だいぶ日が傾いてきました。19時にはハバロフスクに到着し、2泊3日60時間の
シベリア鉄道の旅は終わる。長かった~(^益^;
最近では、上野~青森間の新幹線が3時間以上で「長い」と感じたけれど、それの
20倍ですからね。もうシベリア鉄道は「列車に乗る」というよりも、「生活する」
という感覚でした。
「ああっ!アムール川だ」とつぶやくと、下のベッドのじーさんが「そうだ」と返し
ました。これを渡ればハバロフスクに到着して、この一家ともお別れです。
このアムール川も、すごく広いです。いつまでたっても渡れないくらいの感じでした。
あ~工場だ。こんな大きな町は久しぶり。
時間ぴったりに到着しました。ロシア人はほんとにきっちり。
30分も停車するので、乗っていたみなさんはみんな降りました。俺は荷物を全部持って、
車両の係員やコンパートメントの御一家と別れの挨拶をし、駅を出てゆきます。
3日間も一緒だったので、ちょっと寂しいお別れでした。
さすがにハバロフスクの駅はでかい。
1本くらいはいいだろう、と我慢していた煙草を一服^^ バスを探してホテルまで
乗っていくか、それとも楽してタクシーか。
そう思っていたら、物乞いの女が寄ってきて煙草を一本くれという。皮膚病にかかって
いて気持ち悪い。一本ならいいだろうと取り出してやると、あっちの仲間にもみんなに
くれと指をさす。3~4人の怪しい男たちがこっちを見ている。「ならやめとくよ」と
タバコをしまおうとすると、女は喚きながら俺の腕を掴んだ。
「触るな!」とふりほどいて一本やると、その女は仲間のほうに戻っていった。まとめて
からんできそうな気もしたので、さっさとタクシーに乗り込む。「これこれのホテルまで」
というと、「400ルーブル」と答えた。いちおう明朗会計。
歩くと1時間だが、タクシーに乗れば10分だ。楽に到着。500ルーブル札を出すと、
例によって「つりがない」と言う。「ならいいよ」と払ってやる。こりゃしょうもない。
たった170円余りのことですからね。
少し大きな駅が近づくと、町が見えてきます。通過するローカル駅だと、すごく質素な
造りの家がちらほらの集落。ロシア号が止まるような駅には、ご覧のように少し立派な
建物の町があります。そのなかでも大きな駅には、工場やビルがあったりするのです。
雪が積もったらつぶれそう。隙間風がひどすぎて、冬を過ごせるのでしょうかー。
しかしなんかのどかに菜園を楽しんでいるような。
さて、この駅では上り列車とすれ違うという初めての経験。お互い長い旅ですぅ~^^;
そんなところでは地元の売り子さんもたくさんやってきますが、この巨大な松ぼっくり
は?とても食べられそうにないが?
ひとり旅の日本人女性が、これを買っていました。列車が出発してしばらくすると、
その人が俺のコンパートメントに来て、下の老夫婦に「これは食べられるものなの?」と
片言の英語で聞いていました。英語は全然通じないのですが、何やら意味不明のやりとり
がしばらく続いていました。何だかわからんでこんなもん買ったのかぁ~。
ちなみに、あとでネットが通じたときに「シベリア鉄道」「巨大松ぼっくり」とかで
検索すると、出てきましたよ。葉(?)をむしって、その根っこに松の実があって、
それを食べるそうです。小さな粒を苦労して出すんだって。へー。
今日でシベリア鉄道の3日目。夜になるとハバロフスクに到着です。あまりにもヒマだし、
また食堂車を最後に使うことにしました。ビールが旨いし♪
さて最終回は、メニューを見て気になっていた「ロシア風ミックスサラダ」と「クル
トンの上にサーモン・キャビア(いくらです)だのなんだのをのせたやつを注文。
どっちも美味いぞ!さてそれを注文するとき、百貫越えおばちゃん軍団のなかで、唯一
20代で感じのいいお嬢さんウェイトレスがやってきた。メニューを見て、俺が指を
さすわけだが、わかりやすいようにメニューを向こう側に向けてやろうとすると、
こっちにやってきて俺の隣に座って一緒に見るのであった(小学校のときに、ひとつの
教科書を女の子と一緒に見る気分だよ!)。
俺がビール(250ルーブル)を指さすと、お嬢さんは注文票にビールの名前を書いて、
値段を250と書いて、「これでいいわね♪」と丁寧に俺の顔を見て確認する。ひとつ
ひとつ、全部そうする。嬉しくて10コぐらいいろいろ注文したい気分だ。
クラスのなかで真面目でおとなしく、「中の下」みたいなイメージだけど、愛嬌が
あって明るい子。数学なんかは頑張っても全然できないんだけど、こちらは教科書を
