いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

いつか陽のあたる場所で 乃南アサ 著

2011年03月06日 | 小説
 寒さが冬に逆戻りしたようなここ2、3日でしたがようやく少し緩んできました。さて、今日はまるでテレビドラマでも見ているかのような雰囲気の小説・・・乃南アサさんの「いつか陽のあたる場所で」です。

ちょっと話が横道に反れますが、もう何年も前、ある作家がテレビのインタービューに出演していて、とても印象に残る話をしていました。それは作家として自身の教養を幅広く、また思いがけない新しい発見をするために、本屋に目的の本を買いに行ったら必ずその本の両隣に並んでいる本も一緒に買って読むというものでした。つまり、読みたいと考えた本の他に偶然そこに並んでいた、未知の(知っている場合もあるでしょうけれど)作家や傾向の違う本を2冊、合計3冊ずつ本を読むのです。

 当時私は、毎日の買い物はスーパーのチラシを見て少しでも安くと、日々の暮らしも節約に心がけていた頃でしたので、そんな贅沢はちょっと抵抗があり、いつかそんな風に本を買って読んでみたいものだと思っていました。やがて、読書の時間も少しずつ増やせるようになると、各地に大型の古書店が増え、ブックオフの100円コーナーのように気軽に購入できるようになりました。以後、時々読みたい本の両隣に並ぶ本もいっしょに(なかなか新刊ばかりだと積読状態を懸念して3冊は買えませんが・・・)購入しています。目的の本を見つけたら何も考えずに3冊手にとってレジへ向かい、購入してから私の机の積読コーナーへ・・・。唯、実際に両隣にあった本を読破するのは半分程。1~2年経っても読まないときは古本屋に逆戻りですが・・・。

 今回の「いつか陽のあたる場所で」は、まさにその両隣にあった2冊のひとつでした。何気なくバックに入れて(私の読書の半分は移動中の電車の中か病院などの待合室です。)電車の中で読み始めたら、あらっ!舞台は谷中ぎんざとその近く、今も東京の下町情緒たっぷりの地区です。谷中かあ~。最初は物語の内容より東京に住んでいたころ、時々出かけて行った谷中銀座が急に懐かしく感じられて興味が湧いてきました。

これは犯罪を犯して罪を償った後、いわゆるムショ帰りの二人の女性が生きていく物語です。二人は過去を隠すことに細心の注意を払いながら下町の人々と関わりあいながら生きていきます。なんとなく少しはらはらしているうちに読み終えてしまうって感じなのですが、芭子と綾香、その二人を取巻く人々がすっぽり下町気風に覆われていて、なんだか演歌を聴きながらコーヒーを飲むようなほろ苦さ・・。ちょっと疲労気味のときでも気楽に読める本ですね。

そういえば谷中ぎんざの喫茶店でコーヒーに黒蜜を入れて飲んだことが何度かありました。名前は忘れましたがその喫茶店まだやっているのかしら?