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埼玉県比企郡嵐山町の記録アーカイブ

卒業生諸君を送る 栗原正敏 1930年

2009年10月01日 | 栗原正敏(日記、作文)

   卒業生諸君を送る 昭和4年(ママ)1月22日
            第4学年乙組14番 栗原正敏
 我々は茲に光栄ある第三回卒業生諸兄を送ることになりました。かへり見ますれば過去四年間我々入学以来今日まで唯一の上級生として我々をお導き下さいましたのは兄等であります。我々は中学といふと上級生は恐ろしい者とばかり思って居りました。然し入学して見ますと上級生は恐しくなんともありませんでした。かへって実の兄よりも親切に我々をみちびいてくれたのであります。
 然しながら最早諸兄とお別れせねばならぬこととなりました。今茲にて兄等とお別れするといふことは淋しく名残をしく不安でたまりません。然しながら之は私情であります。行って下さい。国家のために。
 我等は足らざるながらも兄等の後を受けつぎ兄等によってきづき上げられたる我が松中の歴史を校風をきづつけません。否より以上向上せんことに努力します。
 而して兄等をして後顧のうれひなからしめんとちかひます。
 今後兄等の進む道には険しき山そびえ怒濤さかまく海が横はって行路はすこぶる多難であると聞いてをります。そは平和なる中学生活にくらべてずいぶんと苦しいことでせう。然しながら兄等の胸にはかっこたる自信がついて居ると信じます。どうか其の精神をもって目的地に向って進んで下さい。
 荒海何者ぞ、険山何者ぞであります。
 成功の頂、目的の彼岸は双手を上げて兄等を歓迎するでせう。かくして我が松山中学の名が世に大いなる権威を持つに至る時それは確かに諸兄に対する讃辞であります。どうか諸兄よ第三回卒業生としての栄誉を十分擔うて下さい、我々は諸兄とお別することを心淋しく思ひます。
 併しそれは私情であります。行って下さい。国家のために。我々は兄等の門出を祝福します。
 兄等御自愛下さい。而して成功の彼岸に達し我が松山中学の名声を否日本国の名声を高めて下さい。
 兄等の身に幸あれと我々一同お祈りしてやみません。
 一言もってお別れの辞といたします。

※埼玉県立松山中学校の沿革:HP『埼玉県立松山高等学校』「沿革」「教育資料館案内」。



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