いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

海馬 脳は疲れない  池谷裕二・糸井重里著

2007年04月25日 | その他
 ちょっとわかったような気分になって明るくなれる本でした。

 これは糸井重里さんと池谷博士の脳についての対談集です。海馬という部分について説明しています。糸井さんは毎日脳の研究をしている学者ではないので、池谷博士の説明はとてもわかりやすく、楽しく読み進めることができました。

 ちょっと話は横道に反れますが、人間は平等だというのは民主主義社会が作った法律上の表現です。私たちは学校教育の過程で嫌と言うほど叩き込まれた言葉ですが実社会で自分自身に向けてこの言葉の意味をしっかり考えて確かにそうだと実感することは難しいはずです。人間としての尊厳を問う場合は大変重要な意味を持ちますが、身体的な能力や容姿に関して神は人間を平等にこの世に送り出したと本当に実感できる人はほとんどいないと思います。(この場合の神様に宗教差はほとんどないでしょう。)それでも生きる意欲を保ち続けることができるかどうかが問題です。結局は一人ひとりが自分とどう向き合えるかでその人の人生も決まってくるでしょう。
 また、一人の人間でも冴えている時と馬鹿な時があって元気が出たり落ち込んだりしています。これも言うは易しですが脳の使い方次第です。

 でもこの本の副題「脳は疲れない」という言葉は、最近、体のどこかにいつも老いの影がちらつき始めた私にはちょっと嬉しくなる言葉でした。年寄りの物忘れも「ああ実は生きることに慣れてしまったからなんだ」と考えると「刺激が大切なんだ」と一人納得です。

「白黒はっきりさせなくたってグレーだって大丈夫。脳は結構都合のいいように自分を納得させることもできるんだ。」どうやらその辺がやる気の原動力につながっていくということもあるのでしょう。

 最後に池谷博士のあとがきの中で<人間への応援歌たる「海馬」>という言葉を目にしたとき「この本はしばらく私の本棚の良く見えるところに置いて元気の出ない時に読み返そう。」そんな気持ちになりました。