忘れている上に全然教師の言うことを聞いていないもんだから、いろいろとお世話に
なったりしてるって感じ。俺はいつも笑わせたり、かわいいもんだからからかって
泣かせたりしちゃったり。そのたびに、ひそかにそのコに惚れているさえない男子数名
から、おっそろしい怨念を受けていたりするもんなんだな。好きだったら話しかけて
笑わせてみたらどーですかっ。
なんてことを考えながら、ビールと食事を楽しんだのでした♪
ここはデッキ。しばらく窓の外を見たり、スクワットをしたりストレッチをしたり。
同じような景色のようで、いろいろ変化に富んでいたりします。
どんどん通り過ぎて行ってしまうのがもったいないような気にもなるのでした。
だんだんハバロフスクが近くなってきました。
コンパートメントにはテレビがあり、いつでもつけて見ることができます。これはお笑い。
右のとぼけた青年が主人公で、左は乱暴者。そいつが意地悪をしたりするのですが、
追っかけっこが始まり、最後には青年がそいつをギャフンといわせて終わるという、実に
ベタなつくり。チャップリンの短編とドリフの茶番劇を混ぜたような感じか。
昨日の夕方にもこれを見たのですが、今日もまた始まった。すると俺の隣にいるお嬢さん
が大喜びで、始まりの音楽が流れたら鼻歌を歌っていました。始まってみると、昨日と同じ
内容じゃねーか。シベリア鉄道って、毎日同じビデオを流しているの?それじゃあずっと
旅しているお嬢さんは、同じプログラムだって知っていて、それであんなにはしゃいだの?
ロシア号に乗って3日目、朝っぱら早くですが、15分ほど止まるのでホームに降りて
少し歩く。コンパートメントは狭くて空気がこもるので、外の風にあたると気持ちがいい。
同室の寝ていたじーさんが、ばーさんに起こされて出てきた。ロシア語でわからないが、
「ほら、停車なんだからタバコ吸うんでしょ!」と言われているのがわかる。じーさんは
一服して「ほぼ禁煙中」の俺はうらやましくなり、あとでコンパートメントの中は
タバコを吸ったやつの息で満たされるのである。タバコ臭いのに対応するのは、タバコを
吸うしかねーんだけどなー。
機動車を切り離したり連結したりしていました。旅の途中、何度かやっていて、客車も
最後のほうは短くなっていましたよ。
こんなかわいい売店が開いていて、買い物をしている人もいました。
走り出すと、景色はひたすらシベリアの平原。
じつはこの朝、大変な事件が起こっていたのです。顔を洗いにトイレに行ったときのこと。
1車両に2つのトイレは、乗客のみなさんがひっきりなしに交代で使います。なんか
抵抗があって、私は極力使いたくない。わりとまめに掃除はしているし、汚れて
いることはほとんどないんですが、なにせ使用頻度がすごい場所ですからねー。
ちなみにロシア号に乗っている間、乗客は風呂に入れないので、髪の毛を洗えずに少し
気持ちが悪い。
ところで本日で三日目、私はまだ「大」をしていません。食べる量はすごく少ないし、
我慢するわけでも腹が張ってくることもなく、便秘という症状もなく、なんかやり過ごせ
ました。3日までくらいでしょうね~。
さて朝に顔くらいは洗う。起きたら首に、乗客に一枚貸してくれているタオルをかけて
持って行き、「小」を済ませてから手と顔を洗った。そしたら、首からはらりとタオルが
落ちたのーー!!!床にーーー!!!
ぎえええええ、きたねええええええ!!!!!
ぐわっ!とショックを受け、咄嗟に「この上の部分は下についてないよね?!」と
拾い上げて、床に触れてない部分で顔を拭う。そのあとで下に触ってないよねっ!と
いう部分をつまんでコンパートメントに戻り、ビニール袋のなかに入れる。ぐええ。
そして気が付く(冷静なみなさんはわかりますよね)。トイレに落ちたタオルで顔を
拭くこたーねーぢゃねーかー。持ってるハンカチ使うもよし、顔なんか濡れたまま
出てくりゃいーんですよ。動揺しすぎて、つい使っちゃったんですよ。下に触って
ないとこでちょちょっと拭いただけなんですが、あとで考えるともんのすごく気分が
悪い。しばらくへこみました。。。
車窓から見えた広い川。夜には60時間の旅も終わるので、たっぷり景色を楽しむ。
こういう草原が一番多かったかな。肥沃そうですが、長い冬には雪と氷で覆われる
のです。
湿地帯ですな。広いのなんのって。
クリックして大きくして頂ければ、干し草造りが見えるでしょう。
さて目を疑う景色でした。向こうに並行して走っている貨車がある!このものすごく
広い大平原で、並行して線路があるなんて?!離れて複線???幻じゃないだろな?
