いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

中国人の愛国心  王敏著

2007年09月20日 | その他
 興味深い内容でした。「なるほど、そうなんだ!」と不思議に納得したり、でも「やはり日本人とちょっと違うな。」と思ったりしながら、読み進めていきました。
 私自身は愛国心という言葉は何だか右翼の合言葉みたいな印象が強く、日常ではほとんど使いません。そのかわり、以前の記事でも書いたように「国家の品格 藤原正彦 著」を読んで以来「祖国愛」という言葉の響きをとても気に入っていました。でも、今回は中国の文化を視野に「愛国心」という漢語の意味を見直すきっかけにもなりました。
 細かい点では少し異論はあるものの、この本で最も私が注目したのは中国人の徳と文化に対する考え方です。

 徳については日本でも一般に広く使われている言葉ですが、中国の人々の方が概念の範囲が広いのかなと感じます。中国では皇帝も自然も天意によるものと考えます。中国では天の意思によって自分たちの生活が営めるのだと人々は思い、その天意を受けて国を治めるのが天子(皇帝)であると考えられてきました。ですから、皇帝には特に高い徳が求められ、それがなくなったときは天意によって王朝交代が起こりました。

 歴史と文化に対する考え方について日本人と中国人の微妙に違う部分がわかりやすく書かれています。
 「元は駄目でも清は中華と認める。」異民族であっても中華文明をどう受け入れてきたかの違いにあるというのは今までにも何度か聞いたことがありました。

 「中国は歴史上何度も周辺異民族が攻めてきているので単に攻めてきただけならそれほど恨みを買うことはなかっただろう。」という著者の記述が心に残りました。日本語の使用の強要や神社を建てるなど文化への侵略をしたら恨まれて当然でしょう。心の中の思いまで強制することはできないからです。

 また、王敏氏は靖国神社や2005年4月の反日デモの問題にも詳しく触れています。
 その他現代の中国文化についてもミニミニダイジェスト的な感覚で読みやすい文章で書かれています。

 村上春樹が中国でそんなに読まれているなんてちょっと驚きでした。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。