三浦一馬のバンドネオンを聞きに行きました。
ピアソラの作品を中心に、タンゴの曲を楽しんだわけです。
今ふうの若者でファンも多い様子でしたが、客層はヲ年寄りが多かったです。
クラシックのコンサートなどはほとんどそうですけどねェ。
去年もそうだったのですが、プログラムのいくつかは、曲に合わせて男性と
女性がタンゴのダンスを踊ります。それがすごいの。主役のバンドネオン
演奏が完全にBGMになってしまい、素晴らしい踊りに見入ってしまいます。
女性ダンサーはCHIZUKOさんという人でした。タンゴ世界選手権で
ファイナルまでいった人だとか。
その人の終わったときのおじぎが印象的だったのです。
正面を向いて、上半身と頭を下げてゆくと同時に、スリットの入ったほうの足を
前に少し出して、その片足を内側に曲げながら体を縮める。
体全体が微妙なS字になるんです。
なんて色っぽいの! (*´д`*)ノシ
そこで思い出したのが、以前にロシアのバレエを見たときのこと。
最後にプリマ・バレリーナがおじぎをするとき、両手をフワリとさせながら
体が沈んでゆきました。まるで深海のなかのよう。人間というよりは、
ほとんど妖精? 妖艶な色気を醸し出すタンゴとは正反対の世界ですねェ。
今までに見た、最も印象的なおじぎは玉三郎でした。
歌舞伎ではだいたい見栄を切って、正面を向いた姿で幕が下ろされます。
それはそれで素晴らしく美しいのですが、おじぎは現代劇の「夕鶴」を見たとき。
鶴である「つう」が、与ひょうを思いながらも飛び去ってゆき、雪の中で片手を
上げて別れを悲しんでいる姿で幕が下りたのです。そんな可憐で人間離れした
美しさを演じることができるのは、いまでは玉三郎以外にはいないでしょう。
そして鳴りやまない拍手が続き、ふたたび幕が上がると、そこには正座をして
前に両手をつき、頭を深々と下げた玉三郎の姿が。
雪のなかで悲しみに立ちすくむ姿は劇のなか。そしておじぎをしているのは
演じきったあとの役者玉三郎。ぎっしりつまった観客の目、すべてが玉三郎を
見つめています。その視線は、最初から演劇を見て感動した経験すべてに
対して、喜びと感謝、賛美の気持ちがこめられたものでしょう。
玉三郎の一部の隙もない完璧な姿。それを包み込むすべての観客の視線と
万雷の拍手。その関係性全体が、まさに完全なる空間美の体験です。
おじぎひとつでも、これほどの感動を呼ぶものなのですねェ~^^