しばらく同方向に向こうの列車は走っていました。どうなるの???
じっと見ていると、やがてこちらの列車は右に曲がり始めました。そしてあちらの
長い貨車は、こちらに曲がってくる。あっあっ!そぉ~~かっ!この真ん中に広い
湿地帯があり、線路はそれを迂回して大きなUの字に敷かれているのです。だから
Uの両端から列車が近づき、下の部分ですれ違うと考えてください。
そう。すれ違った後は、またあちらと同じ方向に、画像でいうとさっきと同じ、どちらも
左方向に進んでいくのでした。シベリア鉄道は、極力トンネルや鉄橋がありません。
迂回できるだけ迂回しているのです。だからすご~く時間がかかるわけ^^;
逆に、日本は山岳地帯に、鉄道の路線でも高速道路でも、すごぉく恐ろしく高い所に
なが~い橋をかけるし、天文学的な数字の財力を使ってトンネルを掘りますよね。
おかげで速くて快適な移動。それも便利でいいけれど、名古屋までトンネル掘る資金で、
地方の赤字ローカル線を存続させたほうがいいと思うのですが。
森の中に集落があったりします。どんな生活なのだろうねえ。
シベリア鉄道は、10分以上停車するときは、ほとんどの乗客がホームに降りてリラックス。
駅周辺の地元の人間も列車の来る時間がわかっているから、いろんなものを売りに来ます。
多いのはまずそうなパンとか郷土料理の水餃子みたいなもの。どちらにも気がそそられない。
みんな煙草を吸うか、こういった売り子をひやかします。俺もウロウロ^^;
何日も列車に乗っている人は、生鮮野菜のキュウリやトマトなんかを買ったりします。
ベリー系の果物なんかもよく売っていました。でも驚くのは生の魚。そんなのを
買ってどうするの。車両の中で焼いたり調理はできんぞ。
あとでどのあたりだかわかるように、写真を撮っておきました。いま調べてみると、
60時間の30時間余り過ぎたところだったから、やはりちょうど行程の真ん中あたり、
モンゴルはあとにして、中国との国境線近くでした。
あとはまた、ひたすら列車は走ります。立って車窓を見ているのに疲れると、上段のベッドで
横になり、哲学書を少し読んで(じっくり時間がかかるし、眠くなるしでグッド・チョイス)
うつらうつらしたりする。ちなみに1日で2~3回昼寝をするが、夜はしっかり眠れるから
不思議。たぶん眠りがとても浅く、適度に揺れているから眠りを誘うのでしょう。下段の
老夫婦なんぞは一日の大半を寝ているようだ。
2日も過ぎると、だんだん車両の人たちの顔を覚えてくる。旅は道連れ?
汽車ポッポの時代に乗ってみたかったね。ちなみにトンネルはほどんどないので、煙も
安心だよ。山に穴をあけたり、そのメインテナンスも大変だろうから、山があれば
遠くたって迂回して線路を敷いたのでしょう。
駅舎はわりとこんな立派な建物が多い。ロシア語のつづりは全く読めない^^;
二日目もまもなく暮れます。コレ、モスクワからウラジオストクまでの6泊7日も
乗っていたら、ホントに長いよ。俺はハバロフスクで降りて2度に分けたけど、
何度か降りていろんな街を見ながら旅すればいいかなぁ。
このTシャツをジャージにしまいこんだおじーちゃん、2つ3つ隣のコンパートメントの
人なのだが、ずっと通路に立って窓から外を見ていました。なんかニコニコしている顔
ですが、決して面白おかしいわけではないようです。
日没なので、太陽光線がほぼ水平に射しており、線路わきの木立に車両の影が映って
います。横にずっと一緒。
たまに急カーブを曲がってゆくと、長い車両が見えたりします。それを写真に撮り
たくなるのですが、窓は開かないし、汚れた窓のはじっこはよく写らないのです~。
退屈だし、ゆっくり椅子に座りたい気分になるし、ビールというか酒を入れないと
我が人生は崩壊しそうになるので、また食堂車に行く。ディナータイムだというのに
誰もいません。円高金持ちの日本人がまた来たな、と思われたでしょう。繰り返し
ますが、日本のしけた居酒屋よりも安いんですよ。あちらの人たちにとってはすごく
高いのですが。
ロシア人のみなさん何日車内で過ごそうが、基本は持ち込んだ食料で生き延びるの
である。同室になった家族連れ、娘さんがお湯で溶かすインスタント・ヌードルスープ
をくれたり、お父さんは駅売りのゆで卵を勧めてくれたけれど、どうにも食べる気が
しませんでした。「俺はこのあと食堂車に行くし、気持ちだけ頂きます。スパシーバ!
