Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.424:2011年9月 日経MJ 教育マーケティング情報

2011年10月02日 | 教育関連マーケティング情報
月末恒例の「日経MJ 教育マーケティング情報」のコーナーです。今回は、
「教育産業 の新潮流」「社員以外の教育」「初中等教育業界の最新動向」
の3つの括りでお届けいたします。

■■1)教育産業の新潮流■■

■一人275万円の研修
経営者育成JTBがプログラム、野村総研・一橋大と開発、企業向けに研修
2011/08/29 日経MJ 15ページ

【記事の概要】
JTBでは野村総合研究所、一橋大学イノベーション研究センターと組み、
国際化時代に対応できる次世代経営者の育成プログラムを開発しました。
ターゲット顧客は、グローバル化を検討している地方企業や、経営者の交代
を控えている中小のオーナー企業。参加費は1人275万円で、募集定員は2
0人。研修プログラムは国内8日間、インド5日間、中国3日間の計3部構
成とのことです。

【コメント】
旅行代理店が教育マーケットに参入してきたという点と、参加費1人275万円
という高額な受講料設定がこの記事のポイントかと思います。今までも旅行
代理店では、海外のカンファレンスや見本市を絡めた企業向けの視察旅行等
を企画しておりましたが、今回はあくまでも研修として企画しています。あ
えて都心の大企業でなく地方企業や中小のオーナー企業をターゲットとして
いる点は頷けるのですが、それらのターゲットに対してどう販売促進をして
いくのか、直販なのか代理店販売なのか、代理店だとすると旅行代理店が販
売するのか、それとも教育会社が代理販売するのか等、が気になるところで
す。

■ICTを活用した教育コンシェルジュの可能性
学研ホールディングス社長宮原博昭さん、
教育コンシェルジュを目指す(トップの戦略)
2011/08/29 日経MJ 3ページ
【記事の概要】
学研の宮原社長へのインタビュー記事です。インタビューでは高齢者マーケ
ットへの取組、小学校での新指導要綱導入、教育のデジタル化、国際化等へ
の学研での対応について回答しています。中でもデジタル化への対応につい
ては、今後発行する新刊書をすべて電子化する方針や、電子黒板やタブレッ
ト型端末を使った授業の実証実験についての取組を述べられています。そし
て、デジタル化で最終的に目指すのは「教育コンシェルジュ」とのこと。宮
原社長は教育コンシェルジュの必要性について、
「今、保護者の方も子どもをどのような大人になってほしいのか、どのよう
に教育していけばいいのかといった意識が若干、希薄化しているように思い
ます。教育ICTは子どもたちにとって先々の道筋が示すような役割にも適
しています」
と説明しています。

【コメント】
「教育コンシェルジュ」という言葉がとても新鮮でした。コガ自身、娘の将
来の道筋を示す事ができずにいるので、それらを手伝っていただけるのであ
れば大変心強いというのがホンネです。しかし、そうした支援こそ対面のコ
ミュニケーションで行うべきではないかと考えます。それを実現するため、
まず学研が親をICTで支援し、次に親が子供に対面で指導していくのがべ
ターな方法ではないかと思った次第です。

■■2)社員以外の教育■■

■「接客大会」は団体戦
パルコ、テナントに「接客大会」─売り場「チーム力」重視
2011/08/31 日経MJ 6ページ
【記事の概要】
パルコでは自社ファッションビルに入居するテナントを対象に、接客の技
術・スキルを競う「接客大会」を始めました。その特徴は「チーム力」を
テーマにしている点です。一般的な「接客大会」では、各テナントが選抜し
た販売員による個人戦が多いのに対し、パルコはテナント単位のチーム戦で
す。さらに、勝ち進むごとにメンバーを入れ替えるとボーナス点を加算する
独特のシステムを採用することで、チーム力を重視しています。「売り場で
一人だけが輝くのではなく、全員が技術・スキルを高めて売り場全体を輝か
せる」のがその理由です。
ちなみに優秀賞はJR渋谷駅の広告看板で自社ブランドを大々的に宣伝でき
る権利と大盤振る舞い。また接客大会の後は「テナントごとのまとまりが出
て雰囲気が一段と良くなった」とのことです。

【コメント】
以前本メルマガで紹介した「ルミネスト」のパルコ版といったところでしょ
うか。ルミネストにつきましては「vol.379:2010年9月の日経MJの教育業界
関連マーケティング情報(http://goo.gl/RRi5W)を参照願います。ただし
パルコでは「団体競技」という点で特色を出しています。一人のスーパー販
売員を作るより店全体の接客能力UPをすることと、接客大会に至るプロセス
を通じて職場の風土を変革している点で、このチーム戦は大変有効な仕組み
と考えます。同様の人材育成手法は、営業スキル大会を営業所対抗で実施す
るなど様々な応用が考えられそうですね。

■就活支援で学生アルバイト定着へ
マクドナルド、人材育成、世界目線で──豪モデルに従業員定着策
2011/09/02 日経MJ 15ページ
【記事の概要】
日本のマクドナルドの10年12月期の売上高営業利益率は8.7%、5期前と比
較して7.7ポイント増加しています。またモスフードサービスの同5.1%や日
本ケンタッキー・フライド・チキンの3.9%も上回っています。しかし海外
のマクドナルドに目を転じると売上高営業利益率が15~20%の国も多いそう
です。その差の大きな要因は人件費であり、従業員1人当たりの生産性の向
上がカギとなっています。しかし、約15万人いる同社のアルバイト従業員は
1年間で半分が変わってしまうため、業務を熟知した従業員のつなぎ留めが
生産性向上のために大きな課題となっています。
そこで、同社では大学生のアルバイトの長期雇用促進のため、就職支援のプ
ログラムなどの提供を検討しているそうです。また、正社員の意識を改革す
るために、新卒採用をインターンシップに一本化したり、20代後半から30代
の若手社員を中心に、海外のマクドナルドへ出向させる方針を打ち出してい
ます。

