海の水と涙 「海の水をなめてみたい」 それは僕の幼いころの願いでした。 母さんはけらけら笑っていました。 「海の水をなめてみたい。塩からい海の水を」 広い海がすべて塩水だなんて、 僕には信じられなかった。 「海の水をなめてみたい」 それから、しばらくして海に行った。 秋の海だった。くもり空で深い色の海だった。 それが初めての海だった。 今で思うには、クルべーの波に似た色だった。 靴下をぬいで、海辺から海へと足を運んだ。 波が脈のように打っていた。 何度も何度もカーテンコールがある 盛況なコンサートのように、 波は僕の心を海にとかした。 「海の水をなめてみたい」 もう、ずっと思いつめていたことだった。 「海の水をなめてやるんだ。ついにやるんだ」 と、左手で水をすくった。 一度きりで舐めてみるのは、 もったいないような気がして、 一度すてて、手を洗って、 また左手ですくって、 「海の水をなめてみる」 ……海の水は涙と同じだった。 緑の味があった。 食塩水にはない緑の味があった。 悲しくなると人は海を見たくなる。 なぜなら、涙と海の水はよく似ているからだ。 きっと悲しくなると、海を思い出すのだろう。 生命の故郷ともいうべき海を思い出すのだろう。 そして、人はまた涙をふいて生きていくんだろう。 下、1日1回クリックお願いいたします。 ありがとうございます。 もくじ[創作その他] |
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海の食べ物って……。
藤村屋さんは、魚屋さんなんだそうですよ。
でも、最近は日本酒まで売っているみたいです。
・・・・。(・_・)なんか風邪引きそうなの・・・。
潮風にあたると、風邪引かないんだよね~
もぉ、ずっと何年も行ってない気が・・・。
ミネラルたっぷり♪