在日本にどのぐらいの種類の学部があるかご存知で
すか?ちょっと前までは、文学部とか法学部とか、古典的な学問体系(ディシプ
リナリーな学問というそうです)に則した学部しかありませんでした。しかし今
は規制緩和と学際化、そして少しでも受験生の目を引くためになんと400以上の種
類の学部があるのです。どういう名前の学部が存在するかは、下記の文部科学省
の学校基本調査の高等教育機関「学部別入学状況」をご覧ください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/05122201/004.htm

じゃあ、そもそも「学部」の起源と言われると、知らなかったりします。そうし
た事を歴史を学ぶことによりひとつひとつ明らかにしてくれるのがこの科目でし
た。

担当の寺崎先生は、大学史、いや高等教育研究の世界で知らない人のいない大先
生でして、その先生から1日間、小教室でレクチャーを受けることができるのは
大変贅沢な経験となりました。そして講義がすごく上手。丸1日ほぼ一方的に聞
くだけのスクーリングだったのですが、全く飽きずに最後まで集中して聞く事が
できますした。演習とか入れずに、話だけで1日持たす事のできる知識の量と話
の展開の上手さに感銘を受けたのでした。

こういう生の素晴らしい講義を受講してしまうと、eラーニングに限界を感じてし
まうのは私だけでしょうか・・・。

2)日米高等教育比較論(半日)
こちらは、専門科目と呼ばれる選択制の科目のため、半日のスクーリングでした。
半日だと、自己紹介と講師からのレポートの講評でほぼ終わってしまうのでス
クーリング自体は「まあこんなもんだなぁ」という印象でした。しかし、この科
目は、スタディガイドの完成度が高かったので、効率的に個別学習を推進するこ
とができ、私としては非常に満足度の高い科目でした。

スタディガイドとは、配本された資料のどこを読み、どんな知識を習得し、それ
を元に何を検討するかを確認するためのもの、言わば学習の道標を学習者に提示
してくれるものです。従ってスタディガイドの出来・不出来は学習効果に大きく
影響します。

もしかすると講師自身が原稿を書き下ろした方が、きちんとしたスタディガイド
を作るより楽かもしれません。なので、ややもすると「手抜き」のスタディガイ
ドが横行します。しかし、この科目をご担当された武村先生作成のスタディガイ
ドは受講生の個別学習への配慮がとても行き届いた素晴らしいガイドでした。

なお、通常、スクーリングに参加するためには、4000字相当のレポートを2回提
出する必要があるのですが、この科目は8000字レポートを2回という厳しいもの
でした。しかし、スタディガイドのおかげで学習がはかどったこともあり、そん
なに苦労せずに8000字を書き上げることができました。修士論文が4万字ぐらい
なので、「この5倍か」と思うと、やや修論作成に対しての不安が解消してきた
のも、この科目のお陰でした。

次回はスクーリングのメインイベントであった3日間連続の集中講義の模様と研
究指導についてお伝えします。

社会人大学院生は元を取る!

2006年04月20日 | Learner Centricな人体実験
元を取るという感覚
さてさて、4月に入り新学期ということで、私の大学アド通学課程も2年目を
迎えました。今期は仕事が忙しいのでなるべく少なめに履修しようと思ってい
たものの、ついつい欲張り根性をだしてしまい。最大5科目まで履修のところ
4科目まで埋めてしまいました。
大人になって自腹で大学に通うと「同じ学費なら目一杯履修したほうが元が取
れてお得」という考え方をしてしまいます。ちょっと「あたしんち」のお母さ
んのような思考ですが。
卒業できる最小単位だけの履修登録をし、かつ単位が取れるギリギリの日数だ
け出席していた大学生の頃とはまるで逆です。

この原因は
1)自腹で履修している
2)主体的な学習意欲がある
3)周りがやっぱりたくさん履修している

の3点につきると思います。特に1)の自腹が大きいですね。学費を親や、国
(義務教育)や、会社(企業内教育)が出してくれる場合と自腹の場合では、
やはり全く意識が違ってきます。

単位毎課金方式
今後、社会人大学院生が増えると、私のように「元を取る」型の学生の増加が
予想されます。通学制の場合は受講生が少しぐらい増えても、大学の負担する
コストはそんなに変わらないと思いますが、通信制の場合、テキスト代・添削
指導代などの変動費用が多いので、確実に事務局経費は増大します。たぶんe-
learningの場合もチューターやメンターの費用が変動費的にかかるので、一人
がたくさんの科目を履修すると経費に影響すると考えられます。

そうした中、今までのように期間で受講料を設定するのでなく、単位毎に受講
料を設定する大学が特にe-learningで履修する大学において、増えてきていま
す。

たとえば早稲田大学eスクール
http://e-school.human.waseda.ac.jp/08003.html

それから八洲学園大学
http://study.jp/univ/yashima/adm/expenses.html

元祖はなんといっても放送大学
http://www.u-air.ac.jp/hp/system/system01.html

こうした課金方式は海外のオンライン大学では一般的なようです。
例えばフェニックスオンライン
http://www.uopxonline.com/tuition.asp

ここでついつい目がいってしまうのが1単位あたりの金額です。フェニックス
オンラインの場合は約$500/credit hourぐらい(6万円)のようです。早稲田
は29,000円、八洲学園大学はなんと6,000円と10倍近くの差があります。ちな
みにフェニックスオンラインは通学よりオンラインの方が高いそうです。

国からの学生への個人助成の額や仕組みが異なるので一概に比較はできません
が、日本の学費って激安?

いずれにせよ、高等教育がターゲットとする顧客が伝統的学生から社会人に変
化し、教育の提供手段が教室から遠隔学習に変化する中、単位毎課金をはじめ
とした様々な価格モデルが必要になってきたと言えそうです。