いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

くじけないで    柴田トヨ 著

2014年09月29日 | 詩歌
とても慌ただしく過ごした夏が終わりました。

今回は柴田トヨさんの詩集「くじけないで」です。90歳を過ぎてから詩を書き始めて去年101歳で亡くなったそうです。

先月、長年要介護状態にあった義父が亡くなりました。義父は柴田トヨさんより少し年下ですが、「おじいちゃん100まではがんばってね!」という孫たちの願いは届きませんでした。

義母はひとりになりました。10年近く歩行困難だった義父を小さい体で支え、義父が認知症を患ってから、義父の幻覚や幻視に耐え、傍らでじっと見守ってきた義母にも老化の波がどっと押し寄せてきました。
「おばあちゃんは100までいけるよ。きっと!」先日米寿のお祝いと賞状を行政から頂いたばかりの義母の足腰はまだなんとかしっかりしていますが、年齢的な老化による物忘れや、体力の低下は生活の質に影を落とし始めています。
義母も生活支援としてヘルパーさんの介助やデイサービスを受ける立場になりました。

先月義父永眠の知らせを受けてから、葬儀、光熱水道、年金、保険、相続など各種手続きの為、義母のそばですっとお世話してきました。そんな時、義母の本棚に柴田トヨさんのこの本が並んでいるのを目にしました。
「これはええ本や!あんたも読んだらええわ!」義母はそう言って私に手渡してくれました。

その晩は疲れているにもかかわらず、最後まで目を通さずにはいられなくなってしまいました。
「あまりにも正直すぎて、目頭が熱くなるような・・・でもとても自然で素敵な詩ね。」

翌朝、私はそう感想をいいました。

「結婚して、子供を産んで、お母さんになって・・・歳をとっておばあちゃんになって・・・。
女の人はみんなおんなじようなことを考えてはるんやなあ!」義母はそんなことをいいました。

*****トヨさんの詩より*****

思い出Ⅰ

子どもが
授かったことを
告げた時
あなたは
「ほんとうか 嬉しい
俺はこれから
真面目になって
働くからな」
そう答えてくれた

肩を並べて
桜並木の下を帰ったあの日
私の 一番
幸福だった日

*****************
先生に

私を
おばあちゃん と
呼ばないで
「今日は何曜日?」
「9+9は幾つ?」
そんなバカな質問も
しないでほしい
・・・・・
********************


そういえば認知症の義父はいつもそんな質問ばかりされていました。
「誕生日は?」「ここはどこですか?」とか「今の季節は?」

トヨさんの詩は義母の心の中の思いに重なりました。

「いくら歳をとったって人間としての尊厳は大切にしたい。」、義母の心の叫びを聞いているようでもありました。

その一方で、現在の私の年齢とほぼ同じころこの世を去った実母がもし生きていたらどんなおばあさんになっていたのかしらと想像してみたりしながら・・・いつのまにか鳴き出した秋の虫たちの声に耳を傾けていました。


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