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埼玉県比企郡嵐山町の記録アーカイブ

『われに詩あり』1 四季折々のうた 山下たえ 2000年

2010年12月26日 | 山下たえ『われに詩あり』(2000)

遠山の 影穏やかに 映しえて
       我が家の庭も 春の訪れ

何気なく 西風に乗る 梅の香に
       心和みて 朝日拝まん

紅梅の 放つ香りに 誘われて
       用無き道を 歩み居るなり

山鳩の 鳴く声聞きて 今朝の窓
       山影遠く 雨に煙りて

散歩して 春の名残の 鶯が
       青葉隠れに 細々と鳴く

待ちどおし やっと開いた 桜花
       散りゆく花の 儚さ覚ゆ

畦道に タンポポの花 見付けたり
       積み取るも惜し 立ち去るも惜

川岸の 桜の開花 遠けれど
       日毎賑わう 若者の群れ

都幾川の 桜堤を 歩きつつ
       大平山は 霧立ちて見ゆ

車座に 花茣蓙敷いた 家族ずれ
       桜堤に 花の饗宴

花茣蓙を 敷いて楽しむ 家族ずれ
       春爛漫の 花の饗宴

晴天の 菜畑に舞う 蝶の群れ
       この世の春を 我がもの顔に

紫陽花の 手毬のような 丸い花
       夏の窓辺に 爽やかに咲く

入梅に 濡れて咲きたる アジサイの
       花の終わりの 紫の色

老いの眼に 優しく映える 朝顔の
       花を数えて 今日も始まる

ひる日中 髪部をたれる 紫陽花の
       そぼ降る雨に また甦る

ゆらゆらと 光の中を 浮游する
       額紫陽花の 薄色の花

雨去って 蕾膨らむ 花菖蒲
       開花待たれる 明日が楽しみ

初節句 夢と希望を 孫にかけ
       強く育てと 空を見上げる

五月晴れ 初孫祝う 鯉のぼり
       泳ぐ姿の なお勇ましく

柔らかき 柳の若芽 濡らしつつ
       降るとも見えぬ 早春の雨

故郷の 木々の緑の 色映えて
       栗の花咲き カッコーの声

蝸牛 角振り立てて 何処え行く
       夕日に淡く 細道残す

ホーホーと 山鳩鳴ける 早苗田に
       大平山の 姿写せり

春の雨 上りて午後の 家並は
       静かにけむる 夕霞かな

春雨や 裏山に咲く 花椿
       赤い毛氈 敷く如く散る

明け放し 朝の窓辺の 百日紅
       萌えて明るき 我が家の庭

コオロギの 鳴いて知らずに 秋を知る
       居残る蝉の 声も淋しく

コウロギの 声澄み渡る 庭先の
       仄かに照らす 上弦の月

庭先の 鶏頭の花 色ずきて
       日毎美し 秋の夕暮れ

朝夕の 夢の続きの まどろみに
       遠く微かに 蜩の声(ひぐらし)

涼風や 安らぎに聞く 虫の声
       短き夏の 去り行く時節

百日紅 寺の屋根まで 咲き乱れ
       やがて暮れゆく 空を彩る

冷やかな 秋風漂う 秩父路は
       垣根に寄り添い 萩の花咲く

秋淋し 川面に写る 茜雲
       眩く照らす 暮色の夕日

微かなる 羽音聞こえし 赤トンボ
       夕焼け空に 尚赤く染め

三日月の 空に流るる 千切れ雲
       秩父の峰は 夕焼けに染む

色褪せて 雨に打たれる 夕顔の
       花の命の 愛しかりけり

都幾川の 川瀬に浮かぶ 灯籠の
       揺らぐ灯 淋しく送る

賑やかに 頭上に上る 尺玉の
       菊花の光 川面を照らす

盆過ぎて 叢に咲く 萩の花
       秋風うけて 淋しく揺れる

儚しと 見れば儚く 思えども
       鉢に溢れる 草木の花

広がりし 夕焼け雲に 照らされて
       茜に染まる 人々の顔

霧晴れて くっきり咲いた 紫の
       菊美しく 朝露受けて

霜深く いつしかなりて 庭先の
       菊も洋傘 高々と差す

幼子が 親の麦踏み 見習いて
       親は麦踏む 子は影を踏む

取り残す 柿が夕日に 赤々と
       師走の空に 眩く 映ゆる

年の瀬に 静かに降りし 雪の朝
       庭木に積もる 雪景色かな

冬枯れの 川の浅瀬に 浮びつつ
       ほのぼの白く 春を待つ雲

          山下たえ『われに詩あり』 2000年(平成12)2月



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