Runrun日記

最近読んだ本ーユリウス・カエサル ルビコン以前(中・下)



塩野七生 著作 「ローマ人の物語 9・10 ユリウス・カエサル ルビコン以前(中・下)」 新潮文庫

紀元前60年~前49年1月、カエサル40歳から50歳までの話。カエサル40にして起つ?

元老院を中心とする寡頭政治は、行き詰っていた。元老院階級は動脈硬化を起こし、統治領域が拡大してしまったローマには、対応できなくなっていた。あくまでも、元老院主導による寡頭体制を維持しようとする元老院派と、それを改革しようとするカエサルは対立していました。

カエサルは、オリエント制覇で名をあげたポンペイウスと、カエサルの資金源だったクラックスの協力を得て、執政官に立候補、当選を果たします。カエサル、ポンペイウス、クラックスによる「三頭政治」の開始です。カエサルは、元老院派を抑え込み、農地改革など、今までできなかった民衆派的な改革を次々と実行していきます。

ところが、執政官の任期は一年なんだよね。カエサルは、一年の執政官を務めた後、ガリア属州の総督になります。
カエサルは、ガリア属州からローマの「三頭政治」を遠隔操作することになります。はじめはうまくいっていたのですが・・・

この巻のポイントは、「三頭政治」の成り行きと、カエサルによる「ガリア戦役」と云う事ですね!

ガリアとは、北イタリアと、今のフランス辺りの地域に住む民族で、ライン川以東に住む民族はゲルマン民族だそうです。ゲルマン人が住む所は、気候が厳しく住み難かった。それで暖かで豊かな地域に移り住もうとしたのですね。ガリア人に住む地域を圧迫し、圧迫された人たちは難民となって、さらに西に南に流れ出します。難民問題は、今のヨーロッパと似ていますね。今のスイス辺りから流れ出た難民達が、カエサルの統治する属州を通過させて欲しいと云ってきました。カエサルはこれを拒否、軍事力でもって押し返します。

最初は、ガリア人を守るのが目的だったのじゃないの?
一旦兵を出すと、今のフランス・ベルギー・オランダ辺りのガリア人が住む地域を制覇、ローマ化を目指します。ガリア人はいい迷惑だよね。平和に過ごしていたのに、なんでローマの人達の言いなりにならなきゃならないんだ!? 人質を出して恭順しなければ、殺されるか奴隷にされてしまう・・・?
文明の差は、明らかなんだね。ガリア人とローマ人が戦えば、ガリア人は10倍の兵力を持ってしても、ローマには勝てない(悲)。カエサルは、イギリスまでいって戦います。なんでそこまで行く必要があるのだ。アレキサンドロスと一緒で、ただ冒険したいだけ? でも、ライン川の東には手を出さなかった。ライン川の東は森が深くて、其処に逃げ込んだゲルマン人達までは対処できなかった?

カエサルの功績の一つは、このガリア戦役により、ヨーロッパのローマ化、文明化に寄与した事ですかね。そして「ガリア戦記」を書いて歴史を後世に残したこと!! イギリスには、商人もつれて渡ったというから、文明は一挙に進んだのだろう。

紀元前53年頃になると、大きな問題が発生します。
「三頭政治」の一人、クラックスがオリエントの地でパルティアに敗れ戦死してしまいます。
ポンペイウスに嫁いでいたカエサルの娘ユリアが死んで、ポンペイウスとカエサルを繋いでいた絆が外れます。
紀元前52年、カエサルによって抑えられていた、中部ガリア(今のフランス)の人達が一斉に蜂起します。
ガリアの蜂起は当然と云えば当然!

ガリア戦役は、アレシアと云う所で最後の攻防戦が行われたようです。アレシアの高地にガリアの兵8万が籠り、それをカエサルの5万の兵が取り囲みます。さらにその外側から、ガリア各地から来たガリア兵25万人が襲い掛かるという図式だったようです。な、なんと、カエサルが勝ってしまいます!

ガリア戦役の当時、ガリア全域の人口は1200万前後だったそうです。8年間のガリア戦役で100万人が殺され、100万人が奴隷にされたそうです。
その後、ガリア民族は従順にローマに従い、ローマ帝国の時代になっても、二度と反旗を翻すことは無かったとか。文明に馴染んでしまえば、自由だとか自治だとかいって騒ぎ立てるより、楽なのかも知れませんね。

さて「三頭政治」成り行きは? ポンペイウスは元老院側に引き込まれてしまっていました。元老院では、カエサル憎しの人ばかりです。ガリア戦役が終わってカエサルが戻って来て、また反元老院の政治をするようでは困ります!
ローマの法では、属州総督が任を解かれてローマに戻るときは、属州とイタリアとの境界、カエサルの場合は、北イタリアのルビコン川を渡る前に兵を解散しなければなりません。カエサルは、安易に兵も待たずにローマに戻れば殺されてしまいます。ローマでは、カエサルの手足になってく働く護民官(アントニウス?)が現れて、政治的な解決を画策しますが、うまくいきません。

ついに元老院はカエサルに対する「元老院最終勧告(非常事態宣言)」を発出し、ポンペイウスに兵を結成させ、カエサルを倒すように命令します。
政治的な解決を望み、法を犯すことはしたくなかったカエサルですが、ついに兵をつれたまま、ルビコン川を渡ります。
「賽は投げられた!」というのが、ルビコン川を渡るときの名文句で、ことわざにもなっている?
内戦の始まりです。

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