新年をむかへて
鎌形国民学校初等科三年男子 I
初日の出もしずかなお正月です。雲一つありません。国旗を立ててからおぞうにをたべて学校へ新年祝賀しきに行きました。おしやしん*の前にしせいを正しくさいけいれいをしました。この時ぼくはしずかに考へました。私達は忠義をつくすことの、ほかに自分のつとめはないと思いました。しきがおはつて家にかへりました。あたたかい日なので何げなく梅を見ますと芽の出はじめたのや花のさいたのがいく枝かありました。友達がたこをあげてゐたので私は戦地の事を思ひ出しました。はげしい飛行機のたたかひや兵たいさんたちの事を思ふと私は一生けんめいべんきやうをしなければならないと思ひました。兵隊さんはお正月もなく戦かつてゐることを思ふとおもちをたべてしずかなお正月ができることをありがたく思いました。米英をやつつけてみんなたのしいお正月をするやうに氏神様にお祈りして家にかへりました。
前線慰問誌『比企』第1号 1944年5月
*:「御真影」のこと。
前線慰問誌 比企 (非売品)
昭和十九年五月一日印刷納本
昭和十九年五月五日発行
編輯責任者 埼玉県比企郡松山町日吉町 大木友造
印刷者 東京都小石川区指ヶ谷町一四六 大森清一
印刷所 東京都小石川区指ヶ谷町一四六 大森印刷所