GO! GO! 嵐山 2

埼玉県比企郡嵐山町の記録アーカイブ

歌集『故山』(抄) 昭和48年以前 関根茂章 1974年

2009年05月03日 | 文芸

       故山
   荒みたるはたしずみたる吾が胸を
          いつも黙して護りこしかも

   雨煙る山は應(こた)へずさ緑の
          傾斜(なぞえ)おほらに春たたむとす

   外国(とつくに)の旅の客舎にいく度か
          汝の山容(すがた)を夢にみしかも

   祖父植えし杉の木立は鎮もりて
          明治のいのちたゝえおるかも

   ふたたびは見(まみ)ゆることの叶うまじ
          悲しみ秘めて相(あい)植えし杉
                     (弟の渡伯記念林)


       幽情
   刻む音はむごけきものか待つ胸に
          一秒一秒痛みとほれり

   よりそひて道を歩めばあが胸の
          高鳴るひびき君知るや否

   あが胸の痛みなぐさむ人ひとり
          この空のもと住みておはすも

   武蔵野の原の小草におく露の
          いのちあはれといねがてぬかも


       雄の子われ
   雄の子われ静かなる日は山の間の
          淵の如くに黙しあるべし

   雄の子われ怒れる時は火(ほ)の山の
          火柱となりてとどろきわたる


       新年
   あら玉の年は明けきて武蔵野に
          きらめく光さしわたるかも


       自戒
   何故にあが胸いたむかきみ知るや
          きびしき誇りそこなはぬため

   うつそみは哀しきものか耐え耐えて
          大らかに行かむますらをのみち

     関根茂章『故山』 1974年(昭和49)2月

※1973年(昭和48)以前の38首から。「幽情」は昭和20年代のもの。



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