疾風怒濤の80年代

日本中が熱い風に包まれていた1980年代
そのころの音楽・映画・テレビなどを語る30代のための
広場です!

1981年 『セーラー服と機関銃』

2006年10月19日 00時10分09秒 | 映画・ドラマ
セーラー服と機関銃

PI,ASM/角川書店

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TBSで長澤まさみ版の「セーラー服と機関銃」が始まったので、改めて本当に
久しぶりに薬師丸ひろ子版オリジナル「セーラー服と機関銃」を見てみました。

そこで本当に強く感じるのは、アイドル映画でありながら、相米慎二監督と、田中陽造脚本コンビのかもし出す、強い強いロマンポルノの匂いでした。

この映画でも、相米監督は徹底して、ワンシーンワンカットの技法を推し進めます。実はワンシーンワンカットは、ロマンポルノ界で、制作費を押さえるために結構使われていて、例えば神代辰巳監督も「赤い髪の女」などで多用していました。

しかし神代監督は手持ちで、近距離からグニャグニャと女体を取るのに対して、相米監督は徹底してがっちりと構図を決めたルーズショットの中で、人間を景色の一つとして捉え、冷徹な「神の目線」で捉えることを好みました。

特に象徴的なのが、悪徳刑事に刺された下っ端ヤクザを、パジャマ姿の薬師丸ひろ子が介抱していくうちに、ヤクザが不意に劣情を催して、思わず押し倒してしまうというシーンがあります。これを本当に冷徹なぐらい引きの絵で撮る事で、逆に人の営みをのぞき見ているような緊迫したシーンに仕上げていました。

彼は、絵のモンタージュを極力せずに、役者にその場所になじませるほど長い演技をさせることで、人の感情が動く瞬間を捉えるのが本当に上手い監督でした。
デビュー作「翔んだカップル」でも学園祭の出し物のもぐらたたきをしているうちに、叩かれすぎてモグラ役の少年が泣き出してしまい、その出し物自体が白けてしまうさまを、本当にしつこく撮ってましたし、台風クラブでも工藤夕貴が布団の中で劣情を催して自慰をしてしまう様子を、まあ冷徹に捉えていました。

しかし、それだけだったらどちらかというと、タルコフスキー系ですが、これをロマンポルノっぽい日本映画にしている要因は、もう一つ 女優薬師丸ひろ子の動きのつけ方です。まずファーストカットから火葬場でブリッジをしているんですよ!!そんなアイドル映画無いですよ!更に組長襲名を承諾して杯を交わした翌日、二日酔いになったというシーンでは、チューブトップにホットパンツ姿で
部屋中をデングリ返しさせるのです。

この女体に色んな変な動きをさせるというのは、神代辰巳も田中登もやっていた、ロマンポルノの得意技なのです。だってそれが高じて谷ナオミみたいなことになるわけですから・・・。それをロマンポルノの大女優風祭ゆきの前でやるわけで、
まあ、スゴイ映画だったわけです。

でも、アイドル映画として製作されたわけですが、相米監督は徹底してロマンポルノの技法を貫いたから、この映画が80年代の新宿・新大久保の濃厚な匂いを閉じ込めた大人の映画になりえてるわけですよね。

ただ、後半、三国連太郎が出てくる辺りは、東京東映っぽい、美術的な作りの荒さが目立って、ちょっと良くないです。

それを見た後、今のTBS版を見ると、ちょっと大人計画っぽい「ドラマの悪意ある戯画化」の手法・・・つまり伝統的なドラマ手法に突っ込みをいれて、わざと大げさにしたりすかしたり、ディティールの描写に終始したりしつつ、気がついたらあるクライマックスに到達する・・というところにとらわれすぎていて、ちょっと
おじさん的にはグッと来ません。


「セーラー服と機関銃」
監督 相米慎二
脚本 田中陽造

主演 薬師丸ひろ子
   渡瀬恒彦
   風祭ゆき

1981年制作
コメント
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