(ありがとう)」と言うと(全然言葉は通じないんだけど)、「お前は全然食べない
じゃないか。スパシーバって、もらって食べたらスパシーバだよ。お前は遠慮して食べ
ないんだから、全然スパシーバじゃないんだよ!」と怒られてしまいました。言葉が
わからなくたって、言ってることみんな伝わるなー。でもさー、俺は朝パンひと切れ、
夜にしめ鯖1品でいいんだよ~。ずっと車内にいて動いてないんだよ?それにビール2本
に料理2品で2000円くらいなら、日本人の感覚だとそれほど高くないですぅ。居酒屋で
飲んだら、一軒目で4~5千円払うことが普通だからなあ。
昨日はビールだったので、今日はワインとかないかなーと聞いてみるが「ナイ」。
「じゃあウィスキーとかブランデーとか、ロシアなんだからウォッカとか?」と聞いて
見たが、苦笑いで「ナイ」。そおか~、酔っ払いが出ても困るから、酒はビールだけ
しか置いてないのかなー。
鰊の酢漬けはとても旨かったので、連日の注文。「おばちゃん、ビールに〆鯖!」という
ホームな気分になりますからね。鰊よりもずっと高いサーモンも注文してみました。
味はよかったです。でも高いのに少ない。コスパは新宿や渋谷の立地だけで人が入り、
常連が皆無の1年でなくなる居酒屋、という感じですね。ま、許してやろう。何日も
走っている列車のなかで食っているんですからね^^;
車両の通路に立つか、上段のベッドで横になるかしかないので、食堂車はだ~れもいな
いし、ここは長居させてもらってビールを追加注文したりしたのでした。
ロシア号に乗って2日目。まるまる列車の中に1日だ。しかしご覧の通り、日に何度か
短い停車がある。イルクーツクやハバロフスクのような大きな駅では30分停車。その
ときには乗客のみなさんは駅舎の店に買い物に出たりします。俺の乗った区間では、
3分から15分くらいの停車が何度かでした。
多くの乗客は降りて煙草を吸うか(老若男女問わず、かなりの喫煙率)ぶらぶら歩いたり
します。俺は喘息で煙草をほぼ止めていて、どうしても吸いたいときは1日一本。
シベリア鉄道の乗車中には吸うまいと思っていた。
しかしまあ、みんな吸う吸う。コンパートメントが一緒のじーさんも必ず吸う。その
あとに部屋に戻ると、狭い密閉空間だもんだから、煙草の臭いのすごいことったらありゃ
しない。どうもすみません。俺が吸っているとき、多くの人にこういう思いをさせて
いたのですね。薄々は知っていたのですが、これほどまでとは。
車両のはじっこには、こんなものが売っています。でもみなさん、驚くほどの食料を
買いこんで席で食べる食べる。当然、食べ物の屑などが下というか、通路に落ちます。
1車両にひとりいる係員が、1日に何度か掃除機を持ってきてきれいにします。トイレも
わりとまめに掃除していましたよ。
さらに湯沸し器もあります。常に熱湯が出てくるので、乗客はカップラーメンやら
インスタントスープやら、コーヒーやらなんやらよく使っていました。長い冬には
ものすごく寒いので、ロシア人にとってこのサモワールは必須のアイテムなのでしょう。
同部屋のご家族は、俺が何度かあげた日本のお菓子のお返しに、スープやらインスタント
コーヒーをご馳走してくれました。
デッキ、外に出るドアのすぐ横には、湯沸し器のストーブがありました。いまは石炭を
燃やしてはいないでしょう。俺は何度かこのデッキで立ってくつろいでいたのですが、
ここには滅多に人は来ません。車両の係員さんが、ここで煙草を吸って、吸い殻をこの
中に捨てるところを見てしまいました。実はこの係員、前日俺に「ここは禁煙だからな」
と言っていたのです。気まずいぜー^^;
列車のスピードは場所によって違いますが、日本の普通のローカル線ぐらいだったり、
自転車のほうが早いよね?というくらいだったり。
ほとんど通過してしまうローカル駅の近くには、このように集落があります。だいたい
とても質素な感じですね。
デッキのところ、車両のドアのガラスは比較的きれいなので、このように外の写真が
まあまあきれいに撮れます。
しばらくすると、またこんなふうに「何分停車~」となってみんな歩きます。
コンパートメント前の窓は汚れているので、外を撮るとこんな感じになっちゃう。