男おひとりさま道上野 千鶴子法研このアイテムの詳細を見る |
先月末に放映されたNHKスペシャル「無縁社会~"無縁死" 3万2千人の衝撃~」を観ました。非常に心に残るドキュメンタリーでしたが、最も印象に残ったのは、大手都市銀を定年退職してすぐに老人ホームに入居した男性Tさんのエピソードです。Tさんは高校卒業後、M銀行に入行し、毎日忙しく深夜まで働いたそうです。しかし仕事一辺倒で家庭を顧みない生活のため、50代で熟年離婚し、子供とも縁が切れています。在職中の過労がたたって体を壊し、今は数種類の薬が手放せません。かつての同僚や部下とも交流はありません。
TさんはM銀行の百年史を取り出し、コンピューター導入当初の写真に写る若い男性を指さして言います。「これ私なんです。(百年史に載ったときは)嬉しかったですよ。これはMの百年史ですからね。俺はMだという感じなんですよね」
しかしTさんはその後のインタビューで、以前に千葉の銚子で老夫婦が二人並んで尺八を吹いている姿を見たとき「自分もああいうふうになりたいと思っていた」と言い、涙を流します。おそらくTさんのような存在は、今の日本には少なからずいるのでしょう。日本の高度成長というものが、血縁や地縁から切り離された大量の若者の、文字通り人生をかけた労働の上に成り立っていたことをまざまざと見せつけられたように思いました。
裏を返せば、高度成長以前であれば血縁や地縁の中で一生を終えていく人たちが、高度成長によってそのコミュニティから解放されたともいえます。彼らが血縁や地縁の縛りから解き放たれたからこそ、都市部における労働集約型産業が発展し、国民生活が豊かになったという側面も無視はできません。
したがって、経済成長かコミュニティの保全か、という二項対立に陥ってはあまり有益な議論は望めないでしょう。個人が尊厳ある人生を全うするために、どのような経済があるべきか、あるいはどのようなコミュニティが作られるべきか、という議論が必要なように思います。
やや上段に構えすぎました。この社会の行く末についての大上段の議論も必要ですが、まずは自分の行く末をそれほど案じなくて済むような備えが必要だと思っています。その準備を進めるうえで参考となるのが(いつものように前置きが長くなりましたが)、今回ご紹介する『男おひとりさま道』です。前置きが長くなり過ぎたので、いきなり本書の要点から述べますが、著者は「男おひとりさま道 10カ条」として以下の十項目を挙げます(p.227)。
第1条 衣食住の自立は基本のキ
第2条 体調管理は自分の責任
第3条 酒、ギャンブル、薬物などにはまらない
第4条 過去の栄光を誇らない
第5条 ひとの話をよく聞く
第6条 つきあいは利害損得を離れる
第7条 女性の友人には下心をもたない
第8条 世代のちがう友人を求める
第9条 資産と収入の管理は確実に
第10条 まさかのときのセーフティネットを用意する
本書では「男おひとりさま」を、1.妻に先立たれた死別シングル、2.妻と離別した離別シングル、3.ずっと独身の非婚シングル、の3パターンに分類していますが、上記の10カ条を守るべきは、何もこれら3パターンに属する人に限らないように思います。むしろ定年退職後も妻に逃げられないための10カ条ではないか、さらに言えば、性別や世代によらず社会人として守るべき規範ではないかと思いました。
ナカダが定年になるまではあと30年近くありますが、現在の自分に付き合わせてみると、第5、9、10条がやや怪しいので、これから気を付けてまいりたいと思います。(残りの7カ条はたぶん大丈夫でしょう。そもそも「過去の栄光」なんてないですし...)すみません、いつにもまして乱暴な構成の書評となってしまいました。次回こそは書籍の評論を中心に据えたいと思い
ます。(文責:ナカダ)
「コガは7条が絶対に怪しい」と皆に思われていそうです(-_-;)。
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