【コメント】
アルバイト対象とした就活支援講座の実施については「きちり」という会社
で実施していることを以前お伝えしました(vol.404:2011年3月~4月の日経
MJ教育業界関連マーケティング情報(http://goo.gl/27kno)参照のこと)。

単なる時給UPだけでなく、就職支援を始めとした様々なプログラムを用意す
ることで、アルバイトの長期雇用を狙っているようです。ゆくゆくは就職支
援だけでなく、大学の授業の補習をやったり、宿題の手伝いをしたり、彼氏
(彼女)の出会いを演出したり、等のつなぎ止め策が出現するかも?
妄想はさておき、そうした施策の中から、3年で3割の新入社員が辞めてしま
うという一般企業の状況を改善するのに多少役立つ事例がでてくるかもしれ
ませんね。

■■3)初中等教育業界の最新動向■■

■入学前教育のアウトソーシング
ベネッセ、大学入学前の復習教材、推薦合格の高校生向け。
2011/09/11 日経MJ 9ページ
【記事の概要】
ベネッセグループの進研アドでは、推薦などで入学が決まった高校生への復
習用や、大学の授業の補助教材として、高校レベルの学習に対応した教材を
大学側に提供するサービスを開始しました。

面接などで選ぶAO(アドミッション・オフィス)入試や推薦で大学に合格
した高校生向けに、大学側が入学前の復習用教材として合格者に配る需要を
想定し、「社会科学系」など学部系統ごとに5種類の教材を開発しました。
生徒はテキストで自宅学習してから課題を提出し、ベネッセが添削するそう
です。

それ以外にも大学向け教材の開発に着手しており、論理的な文章の書き方や
データの分析法など、レポート作成に必要な知識を学べる教材を販売し、大
学授業の補助教材としての導入を狙っているそうです。

【コメント】
最近大学のリメディアル教育(=大学生としての学習について行けるよう、
高校までの学習内容が疎かになってしまっている学生を対象に、基礎的な知
識補修を行うこと)に、初中等の教育を実施している教育団体が参入してく
るケースが増えているように思えます。本記事のベネッセさん以外でも、公
文さんなどもリメディアル教育のサービスを提供しています。しかし今回の
ベネッセさんの最大の特徴は、「教材提供」に留まらず、学習課題の添削ま
でベネッセが請け負う点です。多忙な大学教員としてはとても嬉しいサービ
スなのですが、果たしてそこまで外部に委託していいのかどうか?悩めると
ころです。

■不親切のすすめ
ネット世代は不親切で育む──日能研、○×つけない答案
2011/09/14 日経MJ 1ページ
【記事の概要】
本記事では、進学塾の日能研、SAPIX、ベネッセの3社で行っている不親切
な学習デザインについて特集しています。日能研では答案の返却方法を工夫
することで、テスト後の学びの活性化を目指しています。SAPIXでは、予習
せずに授業に出席させることで、どんな問題が出るかわからなくても対応す
る姿勢を身につけさせるため、小分けにした教科書を作成、授業の度に配布
しています。ベネッセでは、中学生向けネット講座「EVERES(エベレ
ス)」において、テキストとネットでのライブ授業のどちらか片方だけでは
学習が完結しない学習システムを提供することで、学習習慣の確立を目指し
ています。

【コメント】
3つの中では日能研の方法が一番印象に残りました。日能研ではテスト終了
後、採点のため即座に答案用紙をスキャンします。そして原本の答案用紙を
そのまま生徒に返却し、解答集をもとに自己採点させています。また、返却
直後は自然と生徒同士で答案を見せ合うので、そこから授業後の生徒同士の
相互学習が始まるそうです。

テストの結果の振り返りは一番大事なのですが、大抵の場合「点数」だけ見
て終わってしまいます。その点を解消するための工夫としてはとても素晴ら
しい実践だと思います。

個人的な話で恐縮ですが、以前娘が中学受験のため日能研に通っておりまし
た。その時閲覧したMY NICHINOKEN という学習管理サイト(つまりLMS)は、
素晴らしいシステムだなあと感心した記憶があります。ICTをいかに教室の
授業や自宅での学習に連携させていくか?そして親を子供の学習支援に巻き
込んでいくか?を徹底的に考えつくしたシステムとなっていました。

探してみたらデモサイトがありましたので、ぜひご覧になってみてください。
http://mynichinoken.jp/demo/mynichinoken2011/

採点しない答案用紙を返却した翌週に、このサイトを介して日能研で採点し
た答案用紙が生徒に返却されます。そして「正誤一覧」というページで、全
体の正答率が高いのに自分が間違えてしまった問題が強調して表示される仕
組みになっています。対面で不親切な分、ICTを活用することで、後日不親
切をちゃんと補っているところに日能研の凄さがあるのです。

今月はこのへんで、次回の「日経MJ教育マーケティング情報」は10月30日を
予定しております。

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