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世界を変えた6つの飲み物

2007-12-26 10:01:15 | 酒の本棚(書評?)
まずは書誌情報。

トム・スタンデージ(2003)/新井崇嗣訳(2007):世界を変えた6つの飲み物~
ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史、インターシフト、325p.

2007年3月の刊行です。

帯には、「ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コカ・コーラ。古代から現代まで、6つの飲み物が語る熱情と覚醒の世界史。ささやかな飲み物が、人類を駆り立て、歴史をつねに動かした、その大いなる秘密が明かされる」
と、気宇壮大、です。

実際には、、、、、本当にそうです。
こういう本の場合、ともすれば6つの飲み物の歴史が(並行的に)描かれ、はい、よくできました、というものが少なくないのですが、この本の場合、「その飲み物が世界(慣習、文化、そして経済、社会の枠組み、ついには「歴史」そのもの)をどう変えたのか、という視点で綴られており、それが全編を統一感のあるものにしています。

例えばワインにしても、それが既に紀元前にはビールよりも素晴らしく、それを飲む道具と共に権力と繁栄と特権の象徴になっていたこと、そしてローマ帝国の繁栄とも重なっていたこと、また、キリスト教との結びつきとも併せ、それが飲まれるる(好まれる)一定の範囲があることなどが記されています。

「ビールの消費量が最も多い国は、ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、チェコ、英国、アイルランドなど、古代ローマ人から野蛮人とみなされた地域が主である」など、例示された国からは叱られそうな表現もあります、が。

ただ、ビールの名誉のために、別の部分も引用しておきます。
「(古代エジプトでは)パンとビールは、生命維持に必要な食物を表す一般名詞だった-この二つを組み合わせた象形文字は、食べ物を表す記号だったのである。『パンとビール』という言葉は、幸運と健康を祈るというような意味で、日常のあいさつにも使われた」で、実は「乾杯!」にはビールが正しい姿のようです。
(この辺り、先般書いた「乾杯の文化史」との関連が気になるところです

このようなエピソードや解釈等が、6つの飲み物について、大きな歴史の流れの中で議論されています。故に、「100字でわかる」説明は無意味で、是非読んでいただきたいと思います。

また、「付録:古代の飲み物を探して」「註」もそれだけで興味深いものでした。さらに、通常は名前だけのエラい人が本の内容をなでることが少なくない「解説」も、この本の場合、「本書出版プロデューサー 真柴隆弘」さんなる人によって、この本と、酒と文化・世界史への愛情を込めて綴られており、面白いものでした。

この「酒の本棚」の今年のベスト、だと思います。

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