2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

河は眠らない

2009-03-21 | ■エッセイ
  
  亡くなってから20年も経つというのに、開高さん、まだ元気なんだ!と思わせるような新刊が最近店頭に並びました。。

  昨年の5月に集英社から出た「一言半句の戦場」の帯コピーは、文字どおり『文豪、最後の新刊!』というものでしたが、まだ新刊は出る余地があったのでした。

  「河は眠らない」、10年以上前に文藝春秋のNUMBERビデオ・シリーズでリリースされていたもので、2007年にはDVD化されています。そのタイトルと同じ「河は眠らない」という単行本が出ました。

  私は、テープの素材がヨレヨレになるほどこのビデオを見たので、ほとんど隅から隅まで開高さんのセリフを覚えています。今回、文藝春秋社から単行本として発行された「河は眠らない」は、そのセリフを活字化して、青柳陽一さんの写真と合わせたもので、こちらの帯コピーは『在りし日の姿、珠玉の言葉がフォトエッセイとして甦る!』というものです。

  この映像の出だしは次の言葉で始まりますが、なるほどこれを活字で読むとビデオとはまた違った趣があります。

  …川のなかの一本の杭と化したが、絶域の水の冷たさに声もだせない。芸術は忍耐を必要とする。

  映像の中で、この名言は開高さんの肉声としてではなく、いわゆるテロップで現れます。そのあと、ブラームスのバイオリン協奏曲の第二楽章が流れ、美しいアラスカの風景に開高さんのナレーションがオーバーラップしていきます。

  …現代は考えることのできる人にとっては喜劇。感ずることのできる人にとっては悲劇。

  クライマックスはアラスカ・キーナイ川でのルアーによるサーモン・フィッシングですが、大自然を背景に開高さんが語る言葉のひとつひとつが心に響きます。
一見、思いつくままに語られているような巨匠の数々の言葉、それが活字となり、美しい写真と一体化すると輝きはさらに増していく。そのとき、まさしく開高健は甦るのです。

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